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研究成果紹介

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    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • バイオエコノミー
    2025.12.12
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • バイオエコノミー
    外来遺伝子を残さない安全なゲノム編集を藻類で実現! ―藻類バイオ燃料の実用化に向け、新しい遺伝子編集方法を開発―

    本研究成果のポイント バイオディーゼルなどの燃料生産が期待される微細藻類“ナンノクロロプシス*1”において、遺伝子を安全に改変できるよう「塩基編集*2システム」を搭載した脱落可能なDNAベクターを開発しました。 この塩基編集システムは、DNA二本鎖切断(DNA Double-strand Breaks, DSBs)*3を導入しない安全な遺伝子改変システムであるため、外来遺伝子を残さず(外来遺伝子フリー*4)、必要な変異だけを導入できる安全な方法です。この技術を使うことで、遺伝子改変後も外来遺伝子を含まないナンノクロロプシスを構築することが可能になりました。 脱落可能なベクターにより樹立できる外来遺伝子の残らないゲノム編集生物はカルタヘナ法*5の定める遺伝子組換え生物には該当しないため、屋外培養などの幅広い用途への応用が期待できます。     概要 広島大学ゲノム編集イノベーションセンターの諸井桂之研究員、山本卓教授および栗田朋和特任准教授は、非常に多くの油脂を蓄積する微細藻類、ナンノクロロプシスにおいて脱落可能な塩基編集ベクターを開発しました。この技術により変異導入時にDSBsを介さずに外来遺伝子を含まないナンノクロロプシスのゲノム編集株を樹立する手法を確立しました。 本研究成果は令和7年11月27日に英国Nature research社の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。 論文情報 掲載雑誌:Scientific Reports 論文題目:“Double-strand break-free and transgene-free genome editing in the microalga Nannochloropsis oceanica using removable vectors containing the CRISPR base editing system” 著者: Keishi Moroi, Yamamoto, Tomokazu Kurita* 広島大学ゲノム編集イノベーションセンター *:責任著者 DOI: 10.1038/s41598-025-26657-y 背景 微細藻類は細胞内に多量の油脂や有用物質を蓄積させるため、バイオディーゼルなどの生産が期待されていますが、生産コストなどの面で課題があるため、多くの研究者が微細藻類の分子育種を進めています。現在までに非常に効率の良いゲノム編集ツールが微細藻類で使用されて多くのゲノム編集藻類が構築されましたが、それらはDNA二本鎖切断(DSBs)を導入してから藻類細胞のDSB修復機構依存的に変異を導入していました。一方でこのようなDNAの二本鎖切断が稀に大規模なゲノムDNAの削除や染色体間での組換えなど宿主細胞に有毒で不都合な改変も起こっていました。 研究成果の内容 本研究ではナンノクロロプシスにおいてCEN/ARS*6を含む脱落可能ベクターに塩基編集用の発現カセットを搭載して、図のように塩基置換後に脱落可能なベクターを構築しました。この塩基編集ベクターによりナンノクロロプシスの内在性の5種の遺伝子における6つの標的サイトにおいて塩基置換の導入に成功しました。塩基置換効率は29.2%から47.6%で、塩基置換後のベクターの脱落にも成功しました。 今後の展開 本研究により確立したDSBフリー且つ、外来遺伝子が残らないゲノム編集法を用いて屋外培養可能、かつ油脂蓄積効率の高い“高機能藻類”の樹立が期待されます。DSBフリーのゲノム編集システムは複数箇所同時改変でも標的サイト間での大規模な遺伝子の脱落や染色体間での組換えといった不都合な改変が起こり難く、また脱落可能ベクターはマーカーの再利用が可能になるため、本システムは、細胞内の多数の遺伝子を改変する際に非常に有効であると考えられます。本研究で確立した外来遺伝子フリー塩基編集システムは藻類バイオディーゼル*7の実用化に必須の基盤技術と考えられます。 用語解説 *1ナンノクロロプシス 直径 2〜5μmほどの小さな海の植物プランクトンです。培養環境に応じてバイオディーゼルに変換できる油脂を大量に蓄積すること、オメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)を豊富に含有することなど多くの特長を持つことから、さまざまな分野で活用されています。 *2塩基編集 Clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR)–CRISPR-associated protein 9 (Cas9)には2つのヌクレアーゼドメインがあり、標的部位にDNA二本鎖切断を導入します。このヌクレアーゼの片方を失活したnCas9はDNAの2本鎖の片方のみを切断する酵素でCas9ニッカーゼと言います。このnCas9に塩基の脱アミノ化を行うデアミナーゼを融合して、標的部位の塩基を別の塩基に置換するのが塩基編集です。本研究では、nCas9にヤツメウナギのデアミナーゼであるPmCDA1とウラシルDNAグリコシレーション阻害タンパク質を結合した融合タンパク質を使用しています。PmCDA1は標的配列のシトシンのアミノ基を脱離させてウラシルに置換します。ウラシルはチミンと同様にアデニンと塩基対を形成するため、最終的にシトシンをチミンに変換できます。このような塩基編集システムをシトシンベースエディター(cytosine base editors, CBE)と言います。ウラシルDNAグリコシレーション阻害タンパク質はPmCDA1により変換されたウラシルが細胞内の塩基除去修復機構により取り除かれ、別の塩基に変換されるのを防ぐ役割があります。 *3DNA二本鎖切断(DNA Double-strand Breaks, DSBs) 生命の設計図であるゲノムDNAは二本のDNA鎖が二重螺旋構造を形成していますが、この二本の鎖の両方を切断するのがDSBsです。DSBsが導入されると細胞内のDSB修復系が機能し基本的には元通り修復されます。しかし一定の割合で修復システムのエラーによりゲノムDNAに変異が導入されます。この現象を利用してDSBsを介したゲノム編集ツールは特定部位に結合してDSBsを導入、標的遺伝子に変異を導入しますが、この時に稀に標的以外の遺伝子を含む大規模な遺伝子の削除や、染色体間での置換など、宿主細胞にとって有害で不都合な反応が起こることがあります。このような反応は特に特にゲノムDNAの複数の場所でDSBsを同時に導入した場合に起こることがあるため、複数の遺伝子を同時に改変する場合には特にDSBフリーのシステムが重要になります。 *4外来遺伝子フリーシステム 異種生物由来や合成された配列など、外来のDNA配列を含む生物を遺伝子組換え生物(Gene Modified Organisms, GMOs)と言います。GMOsはカルタヘナ法に基づく生物学的封じ込めの規定があるため、屋外培養などには非常に強い使用制限があります。CEN/ARSを持つベクターは細胞内でゲノムDNAの外で維持されるエピソーマルベクターとして振舞い、抗生物質による選択圧が無い培養条件では自然に脱落します。このように最終的に外来遺伝子が残らないシステムを外来遺伝子フリーシステムと言います。 *5カルタヘナ法 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律。日本国内において、遺伝子組換え生物の使用等について規制をし、生物多様性条約カルタヘナ議定書を適切に運用するための法律で、遺伝子組換え生物が生物多様性へ影響を及ぼさないかどうか事前に審査することや、適切な使用方法について定められています。 *6CEN/ARS 出芽酵母の染色体の安定性に関わる配列であり、CEN/ARSはCentromere and autonomous replication sequenceの略で、出芽酵母の汎用low copyベクターに使用されています。最近このCEN/ARSを持つベクターが珪藻やナンノクロロプシスにおいても細胞内でゲノムDNAの外でエピソーマルベクターとして安定に維持されることが報告されていました。 *7藻類バイオディーゼル 微細藻類は環境ストレスなどに応じて細胞内に多量の油脂を蓄積します。この油脂に含まれる脂肪酸を脂肪酸メチルエステルに変換して使用する燃料です。藻類による油脂の生産は光合成によりCO2を吸収するため、大気中のCO2を増加させない次世代の再生可能エネルギーとして期待されています。   報道発表資料(733.68 KB) 掲載ジャーナル:Scientific Reports 研究者ガイドブック(栗田 朋和 特任准教授)   【お問い合わせ先】 広島大学ゲノム編集イノベーションセンター 特任准教授 栗田 朋和 Tel:082-424-4008 E-mail:kuri616*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    2025.09.04
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    太陽光発電の『価値分離』を通じたCO2フリー水素の低コスト化検討

    アピールポイント 化石燃料の代替として期待されるグリーン水素の製造コストを低減 太陽光発電と蓄電池、系統接続の組合せでエネルギーマネジメントを効率化 再エネ導入による電力系統への負荷を低減、太陽光発電の主力電源化にも有効   研究者のねらい 化石燃料からの燃料転換やカーボンリサイクルの原料として期待されるグリーン水素は、現状、再エネを利用した水電解法で製造されるが、製造コストの高さが課題である。本研究では、太陽光パネルによる発電を「高価値電力(安定かつ予測可能)」と「低価値電力(変動が大きく予測困難)」に分離し、前者を系統に売電、後者を水素製造に回し、さらに蓄電池活用による電解装置の容量低下および利用率向上を通じてグリーン水素の製造コスト低減モデルを提示する。なお、このモデルは、再エネ導入による電力系統への負荷を減らし、過大な投資を行うことなく太陽光発電の出力制限を緩和し、主力電源化も実現できる。   研究内容 1, 水素製造コストと電解装置の利用率との関係   2,『高価値電力』 と『低価値電力』 の分離および蓄電池による『低価値電力』 の平準化   3,水素製造シミュレーション 【前提条件】 (1)エネルギーマネジメント ①カットオフ以下は高価値電力として売電 ②カットオフ以上の電力がある場合、電解装置に優先的に供給、電解装置の容量以上の電力を蓄電池に入れ充電 ③電解装置がフル稼働できない場合には蓄電池から給電 (2)CAPEX容量 PV 1kW/EC 0.083kW/Battery 1.981kWh (3)電力価格とCAPEXコスト・耐用年数 高価値電力 \12/kWh/低価値電力 \7/kWh EC \50000/kW・10年Battery \10000/kWh・20年   関連情報 【論文】Egusa H, Ichikawa T: Value Division of Photovoltaic Power for Economically Reasonable Green Hydrogen Production. International Journal of Hydrogen Energy, 111: 385-392, 2025 【知財】なし   研究者 江種浩文(EGUSA HIROHUMI) 広島大学 A-ESG科学技術研究センター 客員准教授 市川貴之(Ichikawa Takayuki) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授   本研究シーズは、2025年9月フェニックスセミナーにて発表しました。

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    2025.12.15
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    トドの赤ちゃんが動作とサインのつながりを学習し、見分けられることが世界で初めて明らかに!

    本研究成果のポイント トドは0歳の仔獣期から、成獣と同じように動作とサインのつながりを学習し、弁別できる能⼒をもつことが、世界で初めて明らかになりました。   概要 城崎マリンワールドで生まれたトドのカナタは⽣後半年までに9種類の動作とそれに対応するサインを学習し、トレーナーの性別や親密度(接した時間)によらず⾼い精度でサインを識別することができました。 ハンドサインとボイスサインを同時に与えた場合、およびハンドサインのみを与えた場合の正解率は、9種類の動作全てで基準となる正解率を上回りました。 ボイスサインだけを与えた場合の正解率は、3種類の動作を除き基準となる正解率を下回りました。 本研究は、城崎マリンワールドの佐々木雅大氏、広島大学大学院人間社会科学研究科の神原利宗准教授らが執筆したもので、10月8日に「International Journal of Comparative Psychology」に掲載されました。城崎マリンワールドのトドの研究に関する国際論文では4本目、城崎マリンワールドで生まれたトドの「カナタ」に関する研究では初めてとなります。   研究成果の内容 トドは0歳の仔獣期から、成獣と同じように動作とサインのつながりを学習し、弁別できる能力をもつことが、世界で初めて明らかになりました。 トドの「カナタ」は生後半年までに9種類の動作とそれに対応するサインを学習し、トレーナーの性別や親密度(接した時間)によらず高い精度でサインを識別することができました。 ハンドサインとボイスサインを同時に与えた場合、およびハンドサインのみを与えた場合の正解率は、9種類の動作全てで基準となる正解率を上回りました。 ボイスサインだけを与えた場合の正解率は、3種類の動作を除き基準となる正解率を下回りました。   研究の背景 トドをはじめとするアシカの仲間は、長い授乳期間をもち、赤ちゃんのころにトレーナーが介入してトレーニングを行うことが難しい特徴があります。そのため、赤ちゃんのトドの学習能力については、野生下での観察を除いて知られていませんでした。 城崎マリンワールドで生まれたトドの「カナタ」は、母親が母乳で育てることが困難であったため、飼育員による人工哺育で育てられました。授乳期からトレーニングを行える特殊な環境から、貴重なデータを得られる可能性がありました。 本研究はこれまで前例がなかった、赤ちゃんのトドの学習能力について調べたものです。   研究方法 ハンドサインとボイスサインを同時に与えて9種類の動作でトレーニングを行いました。その後の実験で以下の3つの条件で「カナタ」にサインを与え、正解率を調べました。 ①ハンドサインとボイスサイン同時 ②ハンドサインだけ ③ボイスサインだけ 目で見た情報と、耳で聞いた情報、どちらが学習において重要なのかを調べました。実験は男女3人ずつ、合計6人で行い、親密度や性別による影響を考慮しました。 資料映像: 最初はホースの水を使うなど遊びの中で動作を引き出し、ミルクを使って教えていきました。その後は、目印となる道具や手を使ったトレーニングも行い、生後半年までに9種類の動作ができるようになりました。 各動作ができるようになった後は、決められた手の動き(ハンドサイン)と声(ボイスサイン)を同時に与えながら動作とむすびつけ、サインに合わせて動作を行うことをトレーニングしました。   資料映像:ホースの水で遊ぶカナタ 資料映像:はじめてトレーニングした”バイバイ” 資料映像:”あーん”のトレーニング 参考資料 図1.カナタ(授乳期) 図2.カナタ(現在)   論文情報 掲載雑誌名:International Journal of Comparative Psychology DOI:https://doi.org/10.46867/ijcp.41525 タイトル:“A Case Study of Associations Between Human Visual-Vocal Commands and Behaviors in a Lactating Steller Sea Lion Pup (Eumetopias jubatus)”   著者:佐々木雅大氏1,堤和樹氏1,木下日奈乃氏1,西島昌宏氏1,松村千織氏1,豊田彩加氏1, 神原利宗2 所属:1城崎マリンワールドシーズー,2広島大学   掲載雑誌:International Journal of Comparative Psychology 研究者ガイドブック(神原利宗 准教授)   【お問い合わせ先】 城崎マリンワールドシーズー 飼育員佐々木雅大 氏 TEL:0796-28-2300 FAX:0796-28-3675 Email:seazoo*hiyoriyama.co.jp (*は半角@に置き換えてください)   広島大学大学院人間社会科学研究科 心理学プログラム 准教授神原利宗 TEL:082-424-6280 FAX:082-424-3481 E-mail:tkambara*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    2025.09.04
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    アンモニアメタネーション

    アピールポイント 独自性:アンモニアを利用した,二酸化炭素からのメタン合成 ▶︎反応による発熱が小さく,熱暴走のリスクがない ▶︎アンモニアを水素キャリアとして輸入:国内の二酸化炭素を国内でメタンに変換 実用化に向けて:実燃焼ガスからの回収した二酸化炭素による実証試験が進行中(広島県カーボンリサイクル関連技術開発支援補助金)   研究者のねらい 研究目的:触媒開発,改良を行うことで高メタン収率を得る 研究概要:アンモニア分解触媒(ルテニウムやニッケル触媒)とメタン合成触媒(ニッケル触媒)を組み合わせたハイブリッド触媒の研究 社会実装のイメージ:広島ガスと共同で、同社顧客企業において、二酸化炭素の回収とアンモニアメタネーションを行うことを検討   研究内容 図1 圧力変化に対するアンモニアメタネーション 図2温度変化に対するアンモニアメタネーションRu/Al2O3(1 wt%)+Ni/CeO2(20 wt%) 図3 反応装置 図4 大規模プラントイメージ(多段断熱反応器)   関連情報 【論文】・・・H. Saima et al., J. Chem. Eng. Japan,https://doi.org/10.1080.00219592.2023.2248176 H. Saima et al., J. Japan Petroleum Inst., in Press 【知財】特許・・・(特開2024-147616)   研究者 砂本礼志 先進理工系科学研究科 エネルギー変換材料工学研究室D2(当時)   主指導教員宮岡 裕樹 教授   本研究シーズは、2025年9月フェニックスセミナーで発表されました。

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 医療/ヘルスケア
    2025.12.22
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 医療/ヘルスケア
    寒さに耐える冬眠動物の筋幹細胞 ~再生能力を意図的に抑える「省エネ戦略」~

    本研究成果のポイント 冬眠動物は、極端な体温低下と長期間の不活動を経験するにもかかわらず、筋肉の衰えを驚くほど防いでいます。本研究では、冬眠動物の“筋肉が衰えない仕組み”の一端が、「組織幹細胞を生かしたまま、再生を抑える」というエネルギー節約戦略にある可能性を示しました。   概要 ハムスターやクマなどの冬眠動物では、骨格筋の幹細胞(サテライト細胞)が極端な低温下でも死なずに生存できることを発見 その低温耐性機構は、フェロトーシス(鉄依存性細胞死)を抑える細胞内の抗酸化システムにより成立 しかし生存した細胞は、筋形成に必要な「活性化・分化」プログラムを意図的に抑制しており、増殖能力が低温下では大きく低下 実際にハムスターでの筋損傷モデルでも、冬眠中は筋再生が著しく遅延 冬眠動物は「細胞死は防ぐが、エネルギー消費の大きい炎症・再生反応は抑える」という、エネルギー節約型の“冬眠モード”を幹細胞レベルで備えていることが明らかに   広島大学大学院 医系科学研究科 生理機能情報科学の宮﨑充功准教授らの研究グループは、福山大学薬学部・渡邊准教授、北海道大学大学院獣医学研究院・下鶴准教授、北里大学理学部・塚本助教、北海道大学低温科学研究所・山口教授らとの共同研究により、冬眠する哺乳類が、極端な低温環境でも筋肉の幹細胞(サテライト細胞)を死なせず保持する一方、筋形成に関わる遺伝子群の働きを大幅に抑制し、あえて再生を遅らせる仕組みを解明しました。 本研究成果は、米国実験生物学会連合の学術誌The FASEB Journal に掲載されました。 また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。   掲載雑誌: The FASEB Journal, 2025; 39:e71297 URL: https://doi.org/10.1096/fj.202502651R 題目: Cold-induced suppression of myogenesis in skeletal muscle stem cells contributes to delayed muscle regeneration during hibernation 著者: Tatsuya Miyaji, Ryuichi Kasuya, Mayuko Monden, Yutaka Tamura, Michito Shimozuru, Toshio Tsubota, Daisuke Tsukamoto, Guangyuan Li, Shota Kawano, Yuri Watanabe, Yoshifumi Yamaguchi, Masatomo Watanabe, and Mitsunori Miyazaki* *Corresponding author (責任著者) doi: 10.1096/fj.202502651R   背景 一般に、骨格筋は長期間使われないと萎縮し、筋肉を形成するための幹細胞の働きも弱まるため、冬眠によりほとんど動かない期間が続くと、通常なら筋肉が衰えると考えられます。しかし冬眠動物では、数か月におよぶ極度の不活動と低体温にもかかわらず、筋肉量がほとんど失われません。この理由はこれまでも研究されてきましたが、明確な答えは出ていませんでした。 本研究は、冬眠動物の筋肉が衰えない背景に「細胞死を防ぎながら再生は抑制する」という、冬眠期特有のエネルギー節約戦略が存在することを、世界で初めて幹細胞レベルで示しました。   研究内容と成果 1. 冬眠動物の筋幹細胞は、極端な低温ストレス下でも死なない 研究チームはまず、冬眠動物のサテライト細胞※1が低温ストレスに対して著しい抵抗性を示すことを発見しました。冬眠する動物(シリアンハムスター、シマリス、ツキノワグマ等)と冬眠しない動物(マウス、ラット等)の細胞をそれぞれ4℃の低温に24~48時間さらしたところ、冬眠しない動物の細胞は大半が死滅するのに対し、冬眠する哺乳類の筋肉から得た細胞はほぼ死なずに生存しました。解析の結果、冬眠動物の細胞では、鉄依存性細胞死(フェロトーシス)※2を抑える抗酸化システムが成立しており、これが極端な低温下でも細胞死を防ぐ鍵であることが分かりました。 図1|冬眠動物の筋幹細胞は極端な低温下でも死なずに生き残る マウスやラットなど冬眠しない動物では、4℃の低温にさらすと筋幹細胞の多くが死んでしまいます(赤色:死んだ細胞)。一方、シリアンハムスター、シマリス、ツキノワグマといった冬眠動物では、同じ低温条件でも細胞がほとんど死なずに生き残ります。右下のグラフは、低温条件下における48時間後の細胞死の割合を示しており、冬眠動物の細胞が「細胞レベルで寒さに強い」ことが分かります。   2. 低温下で生存した筋幹細胞は「活性化できない = 筋再生スイッチが切られる」 さらに、低温環境を生き延びた細胞のふるまいを詳しく調べたところ、筋肉の形成に必要な MyoD※3 や Myogenin※4 などの遺伝子群が大きく抑制されており、筋肉の組織幹細胞が“生存するが再生は遅らせる”という特殊な待機状態にあることが明らかになりました。これは、冬眠動物のサテライト細胞が、低温ストレス下では再生スイッチを積極的にオフにすることで、状態を維持していることを示しています。 図2|低温にさらされたハムスター筋幹細胞では、筋形成に関わる遺伝子だけがまとまって弱まる   左図は、ハムスターの筋幹細胞を4℃に冷却した際の遺伝子発現を網羅的に解析した結果です。緑色の点は、発現量が統計学的に有意に“減少した”遺伝子を示し、逆に“増加した”遺伝子は1つも見られませんでした。右図は、それら発現が減少した遺伝子の特徴を調べたGene Ontology※5解析の結果で、筋肉の形成や構造維持に関わる遺伝子群が特に大きく抑制されていることが分かります。これらの結果は、低温下で生存した細胞が、筋形成・再生を開始するための遺伝子プログラムを意図的に落としていることを示しています。   3. 冬眠期のハムスターでは、実際に筋再生が遅延 冬眠期間のハムスターは、体温を周期的に大きく下げる「深冬眠」※6と体温が常温に戻る「中途覚醒」※7を繰り返します。この状態で筋肉が傷つくと、通常であれば見られるはずの再生マーカー eMyHC※8 の発現がほとんど確認されず(下図右下)、再生途中の小さな筋線維も形成されません(右上)。さらに、再生の初期に重要なサテライト細胞の活性化や免疫細胞(マクロファージ※9)の浸潤も大幅に抑えられていました。これらの結果は、冬眠中の生体がエネルギーを節約するため、炎症反応や再生反応といった代謝負荷の高いプロセスを意図的に遅らせている、つまり、省エネモードに入っていることを示しています。 図3|冬眠中のハムスターでは筋再生がほとんど進まない   冬眠期のハムスターは体温低下(深冬眠)と復温(中途覚醒)を繰り返します。この状態で筋損傷を起こすと、再生マーカー eMyHC の発現がほとんど見られず、サテライト細胞の活性化や免疫細胞の浸潤も弱く、筋再生が大きく遅れることが分かります。   本研究の意義と今後の展開 本研究は、冬眠動物が「筋肉の幹細胞を死なせずに保持しつつ、再生は適温に戻るまで待機させる」という高度な省エネ戦略を備えていることを明らかにした点で重要です。これらの知見は将来的に、臓器や細胞の低温保存技術の高度化、長期不活動に伴う筋萎縮予防、さらには人工的な冬眠・低代謝医療の開発など、ヒト医療への応用可能性を広げるものと期待されます。   現在、冬眠中に生じる筋再生抑制がどのような分子機構で制御されているのか、特にエピジェネティクスや神経—筋連関などの側面はいまだ明らかになっていません。研究チームは今後、これらの分子機構の解明を進め、冬眠状態を人工的に誘導・制御しうる基盤的知見の確立を目指しています。   用語解説 ※1 サテライト細胞(筋幹細胞) 骨格筋に存在する「筋肉の幹細胞」。普段は休んでいるが、運動やけがが起こると活性化し、筋肉を修復・再生する役割を持つ。   ※2 フェロトーシス(鉄依存性細胞死) 細胞内の鉄が引き起こす「脂質の酸化」により生じる特殊な細胞死の一種。低温ストレスによる細胞死はフェロトーシスを介して起こる。   ※3 MyoD(マイオディー) 筋幹細胞が「筋形成・筋再生を始める」ときにスイッチとなる転写因子。活性化すると筋肉に分化する方向へ進む。低温では発現が抑えられる。   ※4 Myogenin(マイオジェニン) 筋幹細胞が筋細胞として成熟していく過程で重要となる転写因子。筋再生の“後半”を進める役割がある。   ※5 Gene Ontology(遺伝子オントロジー解析) 膨大な遺伝子の機能を「どんな役割をしているか」で分類し、特定の条件下でどの機能の遺伝子が変化したかを調べる手法。   ※6 深冬眠(Deep Torpor) 小型の冬眠動物が体温を大きく下げ、代謝を極端に落とした状態。体温が数℃まで下がることもある。クマなど大型の冬眠動物の場合、代謝低下は認められるものの、小型動物ほどの極端な体温低下は起こらない。   ※7 中途覚醒(Interbout Arousal) 冬眠中に体温が一時的に正常レベルまで戻る短い覚醒期。小型の冬眠動物はこの「深冬眠」と「中途覚醒」を繰り返す。   ※8 eMyHC(embryonic Myosin Heavy Chain) 再生途中の新しい筋線維に発現する「再生マーカー」。筋損傷後に通常であれば増えるが、冬眠期はほぼ発現しない。   ※9 マクロファージ 筋損傷の修復に重要な免疫細胞。壊れた筋細胞を処理し、筋幹細胞の活性化をサポートする。冬眠期は浸潤が強く抑制される。   報道発表資料(636.78 KB) 掲載雑誌:The FASEB Journal 研究者ガイドブック(宮崎 充功准教授) 【お問い合わせ先】 (研究に関すること) 広島大学大学院医系科学研究科生理機能情報科学 准教授宮﨑充功 Tel:082-257-5435 E-mail:mmiya4@hiroshima-u.ac.jp   (報道に関すること) 広島大学広報室 Tel:082-424-4383 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 半導体
    2025.09.04
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 半導体
    有機半導体を用いた光触媒による太陽光水素製造に関する研究

    アピールポイント 有機薄膜太陽電池において高効率を示す独自開発の有機半導体材料をナノ粒子光触媒として応用し、太陽光による水素製造を可能にした。 本研究で開発した有機光触媒は、可視光全域を利用できるため、従来の無機系光触媒に比べて2倍以上の太陽光エネルギーを活用できる。   研究者のねらい 従来の無機光触媒は波長が600 nmまでの可視光領域しか利用できなかったが、本研究で開発する有機光触媒は可視光全域を利用できる。これにより、従来の光触媒よりも2倍以上の太陽光エネルギーを活用できるようになり、水素製造の高効率化に向けて大きなアドバンテージとなる。また、有機半導体は無機半導体に比べてはるかに高い吸光能を持つため、少量でも十分に太陽光を吸収できる。すなわち、有機光触媒による高効率水素生成技術は、材料削減による低コスト化にも優位性があり、総環境負荷の低減が期待できる。   研究内容   電流ー電圧特性   分光感度特性   モジュールへ展開(2 cm角 → 20 cm角)   有機光触媒へ展開(ナノ粒子化)   Cryo-TEM   反応機構   水素発生量   外部量子効率   関連情報 【論文】 Tsubasa Mikie, Tomokazu, Morioku, Shota Suruga, Momoka Hada, Yuki Sato, Hideo Ohkita, Itaru Osaka, Dithienonaphthobisthiadiazole synthesized by thienannulation of electron-deficient rings: an acceptor building unit for high-performance π-conjugated polymers, Chemical Science, 15: 19991–20001, 2024. 【知財】特願2019-159031、特願2021-132762、特願2022-34404 、特願2024-095535   研究者 三木江翼(MIKIE TSUBASA) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 助教

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 医療/ヘルスケア
    2025.12.23
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 医療/ヘルスケア
    ビタミン「ビオチン」を細胞へ迅速・効率的に届ける新手法を開発 ~バイオテクノロジー技術の改良や遺伝性代謝異常症治療への応用に期待~

    本研究成果のポイント 皮膚や髪の健康を保ち、体のエネルギーづくりにも関わるビタミンの一種「ビオチン(※1)」を、細胞の中により速く、効率的に届ける方法を開発しました。 細胞膜を素早く通過できる新しいビオチン誘導体を用いることで、細胞内のビオチン量を短時間で増やし、ビオチンを用いるさまざまなバイオテクノロジー技術を改良できることが分かりました。 ビオチンを利用するバイオ技術の改良や、マルチビタミン反応性遺伝性代謝異常症(※2)の新しい治療法につながる可能性があります。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科の佐藤明子 教授、理化学研究所光量子工学研究センターの中野明彦 客員主管研究員、戸島拓郎 上級研究員らは、ビオチンを細胞に入りやすい形に改良したビオチン誘導体 (ビオチンメチルエステル: BME)(※5)を用いることで細胞内への迅速なビオチンの誘導に成功しました。 私達が生きるために必須なビタミンの一種である「ビオチン」は、卵白に含まれる「アビジン(※3)」と呼ばれるタンパク質と強く結合する性質を持つため、現在、さまざまなバイオテクノロジー技術に用いられています。ビオチンはナトリウム依存性マルチビタミントランスポーター (SMVT)(※4) と呼ばれるタンパク質の働きで細胞内に取り込まれます。しかし、私達は多くの細胞でSMVTによるビオチン取り込みに時間がかるため、生細胞内へのビオチン投与を必要とするバイオテクノロジー技術が迅速に機能しないことを発見しました。 さらに、BMEは細胞内でビオチンへと急速に加水分解(化学反応によって物質が水の働きで分解され、元の成分に戻る反応)され、細胞内のビオチン濃度を迅速に上昇させることで、バイオテクノロジー技術を改良できることを発見しました。また、最近の研究から、SMVTの欠損が、マルチビタミン反応性遺伝性代謝異常症(multivitamin-responsive inherited metabolic disorder)を引き起こすことが分かってきました。私達の研究成果は、BMEがビオチンのプロドラッグ(※6)として機能することを示しており、マルチビタミン反応性遺伝性代謝異常症の患者さんへのビオチン供給を促進する可能性があり、治療への応用が考えられます。   論文情報 掲載雑誌名: Communications Biology 論文名: Biotin methyl ester enhances cargo release in RUSH system and enables rapid biotinylation with TurboID 著者名: Uehara T1#, Takiguchi A1#, Tojima T2, Nakano A2, 3, Kagawa S1, Nehira T1, Satoh T1, Satoh AK1,*. 所属:1)広島大学大学院 統合生命科学研究科 2)理化学研究所 光量子工学研究センター 生細胞超解像イメージング研究チーム(研究当時、現画像情報処理研究チームの所属) 3)東京科学大学 総合研究院高等研究府 # 共筆頭著者:上原 大政・瀧口 新 * 責任著者:佐藤 明子   DOI: 10.1038/s42003-025-09176-4. 掲載日時: 2025年12月16日   背景 ビオチンは私達が生きるために必須なビタミンの一種です。私達は自身でビオチンを合成することはできないため、ビオチンを食事により取り入れる必要があります。ビオチンの細胞内への取り込みは、細胞膜に存在するナトリウム依存性マルチビタミントランスポーター (SMVT) が行っています。 ビオチンはアビジンと強い結合を示すことから、ビオチン・アビジン結合性を利用したさまざまなバイオテクノロジー技術が発達しています。さらに、近年、近位依存性ビオチン化酵素(※7)を用いたタンパク質相互作用の網羅的解析(近位依存性ビオチン標識法(※8))が活発に進められています。生きた細胞でこれらの技術を用いる場合には、細胞培養液へのビオチン投与で十分であると考えられてきました。 細胞内における物質輸送(膜交通)の研究分野では、ビオチン投与によりタンパク質輸送を開始できる同調的輸送開始実験法 (Retention Using Selective Hook 法: RUSH) 法(※9)が汎用されています。しかし、私達は、RUSH法において、ビオチン投与後すぐには輸送開始しない細胞が多いことを報告していました (Tago et al., EMBO repo, 2025)( https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/87904)。今回、私達は、この理由がビオチンの細胞内取り込みが迅速ではないからではないかと考え、実験を行いました。   研究成果の内容 本研究では、ビオチンの膜透過性を向上させる目的で、ビオチンのカルボキシ基を保護したビオチン誘導体 (ビオチンメチルエステル: BME) を用いてRUSH法においてタンパク質輸送が迅速に開始するかを評価しました。その結果、RUSH法において推奨されている40μMにおいてビオチンが十分な輸送開始を引き起こせないのに対して、BMEでは、その20分の1の濃度である2μMの投与でもタンパク質輸送が迅速に開始することを示しました。また、BMEの細胞内への取り込みはSMVTの阻害剤では阻害されず、BMEが直接細胞膜を透過することが強く示唆されました。 さらに、BMEが近位依存性ビオチン化酵素によるビオチン化の速度も上昇させることを発見しました。ビオチン化酵素はBMEを直接基質として利用できないことから、この結果はBMEが細胞内で急速に加水分解されることを強く示唆しています。また、細胞内の核・細胞質ゾル・小胞体内腔のいずれの領域においても、BME投与が近位依存性ビオチン化酵素によるビオチン化を活性化することを示しました。これらの結果から、BMEがビオチンを用いるバイオテクノロジー技術を大きく改良できると結論しました。 今後の展開 本研究が示した「BMEによる細胞内への迅速なビオチン供給」は、ビオチンを利用するさまざまなバイオテクノロジー技術全般に普及するものと考えられます。 また、ビオチンは私達が生きるために必須なビタミンの一種です。私達は自身でビオチンを合成することができないため、ビオチンを食事により摂取し、細胞内に取り込んでいます。最近の研究から、ビオチンの細胞内への取り込みに必要なSMVTの欠損が、マルチビタミン反応性遺伝性代謝異常症(multivitamin-responsive inherited metabolic disorder)を引き起こすことが分かってきました。BMEはビオチンのプロドラッグ(体内で活性成分に変化して働く薬)として機能することから、代謝マルチビタミン反応性遺伝性代謝異常症を含むビオチン代謝異常症の患者へビオチン供給を簡単に行うことができる可能性があり、治療への応用が考えられます。 参考資料 図ビオチンメチルエステル (BME)による細胞内への迅速なビオチン供給と応用 BMEはビオチンのカルボキシル基がメチル化された、電荷を持たない小分子であり、容易に細胞膜を通過する。小胞体内腔において、カルボキシルエステラーゼの働きで加水分解されてビオチンとなる。小胞体膜は電荷を持った小分子も容易に通すため、BME投与により細胞質ゾル・核・小胞体のいずれの領域にもビオチンを迅速に供給でき、バイオテクノロジー技術を改良できる。さらにビオチン代謝異常症の治療に役立つ可能性がある。   用語解説 (※1)ビオチン ビタミンB群の一種であり、エネルギー代謝や皮膚・粘膜・髪・爪の健康維持に重要な役割を果たす水溶性ビタミン。体内で糖質、アミノ酸、脂質の代謝を助ける補酵素として働く。   (※2) マルチビタミン反応性遺伝性代謝異常症 SMVTの欠損によって引き起こされる先天性代謝異常症の1つであり、最近同定された疾患。ビオチンがカルボキシラーゼの補酵素であるため、患者はマルチプルカルボキシラーゼ欠損症と呼ばれる病態を含む多様な症状を示す。 (※3)アビジン 卵白に存在する糖タンパク質で、ビタミンであるビオチンと非常に強く結合する性質を持ちます。この強力な結合を利用して、生命科学分野では、様々なバイオテクノロジー技術に利用されています。   (※4) ナトリウム依存性マルチビタミントランスポーター (SMVT) ビオチン・パントテン酸・リボ酸塩の細胞内への取り込みに機能する細胞膜タンパク質。濃度勾配に従ってナトリウムを細胞内に取り込むときにこれらのビタミンを同時に輸送するシンポーター。   (※5) ビオチンメチルエステル (BME) ビオチンのカルボキシル基がメチル基とエステル結合したビオチン誘導体。電荷を持たない小分子であり、カルボキシルエステラーゼにより分解される。   (※6) プロドラッグ 機能分子(ドラッグ)のカルボキシ基がエステル化された分子。電荷を持たないため迅速に細胞膜を透過する。細胞内に入るとカルボキシルエステラーゼにより加水分解され、活性を持つドラッグとして機能する。   (※7) 近位依存性ビオチン化酵素 大腸菌ビオチンリガーゼ酵素BirA に変異を導入し、中間体のbiotinyl-5’-AMP が酵素から遊離し,近傍のタンパク質のリジン残基にビオチンを付加するように改変した酵素BirA* (BioID) やそれを改良したもの等。活性を高めたTurboID, AirID などがよく利用される。   (※8) 近位依存性ビオチン標識法 以下の一連の操作により、相互作用ネットワークを解析する手法。相互作用ネットワークを知りたいタンパク質に、近位依存性ビオチン化酵素を融合して発現させる。細胞にビオチンを投与することで、興味あるタンパク質近傍に存在するタンパク質を網羅的にビオチン化する。ビオチン化タンパク質をアビジンカラムで精製し質量分析機で解析することで相互作用ネットワークを明らかにできる。   (※9) 同調的輸送開始実験法 (Retention Using Selective Hook法: RUSH法) 膜交通分野で汎用されるタンパク質輸送を同調的に開始させる手法。ビオチン投与によりタンパク質がアビジンから遊離して輸送を開始する。     報道発表資料.pdf(335.32 KB) 掲載雑誌:Communications Biology 研究者ガイドブック(佐藤 明子 教授)   【お問い合わせ先】 〈研究に関すること〉 広島大学大学院統合生命科学研究科佐藤明子教授 TEL:082-424-6507FAX:082-424-0759 E-mail:aksatoh@hiroshima-u.ac.jp   〈広報・報道に関すること〉 広島大学 広報室 TEL:082-424-6762 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   理化学研究所広報部報道担当 TEL:050-3495-0247 Email: ex-press@ml.riken.jp

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    2025.09.04
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    グリーン懐疑主義が消費者のグリーン購買意図に与える影響:情報探索および罪悪感の役割

    アピールポイント グリーン懐疑主義は、消費者に自身の懐疑心を確かめるための情報探索を促し、購買意思決定を支える。 環境意識に反する消費行動への不安は罪悪感を招きやすく、その軽減策としてグリーン製品が選ばれることもある。 消費者の環境意識の高まりに対応し、持続可能な戦略の推進と明確な情報提供に努める必要がある。   研究者のねらい グリーン懐疑主義は、環境問題への関心と消費行動のギャップを説明しうる要因とされており、持続可能な消費への影響が探求されている。 本研究では、消費者の情報探索行動と予期される罪悪感に着目し、懐疑的態度が購買意欲を促進しうる可能性を実証的に検討する。 製品情報の発信がグリーン製品の販売促進に寄与し、企業の持続可能な発展に資することを示唆する。   研究内容 1,モデル 注記:グリーンウォッシングとは、企業が誇張的または曖昧な表現により、消費者に誤認を与える行為を指す。   グリーン懐疑主義・消費者の情報探索行動・予期される罪悪感   2,仮説検証 ① 情報探索行動は、懐疑的態度を裏付けたり打ち消したりすることで、購買判断の根拠となり得る。   ② 懐疑心と環境意識の対立は、罪悪感を引き起こし、グリーン製品の購入がその感情の緩和につながる可能性がある。   3,示唆   関連情報 【論文】The Influence of Green Skepticism on Consumers’ Green Purchase Intentions: The Roles of Information Seeking and Anticipated Guilt. To be presented at the APMAA 2025 Annual Conference, Shah Alam, Malaysia. 【知財】なし   研究者 周聖逸 大学院人間社会科学研究科 博士後期課程2年(当時)   指導教員徐恩之(ソウンジ)准教授

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    2021.07.21
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    メタンハイドレート(*1)資源開発支援を目的とした新コンセプト技術を開発~深海底の生物資源を活用した固化技術~

    本研究成果のポイント 国産資源としての期待が高まるメタンハイドレート商業化において技術的課題とされている出砂トラブルに対処する新しい技術開発を進めている。 天然にすでに存在する微生物の機能を活用し、抗井周辺の地層を固めることで出砂を抑制し、長期生産を可能とする効果が期待できる。   概要 日本周辺海域を対象としてJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が主体となり、2013年に世界初のメタンハイドレート海洋産出試験を、2017年には第2回の同試験を実施するなど商業化に向けた取り組みが進められている。過去2回の海洋産出試験では、一部の生産井 (注2) においてメタンハイドレート層から砂が流入し坑井を詰まらせる出砂という現象により試験が中断されるなどの課題が指摘されている。   この課題を解決する手法として天然に存在する微生物の作用に着目し、広島大学大学院先進理工系科学研究科社会基盤環境工学プログラムの畠俊郎教授(2021年3月まで富山県立大学教授)は、JOGMECと共同で抗井周辺の地層を広範囲に固化させることで坑井への出砂を抑制する技術の開発を進め、日本と米国で特許を取得した。 図1 地層固化のイメージ(左側イラスト)と高圧環境下で微生物が作り出す結晶鉱物(右側画像) 日本近海のメタンハイドレート胚胎層を再現した圧力条件(13MPa)で温度条件を変えて結晶析出試験を行った結果、30℃ではほぼカルサイト、13℃ではカルサイト80%、アラゴナイト20%と異なる炭酸カルシウム種が析出することを確認した。   用語解説 (注1)メタンハイドレート 天然ガス資源の一種であるメタンハイドレートは、水分子が水素結合により形成する籠(かご)状の格子の中にメタン分子を取り込んだ固体結晶で燃える氷とも呼ばれる。 メタンハイドレート1m3から約165m3生成されるメタンは都市ガスの主成分として使われる無色・無臭のガスである。このメタンを主成分とする「天然ガス」は燃焼時の二酸化炭素の排出量が石油や石炭を燃焼させた時より少ないため環境に優しいクリーンなエネルギーと言われており、メタンハイドレートは次世代エネルギーとして期待されている。 https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1001711/1001759.html(外部リンクに移動します) (注2)生産井 坑井の使用目的に基づいた分類の一つで、資源を汲み上げて採取する役割を持ったものを意味する語。本件では、メタンハイドレートの生産を目的に掘る坑井のことを示す。   論文情報 掲載誌: Journal of Natural Gas Science and Engineering 論文タイトル: Microbial-induced carbonate precipitation applicability with the methane hydrate-bearing layer microbe 著者名: Toshiro Hata、Alexandra Clarà Saracho、Stuart K. Haigh、Jun Yoneda、Koji Yamamoto DOI: https://doi.org/10.1016/j.jngse.2020.103490   特許情報 特許(日本):特許第6842765号(2021年3月取得) 特許(米国):Patent No.10914151(2021年2月取得) 報道発表資料(462.47 KB) 論文掲載ページ (Journal of Natural Gas Science and Engineeringに移動します) 広島大学研究者総覧 (畠 俊郎 教授)   【お問い合わせ先】 大学院先進理工系科学研究科 教授 畠 俊郎 Tel、Fax:082-424-7784 E-mail:thata*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

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    2025.09.04
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    グリーンウォッシング 尺度開発に関する研究

    グリーンウォッシング(greenwashing)発生 ▶︎環境配慮に関連した企業の宣言と実態が一致せず、消費者の誤解を招く現象 企業のサステナブル(SDGs)宣言→製品・サービスに予期しなかった事態が発生→Washだと非難され、企業ブランド価値低下発生   研究内容 【企業のグリーンウォッシングを数値化する】   greenwashing 語のテキストマイニング   質問票調査実施 尺度開発を通じて期待していること ①Greenwashingの診断表・保険開発   ②Greenwashing ガイドブック作成   研究計画 企業のグリーンウォッシングを抑制するための取り組み 社会に対する波及効果 ブランド成果と消費者・顧客への反応 環境経営への社員の知識レベルをアップする教育プログラムの開発   実用化に向けた課題 green経営に関する持続的な関心と投資が必要 多様な企業からのデータ収集が必要→尺度の信頼性アップ   最後に 協力依頼事項 greenwashing尺度の活用:保険開発以外にも、多様な製品・サービスへの活用可能性がある(例:クラウドファンディング) 環境経営に関わる社員の知識レベルをアップする教育プログラムの開発   研究者 徐恩之(SEO EUNJI) 広島大学 大学院人間社会科学研究科 准教授

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    2025.07.15
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    ナトリウムを利用したアンモニア合成法を開発 -プラチナなどの貴金属触媒を使用せず、安価なナトリウムのみで実現-

    本研究成果のポイント ナトリウムを利用した触媒およびケミカルルーピングプロセス(*1)によるアンモニア(*2)合成法を創出 常圧-1.0MPa(10気圧)程度の水素、窒素からアンモニアを合成可能 圧倒的な資源的優位性を有するナトリウムのみで構成される貴金属触媒(*3)フリーの技術を確立   概要 広島大学自然科学研究支援開発センター:宮岡裕樹教授、同大学スマートソサイエティ実践科学研究院:恒松紘喜(D2)、同大学大学院先進理工系科学研究科:市川貴之教授らの研究グループは、ナトリウムを触媒、あるいはケミカルルーピングプロセスの反応体として利用したアンモニア合成技術を開発した。この手法は、常圧-1.0 MPa(10気圧)程度の圧力下で水素と窒素からアンモニアを合成可能であり、かつ貴金属等の触媒を必要としないため、再生可能エネルギーの利用を目的とした元素戦略(*4)的に優位な小規模分散型のアンモニア合成手法(*5)としての展開が期待される。本研究成果は、Q1ジャーナルである国際科学誌「International Journal of Hydrogen Energy」に掲載されました。   背景 現在、脱炭素化、カーボンニュートラルに向けたさまざまな取り組みが世界的に進められている。太陽光や風力等の自然エネルギーをはじめとした再生可能エネルギーの利用拡大は重要な課題の一つである。これら変動的かつ偏在的なエネルギーを効率的に利用するための媒体(二次エネルギー)として水素が注目されているが、貯蔵や輸送時のコストが課題となっている。近年、化成品や肥料の原料として知られるアンモニア(NH3)は、上述した再生可能エネルギーを効率的かつ低コストに貯蔵・輸送するためのキャリア、或いはCO2フリーの燃料として注目を集めている。現在、NH3の合成には、約500 ℃、250気圧以上という高温高圧条件で行われるハーバー・ボッシュ法(*6)が用いられているが、連続運転により大量合成を行うことでメリットが得られる技術として確立されている。従って、偏在する自然エネルギーの利用を考えた場合、より低温低圧条件で制御可能な小規模分散型のNH3合成技術が望ましく、このような技術が確立されれば、再生可能エネルギーの変動吸収や需要に対する供給の調整といったことが可能となる(図1)。   NH3合成においては、安定な三重結合(*7)を有する窒素分子(N2)を原子状(N)に分離する窒素解離プロセスが重要であり、この窒素解離のために、1000 °C近い高温条件やプラズマ、遷移元素や希土類元素等の金属触媒を利用するのが一般的である。一方、我々の研究グループでは、リチウム(Li)やナトリウム(Na)に代表されるアルカリ金属の窒素解離能に注目し、それらの触媒能の評価や既存の触媒プロセスとは異なる多段階の化学反応でNH3合成を行うケミカルルーピングプロセスの研究開発を進めてきた。   研究成果の内容 本研究グループでは、LiH、Li合金、Na合金を用いたアンモニア合成技術を提案し、それらの研究開発を進めてきた。本研究では、水素化ナトリウム(NaH)(*8)を用いたNH3合成技術の検討を行った。 まず、水素(H2)と窒素(N2)の混合ガス気流中でNaHを400 ℃まで加熱しNH3合成特性を評価した。図2(右)に結果を示す。 375 ℃で最も高い反応率:約550 mmol/g hが得られ、この値は、先行研究におけるLiあるいはNa合金触媒のNH3合成速度:

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    2025.09.04
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    【フェニックスセミナー2025まとめ】未来をつくるカーボンニュートラルイノベーション

    概要 フェニックス協力会主催(協力:株式会社広島銀行)にて、2025年9月4日にひろぎんキャリア共創センターにて、フェニックスセミナー2025(研究シーズ発表会)vol.2を開催しました。 当日は、企業や研究者など80名ほどが参加し、市川教授の基調講演(「広島県におけるカーボンニュートラルの動向」)や若手研究者による研究の最前線についての発表がありました。セミナー後は、懇親会も開催。直接研究者とコミュニケーションをとることで、研究とビジネスをつなげるきっかけの場となりました。 研究者・発表した研究シーズリスト 近藤 雅征(瀬戸内CN国際共同研究センター・准教授) ーアジアにおける温室効果ガス吸排出、及び気候変動の現状   江種 浩文 (経済学部・客員講師) ー太陽光発電の「価値分離」を通じたCO2フリー水素の低コスト化検討   砂本 礼志(大学院先進理工系科学研究科・D2) ーアンモニアメタネーション研究   三木江 翼 (大学院先進理工系科学研究科・助教) ー有機半導体を用いた光触媒による太陽光水素製造に関する研究   徐 恩之(大学院人間社会科学研究科・准教授) ーグリーンウォッシュの尺度開発に関する研究   周聖逸(大学院人間社会科学研究科・D2) ーグリーン懐疑主義が消費者のグリーン購買意図に与える影響:情報探索および罪悪感の役割   フェニックス協力会とは 「地域社会・国際社会との共存」を具現化する取組みとして、2010年11月、地域社会、特に地域産業界への更なる貢献を目的として設立。 150社ほどの企業・団体が所属し、広島大学オープンイノベーション本部産学連携部門(事務局)から、産学連携に関連する情報発信や、会員企業の皆さまにご活用いただけるさまざまなサービスなどを発信しています。

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