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    2026.02.04
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    防風林近くの農業湿地では、ヒバリ、ケリなど草原や湿地に棲む野鳥が減少することを確認 ~農業生産と生物多様性保全を両立させる農地管理の実現へ~

    本研究成果のポイント 水田やハス田では、防風林※1の近くでオオヨシキリやホオジロなど林や藪を好む鳥やムクドリは増える一方、ヒバリやケリのような開けた環境を必要とする草原・湿地性鳥類は棲みにくくなります。これは、防風林があることでその林の中にキツネや猛禽類などの捕食者が身を隠しやすくなるため、などが考えられます。 草原性鳥類は、防風林に隣接する地点では、防風林から約1km離れた開放的な環境に比べて、個体数が約70%少ないことが分かりました。 本研究は、防風林を一律に増やすよりも、草原・湿地性鳥類が利用する開放的な農業湿地※2環境を途切れずに残すよう配置・管理する方が、農地全体の生物多様性の維持に有効であることを示しています。   概要 広島大学大学院先進理工系科学研究科の久野真純助教らは、農業湿地景観における防風林が鳥類群集※3に与える影響を明らかにしました。石川県河北潟周辺の農業湿地で調査した結果、防風林の周辺ではシジュウカラやコゲラを含む林の縁を好む鳥の種類や数が増える一方で、ヒバリなど草原性の鳥の数や、ケリなどのチドリ類、サギ類、カモ類など湿地性の鳥の種類が減少することが分かりました。 特に草原性鳥類(ヒバリとキジ)では、防風林に隣接する地点で個体数が大きく減り、開放環境と比べて約70%少ないことが明らかになりました(図1)。本研究は、防風林を一様に増やすだけでは農地全体の生物多様性の向上につながらない場合があることが示されました。今後は、開放的な環境が連続するよう防風林の配置や管理を工夫することがだと考えられます。 本研究成果は、2026年1月15日に、国際学術誌「Journal of Environmental Management」にオンライン掲載されました。 また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。   論文情報 掲載雑誌:Journal of Environmental Management 論文題目:Shelterbelts support edge birds but limit grassland and wetland specialists in agricultural landscape 著者: K久野真純・出口翔大・Wenhuan Xu・Xike Xiao・Keinosuke Sannoh・Xinli Chen・本村健 DOI: https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2026.128583 図1:草原性の鳥の個体数と防風林までの距離の関係性を表したグラフ(Hisano et al. 2026を元に改変)   背景 農業集約化に伴う生息地の単純化は、世界的に農地鳥類の減少を引き起こしてきました。これに対応するため、各国の農業環境計画では、防風林や生け垣林などの農地樹林帯を維持・植栽することが推奨され、林縁性※4や森林性の鳥類を支える有効な手段と考えられてきました。一方で、こうした直線状の樹林帯は、草原性・湿地性鳥類にとって生息地を分断し、樹林帯を利用する猛禽類などに捕食される危険を高める可能性が指摘されています。   これまで、北米ヨーロッパの草原・畑地景観では、防風林や樹林帯が鳥類群集に与える影響が研究されてきましたが、アジア・モンスーン気候帯に広がる水田やハス田などの農業湿地景観では、その影響はほとんど検証されていませんでした。農業湿地は、自然湿地が減少した地域において、多くの湿地性・開放環境性鳥類にとって重要な代替生息地となっており、渡り鳥の中継地としても重要な役割を果たしています。そのため、農業湿地における防風林の効果を理解することは、生物多様性保全と農地管理の両立を考えるうえで重要な課題です。   研究成果の内容 本研究では、石川県河北潟周辺の農業湿地景観(水田・ハス田)を対象に、防風林の有無や距離が鳥類群集に与える影響を調べました。その結果、防風林は藪・林縁性鳥類の種数や個体数を増加させる一方で、草原性および湿地性スペシャリストの生息を制限することが明らかになりました。とくに草原性鳥類では、防風林に隣接する地点で個体数が著しく低下し、防風林から約1km離れた開放環境と比べて約70%少ないことが示されました。 これらの結果は、防風林が林縁性鳥類にとっては営巣や隠れ場所として機能する一方で、見通しの良い開放環境を必要とする地上営巣種にとっては、生息地の縮小や捕食リスクの増加をもたらす可能性を示しています。防風林は鳥類の多様性を一様に高めるのではなく、鳥類群集の構成そのものを変化させる要因であることが明らかになりました。  石川県河北潟のハス田に隣接して設けられた防風林の例。農地の風害対策として設置された防風林は、林や藪を利用する鳥類のすみかになる一方で、広く見通しのよい環境を必要とする鳥類にとっては、生息地利用の妨げの要因となることがある。 撮影:久野真純   防風林の影響を受けやすいと考えられる湿地性の鳥ケリ(左)と、草原性の鳥ヒバリ(右)。いずれも日本各地の水田で見られる種だが、本研究により、防風林に近い環境では生息地として利用しにくくなる可能性が示された。撮影:久野真純   期待される成果 本研究は、防風林や農地樹林帯の効果を、特定の種だけでなく鳥類群集全体の視点から評価し、農業湿地景観における管理上のトレードオフ※5を明確に示した点に特徴があります。これにより、防風林を含む農地樹林帯の維持・植栽がすべての鳥類にとって一様に有益であるという前提 (Hinsley and Bellamy 2000, Heath et al. 2017) を見直す科学的根拠を提供しました。 本研究成果は、農業環境計画や土地利用計画において、防風林を「増やすべき要素」として一律に扱うのではなく、どこに、どの程度配置するかを検討する必要性を示しています。とくに、草原性・湿地性スペシャリスト※6や地上営巣種が生息する農業湿地では、開放環境の連続性を確保することが、生物多様性の維持にとって重要であることが示唆されました。   さらに、水田やハス田などの農業湿地が、自然湿地の減少が進む地域において、渡り鳥や湿地性鳥類の重要な代替生息地となっている点を踏まえると、防風林の配置や規模を適切に設計することで、林縁性鳥類を支えつつ、国際的に減少傾向にある湿地性・草原性鳥類の生息地機能を損なわない農地管理が可能になると期待されます。これらの知見は、日本国内にとどまらず、アジア・モンスーン気候帯を中心とした世界の農業湿地において、持続的な農業と生物多様性保全を両立させる景観管理の指針として活用されることが期待されます。   今後の展開 本研究は、防風林の一律的な拡大が必ずしも農地生物多様性の向上につながらないことを示しました。今後は、防風林の配置や間隔、規模といった設計要素が、鳥類や捕食者の行動にどのように影響するかを、より詳細に検証する必要があります。また、季節や土地利用の違いを踏まえ、農業湿地全体の中でどの程度の開放環境を維持すべきかを明らかにすることが重要です。将来的には、防風林と開放環境を適切に組み合わせた景観設計指針を提示することで、農業生産と生物多様性保全を両立させる農地管理の実現に貢献することを目指します。   用語解説 ※1防風林:農地の風害防止を目的として植えられた直線状の樹木帯。農業生産を支える一方で、鳥類にとっては林縁環境や移動経路として機能することがある。 ※2農業湿地:水田やハス田など、人為的に管理されているが、水域や湿地環境の性質を持つ農地。自然湿地が減少した地域では、多くの湿地性生物の代替生息地となっている。 ※3鳥類群集:同じ地域に生息する複数の鳥類種からなる集まり。 ※4林縁性鳥類:森林と開放環境の境界(林縁)を主な生息場所として利用する鳥類。藪や樹木を隠れ場所や営巣場所として利用する種が多い。 ※5トレードオフ:ある対策によって得られる利益と、同時に生じる不利益の関係。本研究では、防風林が林縁性鳥類を支える一方で、草原・湿地性鳥類の生息を制限する関係を指す。 ※6草原性・湿地性スペシャリスト:草原や湿地などの開放的な環境に特化して生息する鳥類。見通しの良い環境を好み、地上で営巣する種も多い。   その他 本研究に取り組むきっかけは、これまでイギリスやアイルランド、ブルガリア、スイスなど、ヨーロッパを訪れた際に目にした農業景観にあります。ヨーロッパの農地には、畑や草地の境界にヘッジロー(生け垣林)が設けられており、日本の農村風景とは大きく異なる印象を受けました。農地の中に、周囲とは明瞭に異なる「緑の線」が連続している景観が、強く心に残りました。 一方で、日本の農地では、水田など広く開けた空間が人工湿地として機能しており、ヒバリやケリなど、見通しの良い環境を好む鳥たちが利用しています。こうした違いを実際に現地で見比べるなかで、「ヨーロッパで良いとされている農地での植栽が、日本の農地でも同じように良い結果をもたらすのだろうか」という疑問を抱くようになりました。とくに、共同研究者の出口翔大博士(福井市自然史博物館)と議論を重ねるなかで、ヘッジローや防風林のような線状の樹木構造は、林縁性の鳥類には居場所を提供する一方で、開放環境を必要とする鳥類にとっては、かえって生息しにくい環境をつくっているのではないか、という考えに至りました。この疑問が、本研究を進める原動力となりました。   本研究は、NPO法人河北潟湖沼研究所(河北潟研究奨励助成)、日本学術振興会(科研費・若手研究:21K17912)および広島大学スタートアップ経費による支援を受けて実施されました。   参考 Heath, S. K., C. U. Soykan, K. L. Velas, R. Kelsey, and S. M. Kross. 2017. A bustle in the hedgerow: Woody field margins boost on farm avian diversity and abundance in an intensive agricultural landscape. Biological Conservation 212:153-161.   Hinsley, S. A., and P. E. Bellamy. 2000. The influence of hedge structure, management and landscape context on the value of hedgerows to birds: a review. Journal of Environmental Management 60:33-49.   報道発表資料(648.85 KB) 掲載ジャーナル:Journal of Environmental Management 研究者ガイドブック(久野 真純 助教)   【お問い合わせ先】 大学院先進理工系科学研究科理工学融合プログラム(開発科学分野) 久野 真純助教 Tel:082-424-6905FAX:082-424-6904 E-mail:hisano*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 医療/ヘルスケア
    2026.02.04
    • 医療/ヘルスケア
    肝細胞癌の薬物療法にカテーテル治療を併用することで、 治療効果が高まる可能性を発見しました。

    本研究成果のポイント 手術不能な肝細胞癌に対する薬物療法として薬物療法(Atezo/Bev療法)※1に、カテーテル治療(TACE療法)※2を追加することで治療効果が高まる可能性があることを発見しました。   概要 広島大学病院消化器内科の研究チームは、広島大学病院と広島県内8施設で行われた肝細胞癌の治療398例を対象に、薬物治療とカテーテル治療を併用することに関して後ろ向きに解析※3を行いました。その結果、二つの治療法を併用すると、治療開始から亡くなるまでの期間及び治療開始から腫瘍が増大するか亡くなるまでの期間が長くなることがわかり、治療効果が高まる可能性を発見しました。 このことは、学術誌「Liver Cancer」に掲載されました。 また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。   発表論文 ■掲載誌:Liver Cancer(2025年12月) ■論文タイトル:Atezolizumab Plus Bevacizumab With Transcatheter Arterial Chemoembolization (Sandwich Strategy) versus Atezolizumab Plus Bevacizumab Alone in Hepatocellular Carcinoma: A Multicenter Retrospective Study ■DOI:10.1159/000549979 ■著者:Ko Hashimoto1, Tomokazu Kawaoka1*, Tomoaki Emori1, Aiko Tanaka1, Yuki Shirane1, Ryoichi Miura1, Yasutoshi Fujii1,2, Hikaru Nakahara3, Kenji Yamaoka1, Shinsuke Uchikawa1, Hatsue Fujino1, Atsushi Ono1, Eisuke Murakami1, Daiki Miki1, C. Nelson Hayes1, Akira Hiramatsu4, Kei Amioka5, Michihiro Nonaka6, Yasuyuki Aisaka6, Kei Morio7, Takashi Moriya7, Yuji Teraoka8, Hirotaka Kono8, Yosuke Suehiro9, Keiichi Masaki9, Kazuki Ohya10, Shintaro Takaki10, Nami Mori10, Keiji Tsuji10, Yumi Kosaka11, Takashi Nakahara11, Hiroshi Aikata11, Masataka Tsuge1, Shiro Oka1 1) Department of Gastroenterology, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University Hospital, Hiroshima 734-8551, Japan 2) Department of Clinical and Molecular Genetics, Genomic Medicine Center, Hiroshima University Hospital, Hiroshima 734-8551, Japan 3) Department of Clinical Oncology, Hiroshima University Hospital, Hiroshima 734-8551, Japan 4) Department of Gastroenterology, Hiroshima Memorial Hospital, Hiroshima, Japan 5) Department of Gastroenterology, NHO Higashihiroshima Medical Center, Hiroshima, Japan 6) Department of Gastroenterology, JA Hiroshima General Hospital, Hiroshima, Japan 7) Department of Gastroenterology, Chugoku Rosai Hospital, Hiroshima, Japan 8) Department of Gastroenterology, NHO Kure Medical Center and Chugoku Cancer Center, Hiroshima, Japan 9) Department of Gastroenterology, Hiroshima City North Medical Center Asa Citizens Hospital, Hiroshima, Japan 10) Department of Gastroenterology, Hiroshima Red Cross Hospital & Atomic-bomb Survivors Hospital, Hiroshima, Japan 11) Department of Gastroenterology, Hiroshima Prefectural Hospital, Hiroshima, Japan *責任著者   背景 肝細胞癌は、生活習慣病やウイルス性肝炎などを原因として発症する癌で、手術をして癌を切除することが根治的な治療法として知られています。一方、さまざまな理由で癌を切除することができないこともあり、このような場合、手術の代わりに薬物療法を行うことがあります。薬物療法では多くの場合「アテゾリズマブ」という免疫力を高める薬と、「ベバシズマブ」という癌への栄養供給を断つ薬を併用すること(以下、Atezo/Bev療法)が一般的ですが、Atezo/Bev療法で行う治療は、その効果は限定的なものとなっています。 また、肝細胞癌に対する局所的な治療法の一つとして、カテーテルを使い癌に直接抗がん剤を注入する方法「TACE療法」があります。 これらの二つの治療法を組み合わせた新しい治療法が、近年提唱されています。   研究成果の内容 今回の研究では、広島大学病院と広島県内8施設で行われた肝細胞癌の治療398例のうち、Atezo/Bev療法のみで治療を行った例と、Atezo/Bev療法とTACE療法を併用した例、それぞれ49例ずつを比較しました。その結果、併用群では、全生存期間※4(治療開始から亡くなるまでの期間)と無増悪生存期間※5(病気が悪化しない期間)が、Atezo/Bev療法単独での治療群よりも長くなることが分かりました。さらに、副作用の発生率にも大きな差はなく、肝臓の機能も悪化していませんでした。つまり、Atezo/Bev療法にTACE療法を追加しても安全性は保たれ、治療効果が高まる可能性があることが分かりました。   以下、具体的な研究成果です。 ・Atezo/Bev療法を開始した398例のうち、統計的なマッチングを行ったのちAtezo/Bev療法とTACE療法の併用群と、Atezo/Bev療法単独群をそれぞれ49例ずつ抽出しました。 ・TACE併用群と単独群のOSとPFSを比較すると、どちらも有意差をもってTACE併用群で延長する結果でした。 ・OSとPFSについて多変量解析※6を行い、それぞれに寄与する独立因子としてTACE療法併用の有無が抽出されました。 ・TACE療法実施の有無において、有害事象の有意な増加はみられませんでした。 ・TACE療法実施の前後において、肝予備能※7は保たれていました。   今後の展開 今回の研究では後方視的な解析のためすべてのバイアスを排除することは困難と思われます。現在、Atezo/Bev療法にTACE療法を併用することに関して多くの臨床研究が進行しており、その結果が待たれます。   用語解説 ※1. アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法(Atezo/Bev):免疫チェックポイント阻害薬※9のアテゾリズマブ(Atezo)と血管新生阻害剤※10のベバシズマブ(Bev)の併用療法は現在切除不能肝細胞癌の薬物療法における第一選択の一つとなっています。 ※2. TACE療法:肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization:TACE):足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、肝臓内の腫瘍を栄養する細い動脈までカテーテルを進め、そこで抗癌剤とともに塞栓物質を注入し腫瘍細胞を壊死させる方法。 ※3. 後ろ向きに解析:過去のデータを振り返って検討する研究方法。 ※4. 全生存期間(Overall Survival:OS):治療開始から亡くなるまでの期間を測る指標のこと。 ※5. 無増悪生存期間(Progression-Free Survival:PFS):治療開始から腫瘍が増大するか亡くなるまでの期間を測る指標のこと。 ※6. 多変量解析:複数の要因が同時に結果へどのくらい影響しているかを解析する方法。 ※7. 肝予備能:肝臓に必要な代謝・解毒・合成機能を維持できるかを示す指標のこと。Child-Pughスコアは肝硬変患者の重症度と予後を評価するために最も広く使われる評価法の一つ。 ※8. 独立因子:多変量解析の結果、他の要因とは無関係に独立して結果に影響を与えると判断された因子。 ※9. 癌細胞がリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除することで免疫細胞の力を回復させ癌治療を行う薬剤のこと。 ※10. 癌細胞が新しい血管を作って増加することを阻止する薬剤のこと。   参考資料 図1. Atezo/Bev TACE併用群とAtezo/Bev単独群の全生存期間と無増悪生存期間の比較 全生存期間(a)、無増悪生存期間(b)ともにAtezo/Bev TACE併用群において有意差をもって延長しました。 図2. OSとPFSに寄与する因子について多変量解析を行った結果 (a)OSに寄与する因子として単変量解析ではBCLC stage・脈管侵襲の有無・DCP(腫瘍マーカーの一つ)・TACEの有無が抽出され、多変量解析ではDCPとTACEの有無が独立因子※8として抽出されました。 (b)PFSに寄与する因子として単変量解析では治療ライン・TACEの有無が抽出され、多変量解析でもどちらも独立因子として抽出されました。 図3. Atezo/Bev TACE併用群におけるTACE前後の肝予備能の推移 ベースラインからTACE実施時までは肝予備能は軽度悪化していますが、TACE実施の前後ではChild-Pughスコアの悪化は認めませんでした。 このプロジェクトの一部は、日本学術振興会のJ-PEAKS※の支援を受けており、広島大学では今後も、本支援により臨床研究を推進していきます。   ※ J-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業): 地域の中核大学や研究の特定分野に強みを持つ大学が、その強みや特色のある研究力を核とした戦略的経営の下、 他大学との連携等を図りつつ、研究活動の国際展開や社会実装の加速等により研究力強化を図る環境整備を支援することにより、我が国全体の研究力の発展を牽引する研究大学群の形成を推進することを目的としています。   報道発表資料(479.95 KB) 掲載ジャーナル:Liver Cancer 広島大学大学院医系科学研究科消化器内科学   診療准教授河岡友和 Tel:082-257-5191FAX:082-257-5194 E-mail:kawaokatomo@hiroshima-u.ac.jp

    • 医療/ヘルスケア
    2026.02.02
    • 医療/ヘルスケア
    アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子「APOE4」をリスクの低い型「APOE3」に切り替えられるマウスモデルを作製。 ~ヒトへの応用、発症リスク低減に向けて~

    本研究成果のポイント アルツハイマー病最大の遺伝的リスク因子APOE4を、別の型APOE3に切り替える条件付きマウスモデルを開発・検証しました。 肝臓では遺伝子型の切り替えを実証しました。 一方で脳では十分な遺伝子発現がみられないことが判明しました。   概要 広島大学大学院医系科学研究科 石川 若芸 博士研究員を中心とする研究チームは、アルツハイマー病を発症するリスクが高まる遺伝子「APOE4」を、リスクの低い「APOE3」に切り替えることができるマウスモデルを開発しました。このマウスモデルで、実際に肝臓の「APOE4」を「APOE3」に切り替えることに成功した一方、脳ではこの遺伝子自体が発現しないということも判明しました。 本研究成果は、2025年12月にNeurobiology of Disease(Q1)に掲載されました。   発表論文 ■掲載誌: Neurobiology of Disease (2025 年 12 月) ■論文タイトル: A Novel Conditional Knock-In Mouse Model for APOE4-to-APOE3 Switching ■Ruoyi Ishikawa1,2(石川 若芸), Yu Yamazaki1*(山崎 雄), Nayuta Nakazawa1(中澤 那由多), Xin Li1(リ シン), Taku Tazuma1(田妻 卓), Yoshiko Takebayashi1(竹林 佳子), Masahiro Nakamori1(中森 正博), Yusuke Sotomaru3(外丸 祐介), Hirofumi Maruyama1(丸山 博文)   1.広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学 2.日本学術振興会特別研究員 3.広島大学自然科学研究支援開発センター *責任著者   背景 アルツハイマー病は、社会の高齢化とともに患者数が増加している認知症疾患です。その発症リスクに最も強く関与する遺伝子がAPOE(※1)であり、特にAPOE4を持つ人は、標準型であるAPOE3を持つ人に比べて、発症リスクが大幅に高くなることが知られています。 APOE4とAPOE3の違いはわずか1塩基であり、生体内でAPOE4をAPOE3へ切り替えることができれば、発症リスクそのものを低減できる可能性が考えられてきました。ヒトへの応用に先立ち、その有効性や危険性を、実験モデルを用い多面的に評価する必要がありますが、これまで「体の中で、任意のタイミングでAPOE遺伝子型を切り替える」ことを検証できる実験モデルは限られていました。   研究成果の内容 本研究では、体内でAPOE4からAPOE3に切り替えることができるマウスモデルの作製に成功しました。 まず、遺伝子工学の技術を用い、任意のタイミングでAPOE4からAPOE3に切り替えられる遺伝子をつくり、それをマウスの体内に取り込みました。 このマウスで遺伝子の切り替えを試したところ、肝臓ではAPOE4からAPOE3への切り替えが確認された一方、脳ではそもそもAPOEを作るためのタンパク質が減っていることが確認されました。   (以下、専門的な研究内容です。)   本研究では、Cre-loxP(FLEx)システム(※2)を用いて、APOE4からAPOE3へと不可逆的に切り替わる遺伝子設計を行い、まず培養細胞を用いた in vitro 実験で、本設計がCre依存的にAPOE4からAPOE3へ切り替わることを確認しました。 この検証結果を踏まえて、通常はAPOE4をマウスのApoeプロモーター制御下に発現し、特定のタイミングでAPOE3へと切り替わる条件付きノックインマウスモデルを新たに作製しました。このモデルを用いて生体内での遺伝子型切り替えを検証した結果、肝臓ではAPOE4からAPOE3への切り替えが明確に確認されました。   一方、脳ではAPOEタンパク質の発現が著しく低下していることが分かりました。さらに分子レベルで解析を行ったところ、脳ではイントロン3が除去されないイントロン保持型転写産物(※3)であるAPOE-I3が増加し、翻訳可能な成熟APOE mRNAが減少していることが明らかになりました。この原因として、遺伝子を切り替えるために導入した配列であるloxPが、遺伝子情報の正しい読み取り過程に影響を与えた可能性が考えられました。   今後の展開 今後、研究チームはloxP配列の配置を最適化するなど設計を改良することで、脳内でも安定した遺伝子発現と遺伝子型切り替えを可能にする次世代モデルの開発を進める予定です。   参考資料 用語解説 (※1)APOE 体内で脂質(コレステロールなど)を運ぶタンパク質を作る遺伝子です。脳の健康とも深く関係しており、アルツハイマー病の発症リスクに強く影響します。   (※2)Cre-loxP(FLEx)システム 遺伝子工学で使われる技術の一つで、DNAの一部を「切り取る」「向きを反転させる」といった操作を、狙ったタイミングで行うことができます。   (※3)イントロン保持型転写産物 本来は取り除かれるはずのイントロンが残ったままのmRNAです。この状態では、正常なタンパク質が作られにくくなります。本研究では、脳でこの型のAPOEのmRNAが増えていることが分かりました。   報道発表資料(1003.07 KB) 掲載ジャーナル:Neurobiology of Disease 研究者ガイドブック(山崎 雄 准教授)   広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学 博士研究員石川若芸 准教授 山崎雄 Tel:082-257-5201FAX:082-505-0490 E-mail:yuyamazaki@hiroshima-u.ac.jp

    • 医療/ヘルスケア
    2026.02.02
    • 医療/ヘルスケア
    進行肺がん患者の放射線肺炎予測精度を大幅に向上 ~SurvBETAモデルが多領域解析と複数のAI学習をつなぎ革新的な予測を実現~

    本研究成果のポイント 肺がん治療の副作用「放射性肺炎」のリスクを高精度に予測できる「SurvBETA」を開発しました。 本モデルにより、放射線肺炎リスクの早期予測が可能となり、個別化治療の選択を支援する強力なツールとして、臨床現場での利用が期待されます。   概要 広島大学病院放射線部の河原大輔准教授を中心とする研究チームは、肺がんの患者に対する放射線治療の後に発症する(放射性肺炎)のリスクを高精度で予測する新しいモデル「SurvBETA」を開発しました。 放射性肺炎は、放射線治療中に患者が経験する可能性がある重大な副作用で、発症すると治療方針の変更を余儀なくされることがあります。従来の予測方法では、臨床データや単一の画像から得られる情報に頼っており、リスク予測の精度には限界がありました。本研究では、患者のCT画像と放射線量情報から得られるさまざまな情報を抽出し、複数の機械学習アルゴリズムを用いて信頼性の高い予測を行うモデルを開発し、従来よりも高精度で放射性肺炎の発症リスクを予測できるようになりました。今後、より多くの施設での検証とデータの多様化を進め、放射線治療の個別化と最適化に向けた重要なツールとしての導入が期待されています。 本研究成果は、2025年12月発行の「Medical Physics」誌に掲載されました。   <発表論文> 論文タイトル Prediction of radiation pneumonitis after CRT in patients with advanced NSCLC using multi-region radiomics and attention-based ensemble learning   著書 Daisuke Kawaharaa,*, Nobuki Imanoa, Misato Kishia,b, Toshiki Fujiwarac, Tomoki Kimurac, Yuji Murakamia   a Department of Radiation Oncology, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University, Hiroshima 734-8551, Japan b Radiation Therapy Section, Department of Clinical Practice and Support, Hiroshima University Hospital, Hiroshima 734-8551, Japan cDepartment of Radiation Oncology Kochi Medical School, Kochi University, Kami, 783-0043, Japan.   掲載雑誌 Medical Physics   DOI番号 10.1002/mp.70140   背景 肺がんの治療において、放射線治療は効果的な方法の一つです。しかしこの治療では、がん細胞の周りの正常な細胞にも放射線が少し当たってしまい、放射性肺炎という肺炎を引き起こすことがあります。放射性肺炎はその重症度によりグレード1とグレード2に分けられますが、進行した肺がん患者がグレード2の放射性肺炎を発症した場合、患者の治療効果や生活の質に深刻な影響を与えるため、早期段階での予測が非常に重要です。従来、放射性肺炎の予測には主に臨床的な因子や線量に基づく手法が使われていましたが、これらの方法では予測精度に限界がありました。   研究成果の内容 本研究では、進行した肺がん患者における放射性肺炎のグレード2以上の発症リスクを高精度で予測する新しい予測モデル「SurvBETA」を開発しました。「SurvBETA」は、CT画像から得られる、腫瘍部位、肺組織、腫瘍周囲領域、放射線線量分布など、複数の解剖学的・線量ベースの領域から特徴を抽出し、それらを基に放射線肺炎のリスクを高精度で予測します。 「SurvBETA」は「アンサンブル学習」を利用しています。これは、複数の機械学習アルゴリズム(ランダムフォレスト、XGBoost、LightGBM、CatBoost)などに放射性肺炎発症リスクを予測させ、その予測結果を統合することで、より信頼性の高い予測を行う手法です。さらに、このモデルは、注意機構(Attention Mechanism)を組み込んでいます。これはCT画像や放射線の当たり方など、どの部分に着目すべきかをAIが自動で予測しすることで、患者ごとに異なる生物学的背景や放射線治療の影響を反映し、より正確なリスク評価を可能にするものです。この注意機構は、モデルが重要な特徴を動的に学習し、放射線肺炎発症のリスクが高い患者を正確に識別できるようにします。これにより、従来よりも高精度なリスク予測を実現しました。外部施設で行った検証結果では、C-index 0.83という優れた予測精度を達成し、これによりモデルの汎用性と実用性が確認されました。   今後の展開 本研究により開発された「SurvBETA」モデルは、NSCLC患者における放射性肺炎の予測精度を大幅に向上させました。今後は、このモデルをさらに多くの医療機関で検証し、実際の臨床現場における実用性と汎用性を確認していきます。「SurvBETA」モデルは、放射線治療計画の最適化にも活用でき、個別化治療の支援ツールとして、治療方針を患者ごとに最適化するための重要な指標となることが期待されます。 図1SurvBETAによる解析フロー図 表1予測モデルの比較とパフォーマンス。   報道発表資料(395.11 KB) 掲載ジャーナル:Medical Physics 研究者ガイドブック(河原 大輔 准教授)   病院放射線部准教授河原大輔 Tel:082-257-1545FAX:082-257-1546 E-mail:daika99@hiroshima-u.ac.jp

    • 医療/ヘルスケア
    2026.02.02
    • 医療/ヘルスケア
    放射線治療が短時間中断した場合の影響を補正する新技術を開発 ~3次元補償が可能な治療計画システム(BART)の開発~

    本研究成果のポイント がんの放射線治療において予期せぬ治療の中断にも対応できる治療計画構築システム(BART)を開発しました。 治療効果の低下を抑え、がん患者の治療におけるQOL向上につながります。   概要 広島大学病院放射線部の河原大輔准教授を中心とする研究チームは、肺がん患者に対する放射線治療において、短時間の治療中断による影響を補正する新たなBARTシステムを開発しました。放射線治療中に発生する予期しない中断(機器の故障や患者の体調不良など)は、がん細胞の回復を引き起こし、治療効果を低下させることがあります。本研究では、この短時間の治療中断に伴い減少する、治療に必要な放射線量を補償する技術を開発し、従来の治療計画システムに統合する方法を示しました。 この新しいアプローチは、臨床現場において即座に適用可能であり、放射線治療の精度を高めるだけでなく、患者の治療効果をより確実にする可能性を示唆しています。 本研究成果は、2025年4月発行の「Medical Physics」誌に掲載されました。   <発表論文> 論文タイトル Biological adaptive radiotherapy for short-time dose compensation in lung SBRT patients   著書 Daisuke Kawaharaa,*, Akito S Koganezawac,*, Takuya Wadaa,b, Yuji Murakamib a Department of Radiation Oncology, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University, Hiroshima 734-8551, Japan b Radiation Therapy Section, Department of Clinical Practice and Support, Hiroshima University Hospital, Hiroshima 734-8551, Japan cRobotics and Artificial Intelligence Course, Department of Integrated Science and Engineering, Faculty of Science and Engineering, Teikyo University, Tochigi 320-8551, Japan   掲載雑誌 Medical Physics   DOI番号 10.1002/mp.17820   背景 がんの放射線治療1回にかかる治療時間はおよそ10分~30分程度です。治療中、ごくたまに装置のトラブルや患者さんの体調変化が起こり、数10分~数時間程度治療を中断する場合があります。この中断の間にがん細胞が回復してしまい、治療の効果が低下することが知られています。これを防ぐためには、治療中断中にがん細胞がどれくらい回復するのか把握し、その回復量に応じて治療強度を高めることが必要になります。   研究成果の内容 本研究では、治療の中断に伴うがん細胞の回復量を数値で表すために、「微視的動力学モデル(MKM)」を採用し、治療を中断した日数に応じて必要な補償係数と追加線量を自動的に算出するシステム(BART)を開発しました。このシステムを用いて、肺がん患者を対象にした放射線治療において、治療の中断による影響を評価し、BARTシステムによる補償後、目標線量の低下を最小限に抑えることができることを確認しました。 また、このシステムをもちいた解析により、30分の治療中断で減少する放射線量は12.1%、120分の中断で19.0%までに達することが確認されました。補償後、BARTシステムは、放射線治療計画装置上での1度の最適化計算により、当初の計画と同等の治療効果を有する新たな治療計画を作成することができ、補償後の周囲のリスク臓器への線量は許容範囲内に収まることが確認されました。   今後の展開 本研究により、治療期間の延長による影響を生物学的に補償する新たな技術が確立されました。これにより、臨床現場で頻繁に発生する治療中断の問題に対して、生物学的根拠に基づく高精度な補償計画を迅速に提供することが可能になります。BARTは、がんの放射線治療における治療計画を生物学的に最適化する手段として実用性が高く、今後は他部位への応用や、生物学的な個人パラメータを推定する技術の開発を進める予定です。また、治療中断が複数回発生する場合にも対応できるよう、補償計算の精度向上を目指して研究を進めていきます。   用語解説 #1BD(Biological Dose:生物線量) 生物線量(BD)は、放射線治療における腫瘍や正常組織の反応を評価するための指標で、治療中断などによって生じる生物学的影響を補償するために計算されます。   #2MKM(Microdosimetric Kinetic Model:微視的動力学モデル) 微視的動力学モデル(MKM)は、放射線治療における生物学的影響を計算するためのモデルです。このモデルでは、放射線のエネルギー分布や細胞修復のダイナミクスを考慮し、治療中断によるBDの減少と補償線量の計算を行います。 図1治療中断で不足するBDを補償する新規BARTシステムの概要 表1中断時間による肉眼的腫瘍体積(GTV)および計画標的体積(PTV)の生物学的線量(BED)の変化。中断によってGTV、 PTVともに低下するがBARTにより同等に補償されている。   報道発表資料(391.76 KB) 掲載ジャーナル:Medical Physics 研究者ガイドブック(河原 大輔 准教授)   病院放射線部准教授河原大輔 Tel:082-257-1545FAX:082-257-1546 E-mail:daika99@hiroshima-u.ac.jp

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    2026.02.02
    • 医療/ヘルスケア
    がん放射線治療の「中断」が起きても治療効果を最大化 ~新規生物学的適応放射線治療(BART)の開発拡張~

    本研究成果のポイント 予期せぬ放射線治療の中断も考慮し、がんの治療計画を再構築するシステム「BART」の効果を拡張しました。   概要 広島大学大学院医系科学研究科和田拓也博士課程学生、広島大学病院放射線部河原大輔准教授、帝京大学理工学部総合理工学科小金澤明登准教授の研究グループは、放射線治療期間中に生じる中断による治療効果の低下を生物学的に補正する新しい技術を開発しました。 放射線治療では、治療期間の中断・延長によりがん細胞が再増殖し、治療効果が低下することが知られています。しかし、現行の放射線治療装置には、このような時間の経過までは考慮できません。 本研究では、mLQモデル(#2)を用いた補償計算に加え、複雑な3次元BED(#1)分布を扱うための独自アルゴリズムを開発し、BEDを予定されていた分布まで回復させるワークフローを構築しました。 本研究成果は、2025年10月欧州医学物理学会誌「European Journal of Medical Physics」に掲載されました。   <発表論文> 論文タイトル Compensated biological effective dose in extended radiotherapy course via a time-modified linear quadratic model for biological adaptive radiotherapy   著書 Takuya Wadaa、b、 Daisuke Kawaharab、*、 Akito S Koganezawac、*、 NobukiI manod、 Ikuno Nishibuchib、 Yuji Murakamib   aRadiation Therapy Section、 Department of Clinical Practice and Support、 Hiroshima University Hospital、 Hiroshima 734-8551、 Japan bDepartment of Radiation Oncology、 Graduate School of Biomedical and Health Sciences、 Hiroshima University、 Hiroshima 734-8551、 Japan cRobotics and Artificial Intelligence Course、 Department of Integrated Science and Engineering、 Faculty of Science and Engineering、 Teikyo University、 Tochigi 320-8551、 Japan dDepartment of Radiation Oncology、 Hiroshima University Hospital、 Hiroshima 734-8551、 Japan   掲載雑誌 European Journal of Medical Physics   DOI番号 10.1016/j.ejmp.2025.105202   背景 がんの放射線治療は、通常1カ月から2カ月にわたり、毎日少しずつ放射線を照射しますが、長期的な祝日や装置の故障、患者さんの体調不良により、治療を数日間中断せざるを得ない場合があり、その間にがん細胞が再増殖してしまい、治療効果(BED)が低下することが知られています。 臨床現場では、どれくらい放射線を照射するとがんに対しダメージを与えられるのかを「LQモデル」という計算方法で算出します。しかし、LQモデルには「時間の経過」の概念がないため、どれくらい中断するとどの程度BEDが低下するのか、低下したBEDに対しどれだけの線量を追加で照射すればもとにもどるのか把握することは難しく、正常組織を守りながら正確に補償することは困難でした。   研究成果の内容 LQモデルに時間の経過の概念を組み込んだ「mLQモデル」という計算方法が存在します。これはLQモデルの計算方法に加え、どれくらい中断するとどの程度BEDが低下するのかまで考慮することができます。本研究ではこのmLQモデルを使用し、中断日数に応じて必要な補償係数及び追加線量を部位ごとに自動算出するシステム「BART」を構築し、その効果を検証しました。 頭頸部がん81症例を対象に解析を行った結果、中断が生じた実際の治療期間ではBEDが4-10%低下することが示されました。そこに、本研究で開発したシステムを適応したところ、一度の計算だけで、当初の計画と同等の治療効果を持つ新たな治療計画を作成することが確認できました。また、補償後の周囲のリスク臓器への線量は許容値範囲内に収まることも確認されました。   今後の展開 本研究により、治療期間の延長という臨床現場で頻繁に起こる問題に対し、生物学的な根拠に基づいた高精度な補償計画を迅速に提供することが可能になります。これは、生物学的適応放射線治療の実践的な第一歩であり、今後は他部位への応用、生物学的な個人パラメータの推定などを進め実装を目指します。   用語解説 #1BED(Biological Effective Dose:生物学的実効線量) 放射線治療の効き目を示す生物学的な線量指標である。   #2時間修復LQ(mLQ)モデル 放射線治療期間の延長による腫瘍の再増殖を数理的に捉えるようLQモデルを拡張したもの。中断によるBED低下と補償線量の計算ができる。   #3SIB(Simultaneous Integrated Boost) 複数の標的に異なる線量を同時に照射する放射線治療の技術である。治療効率が高い一方で、BED補償計算は複雑になる。 図1治療中断で不足するBEDを新技術によって元の状態まで回復することを示した比較図。(a)元の理想的な線量、(b)数日中断した線量、(c)2週間中断した線量、(d)我々のシステムで補償した線量 表1治療中断が起きた場合、補償なしでは線量の評価指標が有意に低下するが、補償後は元の線量に回復するため評価指標の有意差が消滅する。中断無しの理想的な線量と補償後の線量が同等であることを示す。   報道発表資料(383.2 KB) 掲載ジャーナル:European Journal of Medical Physics 研究者ガイドブック(河原 大輔 准教授)   病院放射線部准教授河原大輔 Tel:082-257-1545FAX:082-257-1546 E-mail:daika99@hiroshima-u.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 食料/農林水産業
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2026.02.05
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    瀬戸内海のイカナゴが突然減った謎に迫る ―環境変動で捕食される危険性が高まったことが原因―

    本研究成果のポイント 瀬戸内海東部におけるイカナゴの漁獲量が2017年に急減した背景には、水温上昇、餌不足、捕食者の増加が重なって作用していたことを明らかにしました。 イカナゴを捕食する可能性のある魚食性の魚類14種は、2016年以降に個体数の多い状態が続いていました。 春から初夏に十分な餌をとれないと夏眠の開始が遅れ、捕食される危険性が高まることが示唆されました。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所の米田道夫主任研究員らの研究グループは、瀬戸内海東部において春季の主要な漁獲対象種であるイカナゴの漁獲量が2017年に急減し、その後も低水準が続いている要因を調査しました。その結果、水温の上昇と餌不足といった環境変動が重なったことで、2016年にイカナゴが捕食される危険性が急激に高まり、これが2017年の漁獲量の急減につながった主要因であることを明らかにしました。 本研究成果は、2026年1月2日に学術雑誌Marine Environmental Researchに掲載されました。また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けました。   〈論文発表〉 論文タイトル:Local environmental changes boost predation risk in forage fish: application to the sand lance in the eastern Seto Inland Sea   著者:谷口碧1、米田道夫2、西川哲也3、中村政裕2、森岡泰三2、冨山毅1* 1 広島大学大学院統合生命科学研究科; 2 国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所; 3兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター   *Corresponding author(責任著者) 掲載雑誌:Marine Environmental Research 215: 107827 DOI: 10.1016/j.marenvres.2025.107827   背景 イカナゴはイカナゴ科に属する小型魚で、瀬戸内海の東部、特に大阪府、兵庫県、香川県において重要な水産資源であり、3~4月にかけて漁獲される稚魚は「くぎ煮」の材料として広く親しまれてきました。瀬戸内海東部におけるイカナゴの漁獲量は、減少傾向にありながらも、2016年までは年間1万トン以上を維持してきました。しかし、2017年にイカナゴの漁獲量は前年の約1割まで急激に落ち込み、その後も回復せず、現在まで3千トン未満の低水準が続いています(図1)。これまで、この減少の背景として、「海がきれいになりすぎたこと(栄養塩濃度の低下)により、イカナゴの餌となる動物プランクトンが減少し、その結果、イカナゴの産卵量が低下した可能性」が指摘されてきました。しかし、餌環境の悪化や産卵量の減少は、通常は時間をかけて徐々に進行する現象であるため、イカナゴの漁獲量が2017年に突発的に大きく減少した理由は明確にはなっていませんでした。   研究成果の内容 本研究では、 (1) イカナゴを捕食する魚類の増減に着目した長期データ解析、 (2) 水温上昇と餌不足がイカナゴの行動に及ぼす影響を調べる飼育実験、 を行いました。   (1) イカナゴは冬に生まれ、春~初夏にかけて活発に餌を食べて栄養を蓄えた後、夏に砂に潜って冬まで眠る「夏眠」という習性を持っています。このため、夏眠に入る前までに十分な栄養を蓄えられるかどうかが、生き残りにとって重要です。そこで、1~7月における魚食性魚類14種(サワラ、ブリ、ハモ、スズキ、ヒラメなど)の漁獲情報を解析し、捕食者の分布状況の変化を調べました。その結果、2015年以前と2016年以降で状況は大きく異なり、2016年から捕食者が急激に増加していたことが明らかになりました(図2)。   (2) 餌が十分な条件と餌が不足した条件でそれぞれイカナゴを飼育し、行動の違いを比較しました。その結果、餌が不足したイカナゴでは夏眠の開始が遅れることがわかりました。この影響は、水温の上昇による影響よりも大きく、餌不足の状態では、夏眠までに栄養を蓄えるためにイカナゴは長時間活動し続ける必要があることが示されました。これは、捕食者と遭遇する機会、すなわち「捕食される危険性」が高まることを意味します。 以上から、瀬戸内海東部のイカナゴには、餌不足と水温上昇、さらに捕食者の増加が重なって作用していたことが明らかとなりました。特に、2016年に捕食者が急激に増えたことにより、その年に夏眠に入るイカナゴが大きく減少し、その結果、冬の産卵量が激減したと考えられます。このことが、2017年に稚魚が急激に減少した主な要因として説明されました。   今後の展開 イカナゴの資源量や漁獲量は全国的に減少しています。その要因は海域ごとに異なる可能性もあるため、それぞれに調べる必要があります。これまでの資源変動の研究では、水温や餌環境など、生き物の成長や繁殖に直接関与する要因(ボトムアップ効果)が主に注目されてきました。一方で、本研究では捕食者の増減が資源変動に関与する可能性(トップダウン効果)が示され、このアプローチによる新たな科学的な検証が可能となりました。トップダウン効果は野外で直接検証することが難しいものの、長期的な漁獲データ解析と飼育実験を組み合わせた統合的なアプローチによって、科学的な検証が可能となることを示した点に、本研究の意義があります。今後は、本研究の枠組みを他海域や他の魚種に適用し、急激な環境変化のもとで起こる資源変動の仕組みを解明していくことが重要です。   参考資料 図1 瀬戸内海におけるイカナゴの漁獲量 図2 魚食性魚類の分布密度(赤色が高く、青色が低いことを示す)   【プレスリリース】瀬戸内海のイカナゴが突然減った謎に迫る―環境変動で捕食される危険性が高まったことが原因―.pdf(351.29 KB) 掲載ジャーナル:Marine Environmental Research 研究者ガイドブック(冨山 毅 教授)   <研究に関すること> 広島大学大学院統合生命科学研究科教授冨山毅 Tel:082-424-7941 E-mail:tomiyama@hiroshima-u.ac.jp   国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所主任研究員米田道夫 Tel:0193-63-8121 E-mail:yoneda_michio55@fra.go.jp   <報道に関すること> 広島大学 広報室 TEL:082-424-4518 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   国立研究開発法人水産研究・教育機構経営企画部広報課 E-mail:Fra-pr@fra.go.jp

    • 食料/農林水産業
    2026.02.20
    • 食料/農林水産業
    結晶の形と長さを制御し「油」を強く固める新技術 ~ゲルの壊れにくさを最大約40倍向上、食品や化粧品など幅広い分野での応用に期待~

    本研究成果のポイント 食品への応用が期待されるオレオゲル(※1)について、結晶化の際に行う温度調整工程であるテンパリングの温度を調整し、結晶の「長さ」を制御することで、材料の硬さを示す貯蔵弾性率(※2)が大きく向上することを確認。 オレオゲルを構成する脂質ウィスカー結晶(※3)の「形状」を、不純物の取り込みによって制御することで、変形しにくさを示す機械的強度(臨界ひずみ)(※4)を最大約40倍に高められることを実証し、食品等のテクスチャ制御が可能になることを示した。 結晶の「長さ」と「形状」という2つの要素を制御する新たな手法により、従来技術に比べ、安定的なオレオゲルの作製が可能となり、植物性食品(プラントベースフード、以下PBF)(※5)の食感改良(植物性代替肉のジューシーさなど)に貢献 できるオレオゲル作製の基盤技術の確立に期待。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科 中野郁也 氏(修士課程1年)、小泉晴比古 准教授、上野 聡 教授、ミヨシ油脂株式会社 大石憲孝 博士、浜本一洋 氏、北海道大学低温科学研究所 木村勇気 教授、山﨑智也 准教授との共同研究により、オレオゲルを構成する脂質ウィスカー結晶の形態制御技術を確立しました。 世界的な人口増加に伴い食糧供給の安定化が求められる中、タンパク質供給源としてPBFが注目されています。しかし、その大きな課題は「ジューシーさ」の再現が難しい点が挙げられます。オレオゲルは、この課題を克服する強力な手段とされています。本研究では、オレオゲルのゲル化剤として食経験が豊富な油脂(トリアシルグリセロール)である高純度PSP(1,3-ジパルミトイル-2-ステアロイルグリセロール(※6)を使用しました。そして、オレオゲルの物性(硬さや機械的強度)が、脂質ウィスカー結晶の「長さ」と「形状」の制御によって決定されることを明らかにしました。具体的には、結晶化の際に行う温度調整工程(テンパリング)の温度が上がると、結晶の長さが増し、貯蔵弾性率が増加することを明らかにしました。さらに不純物を意図的に利用することで結晶の形状を蛇行状に変え、臨界ひずみ(機械的強度の指標)を最大で約40倍も向上させられることを示しました。 この成果は、オレオゲルのテクスチャを自在に制御できる新たな基盤技術を確立するものです。PBFやパン、菓子、調味料といった加工食品だけでなく、サプリメントや化粧品、さらには工業製品まで、オレオゲルのテクスチャ制御が重要となるさまざまな分野での応用が期待されます。 本研究の成果は、国際的な科学雑誌Food Research Internationalのオンライン版に2025年12月4日付で掲載されました。   背景 地球規模での人口増加により食料不足のリスクが高まる中、持続可能な食料供給源として、大豆などの植物由来原料を用いたPBFが注目を集めています。その中でも代替肉は、ハンバーガーやソーセージなどの形態で既に市場に出回っていますが、動物性脂肪が持つ「ジューシーさ」を再現することが難しく、消費者への普及を妨げる主要な課題となっています。オレオゲルは、液体油を多量に保持するネットワーク構造を形成することで、代替肉のジューシーさの再現に強い可能性を秘めています。しかし、従来のオレオゲルに使用されるゲル化剤(低分子有機ゲル化剤など)には、食品としての利用経験が乏しいものが多いという課題がありました。 研究グループはこれまで、食経験が豊富なトリアシルグリセロール(TAGs)に着目し、完全水素添加パーム中融点画分(FHHPMF)(※7)を用いれば、僅か0.5 wt%という少量の添加濃度でゲル化が起こること、また、透過型電子顕微鏡(TEM※8)を用いて、これが脂質ウィスカー結晶の形成に起因していることを明らかにしてきました。この脂質ウィスカーオレオゲルは、ネットワークの不安定化が起こりにくく、20℃で4ヶ月間油漏れがないという高い保存安定性を持つため、実際の食品応用への期待が高まっていました。   研究成果の内容 本研究では、高純度PSP(FHHPMFの主要成分)を用いて、オレオゲルの物性を制御するための鍵となる、脂質ウィスカー結晶の成長メカニズムを詳細に解明しました。オレオゲルの貯蔵弾性率(ゲルの硬さの指標)を測定したところ、テンパリング温度を30℃以上に高めることで貯蔵弾性率が大きく増加することが判明しました。これは、テンパリング温度の上昇によって脂質ウィスカー結晶の長さが増し(図1)、オレオゲル内部のネットワーク構造がより発達したためです。結晶の成長速度が増加した背景には、高温下で結晶表面が粗くなる「ラフニング転移」が起こり、分子の取り込みサイトが表面全体に増えたことが寄与していると考えられます。また、テンパリング温度を40℃まで上げると、蓄積ひずみが大幅に減少し、結晶子サイズが約240 nmに達することも確認されました。これにより、40℃でテンパリングしたオレオゲル中の脂質ウィスカー結晶のTEM観察では、長周期構造を持つ材料に特有の電子線回折パターンが観測され、結晶品質の著しい向上が示されました。また、高純度PSPから作製された脂質ウィスカー結晶は直線状であるのに対し、不純物を37.2%含むFHHPMFから作製された結晶は蛇行した(波打った)形状を示しました。この形状の違いがオレオゲルの機械的強度に及ぼす影響を調べたところ、蛇行状の結晶形態を持つFHHPMF由来のオレオゲルは、高純度PSP由来のオレオゲルと比較して、ゾル-ゲル転移が起こる臨界ひずみが0.54%から21.2%に増加し、約40倍も高い数値を示すことが判明しました。これは、不純物が結晶に取り込まれることで形状が制御され、より複雑なネットワーク構造が発達したためと考えられます。 これらの結果から、脂質ウィスカーオレオゲルの物理特性を完全に制御するためには、結晶の長さだけでなく、不純物を利用した結晶の形状(形態)の制御が極めて重要であることが示されました。   参考資料   今後の展開 本研究で確立した、脂質ウィスカー結晶の形態を制御することでオレオゲルの物性を自在に設計する技術は、PBFの食感やジューシーさの再現技術を大幅に進展させる可能性を秘めています。この油のゲル(オレオゲル)の硬さやテクスチャを自在に設計する基盤技術は、PBFのみならず、固体脂が使用される食品や化粧品、医薬品など、幅広い製品の安定性向上やテクスチャ設計に応用できることが期待されます。今後は、脂質ウィスカー結晶の形態変化を引き起こし、機械的強度を向上させる効果を持つ特定の不純物成分(トリアシルグリセロール成分)を特定し、さまざまな産業において必要とされるゲル化技術のさらなる最適化を目指します。   論文情報 タイトル:“Control of Physical Properties of Lipid Whisker Oleogels by Crystal Morphology Regulation” 著者名:Haruhiko Koizumi1※, Fumiya Nakano1, Noritaka Oishi2, Tomoya Yamazaki3, Yuki Kimura3, Kazuhiro Hamamoto2, Satoru Ueno1 著者所属:広島大学 大学院統合生命科学研究科1,ミヨシ油脂2,北海道大学 低温科学研究所3 責任著者※ 掲載誌:Food Research International 掲載日:2025年12月4日(木) DOI:10.1016/j.foodres.2025.117999   なお、本研究は、JSPS科研費 JP24K01362、及び、北海道大学 低温科学研究所共同研究 25G022の支援により行われました。また、広島大学から論文掲載料の助成を受けました。   用語解説 ※1オレオゲル 液体油を少量(0.5 wt%など)の固体成分(ゲル化剤)のネットワーク構造内に保持させ、固体状にしたもの。バターやラードなどの固体脂肪の代替として、食品のテクスチャ改善を目的として研究が進められている。   ※2貯蔵弾性率 粘弾性を持つ材料の変形に対する弾性(元に戻ろうとする力)の大きさを表す指標。食品の硬さやしっかりとしたテクスチャに関連する。   ※3脂質ウィスカー結晶 非常に細く長く、単結晶構造を持つ繊維状の脂質の結晶。単結晶で構成されるため、ネットワーク構造が不安定化しにくく、高い保存安定性を持つ。   ※4臨界ひずみ オレオゲルのネットワーク構造が破壊され、固体(ゲル)から液体(ゾル)へ転移する際のひずみの値。この値が大きいほど、そのオレオゲルは外部からの力に対して強く、機械的強度が高いことを示す。   ※5プラントベースフード(PBF) 植物由来原料を用いて作られた食品。肉や卵、ミルクなどの動物性食品を再現したものもある。健康志向や環境意識の高まりを受け注目を集めている。   ※61,3-ジパルミトイル-2-ステアロイルグリセロール(PSP) トリアシルグリセロール(TAGs)の一種であり、完全水素添加パーム中融点画分(FHHPMF)の主要な構成成分。   ※7FHHPMF(完全水素添加パーム中融点画分) パーム油の中融点画分(HPMF)を最大限に水素添加して固形化した油脂。   ※8透過型電子顕微鏡(TEM)観察 電子を使って物質を透かして観察する顕微鏡で、100万分の1ミリ単位の細かい構造まで見ることができる。   報道発表資料(373.41 KB) 掲載ジャーナル:Food Research International 研究者ガイドブック(小泉 晴比古 准教授)   <研究に関すること> 広島大学 大学院統合生命科学研究科 准教授小泉 晴比古 TEL:082-424-7935 E-mail:h-koizumi@hiroshima-u.ac.jp   ミヨシ油脂株式会社 戦略企画本部 技術研究部大石 憲孝 TEL:03-3602-8791 E-mail:ooishin@miyoshi-yushi.co.jp   北海道大学 低温科学研究所教授木村 勇気 TEL: 011-706-7666 E-mail:ykimura@lowtem.hokudai.ac.jp   <広報・報道に関すること> 広島大学 広報室 TEL:082-424-6762 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   ミヨシ油脂株式会社経営企画部コーポレート・コミュニケーション課 TEL:03-3603-1111 E-mail:info@miyoshi-yushi.co.jp   北海道大学社会共創部広報課 TEL:011-706-2610 E-mail:jp-press@general.hokudai.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2026.02.19
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    観賞用メダカがどこから来て多様な体の色や形を育んできたのか、 世界初の大規模ゲノムDNA解析によって明らかに ―関西・瀬戸内由来であることやヒトの不随意運動症との関連を発見―

    概要 広島大学大学院統合生命科学研究科の大森義裕教授および富原壮真助教、大学院生の藤居若菜さん、世羅美冬さん、基礎生物学研究所の成瀬清特任教授、ウィーン大学の今鉄男上級研究員、大学院生今琴さん、長浜バイオ大学の竹花佑介教授、大学院生湯瑞さん、伏木宗一郎さん、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授、野口英樹特任教授と共同で、世界で初めて観賞メダカ品種の大規模なゲノムDNA解析*を行いました。今回、これらの観賞メダカ品種が関西・瀬戸内地域の野生メダカに由来する可能性が明らかになりました。 さらに、さまざまな体色や体型の変化に関連するゲノムワイド関連解析*(GWAS)を実施し、変異の原因と考えられる遺伝子領域を特定しました。これらの中には、ヒレの長さを制御する遺伝子、眼球の突出を制御する遺伝子、そして銀色や黒色の体色を制御する遺伝子などが含まれます。その結果、メダカ品種に見られる26種類の体色や体型の変化を引き起こす遺伝子変異の候補が見つかり、体色や体型が多様に変化する仕組みを明らかにする研究へとつながることが期待されます。 特に、黒色のオロチ品種の変化はadcy5遺伝子*の変異によることが分かり、これはヒトの遺伝性運動疾患と同じ原因遺伝子でした。ゲノム編集技術によりadcy5遺伝子を破壊したメダカでは、体色がオロチ品種のように黒色に変化しました。この成果は、ヒトの遺伝性不随意運動症*の発症メカニズムの理解にも貢献しました。これらの結果は英国科学雑誌「Molecular Biology and Evolution(Q1)」に2026年1月31日にオンライン掲載されました。   (論文情報) タイトル:Genomic consequences of domestication and the diversification of body coloration and morphology in ornamental medaka strains 著 者:Tetsuo Kon, Rui Tang, Koto Kon-Nanjo, Soma Tomihara, Soichiro Fushiki, Wakana Fujii, Mifuyu Sera, Yusuke Takehana, Hideki Noguchi, Atsushi Toyoda, Kiyoshi Naruse, & Yoshihiro Omori Molecular Biology and Evolutionin press https://doi.org/10.1093/molbev/msag021   背景 観賞魚としてメダカの飼育が始まったのは江戸時代であり、ヒメダカやシロメダカなどの品種が確立され、日本人に親しまれてきました。近年では、さまざまな体色や体型をもつメダカが愛好家たちの手によって発見され、それらを交配することで数百種類に及ぶ品種が作り出され、市販されています。 体色の変異としては、銀色や真っ黒の品種、さらにはニシキゴイのような赤白の体色を持つ品種も見られます。また、体型の変異としては、ヒレの長さが異なるものや、眼球が突出しているもの、体が丸く短いものなど、キンギョや熱帯魚に似た多様な体型をもつ品種も見られます。これらの品種の全ゲノムDNA解析*を行うことにより、多様な観賞メダカの変化がどのような遺伝子変異によって引き起こされているのかを理解でき、魚の体色や体型の多様性を生み出す仕組みを解明できると考えられます。 さらに、魚類と同じ脊椎動物であるヒトの体がどのように形成されるのか、また病気がどのように発症するのかといった仕組みを明らかにする手がかりになる可能性も期待されます。   研究成果の内容 私たちは、世界で初めて観賞用メダカ品種の大規模な全ゲノムDNA解析を行いました。86品種181匹のメダカ個体の全ゲノム配列を解析し(図1)、まず、これらのメダカ品種が全国の野生メダカのうち、どの地域のものと遺伝的に近いのかを調べました。これまでに報告されてきたデータと私たちが解析した観賞メダカ品種のデータを比較したところ、大阪、広島、高松といった瀬戸内海に面した地域の野生メダカと遺伝的に近い関係にあることが分かりました(図2)。このことから、江戸時代に関西・瀬戸海地域で発見されたヒメダカなどの野生メダカを品種改良した系統が、全国で観賞メダカとして飼育され、現在の多様な品種ができあがったと考えられます。 このように、野生種が人に飼われるペットや家畜として適応していくことを「家畜化(domestication)」と呼びます。野生メダカから観賞メダカ品種が生まれる過程で「家畜化」に貢献したと考えられるいくつかの遺伝子領域も明らかになりました。体色の変化に関連するtyr遺伝子や脳の機能に関連するgabrr2b遺伝子などとの関連が示されました。 次に、メダカの体色や体型の特長を調べたところ、34種類の特長(例:ヒレが大きい、目が飛び出している等)があることがわかりました。このうち29種類の特長について、ゲノム情報との関係をコンピューターで解析しました(GWAS解析*)。この結果、26種類の特長に対して原因となる遺伝子が存在する可能性の高い染色体の位置が見つかり、3,328個の候補となる遺伝子を見出しました。例えば、ヒレが長くなるメダカ品種であるスワローやヒレナガの原因遺伝子が「染色体15番」に存在することがわかりました。また、目が飛び出したメダカ品種であるデメの変異が「bmp5」遺伝子に存在する可能性や、多色の鱗で美しいオーロラ品種に「kitlga」遺伝子の変異を発見しました。これらの情報は今後のメダカなどの魚類やヒトを含む脊椎動物の体をつくる仕組みの解明にヒントとなる貴重な情報となります。 今回の研究で最も大きな発見は、体色が真っ黒のメダカであるオロチ品種の原因となる変異を見つけたことです(図3)。解析の結果、オロチ品種では「adcy5」という遺伝子に異常があり、その変異が原因で色が黒くなることがわかりました。奇妙なことに、これまでの研究では「adcy5」遺伝子*の欠損は体色が薄くなることが知られており、私たちの研究成果とは逆の結果でした。このことをさらに詳しく調べてみると、タンパク質の構造の研究で「adcy5」のC1bドメインと呼ばれる部分が欠けると、「adcy5」の働きが逆に増強されるという報告があり、オロチ品種で「adcy5」の欠けている部分はまさにC1bドメインの一部だったのです。このことからオロチ品種で発見された「adcy5」遺伝子の変異により働きが増強され、体色が黒く変化したという仕組みが考えられます。実際に、ゲノム編集を行いメダカの「adcy5」からC1bドメインを欠損させてみたところ、そのメダカは体色が黒くなりました。 また、人間では「adcy5」の変異が不随意運動症*を引き起こすことが知られています。不随意運動症とは、自分の意志とは無関係に勝手に体が動いてしまう症状です。軽症なものでは顔や口が勝手にピクピクと動いたり、重度のものでは手足が勝手に動く舞踏症と呼ばれるものも含みます。今回の研究で「adcy5」のC1bドメインが欠けるとその働きが増強されることがわかりましたが、動物レベルでこのことを証明したのは私たちが初めてです。このように、メダカの遺伝子変異から、ヒトの遺伝性不随意運動症*の発症メカニズムの理解に貢献しました(図4)。   今後の展開 今回見つかった候補遺伝子から、さらに絞り込むことで、今回変異まで見出せなかったメダカ品種の特長を示す遺伝子の変異を見出すことに繋がると思われます。これらの遺伝子変異を見出すことで、魚類や人間も含む脊椎動物に共通した体の形や色を決める遺伝子の仕組みがわかってくると思われます。もちろん、新しく恰好のよいメダカ品種を作り出すことにも貢献するでしょう。一方で、不随意運動症をはじめとしたヒト遺伝性疾患の治療や予防にもつながる可能性があります。   用語解説 ゲノムDNA解析:ゲノムとはすべての遺伝子を指し、ヒトやメダカを含む脊椎動物では2万数千個程度の遺伝子が存在する。これらが数千万から数十億塩基対のDNAにコードされている。近代に次世代DNAシーケンサーと呼ばれる解析機が発明され、ゲノム研究が容易となった。   ゲノムワイド関連解析(GWAS):人間の遺伝に関連する遺伝子変異を調べる目的で開発された手法。数百人から数万人規模の患者と健常者から採血などを行い、ゲノムDNAを採取し、次世代DNAシーケンサーなどでゲノム配列を大量に解析する。コンピューターを使ってゲノム上にあるSNPと呼ばれる個性的な部分と病気か否かの情報を合わせることでその関連を見つける方法。この方法により、病気の原因遺伝子の染色体上の位置や原因となる遺伝子変異が発見できる。近年は、人間だけでなく動植物の研究にも広く用いられている。   adcy5(アデニル酸シクラーゼ5型):ATPからサイクリックAMPを生成する酵素でレセプターやGタンパク質を介したシグナル伝達を制御するタンパク質のひとつ。人間ではadcy5の変異は不随意運動症と関連することが報告されている。   不随意運動症:自分の意志とは無関係に体の一部が勝手に動いてしまう症状。顔の一部や、口や舌、手足や体軸などが意思によらず動く。複数の原因遺伝子が知られ、有名なハンチントン舞踏病もこの一種である。   図1:全ゲノム配列解析を行った86品種の観賞メダカの一部の写真(本論文より引用)   図2:観賞メダカは関西・瀬戸内地方に住む野生メダカが由来と考えられる(本論文より引用)   図3:野生型メダカと比較したオロチ品種の写真(最上段)。GWAS解析の結果、染色体21番のadcy5遺伝子の近くにピークが見られる(中段)。ゲノム編集によってメダカのadcy5遺伝子のエキソン8を欠損させると体色が黒化した(下段)(本論文より引用)   図4:adcy5のC1bドメインが機能する仕組みと、ヒト不随意運動症やメダカの体色黒化の関係。C1bドメインを欠損した黒色メダカのオロチ品種では、adcy5が2量体になりにくくシグナルが活性化することが予想される。   報道発表資料(935.5 KB) 掲載ジャーナル:Molecular Biology and Evolution 研究者ガイドブック( 大森 義裕 教授)   (研究に関するお問い合わせ先) 広島大学大学院統合生命科学研究科教授大森義裕 E-mail:omori4@hiroshima-u.ac.jp   (報道に関するお問い合わせ先) 広島大学広報室 TEL:082-424-4383 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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    • 気候変動/エネルギー/GX
    2021.02.15
    • 環境エネルギー
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    塗布型有機薄膜太陽電池の材料開発

    目標・狙い 塗布型有機薄膜太陽電池は、半導体ポリマーをプラスチック基板に塗って薄膜化することで作製できるため、①製造コスト・輸送コストが低い、➁軽量建造物にも設置が可能、③垂直面・曲面にも張ることが可能である、といった特徴がある。その特徴を生かし、IoTセンサー、モバイル・ウェアラブル電源や窓、ビニールハウス向け電源など、現在普及している無機太陽電池では実現が難しい分野への応用を切り開く次世代太陽電池として注目されている。 しかし、その実用化にはエネルギー変換効率の向上が最重要課題であり、そのためには新しい半導体ポリマーの開発が不可欠である。 本研究では、塗布型有機薄膜太陽電池の効率化に向けた新しい半導体ポリマーの開発を目指す。   想定される市場・製品・産業分野 エネルギー分野 IoTセンサー 自動車 モバイル・ウェアラブル電源 ビニールハウス 建材   概要 ポリマーの結晶状態と分子配向を制御することで電荷輸送性を向上させた。 現在16~17%程度の発電効率を実現。2024年には20%実現を目指す。   本研究の優位性 高効率かつ高耐久性の有機薄膜太陽電池を実現 ➢85℃で1000時間加熱しても性能劣化無し。   特許 特願2017-159899など   論文 Adv. Energy Mater.,2020, 10, 1903278 ACS Appl. Mater. Interfaces, 2018, 10, 32420. J. Am. Chem. Soc.2016, 138, 10265. Nat. Commun.2015, 6, 10085. Nat. Photon.2015, 9, 403.など   研究者からのメッセージ 有機薄膜太陽電池や有機半導体にご興味があれば、ぜひご連絡ください。   研究者 尾坂格(OSAKA ITARU) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

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    • 気候変動/エネルギー/GX
    2021.02.21
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    環境に優しい新規無機系構造色コーティング材

      目標・狙い 我々の暮らしを豊かにする様々なモノには多彩な着色がなされている。一般的にその着色に使われている塗料は有機色素を中心とした染料、あるいは無機顔料が用いられている。 しかし、有機染料は、熱や光エネルギーなどによって分解してしまうため、時間がたつと色褪せが起こり長期使用には耐えられない。また、無機顔料は、有機染料に比べて優れた耐候性を有している一方で、環境や人体に対し有害な元素を含むものが多いため毒性への懸念が高まっており、万能ではない。 また、今後、従来型の染料や顔料に含まれる物質への規制がますます強化されると考えられ、安全かつ退色しない色材の開発が急務となっている。 このような背景から、安全・サスティナブルな材料とプロセスで創る新規無機系色材の開発を目指す。   想定される市場・製品・産業分野 塗装が必要な製品を扱う企業   概要 アプローチ①アンモニアを用いない金属酸窒化物合成とその色材制御 金属産窒化物顔料は、毒性が懸念される重金属ではなく、チタンやタンタルなどの金属を用いることができるため、安心・安全な材料の一つとして注目されている。 しかし、その合成には毒性が非常に高いアンモニアガスを使うことが一般的であり、合成のスケールアップは容易ではなく、工業化の障壁となっている。 本アプローチでは、この従来のアンモニアガスを用いる手法に代わる安全な方法として、窒素源に尿素を用いる合成法を開発。尿素は毒性の懸念が低く、安価であることに加え、固体であるため、取り扱いが容易であり、汎用の電気炉での酸窒化物合成が可能となる。また、尿素の量を変えて酸窒化物中の酸素/窒素比を変化させることなどで、色度を調整することが可能である。 本研究の優位性 アンモニアの代わりに安全・安価な尿素を使用することで、汎用の電気炉での酸窒化物合成が可能 用いる尿素の量で酸窒化物の色調の制御が可能   アプローチ②電気泳動堆積法による構造色コーティング 構造発色性材料は染料や顔料とは全く異なるメカニズムで呈色するため、構造が壊れない限り、色褪せせず、汎用の安価かつ安全性の高い物質を用いて発色させることができる。 用いる材料は、主にガラスの主成分であるSiO2の球状粒子と炭素や四酸化三鉄などの黒色物質。粒子の集積構造で構造色が発現し、用いる粒子のサイズを変えることで容易に様々な色を生み出すことができる。 一方で、構造発色性材料のコーティング膜を形成する際、1)大面積や曲線の表面に均一なコーティングが困難であること、また2)耐久性が低い(すぐコーティングが落ちる)、といった問題があった。 これらの問題に対し、 1)自動車の塗装などに使われる電気泳動堆積法(図2)を用いる。この手法を用いることで、迅速に様々な基材にコーティング膜を形成することができる。また、フォークのような複雑な形状の表面にも均一にかつ簡単にコーティングすることができる(図3)。 2)電着法に工夫をし、粒子を泳動させて基材表面に堆積させるだけでなく、同時に接着剤の役割を果たす物質を電気化学的に析出させ、これで粒子同士や粒子と基材表面を接着させる方法を用いることで(図4)、その耐久性は飛躍的に改善。フォークにコーティングしたものを消しゴムに突き刺す試験でも、従来のものは膜が剥離し金属表面が露出してしまうのに対し、今回のものは剥離せず色を保つことができる。(図5)また、pHなどの電着条件を適切に調整することで、粒子の並び方を規則的な状態のものと、乱れた状態のものに作り分けることができます。つまり、オパールのように見る角度で色が変化するタイプのものと、見る角度で色が変わらないマットな印象のものに作り分けることができる(図6)。 本研究の優位性 粒子のサイズを変えるだけで様々な色を生み出せ、また、電着条件を適切に調整することで、構造色の角度依存性のありなしの作り分けが可能であるため、多様なカラーリングが実現できる。 複雑な形状の表面にも均一にかつ簡単にコーティングすることができる 耐久性の高い構造発色性材料のコーティングが可能である   論文 Inorg. Chem., DOI: 10.1021/acs.inorgchem.0c03758 (2021). ACS Appl. Mater. Interfaces, 12, 40768 (2020). Eur. J. Inorg. Chem., 2019, 1257 (2019). RSC Adv., 18, 10776 (2018). Inorg. Chem., 57, 13953 (2018). NPG Asia Mater., 9, e355 (2017). ほか   外部資金の獲得状況 科学研究費助成事業 基盤研究(B) (2020-2022). 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) (2019-2020) 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) (2018-2021) ほか   研究者からのメッセージ 構造発色性材料、複合アニオン化合物、有機-無機ハイブリッド材料などにご興味があれば、ぜひご連絡ください。   研究者 片桐清文(KATAGIRI KIYOFUMI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

    • 情報通信
    2024.04.23
    • 情報通信
    世界初のミックスドシグナルベースバンド復調回路による 20Gb/s QPSK無線伝送技術を開発

    研究成果のポイント ミックスドシグナル技術を用いて超高速情報伝送の実現と電力効率の改善へ 無線通信に用いられるベースバンド復調回路(注1)は通常、高速・高分解能ADC(注2)と大規模DSP(注3)で構成されています。従来の構成を用いて数+Gb/sを超える高速な通信を行う場合、ADCとDSPへの要求性能が高くなり電力効率が悪化します。 今回、ミックスドシグナル(注4)技術を用いて高速・低分解能ADCと小規模DSPからなる世界初のベースバンド復調回路を、ザインエレクトロニクス株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))、国立大学法人広島大学が共同で開発しました。これにより数+Gb/sを超える超高速通信を実現しながらも、電力効率が改善することで大幅な電力削減が見込まれます。   ベースバンド復調回路を搭載した受信用半導体で20Gb/s QPSK通信が可能に ベースバンド復調回路を搭載した受信用半導体とロジック回路を搭載したFPGA(注5)を開発し20Gb/s QPSK(注6) 変調された電気信号の受信を実現しました。FPGAに実装した機能は実用化の際にはベースバンド受信用半導体に統合します。   概要 ザインエレクトロニクス、NICT、広島大学は共同で、総務省研究開発プロジェクトの一環で、世界初のミックスドシグナル広帯域ベースバンド回路による毎秒20ギガビットの超高速情報伝送を実現しました。ザインエレクトロニクスは設計・測定全般を、広島大学大学院先進理工系科学研究科の藤島実教授らは設計・測定についての議論を、NICTは測定についての議論や測定補助をそれぞれ担当しました。 この半導体回路は、キャリア(注7)周波数をシンボル(注8)・キャリア周波数の整数倍にすることで回路を簡素化することができます。キャリア、タイミング(注9)とデータ復元機能を統合する独自の回路構成 (ミックスドシグナルコスタス・ループ) を用いることで超高速情報伝送を実現しました。高速・低解像度ADCは8相タイムインターリーブ(回路全体で出力を8倍速化)毎秒40ギガサンプルの3bit ADCを実装し、これにFPGAを用いてデータを復元することで実現しました。 本研究成果は、2024 IEEE Custom Integrated Circuits Conference (CICC、2024年4月21日~4月24日、米国コロラド州デンバー)で発表を行いました[1]。 図1. 新開発した世界初のミックスドシグナルベースバンド復調回路を搭載した受信用半導体   今後の展開 今回の研究成果により、ミックスドシグナル型アーキテクチャを通じて、より高性能でありながらも、エネルギー効率にも優れた回路実装への道を拓くものとなりました。   用語説明 (注1)ベースバンド復調回路: 変調されて無線送信されたベースバンド信号(デジタル信号)を、受信機側で元のベースバンド信号に復調する回路 (注2)ADC: アナログ・デジタル変換回路 (注3)DSP: デジタルシグナルプロセッサ (注4)ミックスドシグナル: アナログ信号とデジタル信号の両方を取り扱う回路 (注5)FPGA: Field Programmable Gate Array (注6)QPSK: Quaternary Phase Shift Keying (四位相偏移変調) であり、一度の変調で4値 (2ビット)を表現できる変調方式。 (注7)キャリア: 信号を送受信するために使用される電波 (注8)シンボル:情報を電波に載せる時の変調信号の単位 (注9)タイミング: データ生成に必要な時間情報のこと   総務省研究開発プロジェクトの背景 総務省では、新たな電波利用ニーズの拡大に対応するため、周波数のひっ迫状況を緩和し、電波の有効利用を目的とした電波資源拡大のための研究開発を行い、超大容量無線通信を実現可能とし、新たな周波数帯の利用を促進することにより電波資源の拡大に資することを目標としております。   本成果の一部は総務省電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)によるものです。 課題名:テラヘルツ波による超大容量無線LAN伝送技術の研究開発 課題イトランシーバ技術の研究開発   参考文献 [1] Shunichi Kubo1, Yuji Gendai1, Satoshi Miura1, Shinsuke Hara2,3, Satoru Tanoi2, Akifumi Kasamatsu2, Takeshi Yoshida3, Satoshi Tanaka3, Shuhei Amakawa3, Minoru Fujishima3, “A 20Gb/s QPSK Receiver with Mixed-Signal Carrier, Timing, and Data Recovery Using 3-bit ADCs ,” 2024 IEEE Custom Integrated Circuits Conference. 1THine Electronics, Inc., 2National Institute of Information and Communications Technology, 3Hiroshima University   報道発表資料(269.86 KB) 国際会議:2024 IEEE CICC 研究者ガイドブック(藤島 実 教授)   【報道関係者 お問い合わせ先】 ザインエレクトロニクス株式会社取締役総務部長山本武男 電話:03-5217-6660 E-mail:investors*thine.co.jp   国立研究開発法人情報通信研究機構 <研究に関すること> 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター研究センター長笠松章史 E-mail:kasa*nict.go.jp   <広報に関すること> 広報部 報道室 E-mail:publicity*nict.go.jp   国立大学法人広島大学 <研究に関すること> 大学院先進理工系科学研究科教授藤島実 電話:082-424-6269 E-mail:fuji*hiroshima-u.ac.jp <広報に関すること> 広報室電話:082-424-3749 E-Mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   (注: *は半角@に置き換えてください)

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