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研究成果紹介

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    2026.04.30
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    日本人の健康関連QOLが7年間で一貫して低下 ―特に就労世代で顕著―<2017・2020・2024年度の全国大規模調査で判明>

    概要 広島大学大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 平子哲夫客員教授、秋田智之講師、杉山文講師、田中純子特任教授、福間真悟教授の研究グループは、COVID-19流行中を含む2017年度・2020年度・2024年度に実施された全国ランダムサンプリング調査を用いて、日本人成人の健康関連QOL(Health-related Quality of Life:HRQoL)の時系列変化を分析しました。国レベルでCOVID-19の流行前・流行中・流行後のHRQoLを比較した研究は国内外に類例がなく、世界的にも貴重な知見を提供するものです。 その結果、日本人成人の全国平均HRQoLは、過去7年間にわたり一貫して低下していることが明らかとなりました。特に、男性では40〜69歳、女性では30〜59歳の就労世代で低下が顕著であり、都道府県別の推定でも、ほぼ全国的に同様の傾向が確認されました。 本研究成果は、国際学術誌 「Scientific Reports」 に掲載されました(2026年4月9日)。   発表論文 掲載誌:Scientific Reports (Q1, IF: 3.9) 論文タイトル:Longitudinal changes in health related quality of life in Japan based on nationwide surveys and Bayesian regional estimates(全国調査とベイズ推定による地域別推計に基づく日本の健康関連QOLに関する経年的変化) 著者名:Tetsuo Hirako, Tomoyuki Akita*, Aya Sugiyama, Junko Tanaka , Shingo Fukuma (平子哲夫、秋田智之、杉山文、田中純子、福間真悟)*責任著者 DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-026-45692-x   背景 日本では高齢化の進行、労働環境の変化、慢性疾患の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響など、国民の健康状態に影響を及ぼす要因が複雑化しています。 健康関連QOL(HRQoL)は、疾病負担や生活の質を標準化した総合的評価指標として、広く用いられ、健康・医療政策や地域施策などにおいて重要性が高まっています。 しかし、全国規模のランダムサンプリングに基づく時系列データは極めて限られており、小標本を含む都道府県別の変化を精度高く把握した研究はほとんどありませんでした。   研究の方法 本研究では、2017年度、2020年度、2024年度に実施された一般住民を対象に実施した肝炎ウイルス検査受検状況調査に含まれるHRQoL項目を解析に用いました。 対象:20〜85歳の日本人成人 調査方法:層化二段抽出法による全国ランダムサンプリング 有効回答数:2017年度:10,204人(34.0%) 2020年度:8,810人(44.1%) 2024年度:4,428人(29.5%) HRQoL指標:標準化された国際的な健康関連QOL指標であるEQ-5D-3L(日本語版) 都道府県別推定:性・年齢調整に加え、経験的ベイズ法1)を用いて小標本の不安定性を補正   本研究は厚生労働科学研究費補助金(H25-kanenippan-010, H28-kansei-ippan-001, H29-kansei-shitei-001, 19HC1001, 20HC2002, 22HC1001, 23HC2003)の支援を受けて実施しました。 本研究は広島大学の倫理審査委員会の承認を得て実施しました。   研究の主な結果 全国平均HRQoL値の推移 ▷ 0.9133(2017年度)→0.8977(2020年度)→0.8834(2024年度)と7年間で緩やかだが一貫して低下。 就労世代でのHRQoL値の低下が顕著 ▷ 男性:40〜69歳、女性:30〜59歳で統計的に有意な低下(P < 0.05)。 HRQoLの低下には「痛み/不快感」、「不安/ふさぎ込み」の影響が大きい。 ▷ 何らかの問題がある回答者の割合 (男性) (女性)   都道府県別の傾向 ▷ 経験的ベイズ法による推定では、ほぼ全ての都道府県でHRQoL値が低下しており、地域差を含めた全国的な傾向であることが確認されました。 各HRQoL推計値上位の1-5位 各HRQoL推計値下位の43-47位   考察・社会的意義 本研究は、世界的にも貴重な、国レベルでのCOVID-19の流行前中後を含む7年間のHRQoLを比較した初の大規模研究です。 COVID-19の流行時には医療サービス利用の減少、身体活動量の低下、メンタルヘルスの悪化など、多くの間接的影響が報告されています。本研究は因果関係を直接検証するものではありませんが、就労世代での顕著なHRQoL低下は、こうした行動・社会的変化の累積的影響を反映している可能性があり、特に緩やかな低下が継続していることに注目が必要です。 都道府県別の状況把握は自治体の健康・医療政策の立案に有用であり、継続的に健康関連QOLのモニタリングを行うための手法が開発されたことは意義があります。 研究者コメント「今回の結果から、日本の就労世代における健康関連QOLは緩やかではありますが、確実に低下していることが示されました。今後の健康・医療政策や地域施策において、就労世代の健康支援策の検討に際し重要な基礎資料になると考えられます。今後も継続的に全国の健康関連QOLのモニタリングを行うとともに、その低下の原因について深く分析することが必要です。」   用語解説1)経験的ベイズ法:条件付き確率の関係式であるベイズの定理を用い、新しい情報(データ)が得られたときに、ある事象の確率を更新する統計手法の一つ。小さな標本サイズに起因する不安定性を解消する手法として用いられる。   報道発表資料(995.3 KB) 国際学術誌:Scientific Reports 研究者ガイドブック(秋田 智之 講師)   【お問い合わせ先】 大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 講師秋田智之 Tel:082-257-5160FAX:082-257-5164 E-mail:tomo-akita*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 経営/組織運営/デザイン
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 経営/組織運営/デザイン
    グリーンウォッシング 尺度開発に関する研究

    グリーンウォッシング(greenwashing)発生 ▶︎環境配慮に関連した企業の宣言と実態が一致せず、消費者の誤解を招く現象 企業のサステナブル(SDGs)宣言→製品・サービスに予期しなかった事態が発生→Washだと非難され、企業ブランド価値低下発生   研究内容 【企業のグリーンウォッシングを数値化する】   greenwashing 語のテキストマイニング   質問票調査実施 尺度開発を通じて期待していること ①Greenwashingの診断表・保険開発   ②Greenwashing ガイドブック作成   研究計画 企業のグリーンウォッシングを抑制するための取り組み 社会に対する波及効果 ブランド成果と消費者・顧客への反応 環境経営への社員の知識レベルをアップする教育プログラムの開発   実用化に向けた課題 green経営に関する持続的な関心と投資が必要 多様な企業からのデータ収集が必要→尺度の信頼性アップ   最後に 協力依頼事項 greenwashing尺度の活用:保険開発以外にも、多様な製品・サービスへの活用可能性がある(例:クラウドファンディング) 環境経営に関わる社員の知識レベルをアップする教育プログラムの開発   研究者 徐恩之(SEO EUNJI) 広島大学 大学院人間社会科学研究科 准教授

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 経営/組織運営/デザイン
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 経営/組織運営/デザイン
    グリーン懐疑主義が消費者のグリーン購買意図に与える影響:情報探索および罪悪感の役割

    アピールポイント グリーン懐疑主義は、消費者に自身の懐疑心を確かめるための情報探索を促し、購買意思決定を支える。 環境意識に反する消費行動への不安は罪悪感を招きやすく、その軽減策としてグリーン製品が選ばれることもある。 消費者の環境意識の高まりに対応し、持続可能な戦略の推進と明確な情報提供に努める必要がある。   研究者のねらい グリーン懐疑主義は、環境問題への関心と消費行動のギャップを説明しうる要因とされており、持続可能な消費への影響が探求されている。 本研究では、消費者の情報探索行動と予期される罪悪感に着目し、懐疑的態度が購買意欲を促進しうる可能性を実証的に検討する。 製品情報の発信がグリーン製品の販売促進に寄与し、企業の持続可能な発展に資することを示唆する。   研究内容 1,モデル 注記:グリーンウォッシングとは、企業が誇張的または曖昧な表現により、消費者に誤認を与える行為を指す。   グリーン懐疑主義・消費者の情報探索行動・予期される罪悪感   2,仮説検証 ① 情報探索行動は、懐疑的態度を裏付けたり打ち消したりすることで、購買判断の根拠となり得る。   ② 懐疑心と環境意識の対立は、罪悪感を引き起こし、グリーン製品の購入がその感情の緩和につながる可能性がある。   3,示唆   関連情報 【論文】The Influence of Green Skepticism on Consumers’ Green Purchase Intentions: The Roles of Information Seeking and Anticipated Guilt. To be presented at the APMAA 2025 Annual Conference, Shah Alam, Malaysia. 【知財】なし   研究者 周聖逸 大学院人間社会科学研究科 博士後期課程2年(当時)   指導教員徐恩之(ソウンジ)准教授

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 半導体
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 半導体
    有機半導体を用いた光触媒による太陽光水素製造に関する研究

    アピールポイント 有機薄膜太陽電池において高効率を示す独自開発の有機半導体材料をナノ粒子光触媒として応用し、太陽光による水素製造を可能にした。 本研究で開発した有機光触媒は、可視光全域を利用できるため、従来の無機系光触媒に比べて2倍以上の太陽光エネルギーを活用できる。   研究者のねらい 従来の無機光触媒は波長が600 nmまでの可視光領域しか利用できなかったが、本研究で開発する有機光触媒は可視光全域を利用できる。これにより、従来の光触媒よりも2倍以上の太陽光エネルギーを活用できるようになり、水素製造の高効率化に向けて大きなアドバンテージとなる。また、有機半導体は無機半導体に比べてはるかに高い吸光能を持つため、少量でも十分に太陽光を吸収できる。すなわち、有機光触媒による高効率水素生成技術は、材料削減による低コスト化にも優位性があり、総環境負荷の低減が期待できる。   研究内容   電流ー電圧特性   分光感度特性   モジュールへ展開(2 cm角 → 20 cm角)   有機光触媒へ展開(ナノ粒子化)   Cryo-TEM   反応機構   水素発生量   外部量子効率   関連情報 【論文】 Tsubasa Mikie, Tomokazu, Morioku, Shota Suruga, Momoka Hada, Yuki Sato, Hideo Ohkita, Itaru Osaka, Dithienonaphthobisthiadiazole synthesized by thienannulation of electron-deficient rings: an acceptor building unit for high-performance π-conjugated polymers, Chemical Science, 15: 19991–20001, 2024. 【知財】特願2019-159031、特願2021-132762、特願2022-34404 、特願2024-095535   研究者 三木江翼(MIKIE TSUBASA) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 助教

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    アンモニアメタネーション

    アピールポイント 独自性:アンモニアを利用した,二酸化炭素からのメタン合成 ▶︎反応による発熱が小さく,熱暴走のリスクがない ▶︎アンモニアを水素キャリアとして輸入:国内の二酸化炭素を国内でメタンに変換 実用化に向けて:実燃焼ガスからの回収した二酸化炭素による実証試験が進行中(広島県カーボンリサイクル関連技術開発支援補助金)   研究者のねらい 研究目的:触媒開発,改良を行うことで高メタン収率を得る 研究概要:アンモニア分解触媒(ルテニウムやニッケル触媒)とメタン合成触媒(ニッケル触媒)を組み合わせたハイブリッド触媒の研究 社会実装のイメージ:広島ガスと共同で、同社顧客企業において、二酸化炭素の回収とアンモニアメタネーションを行うことを検討   研究内容 図1 圧力変化に対するアンモニアメタネーション 図2温度変化に対するアンモニアメタネーションRu/Al2O3(1 wt%)+Ni/CeO2(20 wt%) 図3 反応装置 図4 大規模プラントイメージ(多段断熱反応器)   関連情報 【論文】・・・H. Saima et al., J. Chem. Eng. Japan,https://doi.org/10.1080.00219592.2023.2248176 H. Saima et al., J. Japan Petroleum Inst., in Press 【知財】特許・・・(特開2024-147616)   研究者 砂本礼志 先進理工系科学研究科 エネルギー変換材料工学研究室D2(当時)   主指導教員宮岡 裕樹 教授   本研究シーズは、2025年9月フェニックスセミナーで発表されました。

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    太陽光発電の『価値分離』を通じたCO2フリー水素の低コスト化検討

    アピールポイント 化石燃料の代替として期待されるグリーン水素の製造コストを低減 太陽光発電と蓄電池、系統接続の組合せでエネルギーマネジメントを効率化 再エネ導入による電力系統への負荷を低減、太陽光発電の主力電源化にも有効   研究者のねらい 化石燃料からの燃料転換やカーボンリサイクルの原料として期待されるグリーン水素は、現状、再エネを利用した水電解法で製造されるが、製造コストの高さが課題である。本研究では、太陽光パネルによる発電を「高価値電力(安定かつ予測可能)」と「低価値電力(変動が大きく予測困難)」に分離し、前者を系統に売電、後者を水素製造に回し、さらに蓄電池活用による電解装置の容量低下および利用率向上を通じてグリーン水素の製造コスト低減モデルを提示する。なお、このモデルは、再エネ導入による電力系統への負荷を減らし、過大な投資を行うことなく太陽光発電の出力制限を緩和し、主力電源化も実現できる。   研究内容 1, 水素製造コストと電解装置の利用率との関係   2,『高価値電力』 と『低価値電力』 の分離および蓄電池による『低価値電力』 の平準化   3,水素製造シミュレーション 【前提条件】 (1)エネルギーマネジメント ①カットオフ以下は高価値電力として売電 ②カットオフ以上の電力がある場合、電解装置に優先的に供給、電解装置の容量以上の電力を蓄電池に入れ充電 ③電解装置がフル稼働できない場合には蓄電池から給電 (2)CAPEX容量 PV 1kW/EC 0.083kW/Battery 1.981kWh (3)電力価格とCAPEXコスト・耐用年数 高価値電力 \12/kWh/低価値電力 \7/kWh EC \50000/kW・10年Battery \10000/kWh・20年   関連情報 【論文】Egusa H, Ichikawa T: Value Division of Photovoltaic Power for Economically Reasonable Green Hydrogen Production. International Journal of Hydrogen Energy, 111: 385-392, 2025 【知財】なし   研究者 江種浩文(EGUSA HIROHUMI) 広島大学 A-ESG科学技術研究センター 客員准教授 市川貴之(Ichikawa Takayuki) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授   本研究シーズは、2025年9月フェニックスセミナーにて発表しました。

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    アジアにおける温室効果ガス吸排出、及び気候変動の現状

    アピールポイント 地球温暖化が激化傾向、アジア・日本も例外ではない 化石燃料燃焼による温室効果ガス(GHG)の排出は、日本を含む先進国では減少傾向、だが、世界全体では増加傾向 パリ協定の達成目標に対する現状を知るにはGHGバジェットを推定することが必要 国内で唯一のGHGバジェット推定の専門家 アジア諸国のGHGバジェットを推定し、各国のパリ協定の達成目標に対し助言→有効的なGHGの削減へ   研究者のねらい GHGバジェット推定は、パリ協定批准した各国が独自の目標達成の現状把握ために必要。各国の背景や政情による違い理解した上で、主要なGHG排出のプロセスを把握し、削減策を考察する。特に、アジア圏の発展途上国では、化石燃料燃焼が主要はGHG排出ではない(土地利用変化や火災が主要なGHG排出の国もある)。GHGバジェット推定を精緻化すると共に、国別の推定を確立する。これらの推定を速やかに推し進め、GHG排出の増加に歯止めをかける。この活動を推進するためには、産官民の協力が必要。   研究内容 GHGバジェットとは:GHG(CO2、CH4、N2O)の吸排出に関わる個々のプロセスを足し合わせた収支量 対象地域のGHGバジェットは正味排出か、正味吸収か、またはニュートラルか 何がGHGバジェットの主要構成要素か→国によっては化石燃料燃焼以上に重要な排出源が存在する 主要な排出源を特定することにより、将来的な削減に貢献 科学的根拠にによる、パリ協定を超えた、GHG削減策を提示 図1:GHGバジェットの構成要素。何が重要なプロセスであるかは、国・地域によって異なる。また、現在把握できているプロセス以外にも隠れたプロセスが存在する可能性もあり、更なる推定の精緻化が必要。   関連情報 【論文】 Kondo M., et al. (2023) Autumn cooling paused the increased net CO2 release in central Eurasia, Nature Climate Change, 13, 334–337 Kondo M., et al. (2018) Land use change and El Niño-Southern Oscillation drive decadal carbon balance shifts in Southeast Asia, Nature Communications, 9, 1154   研究者 近藤雅征(KONDOMASAYUKI) 広島大学 IDEC国際連携機構 准教授   本研究シーズは、2025年9月フェニックスセミナーにて発表しました。

    • バイオエコノミー
    • 医療/ヘルスケア
    2025.09.24
    • バイオエコノミー
    • 医療/ヘルスケア
    難治性がんを克服するがん抗原提示細胞化mRNA療法の開発​

    アピールポイント 難治固形がんを対象とした腫瘍内投与型mRNA-LNP治療薬 ​ がん細胞を抗原提示細胞様にリプロラミングし、腫瘍内部でT細胞性免疫監視を誘導​ ①高い有効性 ②煩雑な操作不要 ③ユニバーサル ④効果持続性 ⑤低い副作用 ⑥免疫療法併用で効果   研究者のねらい 1,有効な治療が存在せず5年生存率が20%以下の難治がんに対し、新たな治療法を開発する。​   2 ・がん細胞は免疫細胞によって認識され、攻撃される。​ ・ただし、免疫細胞を活性化できるのは、免疫細胞によって認識される目印をもったがん細胞だけである。​ ・この性質を「がんの免疫原性」と呼ぶ。​   3,「がんの免疫原性」低下は予後不良因子 ・体内にがんができても免疫が機能していれば、がん細胞が排除され「がん」を発症しない。しかし、「がんの免疫原性」が低下すると、T細胞の働きが弱まりがんを発症してしまう。​   ・免疫細胞であるT細胞が腫瘍内部に活発に浸潤している高免疫原性がんと比較して、T細胞浸潤がほとんどみられない低免疫原性がんは、様々ながん種において特に予後が悪い。​   ・がんの免疫原性を上昇させれば,難治がんであっても治療できる可能性が高まる。​ 研究内容 1,既存の免疫療法の課題 ・これらはいずれもT細胞や樹状細胞などの免疫細胞を活性化するものであり、がん細胞に対して直接作用するわけではない。​   ・低免疫原性の難治がんでは、免疫細胞が認識する目印が消失しており、そのためがん細胞が隠れて見えない状態となっている。これでは、免疫細胞をいくら活性化しても高い治療効果を発揮できない。​   2,抗原提示細胞化mRNAの導入による抗原提示細胞化​ ①この問題を解決する手段として、腫瘍内部にLNP化したmRNAを導入する。​   ②mRNAが導入されたがん細胞は、mRNAの効果によってがん細胞が免疫細胞のように変化し、免疫反応を引き起こせるようになる。​   ③その結果、がんを認識するT細胞が選択的に活性化して増殖し、腫瘍内部からがんを攻撃できるようになる。​   ④さらに、がんのバリアも解除されるため、既存の免疫療法を併用することで、さらに高い治療効果が期待できる。​   3,免疫監視誘導mRNA-LNPの構造と外観 ヒトに感染するEBウイルスの研究から、特定のEBウイルス遺伝子が免疫細胞を強力に活性化してがんを抑制することを見出し、学術雑誌に発表 (1-4)。   4,免疫監視誘導mRNA-LNPの腫瘍縮小効果​ ・これまでに2タイプのmRNA-LNP(1. EBウイルス遺伝子型 (HMR-001); 2. ヒト転写遺伝子型 (HMR-002))を開発し、がん細胞を免疫細胞へとリプログラミングすることに成功。​   ・ mRNA-LNPを腫瘍に投与することで、劇的な腫瘍縮小効果を確認した。​   ・さらに、人にとって異物であるウイルス由来の遺伝子を用いる代わりに、人の遺伝子である2種類の転写因子を用いることでも同様の効果が得られることを発見。以上、論文投稿中のためデータ非公開。​   ・これらの技術はいずれも基礎特許出願済み。   5,先行技術と比較した優位性​ ・がん細胞を抗原提示細胞に変化させる新規作用機序で、世界初の技術​   ・従来の免疫療法が奏功しない腫瘍にも効果​   【優位性】​ ①寛解が望めるがん治療効果​ ②前培養など煩雑な操作が不要​ ③オーダーメイドではないため診断を受けたがん患者に迅速に使用可能​ ④免疫記憶を誘導するため長期的効果が期待​ ⑤腫瘍に限定したデリバリーであり、副作用がでにくい   想定される用途・応用先 【対象とするがん】​ ・難治性固形がん:特にステージ3-4胃がん、スキルス胃がん ・対象とするがん種を今後拡大予定​   【投与方法】 ・腫瘍内投与(内視鏡手術や腹腔鏡下手術が可能ながん種) ・チェックポイント阻害剤など既存治療との併用を想定​   関連情報 【関連特許】 発明の名称 : ウイルス由来遺伝子発現による抗腫瘍免疫誘導方法​   【その他】 ・AMED次世代がん事業・PSI GAPファンド事業​ ・事業化推進機関:広島ベンチャーキャピタル、パートナーズファンド​ ・2025-2026年度計画:ヒトがん検体を用いたin vitro, in vivo POC取得、​ mRNA持続期間延長の検証、有効性向上させる併用薬剤の検討など​ ・治験薬製造:広島大学PSI GMP教育研究センター​   【関連特許】 Yamane et al. 投稿中​ Jin, Y. et al. Front. Immunol., 2025​ Tamura et al. Front. Immunol., 2024​ Li, X. et al. Sci. Immunol., 2024​ Wirtz, T. et al. PNAS, 2016​ Zhang, B. et al., Cell, 2012​   【企業への要望】 ・当研究室との共同研究開発に興味のある企業様を募集しております。​   研究者 保田朋波流(YASUDA TOMOHARU) 広島大学 大学院医系科学研究科(医) 教授   2025年BioJapan出展

    • バイオエコノミー
    • 医療/ヘルスケア
    2025.09.24
    • バイオエコノミー
    • 医療/ヘルスケア
    ヒトの腫瘍微小環境と治療への反応を再現する新規マウス大腸がんモデルの確立とその応用​

    アピールポイント マウスの大腸上皮細胞特異的に転写活性を持つプロモーター配列(CDX2P-9.5kb)を発見しました。​ CDX2Pを応用してヒトの右側結腸癌と左側結腸癌を再現する大腸癌マウスモデルを確立しました。​ ヒトの大腸癌分子サブタイプ(CMS)を再現した高度浸潤癌と粘液癌マウスモデルを作成しました。​ 薬剤のスクリーニングに有用な治療抵抗性高度浸潤型大腸癌マウスモデルを作成しました。   研究者のねらい 大腸癌は罹患数,死亡者数が多く対策が急務で、特に治療抵抗性大腸癌に対する新規治療薬の開発は重要な課題である。大腸癌は、4つのサブタイプに分類したConsensus Molecular Subtype (CMS)、それを改良したIMF分類のiCMS3サブタイプは、PI3K-PTENシグナル異常などを特徴とし最も予後不良なサブタイプで有効な治療薬が未だ無い。​   私共は独自の大腸上皮細胞特異的コンディショナル複合的遺伝子改変マウスの技術を使って、CMSサブタイプを再現するマウスモデルを確立してきた。このうち治療抵抗性で予後不良なiCMS3サブタイプを再現する高度浸潤型のApc+Ptenマウスモデルを使って、大腸癌に対する新規化合物や抗体薬のスクリーニングや治療効果を評価する共同研究を提示する。 研究内容​ 私共は、大腸癌関連遺伝子として腸上皮の分化に関わるホメオボックス転写因子CDX2の研究を行う中、そのプロモーター領域(CDX2P-9.5kb)に、マウスの大腸上皮細胞特異的に転写活性を持つ領域を発見し、この配列を利用して世界で最初の自然発生による遠位大腸に腫瘍が好発する大腸浸潤癌マウスモデル(CPC-Apcマウス、左側結腸癌モデル)を確立した。 ​   このモデルをさらに改良してMSI発現誘導型のCreマウスCDX2P-G22Creマウスを作成してApc欠損させたところ、近位大腸に腫瘍が発生する大腸癌浸潤癌モデル(G22Cre-Apc)を作成することができた(図1)。​   いずれも12ヶ月経過観察をして、浸潤癌の発生率が17%で生存期間中央値が160日であるため、浸潤癌の治療効果を検証するには不十分と思われた。​   私共は、Apcに変異を持つCPC-APCマウスに別のドライバー遺伝子(Kras, Braf, Tgfbr2, Ptenなど)組み合わせた遺伝子変異を持つ様々な複合的遺伝子改変マウスモデルを作成し、その腫瘍の組織型や悪性度を解析したところ、高度浸潤癌(CMS3)や粘液癌(CMS4)などの分子サブタイプの特徴に一致したマウスモデルが確立できた(図2)。   Apc+Ptenマウスは予後不良(図3,4)の高度浸潤癌が発生するが、PI3K-PTENシグナルの標的分子に対する阻害剤が著効する(図5)ことから、PI3K-PTENシグナル異常を持つ治療抵抗性の大腸癌や高度浸潤型の大腸癌に対して、抗腫瘍効果を持つ新規化合物や抗体薬をスクリーニングする上で極めて有用と思われる。 想定される用途・応用先 私共が開発したヒト高度浸潤型大腸癌のプロファイルを持つマウスモデルを用いることで、治療抵抗性大腸癌に高頻度で認められるPI3K-PTENシグナルを標的とした新規化合物や抗体薬のスクリーニングならびに大腸癌の浸潤やがんの微小環境に作用する薬剤の治療効果を評価するために有用なマウスモデルである。評価方法についてもマウス用の大腸内視鏡を使う評価方法から、腫瘍から確立したオルガノイドを使った細胞培養実験での評価も可能である。​   関連情報 代表的な論文:​ Hinoi T, Fearon ER et al. Cancer Res. 2007 Oct 15;67(20):9721-30.​ Akyol A, Hinoi T, Fearon ER et al. Nat Methods. 2008 Mar;5(3):231-3​ Kochi M, Hinoi T e al. Cancer Sci. 2020 Oct;111(10):3540-3549​ Itakura H, Hinoi T, Yamamoto H et al. iScience. 2023 Mar 23;26(4):106478​ 企業に望む事:私共の作成したマウスモデルを使って大腸癌の治療開発や薬剤スクリーニングについての共同研究や競争的資金の獲得   研究者 檜井孝夫 広島大学 病院(医) 教授   2025年BioJapan出展

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 半導体
    • 経営/組織運営/デザイン
    • 融合領域
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 半導体
    • 経営/組織運営/デザイン
    • 融合領域
    【フェニックスセミナー2025まとめ】未来をつくるカーボンニュートラルイノベーション

    概要 フェニックス協力会主催(協力:株式会社広島銀行)にて、2025年9月4日にひろぎんキャリア共創センターにて、フェニックスセミナー2025(研究シーズ発表会)vol.2を開催しました。 当日は、企業や研究者など80名ほどが参加し、市川教授の基調講演(「広島県におけるカーボンニュートラルの動向」)や若手研究者による研究の最前線についての発表がありました。セミナー後は、懇親会も開催。直接研究者とコミュニケーションをとることで、研究とビジネスをつなげるきっかけの場となりました。 研究者・発表した研究シーズリスト 近藤 雅征(瀬戸内CN国際共同研究センター・准教授) ーアジアにおける温室効果ガス吸排出、及び気候変動の現状   江種 浩文 (経済学部・客員講師) ー太陽光発電の「価値分離」を通じたCO2フリー水素の低コスト化検討   砂本 礼志(大学院先進理工系科学研究科・D2) ーアンモニアメタネーション研究   三木江 翼 (大学院先進理工系科学研究科・助教) ー有機半導体を用いた光触媒による太陽光水素製造に関する研究   徐 恩之(大学院人間社会科学研究科・准教授) ーグリーンウォッシュの尺度開発に関する研究   周聖逸(大学院人間社会科学研究科・D2) ーグリーン懐疑主義が消費者のグリーン購買意図に与える影響:情報探索および罪悪感の役割   フェニックス協力会とは 「地域社会・国際社会との共存」を具現化する取組みとして、2010年11月、地域社会、特に地域産業界への更なる貢献を目的として設立。 150社ほどの企業・団体が所属し、広島大学オープンイノベーション本部産学連携部門(事務局)から、産学連携に関連する情報発信や、会員企業の皆さまにご活用いただけるさまざまなサービスなどを発信しています。

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    2026.04.02
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    真菌の遺伝子機能注釈を向上させる新手法を開発 ― シイタケおよびダイズさび病菌を例に ―

    本研究成果のポイント 真菌(病原菌やキノコ、酵母などが含まれる)で実際に発現している遺伝子の機能を解析する新しい手法を開発し、従来より多くの遺伝子の働きを明らかにできることを確認した。 ゲノム編集(※1)標的探索など、バイオテクノロジー応用への活用が期待される。   概要広島大学大学院統合生命科学研究科の森原なぎさ大学院生と坊農秀雅教授(広島大学大学院統合生命科学研究科・プラチナバイオ共同研究講座教授兼任)らは、真菌トランスクリプトーム(※2)のための、新たな機能注釈(※3)ワークフロー(※4)を開発した。 本研究では、シイタケおよびダイズさび病菌のトランスクリプトームデータを用いて開発したワークフローを評価し、転写産物から予測されたタンパク質コード配列(※5)の96%以上に機能注釈を付与することに成功した。これは、遺伝子がどのようなタンパク質を作り、どのような生物学的役割を持つのかを推定するものである。また、特定の条件でのみみられる転写産物や、近縁種でも発見されている転写産物など、従来手法とは異なるアプローチでの注釈も可能になっている。 本成果は、2026年2月6日に国際学術誌「Journal of Fungi」のオンライン版に掲載された。   [発表論文] ・著者:Nagisa Morihara1), Hidemasa Bono1)2)* * Corresponding author (責任著者) 1)広島大学大学院統合生命科学研究科 2)ゲノム編集イノベーションセンター ・論文タイトル:Functional Annotation Workflow for Fungal Transcriptomes ・掲載誌: Journal of Fungi ・DOI: https://doi.org/10.3390/jof12020116   背景真菌類は、バイオテクノロジー、農業、環境保全、ヒトの健康など、多岐にわたる分野で重要な役割を担う一方、多くの種がゲノムや遺伝子機能が解明されていない非モデル生物である。次世代シーケンサー(※6)のRNA-seq(※7)技術によってトランスクリプトームの配列決定が容易になったが、得られた配列データから遺伝子機能を推定する機能注釈は依然として課題であり、既存の生物種を限定しないツールでは、真菌特有の特徴を十分とらえきれない、注釈できず機能未知となる割合が高くなるなどの問題があった。その結果、そのあとに続く機能エンリッチメント解析(※8)、ゲノム編集などの障害となっていた。   研究成果の内容本ワークフローでは、ヒト、マウス、酵母の参照配列、タンパク質データベース(UniProtKB)、タンパク質ドメインデータベース(InterPro)、真菌に特化したデータベース(FungiDB)それぞれについて、SAQEワークフロー(※9)をベースに相同性検索を行い、転写産物から予測されたタンパク質コード配列に機能IDを付与した。さらに割り当てられたIDに対応する生物学的機能を表す共通用語であるGO termを付与し、発達段階や組織など条件特異的な注釈も実施した。 このワークフローをシイタケ57サンプルのRNA-seqデータに適用し、227,580個の転写産物から予測されたタンパク質コード配列のうち98.2%に注釈を付与(従来手法では66%)した。さらにGO termは74%に付与できた(従来手法では12%) また菌糸体(※10)、原基(※11)、子実体(※12)のグループ間で差があった機能を解析し、菌糸体からの原基形成ではNADキャップ脱離や脂肪酸α酸化、原基からの子実体形成では有糸分裂、細胞壁リモデリング、オートファジーといった、シイタケの発達に重要な機能を同定できた。また発達段階特異的に注釈されたもののうち、胞子形成および酸化ストレス応答に関与する、酵母SWS2遺伝子のホモログ(※13)が原基でのみ発現していることがわかった。これらの結果は、これまでの手法では機能注釈できず見逃されていた転写産物を発見できる能力を本ワークフローが有していることを示している。 続いてダイズさび病菌のIso-Seq(※14)データへも適用し、9,680個のタンパク質コード転写産物のうち96.1%に注釈を付与できた(従来手法では80%)。さらにGO termは79%に付与できた(従来手法では19%)。感染後に発現が下がる転写産物の機能を調べたところ、K48結合型ユビキチン化の負の制御、細胞接着分子生産、ヒストン脱アセチル化など、病原性に関わる制御機構を同定した。またFungiDBでのみ注釈されたさび病菌やその他病原菌由来の機能未解明遺伝子は、さび病菌における新規機能の存在を示唆するとともに、将来的なゲノム編集標的候補となる可能性を示している。   今後の展開公共データベースに蓄積されたRNA-seqデータを本ワークフローで再解析することにより、未探索の転写産物の発見が期待される。 また本手法により優先順位付けされた候補遺伝子は、ゲノム編集技術などに適用されることで基礎研究から応用研究への橋渡しを促進する。例えば、食用きのこの品種改良、植物病原菌の制御、有用代謝産物の生産など、バイオテクノロジー分野への応用が期待される。   参考資料   用語解説 (※1)ゲノム編集:ゲノムを構成するDNAを切断し、遺伝子を書き換える技術。 (※2)トランスクリプトーム:DNAから転写された全てのRNA。全転写産物。 (※3)機能注釈:DNAまたはRNA配列がどのような働きを持つかをラベル付けするプロセス。 (※4)ワークフロー:データ解析において、複数のプログラムを順序だてて組み合わせたもの。 (※5)タンパク質コード配列:DNAまたはRNA配列のうち、タンパク質を構成するアミノ酸の順序情報を持つ部分。 (※6)次世代シーケンサー:DNAやRNA配列を一度に大量に解読する装置。 (※7)RNA-seq:次世代シーケンサーを用いて、DNAから転写されたRNAの配列や量を解析する技術 (※8)機能エンリッチメント解析:発現変動遺伝子リストにおいて、どんな機能に有意に偏っているかを明らかにする。 (※9)SAQEワークフロー:https://github.com/bonohu/SAQE (※10)菌糸体:キノコやカビなどの菌類における、細い糸状の菌糸の集合体。 (※11)原基:菌糸体が凝集して形成される、きのこの基のこと。 (※12)子実体:いわゆるきのこの実の部分のこと。 (※13)ホモログ:進化の過程で比較的保存された、似た配列の遺伝子。 (※14)Iso-Seq:全長転写産物配列を読む手法。   【プレスリリース】真菌の遺伝子機能注釈を向上させる新手法を開発―シイタケおよびダイズさび病菌を例に―.pdf(429.86 KB) 掲載誌:Journal of Fungi 研究者ガイドブック(坊農 秀雅 教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 大学院統合生命科学研究科教授坊農秀雅 Tel:082-424-4013 E-mail:bonohu@hiroshima-u.ac.jp

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    2026.04.23
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    局所進行肺がんに新たな治療戦略 新規PAI-1阻害剤の医師主導治験を開始

    広島大学病院では、遠隔転移を認めない局所進行非小細胞肺がんのうち、根治手術が困難な患者を対象に、新規PAI-1阻害剤TM5614を用いた新たながん治療法の医師主導第Ⅱ相治験を開始します。   本治験のポイント 令和8年度AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の臨床研究・治験推進研究事業に採択され、局所進行非小細胞肺がんに対する新たな治療法の医師主導治験を開始 新規低分子医薬「TM5614」により抗腫瘍効果の増強と治療関連肺障害の抑制を同時に目指す 広島大学を中心に中国・四国・関西・東北地方の13病院が連携して実施 本研究の一部は、日本学術振興会J-PEAKSの支援を受けており、広島大学では今後も本支援により創薬研究を推進していきます。   背景・治験内容局所進行非小細胞肺がんに対する現在の標準治療は、化学放射線療法に続いて免疫チェックポイント阻害薬による地固め療法を行いますが、この治療によって肺がんが根治する患者は約25%にとどまっており、より有効な治療方法の開発が必要です。また、治療関連の肺障害による生活の質(QOL)の低下も課題となっています。 TM5614は、PAI-1(Plasminogen activator inhibitor-1)の働きを抑えることで、抗腫瘍効果の増強と治療関連肺障害の抑制という二つの作用を併せ持つ可能性が示されています。 本研究では、広島大学を中心に中国・四国・関西・東北地方の13病院が連携し、標準治療である化学放射線療法および免疫チェックポイント阻害薬による治療にTM5614を併用する医師主導医師主導第Ⅱ相治験を実施し、有効性と安全性を検討します。 用語解説 局所進行非小細胞肺がん: 肺にできたがんが周囲の組織やリンパ節に広がっているものの、遠くの臓器には転移していない状態の肺がん   PAI-1: 血液の線溶系を調節するタンパク質であり、がんの進展や治療に対する耐性に関与することが報告されています   TM5614:東北大学との共同研究により、非臨床、臨床試験により化学放射線療法、免疫療法の抗腫瘍効果の増強と肺障害の抑制効果という2つの作用を併せ持つ可能性が示されています   免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞が免疫細胞による攻撃を逃れるしくみに働きかけ、免疫細胞の力を回復させる治療薬   治療関連肺障害: 肺に炎症やダメージが生じ、呼吸機能が低下する状態   J-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業):地域の中核大学や研究の特定分野に強みを持つ大学が、その強みや特色のある研究力を核とした戦略的経営の下、他大学と連携等を図りつつ、研究活動の国際展開や社会実装の加速等により研究力強化を図る環境整備を支援することにより、我が国全体の研究力の発展を牽引する研究大学群の形成を推進することを目的としています。   報道発表資料(289.03 KB) 研究者ガイドブック(益田 武特定准教授)   【お問い合わせ先】 広島大学病院呼吸器内科 特定准教授益田武(ますだたけし) Tel:082-257-5196E-mail:ta-masuda*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

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