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    • 教育/人材育成
    2017.12.18
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    タブレットで暮らしのバリアを乗り越える

    視覚障害のある子供たちが学習したり、生活したりする上でぶつかっている困難を科学的に解明し、タブレットを活用した教育方法の開発をしている 教育学研究科 氏間和仁教授の研究を紹介します。 タブレットで見えにくさをサポートする教育方法の開発 スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器は、私たちの生活になくてはならない身近なものになってきました。 特別支援学校の教育現場で使われる教材にも、タブレットを活用したものが増えてきています。 顕微鏡の接眼レンズにスマートフォンを取り付けて大きく表示 画像はタブレット上の操作でさらに拡大可能 拡大鏡(左側)の画像をタブレットに表示 肢体が不自由な方のための入力用の機器(黄色と緑色の丸い部分を押す)でタブレットを操作している様子 氏間先生によると、視覚障害者がタブレットを活用するメリットは、最初から見ることをサポートするアプリが入っている、キーボードなどの入力用の機器を手軽に接続できる、持ち運びができるなど様々。 例えば、黒板に書いた文字をタブレットのカメラで撮影し、その画像を大きく拡大して読む、GPS(位置情報)を使って道案内を聞きながら目的地に向かうなどの使い方があるそうです。 これまで高額な福祉機器でしか対応できないと思われていたことの一部は、タブレットの様々な機能を組み合わせて手軽に実現できるようになりました。 氏間先生は、子供たちの「苦手」を分析し、タブレットを活用してそれをサポートすることで、効果的な学習ができる教育方法を開発しています。   子供たちが少しでも楽しく学べるように 通学中の乗り物の中で本を読む。誰もがしていることですが、弱視の子供たちは拡大鏡を使って本を読むので乗り物酔いをしやすいそうです。それが、タブレットで文字を拡大しながら読むことができるようになると、乗り物酔いが少ないし、なによりタブレットで本を読む姿はルーペなどを用いるよりも目立たないので、読書をより楽しめるようになったという感想もあったそうです。 慶応義塾大学中野研究室との共同研究で開発中の教科書デジタルデータ閲覧用iOSアプリ (UDブラウザ) 氏間先生は、盲学校で教鞭をとっていた経験なども交えて、特別支援学校に通う子供たちが、環境の整っている学校内だけでなく、通学路や家でも楽しく学べる方法の実践に向けた取り組みをしています。 教育相談 http://home.hiroshima-u.ac.jp/ujima/src/index_j.html#kyousou ゼミの様子(特別支援学校の教諭を目指す学生らが学んでいます) この「見やすくする」を支援する技術は、発達障害のある子供にも応用され、学ぶことの楽しさを思い出したり、試験の成績が上がったりなど、学習成果も現れつつあります。   チャレンジできることをもっと知ってほしい 「少しの工夫で、諦めていたことにチャレンジできることを、多くの方に知っていただきたい」と氏間先生は話します。 高齢化の進む日本では、老化や病気により見え方に困難を有する方が増加すると考えられています。 眼科病院での教育相談活動を通じて、タブレットやスマホなどの身近な道具を活用することで、生活を豊かにしたり、質を高めることが可能であることをより広く伝えることにも力を入れています。 「難病(ALSなど)や重度障害者のための支援ICTのフェスティバル」の来場者に、研究室の学生が説明する様子   広島大学研究者総覧(氏間 和仁 准教授) 氏間研究室のホームページ(視覚障害教育に関する研究室) 「難病(ALSなど)や重度障害者のための支援ICTのフェスティバル」に出展しました   【お問い合わせ先】 広島大学 大学院教育学研究科特別支援教育学講座 教授氏間 和仁 E-mail: ujima*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    • 教育/人材育成
    2025.03.26
    • デジタル/AI
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    大規模言語モデル(LLM)を活用した医学倫理教育の可能性 ―倫理的な行動の手本や相談役としての機能を検討―

    (Credit: Kanon Tanaka) 本研究成果のポイント 医学教育では、人的・財的資源の制約から、倫理教育が十分とは言えません。本研究では、この問題への対策として、医学倫理教育においてAIモデルの一種であるLLM(Large Language Models、大規模言語モデル)*1が有用な学習ツールとなる可能性を提示しました。 医学倫理を学ぶうえで、医療に必要なルールや原則に関する知識の獲得だけでなく、患者や医療現場ごとに生じる複雑な倫理的ジレンマに対応するための態度や徳を身につけることが重要です。本論文では、知識の獲得と、態度や徳を身につける教育の双方を取り入れたハイブリッドアプローチの必要性を指摘しました。 LLMに対して、医療倫理に特化した追加学習(ファインチューニング*2)を行うことで、医学倫理教育においてLLMを倫理的な手本や相談役として活用する可能性を提示しました。利用者とLLMとの反復的な対話を通じて利用者の意識やLLMの情報の偏り(バイアス)を減らし、より公正でしっかりした医療倫理の枠組みを構築することができると考えられます。   概要 広島大学大学院人間社会科学研究科上廣応用倫理学講座の片岡雅知 寄附講座准教授、ならびに同研究科の澤井努 特定教授(寄附講座教授兼務、京都大学 高等研究院ヒト生物学高等研究拠点 連携研究者、シンガポール国立大学客員教授)は、広島大学大学院人間社会科学研究科の岡本慎平 助教、板野誠 博士課程大学院生とともにLLMを活用した医学倫理教育の可能性を検討しました。 本研究成果は、2025年2月5日に学術誌「BMC Medical Education」でオンライン公開されました。   論文情報 題目:AI-based medical ethics education: examining the potential of large language models as a tool for virtue cultivation 著者:Shimpei Okamoto1, Masanori Kataoka1,2, Makoto Itano1, Tsutomu Sawai1,2,3,4* 1. 広島大学大学院人間社会科学研究科 2. 広島大学大学院人間社会科学研究科上廣応用倫理学講座 3. 京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi) 4. Yong Loo Lin School of Medicine, National University of Singapore, Singapore, Singapore. *: 責任著者 雑誌:BMC Medical Education URL:https://bmcmededuc.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12909-025-06801-y DOI:https://doi.org/10.1186/s12909-025-06801-y   背景 現在の医学教育カリキュラムでは倫理教育が十分とは言い難く、医学生や研修医が臨床現場で倫理的に複雑な状況に直面した際、対応に苦慮することが報告されています。 このような問題への理想的な対処法として、専門的な教育を受けた倫理指導者の雇用や、医学教育カリキュラムの改善が求められます。しかし、人的・財的資源の制約から、こうした対処は困難であり、医学倫理教育の充実が進まない状況が続いています。 こうした背景を踏まえ、次善の策としてLLMを教育ツールとして活用することが考えられます。医療分野に特化した学習を行ったLLMに対し、対応に苦慮するケースの情報を入力することで、手本となりうる対応策や、患者ケアにおいて考慮すべき情報を得ることができます。 LLMを倫理的な手本や相談役として活用することで、人的・財的資源を抑えながら、道徳的知識や患者ケアに必要な姿勢の獲得を促す可能性があります。   研究成果の内容 本研究では、医学倫理教育のアプローチについて検討し(①)、LLMが倫理的な手本(②)や相談役(③)として有用な学習ツールとなる可能性を示しました。 また、医学教育におけるLLMの実用性を検討するために取り組むべき課題を整理しました(④)。   ① ハイブリッドアプローチの重要性 医学倫理教育においては、2つの教育アプローチが存在します。 原則主義的アプローチは、医療倫理の4原則*3のように、医療に必要なルールや原則に関する知識を獲得するという、認知的目標の達成を目的としています。 一方で、非原則主義的アプローチは、個別の患者が抱える状況を認識・判断し、倫理的価値に基づいて行動するための態度と徳を育み、身に着ける態度的目標の達成を目的としています。 医療の現場において、適切な倫理的意思決定を行うためには、2つのアプローチを組み合わせたハイブリッドアプローチを取り入れ、医療に必要なルールや原則に対する十分な知識と、患者ケアに不可欠な徳や態度を獲得する必要があります。   ② 倫理的な手本としてのLLM 私たちは、倫理的な手本となるような人物の行動を真似することによって、徳や態度を身に着けることができます。 同様に、歴史上の人物や架空のキャラクターなど、目の前に実在しない存在を手本として倫理的な原則を理解し、その行動を真似することで、徳や態度を身に着けることもあります。実際に、教育の現場では文学や映画などの作品を通して、複雑な倫理的ジレンマを理解したり、共感や道徳的態度を身に着けたりする試みがなされています。 目の前に存在しない人物や架空のキャラクターを真似することで徳や態度を身に着けることができるのであれば、私たちはLLMの示した回答やシナリオを通して倫理的行動の手本を認識し、それらを真似することで徳や態度を身に着けることが出来るかもしれません。   ③ 相談役としてのLLM LLMの回答は、あくまでも助言として活用されるべきであり、絶対に正しいものであるかのように扱うべきではありません。 LLMの提示した回答の結論だけでなく、その回答が導き出された過程や参照している情報源を検討し、どの部分が手本として参照するに値するか、値しないかを判断する必要があります。 また、ファインチューニングを行っていないLLMは、原則主義的な回答を行う傾向にあることが指摘されています。徳倫理やフェミニスト倫理など、他の考え方が示された場合に、初めてそうした考え方を反映した回答を出力することが確認されています。 原則主義的な考え方のみに基づいて教育を行うと、LLMの利用者が患者一人一人の状況に対応できない、不適切な考え方や行動を身に着けてしまう可能性があります。 そのため、専門家や教育機関によるフィードバックを得ながら、より適切な回答を出力できるようファインチューニングを行って、LLMの情報を更新していく必要があります。   ④ 検証すべき課題 1. 原則主義的な回答を行う傾向があるのなら、どのように態度的目標を達成するのか? LLMによる原則主義的な回答の傾向は、ハイブリッドアプローチに組み込むことで、解消することが出来ます。利用者は、非原則主義的な観点からLLMの回答を批判的に検討することで、相手に対する共感や適切な態度について考えることができます。 特定のシナリオにおいて、人間の気づかない感情の動きをLLMが認識するという研究結果も示されていることから、LLMが活用できる場面を見極めながら教育の現場に組み込むことで、教師の負担を部分的に削減したり、新たな気付きを与えたりする可能性があります。   2. LLMの回答を、患者ケアの参考にする人はいるのか? LLMが共感や配慮といった複雑な感情を理解できないのではないかという理由から、LLMの回答をアドバイスとして取り入れたり、LLMが提供した手本となる行動の例を真似したりするに値しないのではないかという懐疑的な意見もあります。 しかし、「推論」に対する判断を行う課題においては、作成者が人間であっても、LLMであっても、アドバイスとして採用する際に影響は生じないという研究結果が示されています。 認知的要素である推論と、態度的要素である徳や態度では結果が異なる可能性もあるため、今後、実証的な実験によって、相談役としてのLLMの実用性を検討する必要があります。   3. 徳や感情を持っていないLLMが、倫理的な手本になりうるか? 文学作品や映画作品の多くは、作者と直接対話を行うことができない環境で鑑賞されています。物語の作者のことを知らずとも、物語のキャラクターを手本として徳を育み、身に着けることができるのであれば、LLMが感情の機微に欠けており、倫理的な態度や徳を有していないとしても、出力されたシナリオや回答を手本とすることができる可能性はあります。 倫理的手本としてのLLMの実用性は、作成者の情報や手本とする存在の実在など、様々な条件を考慮したうえで、教育的実験を通じて実証的に検証される必要があります。   4. 更新の作業が必要なら、医学教育の役に立たないのではないか? 人間と人間のコミュニケーションにおいても、世代間で価値観に相違が生じるなど、バイアスが表面化することがあります。たとえば、ワークライフバランスの取れた生活を求めるといった価値観は、世代間で異なった受け取られ方をするかもしれません。 このように、徳や価値観が時代や文化によって変化することを教師も認識しなければなりません。 LLMと人間の教師による教育を組み合わせることによって、学生と教師の対話、徳や価値観に対する批判的反省、相互学習の機会の場を促進することができるかもしれません。 LLMと利用者のバイアスを認識し、取り除くという更新の作業は、人的なリソースを必要としますが、最終的にはより公正でしっかりした医療倫理の枠組みを構築することに繋がる可能性があります。   今後の展開 LLMを医学倫理教育で活用するためには、実用性を測定するための実証的な検証が必要です。 人間の教育者が割く時間の増加を抑えつつ、より高品質な教育を実現するため、LLMと教育者の協力関係の構築について、検討を進めることが望まれます。 より実用的な回答を出力するために、専門家や教育機関によるフィードバックを得ながら、LLMのファインチューニングを進めていくことが求められます。   謝辞 本研究は、以下の支援により実施しました。   日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 若手研究 「経験的生命倫理学における方法論の構築とその応用」21K12908 (研究代表者:澤井努) 上廣倫理財団論文投稿助成[UEHIRO2023-0116]   参考資料 Ethical Exemplar in Medicine https://chatgpt.com/g/g-EjSMhG7W1-ethical-exemplar-in-medicine   用語解説 *1:LLM(Large Language Models、大規模言語モデル) ChatGPTに代表される生成AIモデルの1つで、膨大な文章データを元に学習を行い、人間の会話や文章から単語の出現確率をモデル化する技術。単語の並びから言語のルールや文脈を学習し、人間が自然だと思う文章を生成したり、文章表現を分析したり、文章の翻訳や要約をしたりすることに用いられる。   *2:ファインチューニング LLMに対する追加学習の1つ。事前学習を行ったLLMに対して、特定の課題や分野に特化した新たなデータを学習させるプロセス。 特定の分野のニーズに合わせてLLMをトレーニングできるため、より精度が高く、有用な情報を提供できるよう、カスタマイズすることができる。   *3:医療倫理の4原則 アメリカの倫理学者であるトム・ビーチャムとジェイムズ・チルドレスが提唱した4原則。自律性の尊重、無危害、善行、正義の4つからなる。 自律性の尊重:患者自身の決定や意思を大切にして、患者の行動を制限したり、干渉したりしないこと。 無危害:患者に危害を及ぼさないことや、今ある危害や危険を取り除き、予防すること。 善行:患者のために、患者の考える最善の善行を行うこと。 正義:患者を平等かつ公平に扱うこと。   報道発表資料(560.34 KB) 学術誌: BMC Medical Education 広島大学研究者ガイドブック (片岡 雅知 寄附講座准教授) 広島大学研究者ガイドブック (澤井 努 特定教授)   【お問い合わせ先】 大学院人間社会科学研究科 人間総合科学プログラム 上廣応用倫理学講座 担当:兼内伸之介(特任学術研究員) Tel:082-424-6594FAX:082-424-6990 E-mail:shinnkan*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    • 融合領域
    2026.01.19
    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    • 融合領域
    【フェニックスセミナー2025まとめ】AI/DX研究の最前線

    概要 フェニックス協力会主催(広島大学AI・データイノベーション教育研究センター共催)にて、2026年1月19日に広島駅前コンベンションホールにて、フェニックスセミナー2025(研究シーズ発表会)を開催しました。   当日は、企業や研究者など70名ほどが参加し、若手研究者によるAI/DXの研究の最前線についての発表がありました。セミナー後は、懇親会も開催。直接研究者とコミュニケーションをとることで、研究とビジネスをつなげるきっかけの場となりました。   発表内容の詳細 信頼性工学 × 生成AI:Nバージョンプログラミングを再考する(鄭 俊俊)   プライバシーを守る次世代AIの実践と応用(連 卓涛)   モノの形の最適化(松島 慶)   情報科学×医学の融合研究(檜垣 徹)   生体信号情報のAI解析と医療・インタフェース応用(古居 彬)   深層学習・ニューラルネットワークによる視覚表現学習(相澤 宏旭)   ウェーブレットに基づいた円滑化技術による寿命分析の改善に関する検討(呉 敬馳)     フェニックス協力会とは 「地域社会・国際社会との共存」を具現化する取組みとして、2010年11月、地域社会、特に地域産業界への更なる貢献を目的として設立。 150社ほどの企業・団体が所属し、広島大学オープンイノベーション本部産学連携部門(事務局)から、産学連携に関連する情報発信や、会員企業の皆さまにご活用いただけるさまざまなサービスなどを発信しています。

    • 食料/農林水産業
    • デジタル/AI
    • 海洋
    2026.04.07
    • 食料/農林水産業
    • デジタル/AI
    • 海洋
    チリの赤潮発生を高精度で予測する新手法を開発 ―日本・チリ国際共同研究で養殖産業を守る早期警戒システム構築に道筋―

    本研究成果のポイント 世界第2位のサーモン養殖国であるチリにおいて、養殖産業に甚大な被害をもたらす有害藻類ブルーム(赤潮)*1の発生を予測するための3つの新しいモデル(物理モデル、AIモデル、経験的動的モデル(EDM)*2)を開発しました。 経験的動的モデルにより、植物プランクトン種間の因果関係を利用して有害藻類の発生を予測することに成功しました。予測精度は相関係数0.733と高い値を示しました。 本研究はJST/JICA SATREPS*3プログラム「MACHプロジェクト」の成果であり、チリにおける持続可能な水産業の発展に貢献することが期待されます。   概要広島大学IDEC国際連携機構のIshara Perera特任助教(現:山口大学共同獣医学部助教)、丸山史人教授は、チリ国立水産開発研究所(IFOP)、ラフロンティア大学、北海道大学、水産研究・教育機構などと共同で、チリ・パタゴニア地域における有害藻類ブルーム(赤潮)の発生を予測するための新たな複合モデリング手法を開発しました。本研究では、粒子追跡モデル(Parti-MOSA)、長短期記憶ニューラルネットワーク(LSTM)、および経験的動的モデル(EDM)という3つの予測手法を比較し、特にEDMを用いた手法では有害藻類であるPseudo-nitzschia seriataグループの発生予測において相関係数0.733という高い予測精度を達成しました。さらに、生物種間の因果関係に基づいて赤潮発生を予測するEDMの実用的応用は世界的にも例がなく、本研究は物理モデルやAIなど異なる手法を組み合わせることで赤潮早期警戒システムの予測精度を向上し得ることを示しました。 本研究成果は、2026年1月14日に生態学・環境科学分野のトップジャーナル(Q1、上位5%)である「Ecological Informatics」に掲載されました。 Multivariate S-map法により因果種を用いて予測された Pseudo-nitzschia 属の種群。予測精度は、ピアソン相関係数および p 値によって評価した。サブプロット(a, b)は Quellón、(c, d)は Melinka、(e, f)は Metri における結果を示す。 3つのSATREPSモデルを結合するためのプロトタイプ手法   背景有害藻類ブルーム(HAB、赤潮)は、特定の植物プランクトンが大量発生して海水が変色する現象です。養殖魚の大量死や貝類への毒素蓄積を引き起こし、世界中の水産業に深刻な経済的被害をもたらしています。チリは世界第2位のサーモン生産国であり、冷凍ムール貝の世界的輸出国でもありますが、過去数十年にわたりチリ南部はHABによる甚大な被害を受けてきました。2016年には、Pseudochattonella verruculosaのブルームによりチリのサーモン生産の18〜20%が影響を受け、約8億米ドルの損失が発生しました。 HABがどこでいつどの規模で発生するか予測することは、沿岸漁業や養殖業を守るために極めて重要ですが、HABを引き起こす藻類種の生態は複雑で、それぞれの種が環境条件に多様に応答するため、正確な予測は困難とされてきました。   研究成果の内容本研究では、JST/JICA SATREPSプログラム「MACHプロジェクト(Monitoring of Algae in Chile)」の一環として、HAB予測のための3つの異なるアプローチを適用しました: 1. 粒子追跡モデル(Parti-MOSA):海洋物理モデルを基盤とし、HAB細胞の海流による輸送をシミュレートします。これにより、ブルームの空間的な拡散を予測できます。 2. LSTMニューラルネットワーク:DNAメタバーコーディングによるホロバイオーム*4監視データと環境パラメータを組み合わせた深層学習モデルです。環境条件のみから有害藻類種の存在を予測できます。 3. 経験的動的モデル(EDM):30年間にわたる長期植物プランクトンモニタリングデータを用いて、HAB原因種と他の植物プランクトン種との因果関係を同定し、この関係を利用することでHABの発生を予測できます。 特にEDMを用いた解析では、チリ南部の3地点(Metri、Quellón、Melinka)でPseudo-nitzschia属(ドウモイ酸を産生する有害藻類)の発生を予測し、Metri地点のP. seriata群において相関係数0.733(p < 0.0001)という高い予測精度を達成しました。 また、Ceratium属やLeptocylindrus属といった植物プランクトンがPseudo-nitzschia属と因果関係を持つことも明らかにし、これらの種をモニタリングすることでHAB発生の早期警戒に活用できる可能性を示しました。   今後の展開本研究で開発した3つのモデルは、それぞれ異なる強みを持っています。Parti-MOSAはブルームの空間的拡散を予測でき、LSTMは環境条件から有害藻類種を検出でき、EDMは生物間の相互作用を利用して発生の有無を予測できます。これらのモデルを組み合わせた複合予測システムにより、より信頼性の高いHAB早期警戒システムの構築が期待されます。 今後は、リアルタイムの種同定技術(AIを搭載した画像認識装置など)との統合や、環境変数との組み合わせによってさらなる予測精度の向上を目指します。本研究の成果は、チリのみならず世界各地でHABに悩まされる沿岸地域への応用が期待されます。   発表論文・掲載雑誌:Ecological Informatics(生態情報学) ・論文題目:“A prototype coupled modeling approach for predicting harmful algal blooms: A case study in Chile” ・著者:Ishara Uhanie Perera, So Fujiyoshi, Daiki Kumakura, Carolina Medel, Kyoko Yarimizu, Osvaldo Artal, Pablo Reche, Oscar Espinoza-González, Leonardo Guzman, Felipe Tucca, Alexander Jaramillo, Jacqueline J. Acuña, Milko A. Jorquera, Shinji Nakaoka, Satoshi Nagai, Fumito Maruyama* (*責任著者) ・DOI:10.1016/j.ecoinf.2026.103615   用語解説*1 有害藻類ブルーム(HAB、赤潮): 特定の植物プランクトンが急激に増殖し、海水が変色する現象。魚介類への毒素蓄積や酸欠による大量死を引き起こし、水産業に甚大な被害をもたらす。 *2 経験的動的モデル(EDM): 複雑な生態系の時系列データから因果関係を推定する非線形解析手法。従来の統計モデルでは捉えきれない生物間の相互作用を検出できる。 *3 SATREPS: Science and Technology Research Partnership for Sustainable Developmentの略。JST(科学技術振興機構)とJICA(国際協力機構)が共同で実施する、開発途上国との国際共同研究プログラム。本課題の詳細URLはこちら。https://mge.hiroshima-u.ac.jp/SATREPS_MACH/ *4 ホロバイオーム: 真核生物とその共生微生物の総ゲノム。HABの発生は、関連する微生物群集の影響を受ける可能性がある。   報道発表資料(587.03 KB) 掲載ジャーナル:Ecological Informatics 研究者ガイドブック(丸山 史人教授)   【お問い合わせ先】 広島大学 IDEC国際連携機構 Center for the Planetary Health and Innovation Science (PHIS) 教授丸山 史人(まるやま ふみと) Tel:082-424-7048 E-mail:fumito*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 介護/福祉
    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    2026.04.13
    • 介護/福祉
    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    人工呼吸器を外した後に起こる「抜管後肺炎」(PEP)を独立した疾患として初めて提唱—3万例超のビッグデータでリスク要因を初めて明らかに—

    本研究成果のポイント 予定全身麻酔手術患者3 万例超のビッグデータ(DPC(注1)、レセプト(注2)を解析しました。 抜管後に発症する肺炎(PEP)(注3)が人工呼吸器関連肺炎(VAP)(注4)より多い可能性が示されました。 PEP のリスク因子として、高齢、やせ・低栄養、もともとの生活機能低下が抽出されました。 これまで見過ごされてきたPEP を「独立した臨床概念」として提唱しました。   概要広島大学病院の摂食嚥下支援チームは、予定全身麻酔下手術患者を対象に、「抜管後肺炎(postextubation pneumonia: PEP)」の発症頻度とリスク因子を、診断群分類(DPC)データおよび診療報酬(レセプト)データを用いて解析しました。 その結果、31,828 例中212 例(0.67%)でPEP を発症し、これは従来重視されてきた人工呼吸器関連肺炎(VAP)よりも頻度が高いことが明らかとなりました。さらに、PEP は主に抜管後1~2 週間以内に集中して発症し、特に高齢、やせ・低栄養、もともとの生活機能低下患者でリスクが高いことが示されました。 本研究は、PEP を『嚥下障害を基盤とする独立した病態』として位置づけ、早期からの嚥下評価と多職種による介入の重要性を示した大規模データに基づく研究です。   背景人工呼吸器管理中に発症する肺炎(VAP)は広く知られていますが、抜管後に発症する肺炎については、これまで体系的に研究されていませんでした。 抜管後には、嚥下機能低下、咽頭・喉頭の感覚障害、呼吸と嚥下の協調障害などが生じやすく、誤嚥リスクが高まります。 しかし、この病態は、術後合併症などとして扱われ、嚥下障害に注目した独立した疾患概念として扱われてこなかったのが現状です。   研究成果の内容〇 対象:予定全身麻酔手術患者 35,535 例⇒最終解析:31,828 例 〇 方法:DPC、レセプトデータを抽出し、統計解析を実施。 〇 結果: PEP 発症率:0.67%(212 例) VAP 発症率:0.08%(27 例) PEPのリスク因子: 高齢、男性、低BMI、意識障害、ADL(注5)不良 PEPの発症時期:抜管後1週間以内に約80%、2週間以内に約93%   これらの結果から、PEPはVAP等とは異なる独立した病態であり、周術期管理の盲点となってきた一方で、予防可能な肺炎であることが明らかになりました。   今後の展開今後は、多施設連携によるビッグデータ解析を進めるとともに、アプリやAIを活用して、嚥下機能のスクリーニングから評価、介入、リハビリまでを一体化した支援体制の構築を目指します。 さらに、本研究で提唱した「抜管後肺炎(PEP)」という新たな概念により、これまで見過ごされがちであった“人工呼吸器を外した後の危険な時期”に注目した医療が可能になります。これにより、早い段階から嚥下の機能を評価し、多職種で予防的な対応を行うことで、肺炎の発症を防ぎ、術後の回復を早めることが期待されます。 本成果は、患者さんの負担軽減や入院期間の短縮につながるだけでなく、医療全体の質の向上にも貢献することが期待されます。   発表論文 掲載誌:Scientific Reports 論文タイトル:Risk factors for postextubation pneumonia using diagnosis procedure combination and claims data in Japan 著者:Junko Hirayama, Masahiro Nakamori*, Akihiro Matsumoto, Sanmei Chen, Kohei Yoshikawa, Yasushi Horimasu, Kohei Ota, Hirotsugu Miyoshi, Yoko Shimpuku, Yoko Sato *:責任著者 ・DOI:10.1038/s41598-026-44666-3   参考資料図抜管後肺炎(PEP)の発症時期の分布 抜管後肺炎(PEP)の発症時期を解析した結果、約80%が抜管後1週間以内、約93%が2週間以内に発症していることが明らかとなりました。このことは、人工呼吸器を外した後すぐの期間が最も危険な時期であることを示しており、術後早期から(術前の段階での評価と介入が最も望ましい)の嚥下機能評価や多職種による予防的介入が重要であることを示唆しています。   用語解説(注1)診断群分類(Diagnosis Procedure Combination:DPC):日本の入院医療における診療報酬制度の一つで、診断名や治療内容に基づいて医療費を包括的に評価する仕組みです。全国的に標準化されたデータであり、大規模臨床研究に活用されています。   (注2)レセプト(診療報酬明細書):医療機関が保険診療の内容に基づいて、医療費を請求するために作成する明細書です。診断名、処置、手術、投薬、検査などの詳細な医療情報が記録されており、日本では全国で統一された形式で管理されています。本研究では、このレセプトデータを活用することで、多数の患者を対象とした大規模な解析が可能となりました。   (注3)抜管後肺炎(Postextubation pneumonia: PEP):人工呼吸器を使用するために挿入した気管チューブを抜いた後に発症する肺炎です。抜管後は、嚥下(飲み込み)機能の低下や気道防御機能の障害により、食物や唾液が気管に入りやすく(誤嚥)、肺炎を引き起こすことがあります。本研究では、抜管後30日以内に新たに抗菌薬治療を要した肺炎をPEPと定義しました。   (注4)人工呼吸器関連肺炎(Ventilator-associated pneumonia: VAP):人工呼吸器を装着している間に発症する肺炎です。気管チューブや人工呼吸器回路への細菌の付着・増殖が主な原因とされ、集中治療領域で重要な院内感染症として知られています。   (注5)日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL):食事・移動・排泄・入浴など、日常生活に必要な基本的な動作能力のことです。 本研究では、ADLが低い患者ほど肺炎リスクが高いことが示されました。   報道発表資料(257.15 KB) 掲載ジャーナル:Scientific Reports 研究者ガイドブック(中森 正博 講師)   【お問い合わせ先】 大学病院脳神経内科 講師中森正博 Tel:082-257-5201 Fax:082-505-0490 E-mail:mnakamo*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • デジタル/AI
    2026.01.19
    • デジタル/AI
    信頼性工学 × 生成AI: Nバージョンプログラミングを再考する

    アピールポイント 高コストなNバージョンプログラミング(N-version programming, NVP)を、生成AIにより現実的な手法として再構築 NVPの本質を保ったまま、開発・運用コストを大幅に削減 高信頼性が求められるソフトウェア分野への応用が期待される   研究者のねらい NVPは、ソフトウェアの信頼性を高める有効な手法として知られており、実際に飛行制御などの安全最優先システムでも採用されてきた。一方で、複数人による独立開発が前提となるため、開発・運用コストが非常に高く、一般的なソフトウェア開発への適用は限定的であった。本研究は、この「有効だが使いにくい」NVPに着目し、生成AIを活用することでNVPの本質的な考え方を保ったまま,低コストで実現可能な形へと再構成することを目的とし、NVPをより広いソフトウェア分野でも現実的に活用できる道を探る。   研究内容 ① 課題:NVPは有効だが、使える場面が限られている ・NVPは、飛行制御などの安全最優先システムで実績のある信頼性向上手法 ・ただし、人手による多重開発は非常に高コスト ・そのため、一部の重要システムにしか使えない → 良い技術だが、誰でも使える技術ではなかった   ② 着眼点:NVPの「本質」を保つ ・NVPの本質は、複数の独立した実装による相互チェック ・この考え方自体は、今も有効   ③ 提案:生成AIを用いた低コスト化 ・生成AIを活用し、同一仕様から複数の実装を生成 ・生成条件やモデル設定を調整し、実装の多様性を確保 ・人手による多重開発を、生成AIによって代替 → NVPの思想を維持したまま、コストを大幅に削減   ④ 効果:NVPの再現実化 ・複数結果を統合(多数決)することで、誤りリスクを低減 ・高コストだったNVPを、より身近なソフトウェアへ N-version programming, NVP   関連情報 【論文】Zheng J, Okamura H, Dohi T: Can Generative AI Enhance the Effectiveness of N-Version Programming? SFPVV 2025, LNCS 16356, pp. 1-16, 2026. 【知財】なし   研究者 鄭俊俊ZHENG JUNJUN 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    • 医療/ヘルスケア
    2026.04.20
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    • 医療/ヘルスケア
    日本のB型・C型肝炎の持続感染者(キャリア)数は大幅に減少し、WHO目標をほぼ達成~全国規模の疫学ビッグデータと数理モデルにより、2020年時点の感染状況と2050年までの将来予測を提示~

    本研究成果のポイント 日本では、B型肝炎(HBV)・C型肝炎(HCV)の診断率および治療率が国際的にも高水準であり、WHOが掲げる2030年肝炎排除目標(診断率90%、治療率80%)を概ね達成しており、欧米を含む多くの国で達成が道半ばである中、日本は国際的にも先行している国の一つと考えられます。 日本におけるHBV・HCVの持続感染者(キャリア)数は、2000年の300–366万人から、2020年には110–142万人へと大幅に減少していました。 特に、検査未受検(undiagnosed)のキャリアが大きく減少し、医療機関受療済み(患者およびHCVの治癒)が増加しており、検査・受療体制の進展が反映されていると考えられます。 将来予測では、HBV・HCVともに減少傾向が続き、特にHCVは2050年までに2万人以下となる可能性が示されました。   概要 広島大学の大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学の秋田智之講師、田中純子理事副学長らの研究グループは、日本におけるB型肝炎(HBV)およびC型肝炎(HCV)の感染者数を全国規模で推定するとともに、2050年までの将来予測を行いました。 その結果、日本ではHBV・HCVの診断率および治療率が国際的にも高水準であり、WHOが掲げる肝炎排除目標を概ね達成していることが明らかになりました。 2020年時点の推定では、HBVキャリアは約92–94万人、HCVキャリアは約18–48万人であり、2000年以降大幅に減少していました。特に検査未受検(undiagnosed)のキャリアはHBVで約5万人、HCVで約3万人と推定され、過去の推定と比較して顕著な減少が認められました。 将来予測では、HBV・HCVともに減少が続くと見込まれ、特にHCVでは治療の進展により、2050年までに2万人以下となる可能性が示されました。 本研究では、全国のレセプトデータ(National Database: NDB)や公的統計、疫学データを統合し、状態遷移モデル(Markovモデル)を用いて解析を行いました。   発表論文 掲載誌:Hepatology Research (Q1, IF: 3.4) 論文タイトル: Updated Burden and Long-Term Projections of Chronic Hepatitis B and C in Japan: A Nationwide Markov Modeling Study 著者名: Junko Tanaka 1, Akemi Kurisu 2, Ko Ko 2, Aya Sugiyama 2, Tomoyuki Akita 2*   1. Hiroshima University, Japan 2. Department of Epidemiology, Infectious Disease Control and Prevention, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University, Japan   *Corresponding author, DOI: 10.1111/hepr.70174   背景 B型・C型肝炎は、肝硬変や肝がんの主な原因であり、世界的に重要な公衆衛生課題です。世界保健機関(WHO)は、2030年までにウイルス性肝炎を公衆衛生上の脅威として排除する目標を掲げていますが、多くの国ではその達成は依然として困難とされています。 日本では、B型肝炎母子感染対策、輸血用血液・血液製剤の安全性向上、さらに抗ウイルス治療の進歩により、長年にわたって肝炎対策が推進されてきました。その結果、診断や治療の体制は世界的に見ても高い水準にあります。 しかし、これまでの研究では、最新の全国規模データを用いて感染者数の現状と将来予測を統合的に評価したものは限られており、日本が肝炎排除にどの程度近づいているのかを定量的に示した研究は十分ではありませんでした。   研究成果の内容 本研究では、HBVあるいはHCVの持続感染者(キャリア)を以下の6つの状態に分類し、包括的に評価しました。 ▷検査未受検のキャリア(undiagnosed) ▷検査受検済だが未受診のキャリア (diagnosed but not linked to care) ▷医療機関受診中の患者 (Patients in care) ▷新規感染によるキャリア ▷治癒 (HCVウイルス学的著効例) ▷死亡 その結果、日本では診断率(diagnosis rate)はHBVで約95%、HCVで82–93%、治療率(treatment rate)はHBVで83–84%、HCVで78–100%と推定され、WHOが掲げる肝炎排除目標(診断率90%、治療率80%)を概ね達成していると考えられました。 また、検査未受検(undiagnosed)のキャリアが大幅に減少していることが明らかとなり、検査体制および医療へのアクセスの改善が示唆されました。 将来予測では、HBV・HCVともに持続感染者数の減少が続くと見込まれ、特にHCVでは治療の進展により大幅な減少が予測されました。   今後の展開 日本は肝炎対策において世界的にも先進的な国の一つであり、本研究はその成果を全国規模で定量的に示したものです。 今後は、肝炎排除の達成に向けて、PWID(注射薬物使用者)やMSM(男性間性交渉者)などのハイリスク集団における感染状況の把握と、対策の強化が引き続き重要となります。 また、本研究で用いた解析手法は他国にも応用可能であり、国際的な肝炎対策の評価や政策立案への貢献が期待されます。   【参考資料】日本におけるHCV・HBVのCascade of care(2020年時点) 用語解説(※1)B型肝炎ウイルス(HBV): 血液や体液を介して感染するウイルスで、主に母子感染や性的接触などにより感染します。慢性化すると肝硬変や肝がんの原因となります。日本では主に母子感染や幼少期の感染による慢性化が多いとされています。 (※2)C型肝炎ウイルス(HCV): 主に血液を介して感染するウイルスで、過去には輸血や医療行為を通じた感染が問題となりました。慢性化すると肝硬変や肝がんに進展することがありますが、現在は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)により高い確率で治癒が可能です。 (※3)NDB(National Database): 日本全国の医療機関で保険診療として行われた診療情報(レセプト)や特定健診のデータを集約したデータベースです。国が管理しており、全国規模で医療の実態を把握するための研究などに活用されています。 (※4)Markovモデル(マルコフモデル): 時間の経過とともに人の状態(健康、病気、治療、死亡など)が一定の確率で変化していく様子をシミュレーションする数理モデルです。将来の患者数や病気の進行を予測するために、疫学研究や医療政策の評価で広く用いられています。   報道発表資料(780.36 KB) 国際学術誌:Hepatology Research 研究者ガイドブック(秋田 智之 講師)   【お問い合わせ先】大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 講師秋田智之 Tel:082-257-5162FAX:082-257-5164 E-mail:epi*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • デジタル/AI
    2026.01.19
    • デジタル/AI
    プライバシーを守る次世代AIの実践と応用

    アピールポイント 個人情報を外部に出さずに、企業内データを用いたAI活用を可能にする 医療・金融など、データ共有が難しい現場における分析・予測業務への応用を想定 セキュリティやコンプライアンス面の負担を抑え、AI導入の実務的ハードルを低減   研究者のねらい 企業や組織がそれぞれ保有するデータを活用し、複数主体が協力してAIモデルを構築するニーズが高まっている。一方で、個人情報や機密情報の取扱いが課題となり、データ共有が現実的でない場面も少なくない。本研究では、データを外部に出さずにAIを活用できる仕組みに着目し、こうした制約下での実用的なAI利用を検討する。金融分野での不正取引自動検知や医療分野での診断支援といったケースを想定し、企業や組織が既存の業務環境の中で段階的にAIを導入できる社会実装を目指す。   研究内容 1.連合学習により、プライバシーを保護しながら医療データを分析 患者データは共有せず、モデル更新情報のみを用いて協調的に診断支援モデルを構築   データ集中型学習と比較して近い性能が得られることを確認した   複数機関による協調学習は、単一機関による学習と比較して性能向上に寄与することが示された   2.差分プライバシーによるプライバシー保護の強化 統計的ノイズを付加することで、個人情報の推定リスクを低減し、プライバシー保護を実現する。   ↓連合学習との組み合わせ ————————————————————————————- モデル更新情報を通じた個人情報の推定リスクを低減し、プライバシー保護をさらに強化することが可能 ————————————————————————————-   3.秘密計算による安全なデータ利活用 秘密計算を活用することで、元データを一切開示することなく、データの結合・分析が可能となる、とされている。   関連情報 【論文】Z. Lian et al., “Privacy-Enhanced Federated WiFi Sensing for Health Monitoring in Internet of Things,” in IEEE Internet of Things Journal, vol. 12, no. 3, pp. 2994-3002, 1 Feb.1, 2025. 【知財】なし   研究者 連卓涛LIAN ZHUOTAO 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 助教

    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    2026.04.30
    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    日本人の健康関連QOLが7年間で一貫して低下 ―特に就労世代で顕著―<2017・2020・2024年度の全国大規模調査で判明>

    概要 広島大学大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 平子哲夫客員教授、秋田智之講師、杉山文講師、田中純子特任教授、福間真悟教授の研究グループは、COVID-19流行中を含む2017年度・2020年度・2024年度に実施された全国ランダムサンプリング調査を用いて、日本人成人の健康関連QOL(Health-related Quality of Life:HRQoL)の時系列変化を分析しました。国レベルでCOVID-19の流行前・流行中・流行後のHRQoLを比較した研究は国内外に類例がなく、世界的にも貴重な知見を提供するものです。 その結果、日本人成人の全国平均HRQoLは、過去7年間にわたり一貫して低下していることが明らかとなりました。特に、男性では40〜69歳、女性では30〜59歳の就労世代で低下が顕著であり、都道府県別の推定でも、ほぼ全国的に同様の傾向が確認されました。 本研究成果は、国際学術誌 「Scientific Reports」 に掲載されました(2026年4月9日)。   発表論文 掲載誌:Scientific Reports (Q1, IF: 3.9) 論文タイトル:Longitudinal changes in health related quality of life in Japan based on nationwide surveys and Bayesian regional estimates(全国調査とベイズ推定による地域別推計に基づく日本の健康関連QOLに関する経年的変化) 著者名:Tetsuo Hirako, Tomoyuki Akita*, Aya Sugiyama, Junko Tanaka , Shingo Fukuma (平子哲夫、秋田智之、杉山文、田中純子、福間真悟)*責任著者 DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-026-45692-x   背景 日本では高齢化の進行、労働環境の変化、慢性疾患の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響など、国民の健康状態に影響を及ぼす要因が複雑化しています。 健康関連QOL(HRQoL)は、疾病負担や生活の質を標準化した総合的評価指標として、広く用いられ、健康・医療政策や地域施策などにおいて重要性が高まっています。 しかし、全国規模のランダムサンプリングに基づく時系列データは極めて限られており、小標本を含む都道府県別の変化を精度高く把握した研究はほとんどありませんでした。   研究の方法 本研究では、2017年度、2020年度、2024年度に実施された一般住民を対象に実施した肝炎ウイルス検査受検状況調査に含まれるHRQoL項目を解析に用いました。 対象:20〜85歳の日本人成人 調査方法:層化二段抽出法による全国ランダムサンプリング 有効回答数:2017年度:10,204人(34.0%) 2020年度:8,810人(44.1%) 2024年度:4,428人(29.5%) HRQoL指標:標準化された国際的な健康関連QOL指標であるEQ-5D-3L(日本語版) 都道府県別推定:性・年齢調整に加え、経験的ベイズ法1)を用いて小標本の不安定性を補正   本研究は厚生労働科学研究費補助金(H25-kanenippan-010, H28-kansei-ippan-001, H29-kansei-shitei-001, 19HC1001, 20HC2002, 22HC1001, 23HC2003)の支援を受けて実施しました。 本研究は広島大学の倫理審査委員会の承認を得て実施しました。   研究の主な結果 全国平均HRQoL値の推移 ▷ 0.9133(2017年度)→0.8977(2020年度)→0.8834(2024年度)と7年間で緩やかだが一貫して低下。 就労世代でのHRQoL値の低下が顕著 ▷ 男性:40〜69歳、女性:30〜59歳で統計的に有意な低下(P < 0.05)。 HRQoLの低下には「痛み/不快感」、「不安/ふさぎ込み」の影響が大きい。 ▷ 何らかの問題がある回答者の割合 (男性) (女性)   都道府県別の傾向 ▷ 経験的ベイズ法による推定では、ほぼ全ての都道府県でHRQoL値が低下しており、地域差を含めた全国的な傾向であることが確認されました。 各HRQoL推計値上位の1-5位 各HRQoL推計値下位の43-47位   考察・社会的意義 本研究は、世界的にも貴重な、国レベルでのCOVID-19の流行前中後を含む7年間のHRQoLを比較した初の大規模研究です。 COVID-19の流行時には医療サービス利用の減少、身体活動量の低下、メンタルヘルスの悪化など、多くの間接的影響が報告されています。本研究は因果関係を直接検証するものではありませんが、就労世代での顕著なHRQoL低下は、こうした行動・社会的変化の累積的影響を反映している可能性があり、特に緩やかな低下が継続していることに注目が必要です。 都道府県別の状況把握は自治体の健康・医療政策の立案に有用であり、継続的に健康関連QOLのモニタリングを行うための手法が開発されたことは意義があります。 研究者コメント「今回の結果から、日本の就労世代における健康関連QOLは緩やかではありますが、確実に低下していることが示されました。今後の健康・医療政策や地域施策において、就労世代の健康支援策の検討に際し重要な基礎資料になると考えられます。今後も継続的に全国の健康関連QOLのモニタリングを行うとともに、その低下の原因について深く分析することが必要です。」   用語解説1)経験的ベイズ法:条件付き確率の関係式であるベイズの定理を用い、新しい情報(データ)が得られたときに、ある事象の確率を更新する統計手法の一つ。小さな標本サイズに起因する不安定性を解消する手法として用いられる。   報道発表資料(995.3 KB) 国際学術誌:Scientific Reports 研究者ガイドブック(秋田 智之 講師)   【お問い合わせ先】 大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 講師秋田智之 Tel:082-257-5160FAX:082-257-5164 E-mail:tomo-akita*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • デジタル/AI
    2026.01.19
    • デジタル/AI
    モノの「かたち」の最適化

    アピールポイント 「最適化」はAIの基盤技術であり、その理論と応用の拡張は社会的に重要 無数のデータで構成される情報をどのように最適化?→「形状最適化」 モノの「かたち」を最適化することにより、興味深い材料・現象を実現   研究者のねらい 最適化理論の基礎的な研究と、それを応用した工学材料の設計に関する研究を行っている。特に、モノの「かたち」を自在に制御することで、興味深い物性や現象を実現する材料・構造を追求している。通常、物体の形状を表現するデータの空間は非常に高次元、あるいは無限次元となるため、既存の理論は必ずしも十分でない。本研究室は変分理論に基づく最適化アルゴリズムの検討とその実証を行い、それらを先端的工学応用につなげるための研究を行っている。   研究内容 【形状/トポロジー最適化】 最適化:与えられた制約の下で目的関数を最大/最小化する変数を探す問題 形状/トポロジー最適化   強調したい文字 【メタマテリアルの設計】 メタマテリアル・・・直感に反する」現象を引き起こす材料/構造 負のポアソン比   【軽くて強い弾性材料】 最適化された「かたち」 1,軽い (体積が小さい) 2,外力に対してなるべく「変形しない」ような「かたち」を最適化により実現 【結び目を解く】   関連情報 【論文】Daichi Akamatsu, Kei Matsushima, Takayuki Yamada, Optimal design of cavity-free mechanical metamaterials exhibiting negative thermal expansion International Journal of Mechanical Sciences 283 (1), 2024   研究者 松島慶(MATSUSHIMA KEI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 助教

    • 介護/福祉
    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    2025.10.23
    • 介護/福祉
    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    脳生体ダイナミクスを捉える摂食嚥下機能リモート評価訓練システムの開発

    この研究成果は2025年10月23日に、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)主催で開催されました新技術説明会に出展しました。   新技術の概要嚥下は反射・随意運動と認知機能が複雑に関連して診断と訓練が行える施設が限られる。末梢交感神経を血管のかたさ(末梢血管剛性)で評価する独自のシーズ技術により、水蒸気のネブライザーでも喉頭感覚の評価と嚥下訓練が可能となり、水飲み動作と認知機能課題を組み合わせることによって嚥下障害の推定を可能とした。また、起立台と組み合わせて30度挙上という低負荷試験でも自律神経活動が評価でき、訓練に応用できることも確認した。   従来技術・競合技術との比較不顕性誤嚥と嚥下機能の評価は侵襲的で特殊な機器を使う嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査が一般的。嚥下音だけのウエアラブル検査装置は不顕性誤嚥の評価が困難であり、咳テストは認知機能や自律神経は評価できない。   新技術の特徴 認知・運動・嚥下機能を自律神経活動の変化から非侵襲的に評価(見える化)できる 家庭や施設など専門家不在の状況でも、摂食・嚥下機能と認知機能を調べて訓練できる可能性がある ネブライザー(吸入器)と起立台(ヘッドアップチルト)の侵襲性を低減して対象者を拡大できる可能性がある   摂食嚥下障害の社会的位置づけ 70歳以上高齢者の4人に1人が嚥下困難を自覚 脳卒中患者の4~8割に嚥下障害あり 440万人の認知症の半数に摂食障害と嚥下障害 令和4年の誤嚥性肺炎の死亡5.6万人 肺炎の医療費:2327億円/年 嚥下障害は重症化して肺炎に至るまで気づきにくく、栄養状態を悪化させて虚弱状態(フレイル)を招き、筋力低下による転倒、認知症、うつ病などのリスクを増大させる 令和3年の介護保険要介護・支援677万人 脳を起点とした感覚と摂食・嚥下機能 不顕性誤嚥と誤嚥性肺炎従来技術とその問題点 末梢交感神経活動の非侵襲的評価法 末梢血管剛性で嚥下を見える化 自律神経活動の評価法従来技術とその問題点 自律神経活動の一般的な評価方法にヘッドアップチルト試験がある。 頭側を60~70度挙上させると血液が下肢に移動して血圧が下がる。脳血流を維持するために交感神経が働いて脈拍が上がり、末梢血管が収縮して血圧を維持しようとする。この現象を利用して交感神経活動を評価するが、通常は心拍変動で評価する。 脳卒中患者では起立性低血圧による失神や脳梗塞再発リスクが高いため、検査困難なことが多い。 脳卒中患者では起立性低血圧による失神や脳梗塞再発リスクが高いため、検査困難なことが多い。 挙上角度が30度であれば、起立性低血圧のリスクは低く、ほぼ大部分の患者に行うことができるが、心拍の変動がほとんど抽出できないことから自律神経活動の評価は難しい。 末梢血管剛性による自律神経活動の評価 30度ヘッドアップチルト:患者と健常者の比較 患者16名(脳疾患等)に対して30°ヘッドアップチルト試験を行い、 健常者21名と比較   脳疾患などの患者に対して末梢血管剛性を用いると30°挙上の低負荷ヘッドアップチルト試験で自律神経(末梢交感神経)活動の評価ができる 30度ヘッドアップチルト:嚥下障害との関連性 蒸留水の吸入で喉頭感覚の見える化 蒸留水吸入で喉頭感覚の見える化と訓練 研究の全体像 新技術の特徴・従来技術との比較 従来技術の問題点であった嚥下に関連する感覚認識の客観的な評価が、末梢血管剛性を用いることで可能となった。 従来は不顕性誤嚥を嚥下内視鏡検査や刺激物の吸入で咳を誘発して喉頭感覚を調べる方法に限られていたが、末梢血管剛性によって低侵襲の蒸留水の吸入で評価・訓練できる。 末梢血管剛性によって、低負荷の30度ヘッドアップチルトで交感神経活動が評価・訓練できる。 本技術の適用により、慢性的なストレス社会で増加する心筋梗塞、うつ病などの原因となり、糖尿病やパーキンソン病にも併発しやすい自律神経失調症状を、誰でも気軽にチェック出来るようになることが期待される。   想定される用途 外来や入院で摂食・嚥下障害に対して評価と訓練をする時に使用。 入院してリハビリを行って何とか飲み込めるようになった嚥下機能を自宅や施設で維持したい。 嚥下機能や認知機能が気になって、自宅や施設で調べて、少し訓練もしたい時。   実用化に向けた課題 現在、ヘッドアップチルト試験あるいは嚥下機能検査で末梢血管剛性データを同時取得が可能なところまで開発済み。しかし、摂食嚥下機能・脳活動と末梢交感神経活動との関連性を明らかにする点と末梢血管剛性の計測装置の簡素化が未解決である。 今後、嚥下障害患者の脳病変・高次脳機能データを取得し、末梢血管剛性との関連性解析を行う。 実用化に向けて、末梢血管剛性の簡素化に向けた技術を確立する必要もあり。   社会実装への道筋 企業への期待 未解決の計測装置の簡素化については、末梢血管剛性の推定アルゴリズム、連続血圧波形の計測システムの修正により克服できると考えている。 ネブライザー、チルトベッド(起立台)、嚥下障害検査・訓練の技術を持つ、企業との共同研究を希望。 また、嚥下障害関連製品を開発中の企業、自律神経・ストレス分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。   企業への貢献、PRポイント 本技術は摂食・嚥下障害が、末梢血管剛性と蒸留水吸入を組み合わせることで、施設・一般家庭でも簡単にできる、従来にない製品開発の可能性があります。 30度ヘッドアップチルトでの自律神経評価は、多くの病院・クリニックでも行えて汎用性があります。 本技術は自律神経活動の異常が関連する多くの疾患やストレ ス関連分野など、応用範囲が広いです。 人の「脳活動」「こころ」の変化を見える化できることから、 スマホ社会の新たなアプローチになる可能性があります。   本技術に関する知的財産権 発明の名称 :嚥下能力評価装置、嚥下能力評価装置の作動方法及びプログラム 出願番号 :特願2025-077839 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :濱聖司、辻敏夫、山脇成人   産学連携の経歴 2社と各々1年ずつ共同研究実施 平成24年度 新産業創出研究会 公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター 研究会参加企業4社 平成25年度 新産業創出研究会 公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター 研究会参加企業5社 2021年度 JST研究成果展開事業A-STEPトライアウトタイプに採択 2022年-2025年 JST研究成果最適展開支援プログラムA-STEP産学共同<育成型> 10年以上にわたり、2社と共同研究実施   研究者濱聖司 脳・こころ・感性科学研究センター 特任准教授

    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    • 融合領域
    2026.01.19
    • デジタル/AI
    • 医療/ヘルスケア
    • 融合領域
    情報科学 × 医学 の融合研究

    アピールポイント 「情報科学」の画像処理等の技術と「医学」の画像診断の技術を組み合わせた研究 「情報科学 × 医学」の強い連携を活かした、臨床課題起点・臨床データ駆動型の研究 「医情連携 × 産学連携」による、研究成果の社会実装と臨床現場への還元   研究者のねらい 本研究は、放射線科医の臨床ニーズを起点とし、情報科学の専門性を有する研究者による画像処理・解析手法の研究開発を経て、医療機器メーカーとの連携による社会実装までを一貫して目指す医工産連携研究である。臨床現場における日常的なニーズに基づく研究テーマに始まり、実臨床に基づく検証を通じて実用性を重視した技術開発を進めている。研究成果を研究室内に留めることなく、医療機器としての実装・普及を視野に入れることで、放射線画像診断の質向上と臨床現場の負担軽減に貢献することを目的とする。   研究内容 深層学習を用いた医療用CT画像の画質改善 [1] 左:従来法右:深層学習   ✔ CT検査はX線を利用し、CT画像の画質は 撮影に使用した放射線強度に依存する ・被ばくを抑えて画質を保つ工夫が必要   ✔ 画像処理によりノイズ低減法はノイズを抑制すると同時に画像にボケが生じる ・画像診断においてはノイズ低減と共に空間分解能の高さも重要   ✔ 深層学習を利用したノイズ低減法 ・深層畳み込みニューラルネットワーク ・従来型のノイズ低減フィルタと比較して、空間分解能の劣化を抑えつつノイズを低減することができる ・検査による放射線被ばくのリスクを抑えつつ、高い診断能を保つことができ、患者に優しい検査が実施可能     全身循環モデルを用いた造影CT検査の造影シミュレーション [2][3] ✔ 造影剤を利用した造影CT検査 ・臓器コントラスト向上 → 診断能向上   ✔ 造影剤投与法や撮影タイミングが重要 ・体格等に依存し個人差が大きい   ✔ コンピュータシミュレーションで検証   関連情報 【論文】[1] Deep Learning Reconstruction at CT: Phantom Study of the Image Characteristics. Academic Radiology, 2020. [2] Minimizing individual variations in arterial enhancement on coronary CT angiographs using “contrast enhancement optimizer”: A prospective randomized single-center study. European Radiology, 2019.   【知財】[3] 特許:6740136シミュレータ、該シミュレータを備える注入装置又は撮像システム、及びシミュレーションプログラム   研究者 檜垣 徹HIGAKI TORU 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 ビジュアル情報学研究室 准教授

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