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    2016.04.01
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    災害復旧のための急速展開橋モバイルブリッジ®の研究開発

    アピールポイント インフラの早期復旧システム 新しい橋システムでの人手不足解消 安全なモジュール構造による仮橋の超迅速復旧 研究者のねらい 近年、集中豪雨や地震などの自然災害が多発しており、それに伴って道路や橋梁などのライフラインが崩壊する事例が急増している。我が国は災害が多発する国土であり、それに備えたツールが必要である。しかしながら、人手不足を背景に復旧工事の長期化、復旧コストの増加、作業安全性の低下など課題が多い。現場作業を極力減少し、施工安全性の確保と橋梁流出時のポスト災害に備えた、超迅速架橋を可能とする「架け橋」の実現のため、オリガミ研究から創業した「モバイルブリッジ™」によって安心できる社会インフラを研究開発している。   研究内容 シザーズ構造は宇宙構造・建築分野で活用される展開構造体の一種である。スマート構造を実現するための数理的構造設計で、迅速展開できる最適な構造物およびシザーズ展開の構造解析を研究中である。 シザーズ構造を活用し、仮設橋(モバイルブリッジ)を片持ち状態で折紙のように展開し、対岸の反力を得て負荷を減らす。また、性能に応じて補強弦材を取り付け、高強度化も研究中である。   特許 国際出願番号 PCT/JP2014/003252、特許番号 6068681「シザーズ式伸縮構造」   論文 Y. Chikahiro, I. Ario* et al., Experimental and numerical study of full-scale scissor type bridge, Automation in Construction, 71 (2016), pp.171–180, doi: 10.1016/j.autcon.2016.05.007 動画   研究者 有尾一郎(Ario Ichiro) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 助教

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    2011.04.01
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    希薄流および連続流解析へのCIP法の応用

    アピールポイント 高次精度手法 流体方程式の数値解析に適している計算手法 様々な双曲型方程式への適用も可能   研究者のねらい 非平衡希薄気体・中間流の振る舞いを調べる為には、巨視的な物理量に関する方程式(オイラー・ビエス‐トークス方程式)ではなく、速度分布関数の時間発展を扱うボルツマン方程式が必要となるが、複雑な多重積分を含む衝突項を含む為、衝突項の性質を保持したまま簡略化したBGK方程式が用いられる。CIP法は双曲型方程式の高次精度解法であり、かつソロバン格子を併用することで、CIP法の時間空間精度を保持した解適合格子の数値解析手法を構築できる。   研究内容 希薄流の様な平均自由行程が長い、マイクロチャネルの様な系の代表長さが小さい流れでは、クヌッセン数(Kn)が大きい流れを解く為に、BGK方程式を表空間・速度空間2次元(位相空間4次元)に拡張を行い、基礎的な例題等を用いた検証結果を、連続流に近い条件(Kn = 0.002)から希薄流(Kn = 0.05)で衝撃波の反射問題で示す。 実空間にCIP法に適した解適合ソロバン格子を用いることで、ディフューザーの様な内部流で生じる、小Kn数(連続流)での反射衝撃波面・接触不連続面の解像度向上、及び大Kn数(希薄流)で波面が鈍る様子も計算可能である。   論文: T. Yabe and Y. Ogata, A multidimensional approach to rarefied and transitional flows with the CIP method, International Journal of Numerical Methods in Fluids, Vol. 65, 191–206 (2011)   関連図書 矢部 孝,內海 隆行,尾形 陽一「CIP法」森北出版(2003) 矢部 孝,尾形 陽一,滝沢 研二「CIP法とJAVAによるCGシミュレーション」森北出版(2006)   研究者 尾形陽一(OGATA YOICHI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

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    2025.08.22
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    津波の高さと被害の大きさは一致していなかった 令和6年能登半島地震に伴う津波の詳細な分布、高さと被害との関係を解明

    本研究成果のポイント 空中写真の判読と現地調査を組み合わせ、令和6年能登半島地震に伴う津波の詳細な浸水範囲と津波の高さ、被害との関係を明らかにしました。 津波の浸水範囲の面積は3.7 km2でした。能登半島の東西沿岸では連続的に津波の浸水が生じ、半島北岸では部分的にしか認められませんでした。このような特徴は、既存の津波浸水想定の結果と調和的なものでした。 津波の高さは能登半島の西岸で高く、志賀町富来や輪島市黒島で標高8 m以上の地点で津波による漂着物を確認しました。20世紀以降に能登半島北部に到達した津波と比較すると、今回の津波は最大のものであったといえます。 津波による被害の分布は津波の高さとは異なり、半島における地形条件の地域的な差異と集落の立地条件、海岸構造物の有無によるものであることがわかりました。   概要 福岡教育大学の岩佐佳哉講師、広島大学の中田高名誉教授、熊原康博教授、中部大学の杉田暁准教授、千葉大学の濱侃助教、金沢大学の青木賢人准教授らの研究グループは、空中写真の判読と現地調査を組み合わせることで、令和6年能登半島地震に伴って発生した津波の詳細な分布と高さを明らかにしました。その結果、令和6年能登半島地震に伴う津波の被害は半島における地形条件の地域的な差異と集落の立地条件、海岸構造物の有無によることが明らかとなりました。 本研究成果は、2025年7月2日に国際的学術誌『Earth, Planets and Space』に掲載されました。   背景 2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震(マグニチュード7.6)では、海底の活断層が活動したことにより津波が発生し、北海道から長崎県までの日本海側で津波が到達しました。震源の近くに位置する能登半島では津波による大きな被害が発生しましたが、地殻変動による海岸の隆起により津波観測点が欠測となり、津波の高さがわかっていませんでした。   成果 国土地理院に提供いただいた高解像度空中写真の判読と現地調査を組み合わせて、津波の詳細な浸水範囲と津波の高さを調べました。その結果、浸水範囲の面積が3.7 km2であることが明らかになりました。能登半島の東西沿岸では連続的に津波の浸水が生じていた一方で、半島の北岸では部分的にしか認められませんでした(図1)。また、半島の西岸では志賀町から輪島市黒島にかけて連続的に津波による浸水が生じており、東岸では珠洲市から能登町白丸にかけての地域に津波の浸水が集中していました。特に、珠洲市鵜飼や能登町白丸では海岸から400–500 m内陸まで津波が到達し、家屋が流失する被害が生じました(図2)。このような特徴は、2012年に石川県が震源を特定して行った津波浸水想定の結果と調和的なものでした。本研究では論文とともに浸水範囲のGISデータを公表しました。GISソフトや国土地理院の地理院地図を用いることで、津波による浸水範囲を詳細に閲覧することができます。   津波の高さは能登半島の西岸で高く、志賀町富来や輪島市黒島で標高8 m以上の地点で津波による漂着物を確認しました(図3)。能登半島東岸では、珠洲市高屋や寺家、能登町白丸で標高5 mを超える地点に津波が到達していましたが、それ以外の地点では総じて標高4 mを超える地点にまでは津波が到達していませんでした。これは、震源断層の変位量や震源断層との位置関係によるものであると考えられます。また、20世紀以降に能登半島北部に到達した津波と比較すると、今回の津波は最大のものであったといえます。   津波による被害は主に能登半島の東岸で大きなものであり、西岸で高いという津波の高さの特徴とは異なっています。津波が高かった半島の西岸では、海岸から一段高い海成段丘の上に集落が立地していることに加え、地震時の地殻変動による隆起が生じたことで、津波が到達しなかったと考えられます。一方で、半島の東岸では集落が海に直接面した低地に立地していたことに加え、防波堤や防潮堤などの海岸構造物がほとんど存在しなかったことも被害を大きなものにした一因であると考えられます。   今後の展望 日本海沿岸地域では、海底活断層が陸域近傍に存在するため、地震発生から津波の到達までの時間が非常に短いことが従来から指摘されてきました。一方で、日本海沿岸地域における大規模な津波は、1993年に発生した日本海中部地震以来発生していませんでした。本研究の成果は、日本海沿岸地域における津波被害の特性を理解し、その軽減を図るうえで重要な知見を提示するものであると考えます。   本研究では、令和6年能登半島地震による津波浸水の範囲が、震源を特定した既存の津波浸水想定の結果と調和的なものであることを示しました。これにより、津波浸水に関するハザードマップの有用性が認知され、全国の沿岸地域にお住まいの方々の防災意識のさらなる涵養に寄与することを期待します。 図1. 津波浸水範囲と調査地点   図2. 珠洲市鵜飼と能登町白丸における津波被害の写真   図3. 津波の高さの分布   論文情報 タイトル:Distribution of tsunami inundation area and tsunami height associated with the 2024 Noto Peninsula earthquake, central Japan 著者:Yoshiya Iwasa*, Takashi Nakata, Yasuhiro Kumahara, Satoru Sugita, Akira Hama and Tatsuto Aoki(*は責任著者) 著者所属:岩佐佳哉(福岡教育大学教育学部)、中田高(広島大学名誉教授)熊原康博(広島大学大学院人間社会科学研究科)、杉田暁(中部大学中部高等学術研究所 国際GISセンター)、濱侃(千葉大学大学院園芸学研究院)、青木賢人(金沢大学人間社会研究域) 掲載誌:Earth, Planets and Space DOI:https://doi.org/10.1186/s40623-025-02202-z   謝辞 本研究では国土地理院から高解像度の空中写真を提供していただきました。また、本研究の遂行にはJSPS科研費(JP23K18735,JP24K07718)および中部大学問題複合体を対象とするデジタルアース共同利用・共同研究(IDEAS202406)を使用しました。   報道発表資料(2.3 MB) 掲載誌:Earth, Planets and Space 研究者ガイドブック(熊原 康博 教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 福岡教育大学教育学部 講師岩佐佳哉 TEL: 0940-35-1299Email: iwasa-y*fukuoka-edu.ac.jp   広島大学 名誉教授(元大学院人間社会科学研究科教授)中田高 Email: tnakata*hiroshima-u.ac.jp   広島大学大学院人間社会科学研究科 教授熊原康博 Email: kumakuma*hiroshima-u.ac.jp   中部大学中部高等学術研究所 国際GISセンター 准教授杉田暁 Email: satoru.sugita*fsc.chubu.ac.jp   千葉大学大学院園芸学研究院 助教濱侃 Email: a.hama*chiba-u.jp   金沢大学人間社会研究域 准教授青木賢人 Email: kentaoki*staff.kanazawa-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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    2025.03.18
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    高圧流体が引き起こすプレート境界断層の破壊 ―スロー地震発生メカニズム解明への新たな手がかり―

    研究のポイント スロー地震が発生するプレート境界の高温高圧環境を室内で再現し、高流体圧条件下で岩石中に「fault-fracture mesh構造」と呼ばれる多数の破壊面からなるネットワークが形成されることを発見。 プレート境界断層を構成していた蛇紋岩中に、実験で確認されたものと同じfault-fracture mesh構造が存在すること、さらに鉱物の析出により破壊による隙間が埋められていたことを確認。 蛇紋岩の破壊と鉱物析出の繰り返しがスロー地震の周期的な発生を説明することを世界で初めて地質学的に裏付け、スロー地震の発生メカニズム解明に向けた重要な手がかりを示した。   概要 沈み込み帯で発生する「スロー地震(注1)」は、通常の地震と異なり、数日から数ヶ月という長い時間をかけて断層が滑る現象です。こうしたスロー地震の発生には、従来の地震とは異なるメカニズムが関与していると考えられていますが、その詳細については明らかになっていませんでした。 静岡大学理学部の平内健一准教授、同大学大学院総合科学技術研究科の永田有里奈さん(研究当時)、広島大学大学院先進理工系科学研究科の岡崎啓史准教授(研究当時:海洋研究開発機構・研究員)らの研究グループは、西南日本の沈み込み帯で頻繁に観測されているスロー地震の一種「Episodic Tremor and Slip (ETS)」に注目し、その仕組みを明らかにするため、室内実験および野外調査による研究を実施しました。   研究グループは、ETSの発生が深さ約30 kmのプレート境界断層付近に存在する蛇紋岩(注2)と、そこに供給される高圧状態の流体と密接な関係があることに着目しました。実験では、圧力容器内にこの環境を再現し、蛇紋岩が高い流体圧を受けると、多数の破壊面がネットワーク状に広がる「fault-fracture mesh構造(注3)」を形成することを明らかにしました。また、四国の三波川帯に露出する蛇紋岩体の地質調査からも、実験と同じくfault-fracture mesh構造が繰り返し形成されていたことを確認しました。さらに、流体から新たに蛇紋石が析出し、破壊によりできた隙間を埋めていました。この現象は、「断層バルブ挙動(注4)」と呼ばれるもので、スロー地震の周期性を説明する重要な地質学的証拠となります。   本研究の成果は、ETSが蛇紋岩の断層バルブ挙動によって周期的に発生するという仮説を初めて実験的かつ地質学的に裏付けました。この成果により、スロー地震の発生メカニズム解明が進展し、将来的にスロー地震の予測向上や地震防災対策への活用が期待されます。   本研究成果は、Springer Nature社の発行する英国科学雑誌「Communications Earth & Environment」に2025年3月5日に掲載されました。 国立大学法人静岡大学ウェブサイトhttps://www.shizuoka.ac.jp/ ○広報・基金課〒422-8529静岡県静岡市駿河区大谷836TEL:054-238-5179FAX:054-238-4450   背景 図1.西南日本沈み込み帯の模式断面図.スロー地震の一種であるEpisodic Tremor & Slip (ETS)の発生前後でプレート境界断層付近の流体圧変化が起こる.LFE:低周波地震.SSE:スロースリップイベント. 沈み込み帯のプレート境界断層では、テクトニック微動、低周波地震、スロースリップイベントなど、異なる時間スケールでゆっくり発生するスロー地震が観測されています。西南日本の沈み込み帯では、Episodic Tremor and Slip (ETS)と呼ばれる、数ヶ月から数年の周期で微動とスロースリップイベントが同時に発生する現象が知られており、通常の地震が起きる領域のさらに深い場所で発生しています。この領域では、沈み込んだ海洋プレートから放出される大量の水(流体)がプレート境界断層に供給されることで、「高流体圧」という特異な環境が形成されていると考えられています(図1上段)。 近年の地球物理観測研究では、ETSが起きるときに断層が破壊されることで、流体圧が一時的に減少するという現象が捉えられました(図1下段)。地球物理学者は、この流体圧の変化を「断層バルブモデル」を用いて説明しています。このモデルでは、断層が破壊されて生じた隙間(亀裂)に新たな鉱物が析出することで、再び流体圧が上昇し、それが次の破壊(地震)を引き起こすという周期的なメカニズムを想定しています。 ETSが起きる領域は「蛇紋岩」と呼ばれる岩石で構成されていると考えられています。蛇紋岩はマントルを構成する「かんらん岩」が水と反応してできる岩石で、力学的に弱い性質をもっています。そのため、蛇紋岩とETSには何らかの関連性があると考えられてきましたが、高流体圧下で実際に蛇紋岩がどのように振る舞うのか、その具体的なメカニズムは明らかではありませんでした。そこで本研究では、ETS発生域の環境(圧力1 GPa、温度500 °C、深さ約30 kmに相当)を再現した実験を行い、蛇紋岩の破壊と鉱物析出を繰り返す現象が本当にETSの発生サイクルと関連しているのかどうかを検証しました。   成果 図2.蛇紋岩中に発達するfault-fracture mesh構造.(A)実験後の試料の電子顕微鏡写真.(B)四国三波川帯・富郷蛇紋岩体の露頭写真.(C)fault-fracture mesh構造形成時の応力場を表した図.σ1:最大主応力軸.σ3:最大主応力軸. 本実験では、グリッグス型固体圧式装置を使用し、蛇紋岩試料に水を加えて実際のプレート境界深部の環境を再現しました。また、加える水の量を系統的に変化させることで、流体圧を制御することに成功しました。その結果、流体圧が増加するにつれて、蛇紋岩の破壊様式が変化することを明らかにしました。特に、非常に高い流体圧条件では、岩石全体にわたって網目状の亀裂(fault-fracture mesh構造)が形成されました(図2A)。 また、四国の三波川帯に分布する白亜紀の地質体には、深部スロー地震発生域に相当する環境下で形成された「過去のプレート境界断層」が露出しています。この地域の蛇紋岩を対象とした地質調査からも、fault-fracture mesh構造が地質学的な時間スケールで繰り返し形成されていたことがわかりました(図2B)。さらに、亀裂には新たに蛇紋石が析出して隙間を埋めていました。このことは、断層が破壊と鉱物析出を繰り返してきたという証拠であり、「断層バルブ挙動」の地質学的な痕跡であると考えられます。 これらの研究成果は、ETSの周期的発生を説明する断層モデルと非常によく一致しています。つまり、亀裂が蛇紋石の析出によって閉じるまでの時間が次の破壊(スロー地震)が起きるまでの準備期間であること、亀裂が閉じるにつれて再び流体圧が高まり、次の破壊を引き起こすことが示唆されます(図3)。 図3.Episodic Tremor & Slip (ETS)の発生機構を表した模式図.(A)温かい沈み込み帯の断面図(上段)とプレート境界に沿った有効法線応力(σneff)変化(下段).(B)蛇紋岩からなるプレート境界断層帯に発達するfault-fracture mesh構造を表した図.図A中の黒四角の範囲に対応する.(C)ETSの発生サイクルに対応した剪断応力(τ)、透水率(K)、流体圧(Pf)の時間変化.(D)ETSの発生サイクルを通じて起こる蛇紋岩の破壊・鉱物析出プロセスを表した図.σ1:最大主応力軸.σ3:最大主応力軸.   今後の展開 本研究は、蛇紋岩が断層バルブの役割を果たすこと、深部スロー地震が繰り返し起こることを、実験と野外調査により初めて具体的に示唆したものと言えます。今後は、蛇紋石の析出速度についてより詳細な実験を行い、実際のETSの周期(数ヶ月から数年)を説明できるかを明確にする必要があります。また、この破壊現象がスロー地震特有の低周波成分が卓越する地震波を発生させるのかについても、実験的に検証していきます。これらの研究が進展することで、スロー地震がなぜ、どのようにして発生するのかというメカニズムの本質的な理解が深まり、地震防災や予測の精度向上にも貢献することが期待されます。   論文情報 掲載誌名:Communications Earth & Environment 論文題目:Fault–fracture mesh development produces tectonic tremor in fluid-overpressured serpentinized mantle wedge 著者:Ken-ichi Hirauchi, Yurina Nagata, & Keishi Okazaki DOI:10.1038/s43247-025-02159-7   謝辞 本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業である「基盤研究(B), 22H01320」、「学術変革領域研究(A) (公募研究), 22H05301」、「基盤研究(S), 22H04932」、「基盤研究(B), 18H01318」、「新学術領域研究(研究領域提案型), 19H04630」「基盤研究(A), 21H04528」、「挑戦的研究(開拓), 22K18283」の支援により実施されました。   用語解説 注1.スロー地震:低周波微動、低周波地震、スロースリップイベントなどに代表される、通常の地震に比べてゆっくりとした断層滑りの総称。   注2.蛇紋岩:上部マントルを構成するかんらん岩などの超苦鉄質岩が加水作用を受けて形成される岩石。主に蛇紋石から構成される。   注3.fault-fracture mesh構造:引張(モードI型)破壊と引張・剪断(モードI-II型)破壊が多数発生することで形成される網目状の亀裂構造。流体圧が岩石の静岩圧を超える高流体圧環境下で形成されると考えられている。   注4.断層バルブ挙動:流体が断層に沿って移動していく際、鉱物の析出などにより断層面上の隙間が閉じて(断層がシールされて)局所的に流体圧が上昇し、断層の実効的な強度が低下することで発生する滑り。   報道発表資料(1.32 MB) 掲載誌:Communications Earth & Environment 研究者ガイドブック(岡崎 啓史 准教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 静岡大学理学部地球科学科 准教授・平内 健一 (ひらうち けんいち) TEL : 054-238-4735 E-mail : hirauchi.kenichi*shizuoka.ac.jp   広島大学大学院先進理工系科学研究科 海洋研究開発機構高知コア研究所招聘主任研究員 准教授・岡崎 啓史 (おかざき けいし) TEL : 082-424-7462 E-mail : keishiokazaki*hiroshima-u.ac.jp   <報道に関すること> 静岡大学 広報・基金課 TEL : 054-238-5179 E-mail : koho_all*adb.shizuoka.ac.jp   広島大学 広報室 TEL : 082-424-3749 E-mail : koho*office.hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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    2023.04.04
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    野良猫用公衆トイレの設置効果の検証

    本研究の優位性 野良猫の糞尿被害を、忌避剤と公衆トイレを併用して軽減可能であることを立証 猫の糞尿被害を通して、ヒトと動物の共生についての課題点を顕在化     研究内容 背景 猫の糞尿には人獣共通感染症の寄生虫やバクテリア、ウイルスを含んでいる可能性があり、糞尿被害による自治体への苦情は多いが、糞尿汚染に関する研究報告は少ない。環境省は野良猫用トイレの設置を推奨しているが、その効果は検証されていない。そこで、約200頭の野良猫が生息している『猫の街』尾道市において、糞尿被害に悩まされている寺院に開発中の忌避剤*と猫用公衆トイレを設置して、糞を対象に猫用トイレの効果を検証した。 *忌避剤は本研究終了後に一般発売された。     研究の概要 植物プランターを利用したトイレに雨よけの屋根を付けたものを6台作成して、市販の猫砂を敷き詰め、境内及び墓地の異なる地点に6箇所設置した。同時に、トイレへの排泄を確認するための赤外線センサーカメラを4台、事前調査で判明していた5カ所の排泄地点へ忌避剤を設置した。 週に一度、カメラのバッテリー及びデータ回収の際にトイレと境内を清掃し、糞を採集して重量を計測した。   寺院に居ついている17頭の野良猫のうち、個体識別ができた3頭(猫A、B、C)について、トイレ設置前後の糞重量を比較した結果、忌避剤活用によるトイレの設置は、糞の減少に効果的であった。 野良猫はトイレトレーニングを行っていないが、トイレを設置した週から3頭ともトイレを利用していた。トイレでの排泄回数は14週間で、Aが81.3%、Bが88.6%、Cが100%と頻繁に出没する猫ほど使用頻度が高かった。また、対象区として設定した2つの公園と1つの神社の合計8地点では、糞重量は減少しなかった。   猫のトイレの利用を増やすためには、生息する頭数+1台のトイレの設置が必要であり、トイレの大きさや清掃頻度、敷材等をさらに検証する余地がある。   猫用公衆トイレを設置すると野良猫の糞尿被害の減少に効果的だが、設置後も清掃や点検といった人の手が必要となる。猫の行動圏は観光客や地域住民による餌付けに影響を受けるので、給餌だけでなくトイレ管理や糞尿の清掃を行うことで地域トラブルの減少へ繋がる。     期待される効果 野良猫の糞尿被害発生地域における猫用公衆トイレの設置促進 猫用公衆トイレ設置による地域トラブルの減少     企業・自治体への期待 猫用公衆トイレに最適な素材(猫砂・屋根・容器等)の開発に興味のある企業との共同研究 野良猫に関わる課題解決にむけて調査・検証を行いたい企業または自治体との連携 地域猫活動の推進や課題解決に取り組んでいる自治体との連携     論文 Seo,A. & Tanida, H.,The effect of communal litter box provision on the defecation behavior of free-roaming cats in old-town Onomichi, Japan,Applied Animal Behaviour Science 224 (2020) 104938. 妹尾あいら・谷田創. 酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体にシトラールを添加したネコ用忌避剤の効果,ペストロジー 32(1) (2017) 1-6. 妹尾あいら・谷田創. 自由徘徊ネコに対する酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体の忌避効果の検証, ヒトと動物の関係学会誌 44 (2016) 42-48.     研究者からのメッセージ 野良猫とヒトの福祉向上と共生社会を目指し、広島県内のさまざまな地域でフィールドワークに取り組んでいます。 地域住民の声を直接聞き、自治体等とも協力することで、成果を地域に還元できる研究を行っています。   研究者 妹尾あいら(SEO AIRA) 広島大学 酪農エコシステム技術開発センター 助教

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