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    • 食料/農林水産業
    2026.02.10
    • 食料/農林水産業
    家畜の暑熱ストレス耐性と腸内環境 -環境保全型畜産管理に貢献する好熱菌の機能性評価-

    概要 理化学研究所(理研)生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの大野博司チームディレクター、宮本浩邦客員主管研究員、環境資源科学研究センター環境代謝分析研究チームの菊地淳チームディレクター、黒谷篤之特別研究員(研究当時)、光量子工学研究センター光量子制御技術開発チームの守屋繁春専任研究員、和田智之チームディレクター、九州大学大学院農学研究院の山野晴樹大学院生、髙橋秀之准教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の稲生雄大助教、北里大学医療衛生学部血液学研究室の佐藤隆司講師らの共同研究グループは、累積60万羽を超える採卵鶏の大規模調査の結果、高温環境下での鶏の死亡率を下げる飼育管理手法として好熱菌[1]群を活用した高温発酵飼料を溶液にして投与することが効果的であり、腸内環境の変化が暑熱ストレス耐性に関与し得ることを確認しました。 本研究の成果は、質の高い高温発酵飼料の活用が、高温条件下における家畜の生命維持につながることを示すとともに、その作用機序として腸内細菌叢(さいきんそう)の制御が重要である可能性を示唆しています。 地球温暖化がますます加速する中で、生命を脅かす暑熱ストレスが看過できなくなっています。「人」と「動物」と「環境」を包括的に捉えて守る「One Health(ワンヘルス)[2]」という概念の重要性が国際的に強調される中で、さまざまな分野で環境配慮型の新たな持続可能技術の開発が求められています。本研究では、高温発酵技術を活用することで、暑熱ストレス環境で飼育した鶏の死亡率が下がることを見いだすとともに、実際に糞便(ふんべん)を対象とした計算科学的なアプローチによって、高温発酵飼料が腸内細菌叢の構成比率と短鎖脂肪酸[3]の組成比率のバランスを改善している可能性を明らかにしました。 本研究は、Springer Natureの科学雑誌『Animal Microbiome』オンライン版(2月3日付)に掲載されました。   本研究の概要 背景 地球温暖化は、人間の健康と経済活動に深刻な損害を与えており、畜産業でも、熱波による家畜の死亡率の増加によって多大な経済的損失が発生しています。特に、鳥類は羽毛の覆いと汗腺の欠如により、暑熱環境における生理的な負荷(暑熱ストレス)の影響を受けやすいことが知られています。 暑熱ストレスは、免疫機能を低下させることによって感染症の流行にもつながる可能性もあるため、抗菌薬の過剰使用を助長する要因の一つにもなっています。抗菌薬の過剰使用は薬剤耐性菌の増加をもたらすことから、世界保健機関(WHO)は、家畜の成長促進のための抗生物質の使用廃止を含む、薬剤耐性(AMR)に対する行動計画を提示しています。このような背景から、暑熱ストレスが動物に及ぼす影響とその対策に関する研究は不可欠であり、行動学的および生理学的影響を含めて多面的に評価する必要があります。   近年、好熱性のバシラス科(Bacillaceae)を含む好熱菌群を用いた閉鎖系のバイオリアクター(生体触媒を用いて生化学反応を行う装置)を活用することで、未利用海産資源から植物の肥料や動物の飼料として有効な発酵物を持続的にリサイクル生産できることが報告されています注1)。これらの好熱菌の機能性は、理研内外のさまざまな共同研究の連携によって徐々に明らかになりつつあります。肥料として使用した場合は、空気中の窒素を固定して生産性に貢献しつつ、温室効果ガスである一酸化二窒素の発生を抑制する傾向があります。この肥料を使用した土壌微生物叢では病原性真菌やセンチュウなどによる被害が出にくい傾向も確認されました注2)。畜水産用の飼料の一部として少量添加することによって、母豚の死産率の減少や養殖魚の生産性の向上のみならず、その養殖場の近海での海草繁茂(ブルーカーボン(海洋炭素)への貢献)をもたらす可能性があることも明らかになりました注3)。さらに、好熱菌の一つであるカルディバシラス・ヒサシイ(Caldibacillus hisashii)(製品評価技術基盤機構国際寄託番号BP-863)は、家畜(ウシ)の腸内におけるメタン産生菌を減らす傾向があることが示されています注4)。腸内細菌叢の制御が、家畜由来の温室効果ガスの排出に貢献することは重要な知見と捉えられています注5)。   本研究では、このような環境改善機能を幅広く有する、好熱菌によって発酵させた高温発酵飼料の希釈溶液を飲水に極少量添加(飲水1cm3当たり100個の菌体数相当)することによって、暑熱環境下で飼育された鶏に対する死亡率の低減効果を評価するとともに、その効果を腸内細菌叢によって評価することを目的としました。   注1)宮本浩邦、宮本久、田代幸寛、酒井謙二、児玉浩明 日本生物工学会・生物工学技術賞受賞論文「好熱性微生物を活用した未利用バイオマス資源からの高機能性発酵製品の製造と学術的解明」生物工学会誌、第96巻、第2号 p.56-63(2018) https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9602/9602_gijutsu.pdf   注2)2023年4月12日プレスリリース「持続可能な農業のための堆肥-土壌-植物相互作用モデル」 https://www.riken.jp/press/2023/20230412_1/   注3)2023年1月12日プレスリリース「ブルーカーボンのための海草底泥の共生環境を予測」 https://www.riken.jp/press/2023/20230112_3/   注4)2022年3月25日プレスリリース「好熱菌を黒毛和種仔牛に投与!」 https://www.riken.jp/press/2022/20220325_4/   注5)2023年4月28日プレスリリース「抗菌薬に依存しない仔牛の飼養管理」 https://www.riken.jp/press/2023/20230428_1/   研究手法と成果 本研究では、120日齢の採卵鶏の四つのグループ(群)が準備されました(計約22万羽)。一つは秋期から飼育された非暑熱ストレス群(非暑熱区)で、夏期直前から飼育された三つの暑熱ストレス群(暑熱区1、暑熱区2、暑熱+好熱菌区)が試験対象となりました。そして、暑熱+好熱菌区には、飼育開始時より継続して、高温発酵飼料の100倍希釈溶液を飲水添加して1カ月間飼育管理しました。その結果、暑熱区1および2では、最高気温30度以上で、死亡率(特に壊死性腸炎が原因)が統計的に有意に増加しましたが、暑熱+好熱菌区では増加しにくい傾向が確認されました(統計学的有意差の指標p(数値が低いほど有意水準が高い)

    • 食料/農林水産業
    2026.02.20
    • 食料/農林水産業
    結晶の形と長さを制御し「油」を強く固める新技術 ~ゲルの壊れにくさを最大約40倍向上、食品や化粧品など幅広い分野での応用に期待~

    本研究成果のポイント 食品への応用が期待されるオレオゲル(※1)について、結晶化の際に行う温度調整工程であるテンパリングの温度を調整し、結晶の「長さ」を制御することで、材料の硬さを示す貯蔵弾性率(※2)が大きく向上することを確認。 オレオゲルを構成する脂質ウィスカー結晶(※3)の「形状」を、不純物の取り込みによって制御することで、変形しにくさを示す機械的強度(臨界ひずみ)(※4)を最大約40倍に高められることを実証し、食品等のテクスチャ制御が可能になることを示した。 結晶の「長さ」と「形状」という2つの要素を制御する新たな手法により、従来技術に比べ、安定的なオレオゲルの作製が可能となり、植物性食品(プラントベースフード、以下PBF)(※5)の食感改良(植物性代替肉のジューシーさなど)に貢献 できるオレオゲル作製の基盤技術の確立に期待。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科 中野郁也 氏(修士課程1年)、小泉晴比古 准教授、上野 聡 教授、ミヨシ油脂株式会社 大石憲孝 博士、浜本一洋 氏、北海道大学低温科学研究所 木村勇気 教授、山﨑智也 准教授との共同研究により、オレオゲルを構成する脂質ウィスカー結晶の形態制御技術を確立しました。 世界的な人口増加に伴い食糧供給の安定化が求められる中、タンパク質供給源としてPBFが注目されています。しかし、その大きな課題は「ジューシーさ」の再現が難しい点が挙げられます。オレオゲルは、この課題を克服する強力な手段とされています。本研究では、オレオゲルのゲル化剤として食経験が豊富な油脂(トリアシルグリセロール)である高純度PSP(1,3-ジパルミトイル-2-ステアロイルグリセロール(※6)を使用しました。そして、オレオゲルの物性(硬さや機械的強度)が、脂質ウィスカー結晶の「長さ」と「形状」の制御によって決定されることを明らかにしました。具体的には、結晶化の際に行う温度調整工程(テンパリング)の温度が上がると、結晶の長さが増し、貯蔵弾性率が増加することを明らかにしました。さらに不純物を意図的に利用することで結晶の形状を蛇行状に変え、臨界ひずみ(機械的強度の指標)を最大で約40倍も向上させられることを示しました。 この成果は、オレオゲルのテクスチャを自在に制御できる新たな基盤技術を確立するものです。PBFやパン、菓子、調味料といった加工食品だけでなく、サプリメントや化粧品、さらには工業製品まで、オレオゲルのテクスチャ制御が重要となるさまざまな分野での応用が期待されます。 本研究の成果は、国際的な科学雑誌Food Research Internationalのオンライン版に2025年12月4日付で掲載されました。   背景 地球規模での人口増加により食料不足のリスクが高まる中、持続可能な食料供給源として、大豆などの植物由来原料を用いたPBFが注目を集めています。その中でも代替肉は、ハンバーガーやソーセージなどの形態で既に市場に出回っていますが、動物性脂肪が持つ「ジューシーさ」を再現することが難しく、消費者への普及を妨げる主要な課題となっています。オレオゲルは、液体油を多量に保持するネットワーク構造を形成することで、代替肉のジューシーさの再現に強い可能性を秘めています。しかし、従来のオレオゲルに使用されるゲル化剤(低分子有機ゲル化剤など)には、食品としての利用経験が乏しいものが多いという課題がありました。 研究グループはこれまで、食経験が豊富なトリアシルグリセロール(TAGs)に着目し、完全水素添加パーム中融点画分(FHHPMF)(※7)を用いれば、僅か0.5 wt%という少量の添加濃度でゲル化が起こること、また、透過型電子顕微鏡(TEM※8)を用いて、これが脂質ウィスカー結晶の形成に起因していることを明らかにしてきました。この脂質ウィスカーオレオゲルは、ネットワークの不安定化が起こりにくく、20℃で4ヶ月間油漏れがないという高い保存安定性を持つため、実際の食品応用への期待が高まっていました。   研究成果の内容 本研究では、高純度PSP(FHHPMFの主要成分)を用いて、オレオゲルの物性を制御するための鍵となる、脂質ウィスカー結晶の成長メカニズムを詳細に解明しました。オレオゲルの貯蔵弾性率(ゲルの硬さの指標)を測定したところ、テンパリング温度を30℃以上に高めることで貯蔵弾性率が大きく増加することが判明しました。これは、テンパリング温度の上昇によって脂質ウィスカー結晶の長さが増し(図1)、オレオゲル内部のネットワーク構造がより発達したためです。結晶の成長速度が増加した背景には、高温下で結晶表面が粗くなる「ラフニング転移」が起こり、分子の取り込みサイトが表面全体に増えたことが寄与していると考えられます。また、テンパリング温度を40℃まで上げると、蓄積ひずみが大幅に減少し、結晶子サイズが約240 nmに達することも確認されました。これにより、40℃でテンパリングしたオレオゲル中の脂質ウィスカー結晶のTEM観察では、長周期構造を持つ材料に特有の電子線回折パターンが観測され、結晶品質の著しい向上が示されました。また、高純度PSPから作製された脂質ウィスカー結晶は直線状であるのに対し、不純物を37.2%含むFHHPMFから作製された結晶は蛇行した(波打った)形状を示しました。この形状の違いがオレオゲルの機械的強度に及ぼす影響を調べたところ、蛇行状の結晶形態を持つFHHPMF由来のオレオゲルは、高純度PSP由来のオレオゲルと比較して、ゾル-ゲル転移が起こる臨界ひずみが0.54%から21.2%に増加し、約40倍も高い数値を示すことが判明しました。これは、不純物が結晶に取り込まれることで形状が制御され、より複雑なネットワーク構造が発達したためと考えられます。 これらの結果から、脂質ウィスカーオレオゲルの物理特性を完全に制御するためには、結晶の長さだけでなく、不純物を利用した結晶の形状(形態)の制御が極めて重要であることが示されました。   参考資料   今後の展開 本研究で確立した、脂質ウィスカー結晶の形態を制御することでオレオゲルの物性を自在に設計する技術は、PBFの食感やジューシーさの再現技術を大幅に進展させる可能性を秘めています。この油のゲル(オレオゲル)の硬さやテクスチャを自在に設計する基盤技術は、PBFのみならず、固体脂が使用される食品や化粧品、医薬品など、幅広い製品の安定性向上やテクスチャ設計に応用できることが期待されます。今後は、脂質ウィスカー結晶の形態変化を引き起こし、機械的強度を向上させる効果を持つ特定の不純物成分(トリアシルグリセロール成分)を特定し、さまざまな産業において必要とされるゲル化技術のさらなる最適化を目指します。   論文情報 タイトル:“Control of Physical Properties of Lipid Whisker Oleogels by Crystal Morphology Regulation” 著者名:Haruhiko Koizumi1※, Fumiya Nakano1, Noritaka Oishi2, Tomoya Yamazaki3, Yuki Kimura3, Kazuhiro Hamamoto2, Satoru Ueno1 著者所属:広島大学 大学院統合生命科学研究科1,ミヨシ油脂2,北海道大学 低温科学研究所3 責任著者※ 掲載誌:Food Research International 掲載日:2025年12月4日(木) DOI:10.1016/j.foodres.2025.117999   なお、本研究は、JSPS科研費 JP24K01362、及び、北海道大学 低温科学研究所共同研究 25G022の支援により行われました。また、広島大学から論文掲載料の助成を受けました。   用語解説 ※1オレオゲル 液体油を少量(0.5 wt%など)の固体成分(ゲル化剤)のネットワーク構造内に保持させ、固体状にしたもの。バターやラードなどの固体脂肪の代替として、食品のテクスチャ改善を目的として研究が進められている。   ※2貯蔵弾性率 粘弾性を持つ材料の変形に対する弾性(元に戻ろうとする力)の大きさを表す指標。食品の硬さやしっかりとしたテクスチャに関連する。   ※3脂質ウィスカー結晶 非常に細く長く、単結晶構造を持つ繊維状の脂質の結晶。単結晶で構成されるため、ネットワーク構造が不安定化しにくく、高い保存安定性を持つ。   ※4臨界ひずみ オレオゲルのネットワーク構造が破壊され、固体(ゲル)から液体(ゾル)へ転移する際のひずみの値。この値が大きいほど、そのオレオゲルは外部からの力に対して強く、機械的強度が高いことを示す。   ※5プラントベースフード(PBF) 植物由来原料を用いて作られた食品。肉や卵、ミルクなどの動物性食品を再現したものもある。健康志向や環境意識の高まりを受け注目を集めている。   ※61,3-ジパルミトイル-2-ステアロイルグリセロール(PSP) トリアシルグリセロール(TAGs)の一種であり、完全水素添加パーム中融点画分(FHHPMF)の主要な構成成分。   ※7FHHPMF(完全水素添加パーム中融点画分) パーム油の中融点画分(HPMF)を最大限に水素添加して固形化した油脂。   ※8透過型電子顕微鏡(TEM)観察 電子を使って物質を透かして観察する顕微鏡で、100万分の1ミリ単位の細かい構造まで見ることができる。   報道発表資料(373.41 KB) 掲載ジャーナル:Food Research International 研究者ガイドブック(小泉 晴比古 准教授)   <研究に関すること> 広島大学 大学院統合生命科学研究科 准教授小泉 晴比古 TEL:082-424-7935 E-mail:h-koizumi@hiroshima-u.ac.jp   ミヨシ油脂株式会社 戦略企画本部 技術研究部大石 憲孝 TEL:03-3602-8791 E-mail:ooishin@miyoshi-yushi.co.jp   北海道大学 低温科学研究所教授木村 勇気 TEL: 011-706-7666 E-mail:ykimura@lowtem.hokudai.ac.jp   <広報・報道に関すること> 広島大学 広報室 TEL:082-424-6762 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   ミヨシ油脂株式会社経営企画部コーポレート・コミュニケーション課 TEL:03-3603-1111 E-mail:info@miyoshi-yushi.co.jp   北海道大学社会共創部広報課 TEL:011-706-2610 E-mail:jp-press@general.hokudai.ac.jp

    • 食料/農林水産業
    • バイオエコノミー
    2026.04.02
    • 食料/農林水産業
    • バイオエコノミー
    真菌の遺伝子機能注釈を向上させる新手法を開発 ― シイタケおよびダイズさび病菌を例に ―

    本研究成果のポイント 真菌(病原菌やキノコ、酵母などが含まれる)で実際に発現している遺伝子の機能を解析する新しい手法を開発し、従来より多くの遺伝子の働きを明らかにできることを確認した。 ゲノム編集(※1)標的探索など、バイオテクノロジー応用への活用が期待される。   概要広島大学大学院統合生命科学研究科の森原なぎさ大学院生と坊農秀雅教授(広島大学大学院統合生命科学研究科・プラチナバイオ共同研究講座教授兼任)らは、真菌トランスクリプトーム(※2)のための、新たな機能注釈(※3)ワークフロー(※4)を開発した。 本研究では、シイタケおよびダイズさび病菌のトランスクリプトームデータを用いて開発したワークフローを評価し、転写産物から予測されたタンパク質コード配列(※5)の96%以上に機能注釈を付与することに成功した。これは、遺伝子がどのようなタンパク質を作り、どのような生物学的役割を持つのかを推定するものである。また、特定の条件でのみみられる転写産物や、近縁種でも発見されている転写産物など、従来手法とは異なるアプローチでの注釈も可能になっている。 本成果は、2026年2月6日に国際学術誌「Journal of Fungi」のオンライン版に掲載された。   [発表論文] ・著者:Nagisa Morihara1), Hidemasa Bono1)2)* * Corresponding author (責任著者) 1)広島大学大学院統合生命科学研究科 2)ゲノム編集イノベーションセンター ・論文タイトル:Functional Annotation Workflow for Fungal Transcriptomes ・掲載誌: Journal of Fungi ・DOI: https://doi.org/10.3390/jof12020116   背景真菌類は、バイオテクノロジー、農業、環境保全、ヒトの健康など、多岐にわたる分野で重要な役割を担う一方、多くの種がゲノムや遺伝子機能が解明されていない非モデル生物である。次世代シーケンサー(※6)のRNA-seq(※7)技術によってトランスクリプトームの配列決定が容易になったが、得られた配列データから遺伝子機能を推定する機能注釈は依然として課題であり、既存の生物種を限定しないツールでは、真菌特有の特徴を十分とらえきれない、注釈できず機能未知となる割合が高くなるなどの問題があった。その結果、そのあとに続く機能エンリッチメント解析(※8)、ゲノム編集などの障害となっていた。   研究成果の内容本ワークフローでは、ヒト、マウス、酵母の参照配列、タンパク質データベース(UniProtKB)、タンパク質ドメインデータベース(InterPro)、真菌に特化したデータベース(FungiDB)それぞれについて、SAQEワークフロー(※9)をベースに相同性検索を行い、転写産物から予測されたタンパク質コード配列に機能IDを付与した。さらに割り当てられたIDに対応する生物学的機能を表す共通用語であるGO termを付与し、発達段階や組織など条件特異的な注釈も実施した。 このワークフローをシイタケ57サンプルのRNA-seqデータに適用し、227,580個の転写産物から予測されたタンパク質コード配列のうち98.2%に注釈を付与(従来手法では66%)した。さらにGO termは74%に付与できた(従来手法では12%) また菌糸体(※10)、原基(※11)、子実体(※12)のグループ間で差があった機能を解析し、菌糸体からの原基形成ではNADキャップ脱離や脂肪酸α酸化、原基からの子実体形成では有糸分裂、細胞壁リモデリング、オートファジーといった、シイタケの発達に重要な機能を同定できた。また発達段階特異的に注釈されたもののうち、胞子形成および酸化ストレス応答に関与する、酵母SWS2遺伝子のホモログ(※13)が原基でのみ発現していることがわかった。これらの結果は、これまでの手法では機能注釈できず見逃されていた転写産物を発見できる能力を本ワークフローが有していることを示している。 続いてダイズさび病菌のIso-Seq(※14)データへも適用し、9,680個のタンパク質コード転写産物のうち96.1%に注釈を付与できた(従来手法では80%)。さらにGO termは79%に付与できた(従来手法では19%)。感染後に発現が下がる転写産物の機能を調べたところ、K48結合型ユビキチン化の負の制御、細胞接着分子生産、ヒストン脱アセチル化など、病原性に関わる制御機構を同定した。またFungiDBでのみ注釈されたさび病菌やその他病原菌由来の機能未解明遺伝子は、さび病菌における新規機能の存在を示唆するとともに、将来的なゲノム編集標的候補となる可能性を示している。   今後の展開公共データベースに蓄積されたRNA-seqデータを本ワークフローで再解析することにより、未探索の転写産物の発見が期待される。 また本手法により優先順位付けされた候補遺伝子は、ゲノム編集技術などに適用されることで基礎研究から応用研究への橋渡しを促進する。例えば、食用きのこの品種改良、植物病原菌の制御、有用代謝産物の生産など、バイオテクノロジー分野への応用が期待される。   参考資料   用語解説 (※1)ゲノム編集:ゲノムを構成するDNAを切断し、遺伝子を書き換える技術。 (※2)トランスクリプトーム:DNAから転写された全てのRNA。全転写産物。 (※3)機能注釈:DNAまたはRNA配列がどのような働きを持つかをラベル付けするプロセス。 (※4)ワークフロー:データ解析において、複数のプログラムを順序だてて組み合わせたもの。 (※5)タンパク質コード配列:DNAまたはRNA配列のうち、タンパク質を構成するアミノ酸の順序情報を持つ部分。 (※6)次世代シーケンサー:DNAやRNA配列を一度に大量に解読する装置。 (※7)RNA-seq:次世代シーケンサーを用いて、DNAから転写されたRNAの配列や量を解析する技術 (※8)機能エンリッチメント解析:発現変動遺伝子リストにおいて、どんな機能に有意に偏っているかを明らかにする。 (※9)SAQEワークフロー:https://github.com/bonohu/SAQE (※10)菌糸体:キノコやカビなどの菌類における、細い糸状の菌糸の集合体。 (※11)原基:菌糸体が凝集して形成される、きのこの基のこと。 (※12)子実体:いわゆるきのこの実の部分のこと。 (※13)ホモログ:進化の過程で比較的保存された、似た配列の遺伝子。 (※14)Iso-Seq:全長転写産物配列を読む手法。   【プレスリリース】真菌の遺伝子機能注釈を向上させる新手法を開発―シイタケおよびダイズさび病菌を例に―.pdf(429.86 KB) 掲載誌:Journal of Fungi 研究者ガイドブック(坊農 秀雅 教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 大学院統合生命科学研究科教授坊農秀雅 Tel:082-424-4013 E-mail:bonohu@hiroshima-u.ac.jp

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    • 海洋
    2026.04.07
    • 食料/農林水産業
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    チリの赤潮発生を高精度で予測する新手法を開発 ―日本・チリ国際共同研究で養殖産業を守る早期警戒システム構築に道筋―

    本研究成果のポイント 世界第2位のサーモン養殖国であるチリにおいて、養殖産業に甚大な被害をもたらす有害藻類ブルーム(赤潮)*1の発生を予測するための3つの新しいモデル(物理モデル、AIモデル、経験的動的モデル(EDM)*2)を開発しました。 経験的動的モデルにより、植物プランクトン種間の因果関係を利用して有害藻類の発生を予測することに成功しました。予測精度は相関係数0.733と高い値を示しました。 本研究はJST/JICA SATREPS*3プログラム「MACHプロジェクト」の成果であり、チリにおける持続可能な水産業の発展に貢献することが期待されます。   概要広島大学IDEC国際連携機構のIshara Perera特任助教(現:山口大学共同獣医学部助教)、丸山史人教授は、チリ国立水産開発研究所(IFOP)、ラフロンティア大学、北海道大学、水産研究・教育機構などと共同で、チリ・パタゴニア地域における有害藻類ブルーム(赤潮)の発生を予測するための新たな複合モデリング手法を開発しました。本研究では、粒子追跡モデル(Parti-MOSA)、長短期記憶ニューラルネットワーク(LSTM)、および経験的動的モデル(EDM)という3つの予測手法を比較し、特にEDMを用いた手法では有害藻類であるPseudo-nitzschia seriataグループの発生予測において相関係数0.733という高い予測精度を達成しました。さらに、生物種間の因果関係に基づいて赤潮発生を予測するEDMの実用的応用は世界的にも例がなく、本研究は物理モデルやAIなど異なる手法を組み合わせることで赤潮早期警戒システムの予測精度を向上し得ることを示しました。 本研究成果は、2026年1月14日に生態学・環境科学分野のトップジャーナル(Q1、上位5%)である「Ecological Informatics」に掲載されました。 Multivariate S-map法により因果種を用いて予測された Pseudo-nitzschia 属の種群。予測精度は、ピアソン相関係数および p 値によって評価した。サブプロット(a, b)は Quellón、(c, d)は Melinka、(e, f)は Metri における結果を示す。 3つのSATREPSモデルを結合するためのプロトタイプ手法   背景有害藻類ブルーム(HAB、赤潮)は、特定の植物プランクトンが大量発生して海水が変色する現象です。養殖魚の大量死や貝類への毒素蓄積を引き起こし、世界中の水産業に深刻な経済的被害をもたらしています。チリは世界第2位のサーモン生産国であり、冷凍ムール貝の世界的輸出国でもありますが、過去数十年にわたりチリ南部はHABによる甚大な被害を受けてきました。2016年には、Pseudochattonella verruculosaのブルームによりチリのサーモン生産の18〜20%が影響を受け、約8億米ドルの損失が発生しました。 HABがどこでいつどの規模で発生するか予測することは、沿岸漁業や養殖業を守るために極めて重要ですが、HABを引き起こす藻類種の生態は複雑で、それぞれの種が環境条件に多様に応答するため、正確な予測は困難とされてきました。   研究成果の内容本研究では、JST/JICA SATREPSプログラム「MACHプロジェクト(Monitoring of Algae in Chile)」の一環として、HAB予測のための3つの異なるアプローチを適用しました: 1. 粒子追跡モデル(Parti-MOSA):海洋物理モデルを基盤とし、HAB細胞の海流による輸送をシミュレートします。これにより、ブルームの空間的な拡散を予測できます。 2. LSTMニューラルネットワーク:DNAメタバーコーディングによるホロバイオーム*4監視データと環境パラメータを組み合わせた深層学習モデルです。環境条件のみから有害藻類種の存在を予測できます。 3. 経験的動的モデル(EDM):30年間にわたる長期植物プランクトンモニタリングデータを用いて、HAB原因種と他の植物プランクトン種との因果関係を同定し、この関係を利用することでHABの発生を予測できます。 特にEDMを用いた解析では、チリ南部の3地点(Metri、Quellón、Melinka)でPseudo-nitzschia属(ドウモイ酸を産生する有害藻類)の発生を予測し、Metri地点のP. seriata群において相関係数0.733(p < 0.0001)という高い予測精度を達成しました。 また、Ceratium属やLeptocylindrus属といった植物プランクトンがPseudo-nitzschia属と因果関係を持つことも明らかにし、これらの種をモニタリングすることでHAB発生の早期警戒に活用できる可能性を示しました。   今後の展開本研究で開発した3つのモデルは、それぞれ異なる強みを持っています。Parti-MOSAはブルームの空間的拡散を予測でき、LSTMは環境条件から有害藻類種を検出でき、EDMは生物間の相互作用を利用して発生の有無を予測できます。これらのモデルを組み合わせた複合予測システムにより、より信頼性の高いHAB早期警戒システムの構築が期待されます。 今後は、リアルタイムの種同定技術(AIを搭載した画像認識装置など)との統合や、環境変数との組み合わせによってさらなる予測精度の向上を目指します。本研究の成果は、チリのみならず世界各地でHABに悩まされる沿岸地域への応用が期待されます。   発表論文・掲載雑誌:Ecological Informatics(生態情報学) ・論文題目:“A prototype coupled modeling approach for predicting harmful algal blooms: A case study in Chile” ・著者:Ishara Uhanie Perera, So Fujiyoshi, Daiki Kumakura, Carolina Medel, Kyoko Yarimizu, Osvaldo Artal, Pablo Reche, Oscar Espinoza-González, Leonardo Guzman, Felipe Tucca, Alexander Jaramillo, Jacqueline J. Acuña, Milko A. Jorquera, Shinji Nakaoka, Satoshi Nagai, Fumito Maruyama* (*責任著者) ・DOI:10.1016/j.ecoinf.2026.103615   用語解説*1 有害藻類ブルーム(HAB、赤潮): 特定の植物プランクトンが急激に増殖し、海水が変色する現象。魚介類への毒素蓄積や酸欠による大量死を引き起こし、水産業に甚大な被害をもたらす。 *2 経験的動的モデル(EDM): 複雑な生態系の時系列データから因果関係を推定する非線形解析手法。従来の統計モデルでは捉えきれない生物間の相互作用を検出できる。 *3 SATREPS: Science and Technology Research Partnership for Sustainable Developmentの略。JST(科学技術振興機構)とJICA(国際協力機構)が共同で実施する、開発途上国との国際共同研究プログラム。本課題の詳細URLはこちら。https://mge.hiroshima-u.ac.jp/SATREPS_MACH/ *4 ホロバイオーム: 真核生物とその共生微生物の総ゲノム。HABの発生は、関連する微生物群集の影響を受ける可能性がある。   報道発表資料(587.03 KB) 掲載ジャーナル:Ecological Informatics 研究者ガイドブック(丸山 史人教授)   【お問い合わせ先】 広島大学 IDEC国際連携機構 Center for the Planetary Health and Innovation Science (PHIS) 教授丸山 史人(まるやま ふみと) Tel:082-424-7048 E-mail:fumito*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

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    2026.05.05
    • 食料/農林水産業
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    ゼニゴケのクローン繁殖を誘導する遺伝子を発見 ―農作物種を含むさまざまな植物への応用に期待―

    【本研究成果のポイント】 ゼニゴケのクローン繁殖体形成に必須の新規遺伝子を発見しました。 この遺伝子を活性化させることで、クローン繁殖体の形成を誘導することに成功しました。 本研究の成果は、植物がクローンで増えるメカニズムの解明やその人為的制御手法の開発に貢献するとともに、農作物種を含むさまざまな植物への応用が期待されます。   【概要】広島大学大学院統合生命科学研究科の平川有宇樹 教授と髙橋剛 研究員の研究グループは、学習院大学理学部生命科学科/大学院自然科学研究科 清末知宏 教授、山屋沙織 大学院生(研究当時)、英国Cambridge大学 Jim Haseloff 教授、Facundo Romani 博士、神戸大学大学院理学研究科 石崎公庸 教授、広島大学大学院統合生命科学研究科 嶋村正樹 教授らと共同で、コケ植物の一種であるゼニゴケがクローン繁殖体を発生させる引き金となる遺伝子を発見しました。 ゼニゴケは無性芽と呼ばれる小さなクローン繁殖体を自身の体から生み出し、雨水などによって散布されることで個体数を増やすことができます。本研究で発見した遺伝子「GEMMIFER(ジェミファー)」は無性芽の形成に必須の遺伝子であり、さらに、この遺伝子を活性化させると無性芽形成を人為的に誘導できることが分かりました。本研究の成果は、植物がクローン繁殖を行うメカニズムの解明やその人為的制御方法の開発に重要な知見をもたらすと考えられます。 本研究は、国際学術誌Current Biologyのオンライン版で2026年5月5日午前0時(日本時間)に掲載されます。 1. 雑誌名:Current Biology タイトル: Initiation of asexual reproduction by the AP2/ERF gene GEMMIFER in Marchantia polymorpha 著者:Go Takahashi(髙橋剛), Saori Yamaya(山屋沙織), Facundo Romani, Ignacy Bonter, Kimitsune Ishizaki(石崎公庸), Masaki Shimamura(嶋村正樹), Tomohiro Kiyosue(清末知宏), Jim Haseloff, Yuki Hirakawa*(平川有宇樹) DOI: 10.1016/j.cub.2026.03.083 論文URL:https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(26)00431-8 (open access)   【背景】植物は、雄(花粉)と雌(雌しべ)の受粉によって種子をつくるといった有性生殖の他に、無性生殖によっても繁殖します。無性生殖では、不定芽、塊茎、塊根などのさまざまな栄養器官において、配偶子(精子や卵)の形成を経ずにクローン体が生じます。短期間に多くの個体を生産できる繁殖の速さや、雌雄の出会いを必要としない生殖効率の高さから、無性生殖は植物の繁栄を支える重要な仕組みの一つとなっています。また、生殖において遺伝子の混合を伴わないことから、農作物の品質のばらつきを抑える上で有用な仕組みでもあります。しかしながら、植物の無性生殖が起こる発生学的なメカニズムに関する知見は少なく、不明な点が多く残っています。 近年、分子遺伝学的解析の可能なモデル生物として、コケ植物タイ類のゼニゴケが注目されています。ゼニゴケは、胞子を介した有性生殖の他に、無性芽と呼ばれるクローン繁殖体をつくり、この無性芽が雨水などによって外部に散布されることでも繁殖します。これまでに無性芽の発生に関する遺伝子の研究が進められてきましたが、無性芽の発生を開始させる引き金となる遺伝子は分かっていませんでした。   【研究成果の内容】 本研究では、無性芽の発生を開始させる遺伝子「GEMMIFER(ジェミファー、短縮表記GMFR)」を発見しました(図1:研究成果の概要)。   ■ 1|ゼニゴケの無性芽形成に必須の遺伝子GMFRを発見 研究チームは、先行研究において、CLEペプチドと呼ばれるホルモンの一種がゼニゴケの成長や無性生殖を調節することを見出していました。特に、CLEペプチドの過剰産生株では、無性芽をつくるための器となる構造である「杯状体」が少ないことが分かっていました。この株を用いたトランスクリプト―ム解析によって、発現量の変動する遺伝子群を見つけており、この中には無性芽や杯状体の形成に関与する遺伝子が含まれるのではないか、と考えていました。 本研究では、このうちの一つの遺伝子の働きを抑える実験を行いました。CRISPR-Cas9によるゲノム編集技術と人工miRNAによるノックダウン技術によって遺伝子を不活性化させると、ゼニゴケは無性芽と杯状体をつくれなくなりました(図2)。そのため、この遺伝子は無性芽形成に必須の遺伝子であることが分かりました(「無性芽(GEMMA)をつくる」遺伝子としてGEMMIFER/GMFRと命名)。 さらに、ゼニゴケの中でGMFR遺伝子が発現している部位を調べるため、蛍光タンパク質を利用したプロモーター活性解析を行いました。その結果、無性芽が生じる起点となる「杯状体底部細胞」や「発生初期段階の無性芽細胞(幹細胞)」において、GMFR遺伝子の発現を示す蛍光タンパク質のシグナルが検出されました(図3)。このことから、GMFR遺伝子は無性芽発生のごく初期の段階で働いていると考えられました。   ■ 2|GMFR遺伝子の働きを活性化すると無性芽を誘導できる 次に、本遺伝子の機能を詳細に解析するため、薬剤投与によって対象遺伝子を強制的に働かせる(過剰発現)ことができる組換え系統を作出しました。このゼニゴケ株では、薬剤のデキサメタゾンを与えることでGMFR遺伝子の働きを一時的に活性化することができます。デキサメタゾン処理を行ったところ、2日後には無性芽発生の起点となる幹細胞ができることが分かりました(図4)。さらに、デキサメタゾンを除いて育成を続けると、1週間ほどで多数の無性芽が生じました。この無性芽を新しい培地に植え替えると新たな個体として成長することも確認しました。この結果から、GMFR遺伝子を活性化することによって無性芽の起点となる幹細胞がつくられ、無性芽の発生を誘導できることが分かりました。   ■ 3|GMFR遺伝子は他の必須遺伝子の発現を高めることで機能する 先行研究において、GMFR遺伝子と同じように無性芽形成に必須の遺伝子が複数報告されていました。ただし、これらの遺伝子を活性化しても無性芽が生じることはありません。GMFR遺伝子とこれらの必須遺伝子との関係を調べるため、定量PCRによる発現解析や二重形質転換株の作出による機能解析を行いました。その結果、GMFR遺伝子は他の必須遺伝子の発現量に影響を与えていることが分かりました。既知の遺伝子の中で特に重要な役割を持つと考えられていたのがGCAM1遺伝子ですが、本研究の結果、GMFR遺伝子はGCAM1遺伝子の発現量を高める働きを持ち、このことが無性芽や杯状体の形成に重要であることが分かりました。   【今後の展開】本研究により、GMFRという単一の遺伝子が指令を出すことで、無性芽の起点となる幹細胞が生まれ、無性生殖が開始することが分かってきました(図1)。しかし、GMFR遺伝子によって駆動される細胞運命制御のメカニズムの詳細は不明であり、今後解明していく必要があります。GMFR遺伝子はゼニゴケに特有の遺伝子ではなく、無性生殖を行わない種を含む多くの陸上植物が持つことも分かっています。今後の研究においてGMFRの作用機序の詳細が解明できれば、農作物種を含むさまざまな植物のクローン繁殖制御に応用できるかもしれません。また、ゼニゴケの体の中ではGMFR遺伝子が働く時期や強度を調節することで、無性生殖の時期や部位を制御していると考えられます。活性のオン・オフを制御する仕組みの解明も、今後の研究対象として重要です。 【謝辞】 本研究は以下の支援を受けて実施しました。(順不同) 日本学術振興会科研費(JP22H02676) 科学技術振興機構 革新的GX技術創出事業(JPMJGX23B0) 日本学術振興会 地域中核・特色ある研究大学強化促進事業 英国バイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC) 公益財団法人 武田科学振興財団 公益財団法人 木下記念事業団 公益財団法人 内藤記念科学振興財団 公益財団法人 住友財団 広島大学APC助成   【参考資料】 図1.研究成果の概要 ゼニゴケは、無性芽と呼ばれる小さな繁殖体をつくってクローンで繁殖することができます。本研究ではこの無性芽の発生を開始する際に働く遺伝子を発見しました。 図2.GMFR遺伝子の機能欠損による無性芽・杯状体の形成不全 ゲノム編集技術によりGMFR遺伝子の機能を欠損させたゼニゴケ(右)では、野生株(左)とは異なり無性芽と杯状体がまったく形成されない。やじり(ピンク)は無性芽を含む杯状体を示す。   図3.GMFR遺伝子は無性芽発生のごく初期で発現する 蛍光タンパク質を利用したGMFR遺伝子のプロモーター活性解析。図中、緑色で示す蛍光タンパク質のシグナルが、杯状体底部細胞(矢印)および発生初期の無性芽(アスタリスク)で検出された。   図4.GMFR遺伝子の活性化により誘導される無性芽の発生 (左)薬剤誘導後、無性芽の起点となる細胞(アスタリスク)が生じる。 (右)誘導4日後に薬剤を除去し、さらに1週間育てると多数の無性芽が生じる。   報道発表資料(577.18 KB) 論文掲載ページ (Current Biologyに移動します) 広島大学研究者ガイドブック (平川 有宇樹 教授)   【お問い合わせ先】 ■研究に関するお問い合わせ先 広島大学大学院統合生命科学研究科 基礎生物学プログラム 教授 平川 有宇樹 TEL:082-424-7455 E-mail:yuki-hirakawa@hiroshima-u.ac.jp   学習院大学理学部生命科学科/大学院自然科学研究科 教授 清末 知宏 E-mail:tomohiro.kiyosue@gakushuin.ac.jp   神戸大学大学院理学研究科 教授 石崎 公庸 E-mail:kimi@emerald.kobe-u.ac.jp   ■報道に関するお問い合わせ先 広島大学 広報室 TEL:082-424-4518FAX:082-424-6040 E-mail:koho@hiroshima-u.ac.jp   学習院大学 学長室広報センター TEL:03-5992-1008FAX:03-5992-9246 E-mail:koho-off@gakushuin.ac.jp   神戸大学 企画部広報課 TEL:078-803-5106FAX:078-803-5088 E-mail:ppr-kouhoushitsu@office.kobe-u.ac.jp

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    2025.11.14
    • 食料/農林水産業
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    植物の形態にひそむ周期性を変調させる仕組みを発見  魅力的な花き類の創出に期待

      概要 奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑一裕) 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域の池内桃子特任准教授と京都府立大学の爲重才覚講師(研究当時:名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所、 横浜市立大学、 奈良先端大を含む)、奈良先端大の土田岳志(研究当時:博士前期課程)らは、広島大学大学院統合生命科学研究科の藤本仰一教授、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所/テキサス大学の鳥居啓子教授、名古屋大学遺伝子実験施設の打田直行教授、東京農工大学の笠原博幸教授、熊本大学の相田光宏教授らの研究グループと共同で、植物の形態形成の周期性を変調させる仕組みを発見しました。  形態形成を司る植物ホルモンのオーキシン(注1)の空間的なパターンは、オーキシンの輸送によって創出されるという説が長年受け入れられてきましたが、パターンの周期性を決める仕組みはこれまで明らかになっていませんでした。  今回の研究はEPFL2(EPIDERMAL PATTERNING FACTOR-LIKE 2)(注2)というペプチドホルモンとの相互抑制的な関係性が、オーキシンの周期的な空間パターンを変調させることを新たに見出しました。これは、従来モデルを20年ぶりに書き換える重大な発見であるといえます。  本研究の成果は、花卉(かき)類や園芸植物の形を操作する技術の創出につながることが期待できます。  この研究成果は、イギリスの学術誌「Nature Communications」オンライン版に2025年11月13日(木)午後7時(日本時間)に掲載されます(DOI:10.1038/s41467-025-65792-y)。     背景と目的 ヒマワリやマツボックリなどのフィボナッチらせん(注3)に代表される植物の周期的な構造は、葉や花などの器官を一定間隔で繰り返し生み出すことで形作られています。また、ひとつひとつの器官の形状に着目すると、葉の縁には鋸歯(きょし)と呼ばれるギザギザ構造が一定の間隔で形成されていることがわかります(図1)。  こうした器官や鋸歯等の突起構造は、植物ホルモンであるオーキシンが局所的に蓄積することによって形成されます。オーキシンの輸送体がオーキシン濃度の高い細胞の方へ流す働きがあることで自発的に周期的なパターンが生み出されることが、実験およびコンピュータシミュレーションの結果に基づいて20年ほど前から提唱されていました1,2,3,4。  この説によると、オーキシンの輸送と拡散の関係によって周期性が決まると想定されます。しかし、実際の植物において周期性が変わる観察例はなく、周期性が決まる仕組みは未解明でした。     研究手法と成果 周期性を制御する仕組みを理解する手がかりは、EPFL2と呼ばれるペプチドホルモンを作れない変異体の解析から得られました。  鋸歯形成に先立って葉の縁に形成されるオーキシン蓄積部位を観察すると、EPFL2の機能が損なわれたepfl2 変異体ではその形成間隔が短くなっていることを発見しました(図2)。以前の研究によって、EPFL2とオーキシンの間に相互に抑制し合う制御関係があることがわかっていました5。 そこで研究グループは、従来モデルのオーキシンと輸送体の制御関係にオーキシンとEPFL2の相互抑制関係を組み込んだ新しいモデルを構築しました。  葉を模した多細胞列をコンピュータ上で再現しEPFL2がオーキシン蓄積部位の周期性に与える影響を調べた結果、EPFL2の量が少なければ形成間隔が短くなるという観察結果を再現しました。さらに、EPFL2の量を通常条件よりも増やせば間隔がもっと長くなり、一方でEPFL2の量を極端に減らすとひとつひとつの蓄積部位が明瞭に形成されなくなるというシュミュレーションの結果が得られました。  研究グループは実験的にEPFL2の量を改変した植物体を作り出し、これらのシミュレーション結果を裏付けることに成功しました。 また、EPFL2が規則的な器官配置パターンの形成に必要であることも見出し、EPFL2は植物の形作りを一般的に制御する重要な因子であることを証明しました(図3)。  こうして、実験とシミュレーションの両面のアプローチに基づき、EPFL2とオーキシンの相互抑制的関係が繰り返し起こる形態形成イベントの周期性を変調させる仕組みを提案しました(図4)。     今後の展開 輸送体によってオーキシン蓄積部位が周期的に生み出される仕組みは、チューリングパターン(注4)と呼ばれる一般的な規則正しいパターン形成と類似した仕組みと考えられています6。  今回の研究は、相互抑制関係とチューリングパターンを組み合わせることで周期性を変調させるという、新しいパターン形成の仕組みを提案しています。植物の形態形成の制御に留まらず、自然界に見られる様々な周期的パターン形成においても同様の仕組みが働いている可能性が考えられます。  また、サニーレタスのように複雑に入り組んだ葉の構造やカーネーションなど花弁の辺縁構造も鋸歯と共通した仕組みで作られるため、鑑賞用の花卉類や園芸植物の形質を改変して魅力的な形の植物を生み出す技術の開発に利用できる可能性があります。     謝辞 本研究は、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業(JPMJFR214H)、日本学術振興会(JSPS)新学術領域研究「植物の周期と変調」(20H05431, 22H04713)・新学術領域研究「植物多能性幹細胞」(JP17H06476)・基盤研究B (JP26291057)・若手研究(20K15807)などの支援を受けて行われました。     用語解説 注1 オーキシン:植物の成長を調節する代表的な植物ホルモンの一つ。茎の伸長や根の形成、葉や花の配置など、体の各部の形づくり全般に深く関わっており、農業や研究目的で人為的に投与することも多い。 注2 EPFL2:EPIDERMAL PATTERNING FACTOR-LIKEsを含む一群のペプチド(EPF/EPFLs)のうちの一種。EPF/EPFLsは植物が体の各部の形成を調節するホルモン様のペプチド分子で、多くの植物が持っている。EPFL2は特に葉の形態、胚珠(種子になる器官)の形成、分裂組織のサイズなどに関わることが知られている。 注3 フィボナッチらせん:らせんの列の数がフィボナッチ数列(前の2つの数を足した数が次の数になるという規則性を持つ数列)に従う規則的な配置。 注4 チューリングパターン:物質の反応と拡散の仕組みによって自然に生じる模様、およびその理論。イギリスの数学者で暗号解読の功績やコンピュータ科学の創始者としても知られるアラン・ チューリングが提唱した。動物の斑点や縞模様、植物の模様や形態などを説明する理論として知られる。     引用文献 1. Jönsson H, Heisler MG, Shapiro BE, Meyerowitz EM & Mjolsness E. An auxin-driven polarized transport model for phyllotaxis. Proc Natl Acad Sci U S A. 103, 1633-1638 (2006). 2. de Reuille, P. B. et al. Computer simulations reveal properties of the cell–cell signaling network at the shoot apex in Arabidopsis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 103, 1627-1632. (2006). 3. Smith, R. S. et al. A plausible model of phyllotaxis. Proc. Natl. Acad. Sci.USA 103, 1301-1306. (2006). 4. Bilsborough GD et al. Model for the regulation of Arabidopsis thaliana leaf margin development. Proc Natl Acad Sci U S A. 108, 3424-9 (2011). 5. Tameshige T et al. A secreted peptide and its receptors shape the auxin response pattern and leaf margin morphogenesis. Curr Biol. 26, 2478-2485 (2016). 6. Sahlin P., Söderberg B. & Jönsson H. Regulated transport as a mechanism for pattern generation: capabilities for phyllotaxis and beyond. J. Theor Biol. 258, 60-70 (2009).     掲載論文 タイトル:Mutual inhibition between EPFL2 and auxin extends the intervals of periodic leaf morphogenesis(EPFL2とオーキシンの相互抑制が葉の周期的な形態形成の間隔を伸ばしている) 著者:Toshiaki Tameshige#, Takeshi Tsuchida#, Yuuki Matsushita, Yuki Doll, Kaisei Maruyama, Takemoto Agui, Mitsuhiro Aida, Hiroyuki Kasahara, Keiko U Torii, Naoyuki Uchida, Koichi Fujimoto, Momoko Ikeuchi* #共筆頭著者 *責任著者 掲載誌:Nature Communications DOI:10.1038/s41467-025-65792-y     報道発表資料.pdf(1.59 MB) 掲載雑誌:Nature Communications 研究者ガイドブック(藤本 仰一 教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域植物再生学研究室 特任准教授池内桃子 TEL:0743-72-5520E-mail:momoko.ikeuchi@bs.naist.jp 研究室紹介ホームページ:https://bsw3.naist.jp/ikeuchi/   京都府立大学大学院生命環境科学研究科 講師爲重才覚 TEL:075-703-5444E-mail:t-tamesige@kpu.ac.jp 研究室紹介ホームページ:https://sites.google.com/view/tameshigelab/   広島大学大学院統合生命科学研究科 教授藤本仰一 TEL:082-424-7346E-mail:kfjmt@hiroshima-u.ac.jp     <JST事業に関すること> 科学技術振興機構 創発的研究推進部東出学信 TEL:03-5214-7276E-mail:souhatsu-inquiry@jst.go.jp     <報道に関すること> 奈良先端科学技術大学院大学企画総務課渉外企画係 TEL:0743-72-5063/5112FAX:0743-72-5011E-mail:s-kikaku@ad.naist.jp   科学技術振興機構広報課 TEL:03-5214-8404FAX:03-5214-8432E-mail:jstkoho@jst.go.jp   京都府立大学企画・地域連携課企画・地域連携係 TEL:075-703-5147FAX:075-703-4979E-mail:kikaku@kpu.ac.jp   名古屋大学総務部広報課 TEL:052-558-9735FAX:052-788-6272E-mail:nu_research@t.mail.nagoya-u.ac.jp   広島大学広報室 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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    2025.12.05
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    海藻の辛味成分がイネ栽培に被害をもたらす害虫を駆除!

    本研究成果のポイント イネ栽培に深刻な被害をもたらす害虫であるイネシンガレセンチュウ(*1)を駆除する物質を、褐藻の一種であるアミジグサ(*2)から特定しました。今後、環境にやさしい新たな農薬開発等へ繋がることが期待されます。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科の飯田愛実(博士課程後期)、太田伸二名誉教授、根平達夫准教授、大村尚准教授らの研究グループは、瀬戸内CN国際共同研究センターの加藤亜記准教授と共同で、海藻の一種「アミジグサ」が強い辛味を示すことを見出し、それらの化学構造を解明しました。さらに、広島県立総合技術研究所農業技術センターの星野滋博士の協力を得て、この辛味成分が、農業害虫である「イネシンガレセンチュウ」に対して殺線虫活性(線虫に対する殺虫効果)を示すことを明らかにしました。この研究成果は、国際学術雑誌「Phytochemistry」2026年2月号オンライン版に、2025年9月27日に先行掲載されました。また、広島大学から論文掲載料の助成を受けております。 論文情報 論文題目: Diterpenoids from the brown alga Dictyota dichotoma with nematicidal activity against the plant parasitic nematode Aphelenchoides besseyi 著者: 飯田愛実1、根平達夫1、加藤亜記2、星野滋3、大村尚1,*、太田伸二1,* 1. 広島大学大学院統合生命科学研究科 2. 瀬戸内CN国際共同研究センター 3. 広島県立総合技術研究所農業技術センター * 責任著者 掲載雑誌: Phytochemistry (Q1) DOI番号:https://doi.org/10.1016/j.phytochem.2025.114691 背景 イネシンガレセンチュウ(図1)は、イネ心枯線虫病(*3)を引き起こす農業害虫です。この線虫の感染はイネ種子の収量減少とコメの品質低下を引き起こします。近年、従来の化学合成農薬の使用が大幅に制限されていることから、それらと同等の効果を持つ環境に優しい農薬の研究開発に関心が高まっています。このような背景から、殺線虫剤の供給源として天然物に注目が集まっています。これまで、海藻が有している殺線虫効果に関してはほとんど知られていませんでした。そこで、食用にされていない海藻類の有効利用を目的にして研究を開始しました。 研究成果の内容 未利用海藻類の有効利用の可能性を探る過程で、海藻の一種であるアミジグサ(図2)を齧(かじ)ると強い辛味を感じることがわかりました。アミジグサを有機溶媒で抽出し、その化学成分を分析機器によって解析した結果、新規3種を含む11種の成分の化学構造を明らかにしました。それぞれの化学成分について、イネシンガレセンチュウに対する殺虫活性を評価したところ、分子内に「α,β-不飽和1,4-ジアルデヒド」と呼ばれる構造を持っていることから強い辛味を有する既知物質「4β-ヒドロキシディクチオジアールA」(図3)が、殺線虫効果を示すことが分かりました。 今後の展開 今後、殺線虫活性物質が有する化学構造のうち、どのような構成部位が活性に重要であるかなどのメカニズムを解明し、より有効性の高い物質を開発できれば、新しい農業害虫防除剤の開発につながるものと期待されます。 研究助成 本研究はダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)の支援を受けたものです。また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。 用語解説 (*1)イネシンガレセンチュウ: 学名Aphelenchoides besseyi アフェレンコイデス科の植物寄生性線虫。世界の水稲作地帯に広く発生し、イネの種子を介して伝播する。 (*2)アミジグサ: 学名Dictyota dichotoma アミジグサ科の小型褐藻で、世界各地の沿岸に生息している。その成分には、ウニなどの海洋植食動物に対する摂食阻害作用の他、抗菌・抗酸化などの薬理活性が既に報告されているが、産業利用は進んでいない。 (*3)イネ心枯線虫病: イネシンガレセンチュウが寄生しておこるイネの病害。感染したイネは、葉先が白く枯れた症状(俗称「ほたるいもち」)を示し、栄養不足に陥り、穂の小型化や籾粒数の減少がみられる。また、玄米の粒重が増加せず、屑米や黒点米が発生することがある。この病害は収量を10%~30%減少させることが報告されている。 参考資料 図1:イネシンガレセンチュウ (体長約0.7 mm) 図2:アミジグサ (高さ約10 cm) 図3:4β-ヒドロキシディクチオジアールA (赤丸枠部分は「α,β-不飽和1,4-ジアルデヒド構造」)     報道発表資料.pdf(253.99 KB) 掲載雑誌:Phytochemistry 研究者ガイドブック(大村 尚 准教授)   【お問い合わせ先】 広島大学大学院統合生命科学研究科准教授大村尚 Tel:082-424-6502 E-mail:homura@hiroshima-u.ac.jp

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    2025.05.26
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    〜デーツの健康効果に新たな知見〜 線虫を用いた実験で、寿命延長の可能性を確認

    広島工業大学 環境学部 食健康科学科の角川幸治教授、広島大学大学院 統合生命科学研究科水沼正樹教授および荒川賢治教授、お多福醸造株式会社による共同研究により、ドライフルーツの一種である「デーツ」に、線虫の最大寿命に大きな影響を与えることなく、平均寿命(Mean Lifespan:MLS)のみを延ばす効果があることが明らかになりました。 本研究成果は、公益社団法人日本生物工学会が発行する英文誌『Journal of Bioscience and Bioengineering』において、2025年5月10日にオンライン公開されました。 (DOI:10.1016/j.jbiosc.2025.04.006)   研究の背景と目的 近年、健康寿命の延伸が社会的課題となる中で、食品の持つ抗老化作用に注目が集まっています。本研究では、日常的に摂取されることの多いドライフルーツの寿命延長効果に着目し、線虫(Caenorhabditis elegans)を用いた検証を行いました。   研究概要 市販のドライフルーツ5種類(デーツ、パイナップル、イチジク、マンゴー、プルーン)を線虫に摂取させ、寿命測定を行った結果、すべてのドライフルーツにおいて平均寿命(MLS)が有意に延長されました(図1)。特にデーツにおいては、最大寿命にはほとんど変化がないにもかかわらず、平均寿命が著しく延びる(延長率:37.1%)という特異な結果が得られました。 次に、最大寿命と平均寿命を標準化してZ値を算出し、ΔZ比(平均寿命と最大寿命の差)として各種ドライフルーツと比較したところ、デーツは他の果実と比べて平均寿命の延長効果が際立っていることが明らかになりました(図2)。 この特異な効果が特定の品種によるものかを検証するため、市販されている8種類のデーツを用いて同様の実験を行ったところ、いずれの品種でも平均寿命の延長が認められ、デーツ全般に共通した現象であることが確認されました(図3)。   成分分析と今後の展望 成分分析の結果、これまで寿命延長作用が報告されている既知の成分は、調査対象となったデーツには含まれていない、または影響していないことが判明しました。すなわち、デーツにはこれまで知られていなかった、新たな「平均寿命延長成分」が含まれている可能性が示されました。 今後はこの成分の特定を進め、抗老化に資する健康食品の開発に向けて研究を継続してまいります。   線虫(せんちゅう)とは 線虫:Caenorhabditis elegans(図4、以下 C. elegans)は、体長約1 mmの非寄生性線虫であり、大腸菌を餌として寒天培地または液体培地上で容易に飼育することができます。C. elegansの最大の特徴は、神経や筋肉を含む約1,000個の全細胞について、その細胞の発生の過程(系譜)がこれまでの研究により明らかにされている点です。線虫は、約3日で成虫となり、数日間にわたって産卵を行った後、加齢により徐々に活動が低下し、約3週間で寿命を迎えます。 1998年には、多細胞生物として世界で初めて全ゲノムが解読されました。C. elegansは、哺乳類を用いた動物実験に比べて設備や飼育のコストが低く、取り扱いが簡便であるという利点があるほか、動物愛護の観点から規制対象外とされていることから、研究用途に非常に適しています。 特筆すべきは、哺乳類を含む高等動物と共通する老化関連のシグナル伝達経路を数多く有している点です。これにより、C. elegansは抗老化研究のモデル生物として、現在も世界中の研究機関で広く活用されています。   デーツとは デーツ(図5)はナツメヤシ属の果実で、アラブ文化圏では主食の1つとして親しまれています。日本では嗜好品として市販されており、古くから「神が与えた果実」や「生命の樹」として崇められてきました。旧約聖書にも登場するなど、歴史的にも重要な果実です。 これまでに多くの栄養成分・機能性成分が明らかにされてきましたが、デーツ摂取による生体への具体的な影響についての研究は限られており、本研究はその新たな知見を提供するものとなります。 図1. ドライフルーツを摂食させた線虫の寿命測定結果 図2. ドライフルーツを摂食させた線虫のΔZ比 図3. さまざまなデーツを摂食させた線虫のΔZ比 図4. 線虫 (Caenorhabditis elegans) 図5. デーツ   論文情報 掲載誌: Journal of Bioscience and Bioengineering タイトル: Date, a major dried fruit, extends the lifespan of Caenorhabditis elegans DOI: https://doi.org/10.1016/j.jbiosc.2025.04.006   【研究成果】〜デーツの健康効果に新たな知見〜線虫を用いた実験で、寿命延長の可能性を確認_0.pdf(1.07 MB) 科学雑誌:Journal of Bioscience and Bioengineering 研究者ガイドブック(水沼 正樹 教授) 研究者ガイドブック(荒川 賢治 教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 広島工業大学 環境学部 食健康科学科 教授角川 幸治 Tel:082-921-6472 E-mail:k.kakugawa.db@it-hiroshima.ac.jp   広島大学大学院 統合生命科学研究科 教授水沼 正樹 Tel:082-424-7765 E-mail:mmizu49120@hiroshima-u.ac.jp   広島大学大学院 統合生命科学研究科 教授荒川 賢治 Tel:082-424-7767 E-mail:karakawa@hiroshima-u.ac.jp     <報道(広報)に関すること> 広島工業大学 広報部石田 知世 Tel:082-921-3128 E-mail:kouhou@tsuru-gakuen.ac.jp   広島大学 広報部 Tel:082-424-6762 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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    2026.02.04
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    防風林近くの農業湿地では、ヒバリ、ケリなど草原や湿地に棲む野鳥が減少することを確認 ~農業生産と生物多様性保全を両立させる農地管理の実現へ~

    本研究成果のポイント 水田やハス田では、防風林※1の近くでオオヨシキリやホオジロなど林や藪を好む鳥やムクドリは増える一方、ヒバリやケリのような開けた環境を必要とする草原・湿地性鳥類は棲みにくくなります。これは、防風林があることでその林の中にキツネや猛禽類などの捕食者が身を隠しやすくなるため、などが考えられます。 草原性鳥類は、防風林に隣接する地点では、防風林から約1km離れた開放的な環境に比べて、個体数が約70%少ないことが分かりました。 本研究は、防風林を一律に増やすよりも、草原・湿地性鳥類が利用する開放的な農業湿地※2環境を途切れずに残すよう配置・管理する方が、農地全体の生物多様性の維持に有効であることを示しています。   概要 広島大学大学院先進理工系科学研究科の久野真純助教らは、農業湿地景観における防風林が鳥類群集※3に与える影響を明らかにしました。石川県河北潟周辺の農業湿地で調査した結果、防風林の周辺ではシジュウカラやコゲラを含む林の縁を好む鳥の種類や数が増える一方で、ヒバリなど草原性の鳥の数や、ケリなどのチドリ類、サギ類、カモ類など湿地性の鳥の種類が減少することが分かりました。 特に草原性鳥類(ヒバリとキジ)では、防風林に隣接する地点で個体数が大きく減り、開放環境と比べて約70%少ないことが明らかになりました(図1)。本研究は、防風林を一様に増やすだけでは農地全体の生物多様性の向上につながらない場合があることが示されました。今後は、開放的な環境が連続するよう防風林の配置や管理を工夫することがだと考えられます。 本研究成果は、2026年1月15日に、国際学術誌「Journal of Environmental Management」にオンライン掲載されました。 また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。   論文情報 掲載雑誌:Journal of Environmental Management 論文題目:Shelterbelts support edge birds but limit grassland and wetland specialists in agricultural landscape 著者: K久野真純・出口翔大・Wenhuan Xu・Xike Xiao・Keinosuke Sannoh・Xinli Chen・本村健 DOI: https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2026.128583 図1:草原性の鳥の個体数と防風林までの距離の関係性を表したグラフ(Hisano et al. 2026を元に改変)   背景 農業集約化に伴う生息地の単純化は、世界的に農地鳥類の減少を引き起こしてきました。これに対応するため、各国の農業環境計画では、防風林や生け垣林などの農地樹林帯を維持・植栽することが推奨され、林縁性※4や森林性の鳥類を支える有効な手段と考えられてきました。一方で、こうした直線状の樹林帯は、草原性・湿地性鳥類にとって生息地を分断し、樹林帯を利用する猛禽類などに捕食される危険を高める可能性が指摘されています。   これまで、北米ヨーロッパの草原・畑地景観では、防風林や樹林帯が鳥類群集に与える影響が研究されてきましたが、アジア・モンスーン気候帯に広がる水田やハス田などの農業湿地景観では、その影響はほとんど検証されていませんでした。農業湿地は、自然湿地が減少した地域において、多くの湿地性・開放環境性鳥類にとって重要な代替生息地となっており、渡り鳥の中継地としても重要な役割を果たしています。そのため、農業湿地における防風林の効果を理解することは、生物多様性保全と農地管理の両立を考えるうえで重要な課題です。   研究成果の内容 本研究では、石川県河北潟周辺の農業湿地景観(水田・ハス田)を対象に、防風林の有無や距離が鳥類群集に与える影響を調べました。その結果、防風林は藪・林縁性鳥類の種数や個体数を増加させる一方で、草原性および湿地性スペシャリストの生息を制限することが明らかになりました。とくに草原性鳥類では、防風林に隣接する地点で個体数が著しく低下し、防風林から約1km離れた開放環境と比べて約70%少ないことが示されました。 これらの結果は、防風林が林縁性鳥類にとっては営巣や隠れ場所として機能する一方で、見通しの良い開放環境を必要とする地上営巣種にとっては、生息地の縮小や捕食リスクの増加をもたらす可能性を示しています。防風林は鳥類の多様性を一様に高めるのではなく、鳥類群集の構成そのものを変化させる要因であることが明らかになりました。  石川県河北潟のハス田に隣接して設けられた防風林の例。農地の風害対策として設置された防風林は、林や藪を利用する鳥類のすみかになる一方で、広く見通しのよい環境を必要とする鳥類にとっては、生息地利用の妨げの要因となることがある。 撮影:久野真純   防風林の影響を受けやすいと考えられる湿地性の鳥ケリ(左)と、草原性の鳥ヒバリ(右)。いずれも日本各地の水田で見られる種だが、本研究により、防風林に近い環境では生息地として利用しにくくなる可能性が示された。撮影:久野真純   期待される成果 本研究は、防風林や農地樹林帯の効果を、特定の種だけでなく鳥類群集全体の視点から評価し、農業湿地景観における管理上のトレードオフ※5を明確に示した点に特徴があります。これにより、防風林を含む農地樹林帯の維持・植栽がすべての鳥類にとって一様に有益であるという前提 (Hinsley and Bellamy 2000, Heath et al. 2017) を見直す科学的根拠を提供しました。 本研究成果は、農業環境計画や土地利用計画において、防風林を「増やすべき要素」として一律に扱うのではなく、どこに、どの程度配置するかを検討する必要性を示しています。とくに、草原性・湿地性スペシャリスト※6や地上営巣種が生息する農業湿地では、開放環境の連続性を確保することが、生物多様性の維持にとって重要であることが示唆されました。   さらに、水田やハス田などの農業湿地が、自然湿地の減少が進む地域において、渡り鳥や湿地性鳥類の重要な代替生息地となっている点を踏まえると、防風林の配置や規模を適切に設計することで、林縁性鳥類を支えつつ、国際的に減少傾向にある湿地性・草原性鳥類の生息地機能を損なわない農地管理が可能になると期待されます。これらの知見は、日本国内にとどまらず、アジア・モンスーン気候帯を中心とした世界の農業湿地において、持続的な農業と生物多様性保全を両立させる景観管理の指針として活用されることが期待されます。   今後の展開 本研究は、防風林の一律的な拡大が必ずしも農地生物多様性の向上につながらないことを示しました。今後は、防風林の配置や間隔、規模といった設計要素が、鳥類や捕食者の行動にどのように影響するかを、より詳細に検証する必要があります。また、季節や土地利用の違いを踏まえ、農業湿地全体の中でどの程度の開放環境を維持すべきかを明らかにすることが重要です。将来的には、防風林と開放環境を適切に組み合わせた景観設計指針を提示することで、農業生産と生物多様性保全を両立させる農地管理の実現に貢献することを目指します。   用語解説 ※1防風林:農地の風害防止を目的として植えられた直線状の樹木帯。農業生産を支える一方で、鳥類にとっては林縁環境や移動経路として機能することがある。 ※2農業湿地:水田やハス田など、人為的に管理されているが、水域や湿地環境の性質を持つ農地。自然湿地が減少した地域では、多くの湿地性生物の代替生息地となっている。 ※3鳥類群集:同じ地域に生息する複数の鳥類種からなる集まり。 ※4林縁性鳥類:森林と開放環境の境界(林縁)を主な生息場所として利用する鳥類。藪や樹木を隠れ場所や営巣場所として利用する種が多い。 ※5トレードオフ:ある対策によって得られる利益と、同時に生じる不利益の関係。本研究では、防風林が林縁性鳥類を支える一方で、草原・湿地性鳥類の生息を制限する関係を指す。 ※6草原性・湿地性スペシャリスト:草原や湿地などの開放的な環境に特化して生息する鳥類。見通しの良い環境を好み、地上で営巣する種も多い。   その他 本研究に取り組むきっかけは、これまでイギリスやアイルランド、ブルガリア、スイスなど、ヨーロッパを訪れた際に目にした農業景観にあります。ヨーロッパの農地には、畑や草地の境界にヘッジロー(生け垣林)が設けられており、日本の農村風景とは大きく異なる印象を受けました。農地の中に、周囲とは明瞭に異なる「緑の線」が連続している景観が、強く心に残りました。 一方で、日本の農地では、水田など広く開けた空間が人工湿地として機能しており、ヒバリやケリなど、見通しの良い環境を好む鳥たちが利用しています。こうした違いを実際に現地で見比べるなかで、「ヨーロッパで良いとされている農地での植栽が、日本の農地でも同じように良い結果をもたらすのだろうか」という疑問を抱くようになりました。とくに、共同研究者の出口翔大博士(福井市自然史博物館)と議論を重ねるなかで、ヘッジローや防風林のような線状の樹木構造は、林縁性の鳥類には居場所を提供する一方で、開放環境を必要とする鳥類にとっては、かえって生息しにくい環境をつくっているのではないか、という考えに至りました。この疑問が、本研究を進める原動力となりました。   本研究は、NPO法人河北潟湖沼研究所(河北潟研究奨励助成)、日本学術振興会(科研費・若手研究:21K17912)および広島大学スタートアップ経費による支援を受けて実施されました。   参考 Heath, S. K., C. U. Soykan, K. L. Velas, R. Kelsey, and S. M. Kross. 2017. A bustle in the hedgerow: Woody field margins boost on farm avian diversity and abundance in an intensive agricultural landscape. Biological Conservation 212:153-161.   Hinsley, S. A., and P. E. Bellamy. 2000. The influence of hedge structure, management and landscape context on the value of hedgerows to birds: a review. Journal of Environmental Management 60:33-49.   報道発表資料(648.85 KB) 掲載ジャーナル:Journal of Environmental Management 研究者ガイドブック(久野 真純 助教)   【お問い合わせ先】 大学院先進理工系科学研究科理工学融合プログラム(開発科学分野) 久野 真純助教 Tel:082-424-6905FAX:082-424-6904 E-mail:hisano*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

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    2026.02.05
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    瀬戸内海のイカナゴが突然減った謎に迫る ―環境変動で捕食される危険性が高まったことが原因―

    本研究成果のポイント 瀬戸内海東部におけるイカナゴの漁獲量が2017年に急減した背景には、水温上昇、餌不足、捕食者の増加が重なって作用していたことを明らかにしました。 イカナゴを捕食する可能性のある魚食性の魚類14種は、2016年以降に個体数の多い状態が続いていました。 春から初夏に十分な餌をとれないと夏眠の開始が遅れ、捕食される危険性が高まることが示唆されました。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所の米田道夫主任研究員らの研究グループは、瀬戸内海東部において春季の主要な漁獲対象種であるイカナゴの漁獲量が2017年に急減し、その後も低水準が続いている要因を調査しました。その結果、水温の上昇と餌不足といった環境変動が重なったことで、2016年にイカナゴが捕食される危険性が急激に高まり、これが2017年の漁獲量の急減につながった主要因であることを明らかにしました。 本研究成果は、2026年1月2日に学術雑誌Marine Environmental Researchに掲載されました。また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けました。   〈論文発表〉 論文タイトル:Local environmental changes boost predation risk in forage fish: application to the sand lance in the eastern Seto Inland Sea   著者:谷口碧1、米田道夫2、西川哲也3、中村政裕2、森岡泰三2、冨山毅1* 1 広島大学大学院統合生命科学研究科; 2 国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所; 3兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター   *Corresponding author(責任著者) 掲載雑誌:Marine Environmental Research 215: 107827 DOI: 10.1016/j.marenvres.2025.107827   背景 イカナゴはイカナゴ科に属する小型魚で、瀬戸内海の東部、特に大阪府、兵庫県、香川県において重要な水産資源であり、3~4月にかけて漁獲される稚魚は「くぎ煮」の材料として広く親しまれてきました。瀬戸内海東部におけるイカナゴの漁獲量は、減少傾向にありながらも、2016年までは年間1万トン以上を維持してきました。しかし、2017年にイカナゴの漁獲量は前年の約1割まで急激に落ち込み、その後も回復せず、現在まで3千トン未満の低水準が続いています(図1)。これまで、この減少の背景として、「海がきれいになりすぎたこと(栄養塩濃度の低下)により、イカナゴの餌となる動物プランクトンが減少し、その結果、イカナゴの産卵量が低下した可能性」が指摘されてきました。しかし、餌環境の悪化や産卵量の減少は、通常は時間をかけて徐々に進行する現象であるため、イカナゴの漁獲量が2017年に突発的に大きく減少した理由は明確にはなっていませんでした。   研究成果の内容 本研究では、 (1) イカナゴを捕食する魚類の増減に着目した長期データ解析、 (2) 水温上昇と餌不足がイカナゴの行動に及ぼす影響を調べる飼育実験、 を行いました。   (1) イカナゴは冬に生まれ、春~初夏にかけて活発に餌を食べて栄養を蓄えた後、夏に砂に潜って冬まで眠る「夏眠」という習性を持っています。このため、夏眠に入る前までに十分な栄養を蓄えられるかどうかが、生き残りにとって重要です。そこで、1~7月における魚食性魚類14種(サワラ、ブリ、ハモ、スズキ、ヒラメなど)の漁獲情報を解析し、捕食者の分布状況の変化を調べました。その結果、2015年以前と2016年以降で状況は大きく異なり、2016年から捕食者が急激に増加していたことが明らかになりました(図2)。   (2) 餌が十分な条件と餌が不足した条件でそれぞれイカナゴを飼育し、行動の違いを比較しました。その結果、餌が不足したイカナゴでは夏眠の開始が遅れることがわかりました。この影響は、水温の上昇による影響よりも大きく、餌不足の状態では、夏眠までに栄養を蓄えるためにイカナゴは長時間活動し続ける必要があることが示されました。これは、捕食者と遭遇する機会、すなわち「捕食される危険性」が高まることを意味します。 以上から、瀬戸内海東部のイカナゴには、餌不足と水温上昇、さらに捕食者の増加が重なって作用していたことが明らかとなりました。特に、2016年に捕食者が急激に増えたことにより、その年に夏眠に入るイカナゴが大きく減少し、その結果、冬の産卵量が激減したと考えられます。このことが、2017年に稚魚が急激に減少した主な要因として説明されました。   今後の展開 イカナゴの資源量や漁獲量は全国的に減少しています。その要因は海域ごとに異なる可能性もあるため、それぞれに調べる必要があります。これまでの資源変動の研究では、水温や餌環境など、生き物の成長や繁殖に直接関与する要因(ボトムアップ効果)が主に注目されてきました。一方で、本研究では捕食者の増減が資源変動に関与する可能性(トップダウン効果)が示され、このアプローチによる新たな科学的な検証が可能となりました。トップダウン効果は野外で直接検証することが難しいものの、長期的な漁獲データ解析と飼育実験を組み合わせた統合的なアプローチによって、科学的な検証が可能となることを示した点に、本研究の意義があります。今後は、本研究の枠組みを他海域や他の魚種に適用し、急激な環境変化のもとで起こる資源変動の仕組みを解明していくことが重要です。   参考資料 図1 瀬戸内海におけるイカナゴの漁獲量 図2 魚食性魚類の分布密度(赤色が高く、青色が低いことを示す)   【プレスリリース】瀬戸内海のイカナゴが突然減った謎に迫る―環境変動で捕食される危険性が高まったことが原因―.pdf(351.29 KB) 掲載ジャーナル:Marine Environmental Research 研究者ガイドブック(冨山 毅 教授)   <研究に関すること> 広島大学大学院統合生命科学研究科教授冨山毅 Tel:082-424-7941 E-mail:tomiyama@hiroshima-u.ac.jp   国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所主任研究員米田道夫 Tel:0193-63-8121 E-mail:yoneda_michio55@fra.go.jp   <報道に関すること> 広島大学 広報室 TEL:082-424-4518 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   国立研究開発法人水産研究・教育機構経営企画部広報課 E-mail:Fra-pr@fra.go.jp

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    2025.11.04
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    日本周辺の魚類体重変動の主原因は餌をめぐる競争 ―75%は餌をめぐる競争、50%は環境悪化―

    本研究成果のポイント 日本周辺の魚類16系群の体重減少の75%は餌をめぐる競争が原因と特定された。 魚類の体重変化に対し、餌をめぐる競争、環境要因、漁獲圧の影響を定量的に評価した。 魚種内および魚種間の競争が明示され、複数魚種管理の科学的知見となることが期待される。   餌をめぐる競争で魚類の体重変化   概要 東京大学大学院農学生命科学研究科の林珍大学院生(研究当時)と同大学大気海洋研究所の伊藤進一教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授らの共同研究グループは、日本周辺の魚類16系群(注1)の体重変化の原因を調べ、75%の系群の体重変動は餌をめぐる競争が主原因であることを明らかにしました。 本研究では長期の体重変動に状態空間モデル(注2)を応用することで、餌をめぐる競争、環境要因による影響、漁獲圧の影響を初めて定量的に評価しました。先行研究では、2010年代に日本周辺の多くの魚種・系群で共通して体重減少が生じており、地球温暖化に伴う餌料プランクトンの生産減少に伴い魚種内および魚種間での餌をめぐる競争が激しくなったことが原因であると推定しましたが、本研究では各要因を定量的に評価した点で新規性があり、この研究成果は今後複数魚種管理(注3)の科学的知見として役立つことが期待されます。   発表内容 これまでに同研究グループは、2010年代に日本周辺の多くの魚種・系群で共通して体重減少が生じていることを先行研究で示していました(関連情報①)。その中で、地球温暖化に伴う餌料プランクトンの生産減少によって魚種内および魚種間での餌をめぐる競争が激しくなったことが原因だと推定しましたが、各魚種あるいは系群の体重変化(図1)の原因を特定するには至っていませんでした。この度、本研究チームは、各年に孵化した魚類が、餌をめぐる競争、環境要因、漁獲圧の影響を受けながら年齢を増すモデルを構築し、状態空間モデルを当てはめることで、実際に起きた体重変動を説明するために必要な要因の特定を行いました(図2)。その結果、餌をめぐる競争は75%の系群で重要であり、ついで環境が50%の系群で作用し、漁獲圧の影響は25%にとどまることが示されました。 図1:各系群の体重変化 元データは水産庁および水産研究・教育機構が公表している資源評価報告書に記載されている年齢別体重(https://abchan.fra.go.jp/hyouka/)。系群については(注1)参照。Lin et al. (2025)より(CC-BY)。 図2:各系群の状態空間モデルの解析結果     左列は最小年齢の解析結果、右列はそれ以降の年齢の解析結果。それぞれの色は体重変動の要因を示し、点線の0の値から離れてかつ高いピークを示すものほど影響が明確であることを示す(灰色:過去の履歴の影響、水色:魚種内及び魚種間競争、赤:漁獲圧、橙:交互作用、緑:環境要因)。Bは種内競争、SumBはマイワシ・マサバ・カタクチイワシからの種間競争、OYは親潮面積、VTDは表層と下層の水温差の影響を示す。Nullはどの影響でも説明できなかったことを示す。右側の%はモデルの説明率を示す。系群については(注1)参照。Lin et al. (2025)より(CC-BY)。     水産庁や水産研究・教育機構などの努力によって長期に蓄積された年齢別体重データを網羅的に調べた研究の成果として、定量的に体重変動の要因が示されました。この結果は、各魚種あるいは系群ごとの管理だけでは加味されない魚種間の餌をめぐる競争の重要性を示すものであり、今後複数魚種管理が必要であることを示しています。本研究は、今後の複数魚種管理の基礎的な知見となることが期待されます。     関連情報 「プレスリリース①日本周辺の魚類の小型化 ―温暖化により顕著になった餌をめぐる競合―」(2024/02/28)     発表者・研究者等情報 東京大学 大気海洋研究所 伊藤進一教授 大学院農学生命科学研究科   林珍博士課程(研究当時) 現:東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)ポストドクトラル研究員   水産研究・教育機構水産資源研究所 藤原邦浩主幹研究員   広島大学 大学院統合生命科学研究科 冨山毅教授     論文情報 雑誌名:Progress in Oceanography 題名:A state-space approach reveals that competition drives variation in fish body weight, with influences from environmental conditions and fishing pressure 著者名:Zhen Lin *, Shin-ichi Ito, Alan Baudron, Christine Stawitz, Takeshi Tomiyama, Kunihiro Fujiwara, Paul D. Spencer, John Morrongiello DOI: 10.1016/j.pocean.2025.103582 URL: https://doi.org/10.1016/j.pocean.2025.103582     注意事項 日本時間11月01日午前02時06分(協定世界時間:10月31日午後5時06分)以前の公表は禁じられています。     研究助成 本研究は、科研費「基盤研究A(課題番号:JP21H04735)」、「学術変革領域B(課題番号:JP22H05030)」、「学術変革領域研究A公募研究(課題番号: JP25H02072)」の支援により実施されました。     用語解説 (注1)系群 資源の変動単位。遺伝的に他の生物集団と区別できる集団、あるいは遺伝的に区別できなくとも、産卵期、産卵場、分布、回遊、成長、成熟、生残など、独自の生物学的特徴を有する場合が多い。本研究で用いた16系群は、マイワシ太平洋系群、マイワシ対馬暖流系群、マアジ対馬暖流系群、マサバ太平洋系群、マサバ対馬暖流系群、ゴマサバ太平洋系群、ゴマサバ東シナ海系群、ウルメイワシ対馬暖流系群、サワラ瀬戸内海系群、カタクチイワシ太平洋系群、カタクチイワシ対馬暖流系群、マダラ本州太平洋北部系群、ブリ、スケトウダラ太平洋系群、イカナゴ瀬戸内海東部系群、キチジ太平洋北部系群。   (注2)状態空間モデル 状態を表す変数(今回の場合は真の体重)がある要因(今回の場合は餌をめぐる競争を指標する各系群の資源量あるいはマイワシなど大きく変動し他魚種にまで影響する資源量、環境要因としての栄養塩豊富な親潮域の面積あるいは表層と下層の水温差による成層強度、漁獲圧)によって変化し、その変数の観測値(今回の場合は体重の観測値)が誤差を持って観測されると仮定し、各要因の影響を調べるモデル。   (注3)複数魚種管理 単一魚種・系群ではなく、複数の魚種・系群を対象として管理する方法。   報道発表資料_20251101報道解禁.pdf(681.83 KB) 掲載雑誌:Progress in Oceanography 研究者ガイドブック(冨山 毅 教授)   【お問い合わせ先】 東京大学大気海洋研究所 教授伊藤進一(いとうしんいち) Tel:04-7136-6240 E-mail:goito@aori.u-tokyo.ac.jp   広島大学大学院統合生命科学研究科 教授冨山毅(とみやまたけし) Tel:082-424-7941 E-mail:tomiyama@hiroshima-u.ac.jp   東京大学大気海洋研究所 附属共同利用・共同研究推進センター広報戦略室 E-mail:kouhou@aori.u-tokyo.ac.jp   東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)アウトリーチ担当 Tel:022-795-5620 E-mail: aimec-comm@grp.tohoku.ac.jp   広島大学広報室 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

    • 食料/農林水産業
    • 融合領域
    2025.01.23
    • 食料/農林水産業
    • 融合領域
    マグロ刺身の食べごろを散乱光で評価

    背景 世界に広がる寿司や刺身など魚の生食文化の発展に向けて、鮮魚の安全検査や冷凍保存時の品質検査の技術確立の必要性が高まっている。 食用魚は、低温下で一定時間寝かせて熟成することでイノシン酸などのうま味成分が増すことが知られ、これらのうま味成分を計測する方法は多々あるが、鮮魚のおいしさはうま味成分のみでは決まらず、歯ごたえなどの食感も重要な要素となる。 魚肉は主に筋肉で構成されており、活け締め後の時間経過に伴う筋肉の分解が食感に大きく関わっているが、これまでの食感評価では、検査器を対象物に物理的に接触させる必要があった。 本研究では、光を照射して筋繊維やコラーゲンのような構造的に偏りのある物質内で特殊な散乱光を発生させ、これを観測することにより、筋肉やコラーゲンの分解プロセスを非接触で直接計測する手法を開発した。   研究成果の内容 計測方法 レーザー光照射により物質内で発生する散乱光(光第二高調波=SHG光)を測定する偏向顕微鏡(以前本研究者らが開発)を用いる。   キハダマグロの測定 新鮮な冷凍キハダマグロのブロックを、飲食店と同じ手順で解凍後に、4℃条件下に静置(チルド冷蔵) 静置後、0、12、24、48、72時間で、サンプルを採取し、レーザー光を様々な偏向角度(0~180°、10°きざみ)で照射し、散乱光の画像を測定   散乱光画像により筋繊維構造が可視化できる 筋繊維構造の時間変化を、散乱光の合成画像(様々な照射光偏向角における信号を足し合わせた画像)で評価する。 解凍後12時間さらには24時間で散乱光の強度は大きく低下し、散乱源となる筋肉の分解が進行している。 ただ、24時間後でも筋繊維の特徴である周期構造(サルコメア構造)が残っている。 24時間以降になると、周期構造に裂け目やぼやけが生じ、72時間後には細かい繊維のみとなる。 ※時間経過に伴い散乱光強度が低下し画像が暗くなるため、右三つの24時間以降の​図は画像処理して繊維構造を見やすくしている。   散乱光強度の偏向角依存性により筋肉かコラーゲンかが判る 散乱光画像を領域分割して、領域毎の散乱光強度を求め、その偏向角依存性をみる。 解凍後0時間では散乱光強度の偏向角依存性は二山形状に、72時間後にはすり鉢状の形になる。 先行研究で、二山形状は筋繊維に関わるたんぱく質ミシオンの特徴、すり鉢形状はコラーゲンの特徴であることが判っている。 図の説明:上の散乱光画像を、縦方向2分割、横方向4分割し、8つの各領域毎に、散乱光強度と入射偏向角度の関係を示す。領域毎に色を変えて下の図にプロットしている。​   散乱光強度と偏向角の関係をパラメータγで定量化 先の二山形状、すり鉢形状のグラフは共通の数式で近似でき、その形をパラメータγの値のみで表現できる。(詳細は省略) 解凍後各経過時間における散乱光強度と偏向角の関係からパラメータγの値を求め、時間毎のγの値の分布図(※)を示している。 解凍後、12時間までにタンパク質の分解が筋肉全体で始まるが、筋肉の構造はそれほど変化しない。 24時間までに、筋繊維の周期構造が急速に分解するが、その後、48時間までいったん安定期に入る。 48時間以降、筋肉分解が再開し、72時間までにはコラーゲン繊維を主とする組織となる。 ※ 各時間における散乱光画像40~50サンプルを採取し、それぞれを16領域に分割し、各領域におけるγの値を求めた。   「食べごろ」の判定 従来の食品検査法による鮮度の評価指標K値は、解凍後48時間までに大きく増加、すなはち、生化学的な反応による鮮度低下が進行する一方で、イノシン酸の産出によるうま味が増加する。 本研究によると、筋繊維の分解は、12時間以降急速に進むが、24時間後では筋繊維の構造はまだ残ったまま48時間まで安定期に入る。72時間経過するとコラーゲン繊維を主とする組織になる。 「食べごろ」は人により異なるが、 プリプリした弾力のある食感が好みの場合は、筋肉構造の変化が少ない12時間までが食べごろ 24時間から48時間までが、柔らかい歯応えとうま味を安定して感じられる食べごろ 48時間以降は、筋肉分解が大幅に進行し、コラーゲン主体の筋張った食感になる   本研究の優位性 鮮魚の食感に関わる筋肉繊維の構造とその変化を非接触で測定可能であり、食感の定量評価が可能となる。 繊維構造の直接計測のため、魚種などによらない汎用的な評価になりうる。 世界に広がる寿司や刺身など魚の生食文化の発展に向けて、鮮魚の品質評価の基盤技術になりうる。   論文 Optical evaluation of internal meat quality deterioration in a tuna fillet based on second-harmonic generation anisotropy measurement Tomonobu M WATANABE, Yasuhiro MAEDA, Go SHIOI, Kaho MIYAZAKI, Hideaki FUJITA Journal of Food Engineering <DOI>10.1016/j.jfoodeng.2024.112422   研究者からのメッセージ 今回開発された手法は、筋肉繊維のみから選択的に発せられるSHG光を指標としているため、適用する魚種を選びません。また、従来の食感に関わる指標とも異なり、微視的な構造変化に基づいて評価でき、新しい鮮魚の評価法となると期待されます。   共同研究チーム 理化学研究所生命機能科学研究センター先端バイオイメージング研究チーム チームリーダー渡邉朋信(広島大学原爆放射線医科学研究所教授) 技師前田康大塩井剛 広島大学原爆放射線医科学研究所 助教藤田英明 学部生宮崎夏帆   研究支援 理化学研究所運営費交付金(生命機能科学研究)により、一部、理化学研究所-広島大学共同研究拠点で実施 基盤となったSHG偏光顕微鏡技術は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「オールオプティカルメカノバイオロジーの創出に向けた技術開発と発生生物学への応用(研究代表者:倉永英里奈)」の研究過程において開発 研究者 渡邉朋信(WATANABE TOMONOBU) 広島大学 原爆放射線医科学研究所 教授

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