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    • 情報通信
    2024.04.23
    • 情報通信
    世界初のミックスドシグナルベースバンド復調回路による 20Gb/s QPSK無線伝送技術を開発

    研究成果のポイント ミックスドシグナル技術を用いて超高速情報伝送の実現と電力効率の改善へ 無線通信に用いられるベースバンド復調回路(注1)は通常、高速・高分解能ADC(注2)と大規模DSP(注3)で構成されています。従来の構成を用いて数+Gb/sを超える高速な通信を行う場合、ADCとDSPへの要求性能が高くなり電力効率が悪化します。 今回、ミックスドシグナル(注4)技術を用いて高速・低分解能ADCと小規模DSPからなる世界初のベースバンド復調回路を、ザインエレクトロニクス株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))、国立大学法人広島大学が共同で開発しました。これにより数+Gb/sを超える超高速通信を実現しながらも、電力効率が改善することで大幅な電力削減が見込まれます。   ベースバンド復調回路を搭載した受信用半導体で20Gb/s QPSK通信が可能に ベースバンド復調回路を搭載した受信用半導体とロジック回路を搭載したFPGA(注5)を開発し20Gb/s QPSK(注6) 変調された電気信号の受信を実現しました。FPGAに実装した機能は実用化の際にはベースバンド受信用半導体に統合します。   概要 ザインエレクトロニクス、NICT、広島大学は共同で、総務省研究開発プロジェクトの一環で、世界初のミックスドシグナル広帯域ベースバンド回路による毎秒20ギガビットの超高速情報伝送を実現しました。ザインエレクトロニクスは設計・測定全般を、広島大学大学院先進理工系科学研究科の藤島実教授らは設計・測定についての議論を、NICTは測定についての議論や測定補助をそれぞれ担当しました。 この半導体回路は、キャリア(注7)周波数をシンボル(注8)・キャリア周波数の整数倍にすることで回路を簡素化することができます。キャリア、タイミング(注9)とデータ復元機能を統合する独自の回路構成 (ミックスドシグナルコスタス・ループ) を用いることで超高速情報伝送を実現しました。高速・低解像度ADCは8相タイムインターリーブ(回路全体で出力を8倍速化)毎秒40ギガサンプルの3bit ADCを実装し、これにFPGAを用いてデータを復元することで実現しました。 本研究成果は、2024 IEEE Custom Integrated Circuits Conference (CICC、2024年4月21日~4月24日、米国コロラド州デンバー)で発表を行いました[1]。 図1. 新開発した世界初のミックスドシグナルベースバンド復調回路を搭載した受信用半導体   今後の展開 今回の研究成果により、ミックスドシグナル型アーキテクチャを通じて、より高性能でありながらも、エネルギー効率にも優れた回路実装への道を拓くものとなりました。   用語説明 (注1)ベースバンド復調回路: 変調されて無線送信されたベースバンド信号(デジタル信号)を、受信機側で元のベースバンド信号に復調する回路 (注2)ADC: アナログ・デジタル変換回路 (注3)DSP: デジタルシグナルプロセッサ (注4)ミックスドシグナル: アナログ信号とデジタル信号の両方を取り扱う回路 (注5)FPGA: Field Programmable Gate Array (注6)QPSK: Quaternary Phase Shift Keying (四位相偏移変調) であり、一度の変調で4値 (2ビット)を表現できる変調方式。 (注7)キャリア: 信号を送受信するために使用される電波 (注8)シンボル:情報を電波に載せる時の変調信号の単位 (注9)タイミング: データ生成に必要な時間情報のこと   総務省研究開発プロジェクトの背景 総務省では、新たな電波利用ニーズの拡大に対応するため、周波数のひっ迫状況を緩和し、電波の有効利用を目的とした電波資源拡大のための研究開発を行い、超大容量無線通信を実現可能とし、新たな周波数帯の利用を促進することにより電波資源の拡大に資することを目標としております。   本成果の一部は総務省電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)によるものです。 課題名:テラヘルツ波による超大容量無線LAN伝送技術の研究開発 課題イトランシーバ技術の研究開発   参考文献 [1] Shunichi Kubo1, Yuji Gendai1, Satoshi Miura1, Shinsuke Hara2,3, Satoru Tanoi2, Akifumi Kasamatsu2, Takeshi Yoshida3, Satoshi Tanaka3, Shuhei Amakawa3, Minoru Fujishima3, “A 20Gb/s QPSK Receiver with Mixed-Signal Carrier, Timing, and Data Recovery Using 3-bit ADCs ,” 2024 IEEE Custom Integrated Circuits Conference. 1THine Electronics, Inc., 2National Institute of Information and Communications Technology, 3Hiroshima University   報道発表資料(269.86 KB) 国際会議:2024 IEEE CICC 研究者ガイドブック(藤島 実 教授)   【報道関係者 お問い合わせ先】 ザインエレクトロニクス株式会社取締役総務部長山本武男 電話:03-5217-6660 E-mail:investors*thine.co.jp   国立研究開発法人情報通信研究機構 <研究に関すること> 未来ICT研究所小金井フロンティア研究センター研究センター長笠松章史 E-mail:kasa*nict.go.jp   <広報に関すること> 広報部 報道室 E-mail:publicity*nict.go.jp   国立大学法人広島大学 <研究に関すること> 大学院先進理工系科学研究科教授藤島実 電話:082-424-6269 E-mail:fuji*hiroshima-u.ac.jp <広報に関すること> 広報室電話:082-424-3749 E-Mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   (注: *は半角@に置き換えてください)

    • 情報通信
    • 半導体
    2026.03.05
    • 情報通信
    • 半導体
    サブマイクロ秒・700Gbps超を実現する 低遅延データ圧縮通信技術を開発 ~FPGAクラスタにおける通信ボトルネックの解消に貢献~

    大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII、所長:黒橋 禎夫、東京都千代田区)アーキテクチャ科学研究系 教授/所長補佐、鯉渕 道紘、特任助教 平澤 将一は、国立大学法人 広島大学(学長: 越智 光夫、広島県東広島市)大学院先進理工系科学研究科教授 中野 浩嗣、富士通株式会社(代表取締役社長 時田 隆仁、本店 神奈川県川崎市中原区)シニアプロジェクトディレクター 福本 尚人、リサーチディレクター 本田 巧の研究グループと共同で、FPGAクラスタにおける通信性能を大幅に引き上げる超低遅延・高帯域圧縮通信技術を開発しました。本技術は、FPGA間通信においてデータ圧縮と復号を含めて590ナノ秒という極めて低い遅延を実現し、さらに1 台のFPGAあたり最大757Gbpsの実効通信帯域を達成しました。本成果は、計算性能の高さに比べ通信性能がボトルネックとなっていたためFPGAベースの高性能計算システムに対し、高いスケーラビリティを提供するものです。   近年、書き換え可能な専用回路(FPGA: Field Programmable Gate Array)を多数つなぎ、高速・低遅延・省電力で特定の処理を並列実行できる計算システム(以後、FPGAクラスタと呼ぶ)が注目を集めています。高性能なFPGA カードには高帯域なメモリが搭載され、単体カード内の計算性能およびメモリアクセス性能は大きく向上しています。一方で、FPGA間の通信帯域や通信遅延は依然として制約が大きく、特に集合通信*1を多用する大規模並列処理やAI学習では、通信がシステム全体の性能を支配する要因となっていました。 この問題を解決する手段としてデータ圧縮が注目されていますが、従来のデータ圧縮方式はハードウェア実装の複雑さや処理遅延の増大が課題となり、超低遅延通信には適していませんでした。 本研究では、この問題を解決するデータ圧縮通信技術を開発しました。特徴は、どのような場合でも通信データが元より大きくならない軽量な圧縮方式と、通信路の幅に合わせてデータを整列させる独自の回路構成を組み合わせている点です。図1に示す提案FPGA回路の例では、16個の数値データ(合計512ビット)をメモリから一度に受け取り、これらを圧縮後、256ビット幅の通信路に効率よく送り出します。従来の方式では、圧縮後のデータを通信路の幅にぴったり合わせる処理が難しく、これが通信速度の低下を招いていました。本技術では、まず入力されたデータの並び順を入れ替えることで、複数のデータを同時に並列に圧縮でき、処理を高速化できます。圧縮されたデータは通信路の幅に揃えて送り出されるため、通信帯域を無駄なく活用できます。この例の回路を用いた評価では、実質的に通信性能を非圧縮時と比べて約2倍に高めながら、通信全体の遅延をサブマイクロ秒(100万分の1秒未満)という低遅延に抑えることに成功しました*2。 本技術は、光技術を用いた高速通信回線を備えるFPGAクラスタにおいて実装され、1対1の通信だけでなく、集合通信においても最大757Gbpsという高い通信性能を達成しました。さらに、AIの分散学習で用いられる勾配データの通信に適用したところ、学習結果の精度にほとんど影響を与えないことも分かりました。 図1: 16個(計512ビット)の入力データを圧縮して256ビットに出力する回路例   本成果は、FPGAクラスタに限らず、将来の光インターコネクトを用いた高性能計算システムやAIアクセラレータにおいても有効性が期待されます。今後は、適応的な誤差制御や様々な数値表現への拡張を進め、より幅広い応用分野への展開を目指します。   解説 (*1)複数の計算ノード(FPGAを含)間でデータを一斉に送受信・共有する並列計算向けの通信方式。 (*2)評価に用いたFPGAクラスタは、8台のFPGAを約50Gbpsの専用光リンクで相互に接続する構成。各FPGAは異なるXeonサーバーに格納されている。詳細: Michihiro Koibuchi, Takumi Honda, Naoto Fukumoto, Shoichi Hirasawa, Koji Nakano, A 590-nanosecond 757-Gbps FPGA Lossy Compressed Network, IEEE Transactions on Parallel and Distributed Systems, Volume 37, Issue 4, pp.836-848, 2026 DOI 10.1109/TPDS.2026.3659817.   【プレスリリース】サブマイクロ秒・700Gbps超を実現する低遅延データ圧縮通信技術を開発.pdf(1 MB) 掲載ジャーナル:IEEE Transactions on Parallel and Distributed Systems 研究者ガイドブック(中野 浩嗣教授)   【お問い合わせ先】 <メディアの皆さまからのお問い合わせ先> 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 総務部 総務企画課 企画・広報チーム TEL:03-4212-2164E-mail:media*nii.ac.jp   国立大学法人 広島大学 広報室 TEL:082-424-3749E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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    2026.04.07
    • 情報通信
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    誰も見ていないとき、光子は依然として粒子なのだろうか? ~単一光子干渉の物理的解明への第一歩~

    本研究成果のポイント 単一光子干渉(*1)の物理的解明は、長い間、量子重ね合わせ状態(*2)の数学的表現をそのまま解釈することで解決できると考えられていました。私たちの研究グループは、干渉の測定から単一光子干渉計内部の物理現象の観測に初めて成功し、干渉計内の単一光子は干渉の測定に応じて非局在、超局在、局在と呼ばれる状況にあることが分かりました。 問題の本質は干渉をほぼ維持したまま、干渉計内の二つの光路間の光子数の差をどう測定するかにありました。我々は干渉計内の光子の偏光(*3)を利用することで、光子数差の二乗を連続量として測定することに成功しました。その結果、強め合い干渉のときは単一光子が二つの光路に広がる非局在、弱め合い干渉のときは一方の光路に1を超える複数の光子が局在し、もう一方が負となる超局在、それらの境目では一方の光路に単一光子が局在した状況にあることが分かりました。 この結果から、出力確率は波の干渉ではなく、超局在が非局在よりも起こりにくいという単純な理由から説明できることが分かりました。また光子数差の値が干渉の測定に依存することから、単なる実在論の否定(*4)ではなく、測定に依存した実在論を示していることも分かりました。今回の結果は、一般の重ね合わせ状態の物理的理解に大きく貢献するだけでなく、位相差の精密測定への応用に期待できます。   概要単一光子干渉の物理的解明は、長い間、量子重ね合わせ状態の数学的表現をそのまま物理的に解釈することで解決できると考えられてきました。この考えに従えば、単一光子は粒子として二つの光路に「同時に」存在する状況にあることを意味します。そこで我々は最近の量子測定の知見(*5)を単一光子干渉計の実験に適用しました。干渉計内部の二つの光路間での光子数の差を偏光に埋め込み、一方だけ出力した光子の偏光を測定することで、実際に伝播した二光路間での光子数差の二乗を連続量として得ることに成功しました。強め合いの干渉では二光路間の位相差に依存して光子数差が0から1未満の値を得たため、これは光子が二つの光路に広がった状況、つまり非局在を示します。また弱め合いの干渉では、位相差に依存して光子数差が1を超えて7ぐらいまで増大したため、これは一方の光路に1を超える複数の光子が局在し、もう一方の光路では負となる状況、超局在を示します。それらの境目では、光子数差が1と等しくなり、これはどちらか一方の光路に単一光子が局在した状況を示します。これらの結果から、出力確率の干渉パターンは物理的には波の干渉ではなく、超局在が非局在よりも起こりにくいという単純な理由から説明できること、また光子数差が干渉の測定に依存することから、単なる実在論の否定ではなく、測定に依存した実在論を示していることが分かりました。本研究の成果は一般の重ね合わせ状態の物理的理解に貢献するだけでなく、位相差の精密測定に応用されることが期待されています。 本研究成果はロンドン時間の2026年3月23日に学術誌「New Journal of Physics」に掲載されました。    背景単一光子の干渉現象は、量子力学誕生以来、現在でも論争が続いている未解明な問題の一つです。量子力学では、出力確率を計算するために、二つの光路に分かれた光子の状態を量子重ね合わせ状態として“数学的”に表現します。問題はこの状態が物理的にどんな状況なのか分からないことです。これまで遅延選択実験(*6)などの研究が行われ、近年では弱測定(*7)による実験も行われています。しかし前者は「波と粒子の二重性」や「干渉の測定と光路の測定とのトレードオフ」といった標準的なコペンハーゲン解釈(*8)の考え方を裏付ける結果となり、後者については光路情報の平均的な値を得るだけの結果となりました。さらにこの重ね合わせ状態をそのまま解釈すると、単一光子は二つの光路に同時に存在することになります。これはコペンハーゲン解釈の見解とは異なるため、他の解釈が提案されてきました。代表的な例としては、多世界解釈(*9)があります。この解釈は魅力的で多くの方から支持を集めていますが、現時点では、この状態そのものを物理的に解釈するのは難しいと考えられています。その根拠となるのが2022年のノーベル物理学賞の受賞対象となった「ベルの不等式の破れ(*10)」で、物理的実在の否定を実験で示しました。この結果は本質的には測定文脈依存性(*11)を示したものです。逆を言えば、測定を決めれば実在論として物理量の値が議論できる余地が残っているともいえる状況でした。    研究成果の内容単一光子干渉計内部を観測することは、量子重ね合わせ状態の光子が二つの光路をどのように伝搬しているのかを探ることでもあります。このとき最も重要な情報は、二光路間での光子数差です。この値を測定するために、図1のように二光路間の位相差φを決定してから干渉の測定(出力のどちらか一方を選択)後、選択した出力ポートからの光子の偏光を測定しました。垂直偏光の光子を干渉計に入射させ、干渉をあまり壊さないように、それぞれ二光路での偏光をお互い逆方向にわずかに回転させます(+θ0と−θ0)。これは光路を表す物理量を光路1のみを通過した時の値を+1、光路2のみを通過したときの値を-1として定義した場合、値とθ0との積に対応します。光子が光路1のみを通過した場合は、出力光子の偏光回転角は+θ0、光路2のみを通過した場合は、出力光子の偏光回転角は−θ0となります。このとき二光路間での光子数差は1で偏光回転角の“大きさ”はθ0です。もし初期重ね合わせ状態が等分配で二つの光路に広がって伝播したとき、光子数差はゼロで、偏光回転角もゼロです。つまり光子数差の“大きさ”は出力された光子の偏光回転角の“大きさ”に埋め込まれています。これを取り出すために、水平偏光への変換確率を利用します。この変換確率は偏光回転角の大きさの二乗にほぼ等しいため、この確率を測定してθ02で割れば、光子数差の二乗の“大きさ”が得られます。これは干渉の測定後に干渉計内の光子の伝播の痕跡をたどることになるため、物理量の値を用いた議論が可能になります。 測定の結果、図2のように、光路1のみ、あるいは光路2のみを通過させた場合、光子数差(右の縦軸)は常に1となるのが観測されました(“光路1”と“光路2”の実験結果)。その一方、干渉させた場合は、二つの光路の位相差に依存して変化することが分かりました(“-出力”と“+出力”の実験結果)。強め合いの干渉では位相差に依存して光子数差が0から1未満の値を得ました。これは二つの光路に等分配、あるいは偏った分配で広がって伝播する非局在を示します。また弱め合いの干渉では、図3の実験結果の全体図が示すように、位相差に依存して光子数差が1を超えて最大7ぐらいまで増大しました。これは一方の光路に1を超える光子の数(例えば4)が局在し、もう一方の光路では負(例えば-3)となって伝播する超局在を示します。それらの境目では、光子数差が1となりました。これはどちらか一方の光路に単一光子が局在した状況を示します。 この実験結果は、非局在と干渉効果との間の因果関係によって説明できます。光子が物理的に非局在している場合、出力ポートは干渉効果によってどちらかに決定され、光子が高確率の出力で検出されます。しかし、入力の光路の不確定性により、たまに超局在化が生じることがありえます。光路間の光子数差のこの極端な変動こそが、光子が低確率の出力で検出される原因となります。 この結果は、光子の局在、非局在、および超局在が、どこで検出されるかによって決まることを示唆しています。これは量子力学の標準的な形式論と完全に整合しています。この形式論は、「逆因果性」に関する推測を招き、光子の検出がその過去を変えると思いがちになります。しかし光子の存在を示す他の測定記録は存在しないため、光子の過去については何も主張できません。したがって我々の結果は過去を変えたことにはなりません。    今後の展開今回の結果は、一般の重ね合わせ状態の物理的理解に大きく貢献し、あらゆる量子現象の理解へのヒントになると期待されます。また光子数差が大きいと位相の測定感度が向上することから、位相差の精密測定への応用も期待されています。    謝辞本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ERATO 竹内超量子もつれプロジェクト(JPMJER2402)、次世代研究者挑戦的研究プログラム JPMJSP2132の支援をうけました。    発表論文 掲載雑誌:New Journal of Physics 論文題目:Experimental evidence for the physical delocalization of individual photons in an interferometer 著者:福田竜也、飯沼昌隆、松本侑斗、*ホフマン ホルガ(*責任著者) DOI: 10.1088/1367-2630/ae51b7   参考資料 図1:光干渉計内の光子数差の測定セットアップ概念図 図2:実験結果(表示“光路1”,“光路2”は、光路1のみ、光路2のみを通過させたときの実験結果、”-出力“と”+出力“は干渉させたときの実験結果を示す。) 図3:実験結果の全体図(図2の全体図)   用語解説*1 単一光子干渉: 光子とは、電子やクォークと同様に素粒子の一つである。光のエネルギーの最小単位が光子であり、それ以上分割できないとされる。光子が単体で干渉のような現象を引き起こすことを単一光子干渉と呼ぶ。干渉は波特有の現象で二光路への分岐を必要とするため、光子は当初、干渉効果を起こさないと思われていた。  *2 量子重ね合わせ状態:量子力学の最も根幹の一つであり、確率を計算するために“数学的”に導入された概念。実際の物理的な状況との関係は現時点では不明である。シュレディンガーが猫を例にあげて強く批判したことでも有名である。  *3 偏光:古典電磁気学では、光は進行方向に対し垂直方向に振動する横波として理解されており、振動方向がある特定の方向に偏っている状態を偏光状態と呼ぶ。ここでは振動方向が一直線に限定される直線偏光のみを扱う。偏光は直交する二成分で表現可能で、それらは独立である。理想的な偏光板では一方が通過する場合、もう一方は完全に遮断される。  *4 実在論の否定:ここでの実在論とは、物理量の値が測定と関係なく定まることを意味する。量子力学では物理量は定義できるが値が確定しない場合がありうる。  *5 最近の量子測定の知見:近年、量子測定は物理量の値を得る方法としての側面が活発に議論されている。本研究は、共同著者のホフマンの量子測定法(フィードバック補償法)に基づいている。  *6 遅延選択実験: 1978年にホイーラーによって提唱された思考実験。光子が測定によって粒子にも波にもなるという考え方から、光子が放出された後に測定方法を変えるとどうなるかを問うた。現在までさまざまなバージョンでいろいろなタイプの実験が行われている。  *7 弱測定: 1998年にアハロノフらが提唱した物理量の値(弱値)を測定するための量子測定で、計測を主とする量子測定の中で、値を得る方法として最初に確立した量子測定である。ただし弱値は数学的に定義されているため、弱値がどんな物理的意味を示すのか、問題となっていた。  *8 コペンハーゲン解釈:標準的な量子力学の解釈で、時間発展はシュレディンガー方程式に従い、検出確率はボルンの確率解釈を用いた解釈のこと。名称はコペンハーゲンにあるボーア研究所に由来する。 *9 多世界解釈:エヴェレットが提唱した解釈で、シュレディンガー方程式から予測される重ね合わせ状態の各状態はすべて実在し、測定のたびに世界が分岐すると考える決定論に基づいた解釈のこと。  *10 ベルの不等式の破れ:量子力学での局所性と実在性を同時にテストするために1964年にベルによって導入された不等式のこと。ベルの不等式の破れが実験で実証されたことにより、量子力学での局所かつ実在論が成り立たないことが示された。  *11 測定文脈依存性:測定に応じて対象の物理量の値が変化する性質のこと。逆を言えば測定が無い場合は値が定まらないため、実在論の否定を説明する性質でもある。    報道発表資料(599.26 KB) 掲載ジャーナル:New Journal of Physics 研究者ガイドブック(HOFMANN HOLGER FRIEDRICH 教授)    【お問い合わせ先】 大学院先進理工系科学研究科 教授ホフマンホルガ Tel:082-424-7652 Fax:082-424-7000 E-mail:hofmann*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

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    2026.04.14
    • 情報通信
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    小惑星リュウグウから予想外の巨大有機分子を発見 ―従来の常識を覆す立体構造を持つ巨大有機分子を直接観察―

    本研究成果のポイント 高分解能の原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、リュウグウ試料から抽出された個々の有機分子の骨格構造を直接観察しました。 従来の分析では確認されていなかった、環の数が100個を超えるような巨大な有機分子を多数発見しました。 この成果は、太陽系形成以前の星間分子雲から小惑星へと受け継がれた有機分子の進化過程を解明するための極めて重要な手がかりとなります。 原子間力顕微鏡によって小惑星リュウグウからの試料に含まれる有機分子を観察した(©JAXA、東京大学など)   概要東京大学大学院新領域創成科学研究科の岩田孝太特任研究員(研究当時)と杉本宜昭教授の研究グループは、北海道大学低温科学研究所の大場康弘准教授、九州大学大学院理学研究院の奈良岡浩教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科薮田ひかる教授、東京大学大学院理学系研究科の橘省吾教授の研究グループと共同で、探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウ(注1)から持ち帰った試料に含まれる有機分子を、高分解能の原子間力顕微鏡(AFM、注2)を用いて単一分子レベルで直接観察することに成功しました。本研究により、従来の分析手法では見逃されていた100環を超える巨大な有機分子の存在が明らかになりました。これらの有機分子は、5員環(注3)や7員環、さらには8員環といった多様な環構造を含んでおり、平面ではなく立体的な構造を持っていることが分かりました。この成果は、太陽系形成以前の星間分子雲から小惑星へと受け継がれた有機分子の進化過程を解明するための極めて重要な手がかりとなります。   発表内容【研究の背景】宇宙空間に存在する多様な有機分子は、太陽系が形成された際の化学進化(注4)の情報を保持しており、それらが初期の地球にもたらされたことで生命の誕生に寄与したとも考えられています。そのため、宇宙由来の有機分子がどのような構造を持ち、どのように形成されてきたのかを解明することは、現代の宇宙化学における重要なテーマです。 2020年、探査機「はやぶさ2」によって小惑星リュウグウの新鮮な試料が地球に届けられ、世界中で分析が進められてきました。これまでの質量分析を中心とした研究では、リュウグウには数万種類もの有機分子が含まれていることが明らかになっています。その中でも注目されてきたのが、ベンゼン環がいくつも連なった分子「多環芳香族炭化水素」です。これまでの研究では、環の数が4つ程度の比較的小さな分子(ピレンやフルオランテンなど)が主に存在すると報告されてきました。しかし、化学的な抽出や質量分析には限界があります。極めて巨大な分子や、溶媒に溶けにくい不溶性有機物のような成分は、従来の「重さを量る」手法ではその詳細な構造を特定することが困難でした。   【研究の内容と成果】本研究グループは、個々の分子の形を直接「見る」ことができるAFMを用いて、リュウグウの有機分子の正体に迫りました。本研究では、リュウグウ試料から抽出した有機分子を銅の単結晶基板上に蒸着させ、極低温(5 K(ケルビン)=マイナス約268.15℃)かつ超高真空の環境下でAFM観察を行いました。この手法は、探針の先端に一酸化炭素(CO)分子を付着させることで、分子内の原子間の結合までも可視化できます。 観察された22個の分子のうち、多くの分子がこれまでの予想を遥かに上回る巨大な構造を持っていました(図1)。最大のものでは環の数が100を超え、見積もられる分子量は3,000以上に達します。これは従来の質量分析で主に検出されていた分子(分子量200〜500程度)とは異なる、新たな有機分子を可視化したことを意味します。これらは、従来の定義で不溶性有機物に相当するサイズでありながら、巨大な一つの芳香族骨格として存在していることが初めて直接証明されました。 さらに内部構造を詳細に解析したところ、主要な六角形の環(6員環)に加えて、5員環や7員環、稀に8員環が含まれていることが分かりました。これら特殊な環状構造が存在することで、分子は平坦ではなく、立体的にゆがんだ複雑な3次元構造をとっていることが明らかになりました。   【今後の展望】本成果は、太陽系形成以前の星間分子雲(注5)から小惑星へと受け継がれた有機分子の進化過程を解明するための極めて重要な手がかりとなります。また本研究により、地球外試料に対して高分解能AFMを用いた分子構造の直接観察が極めて有効であることを実証しました。質量分析などの従来の手法では分析が困難であった巨大で複雑な有機分子に対して、AFMは「個々の分子の形を直接可視化する」という強力かつ相補的な情報を提供します。今後は、この革新的な測定手法をより広範な地球外試料に応用していくことで、宇宙における有機分子の化学進化の過程、さらには太陽系の形成や地球生命の起源へとつながる物質進化の全容解明に向けた研究が飛躍的に進展すると期待されます。 図1 小惑星リュウグウに存在した多様な有機分子のAFM画像 それぞれの有機分子について、AFM画像と構造モデルを重ねたAFM画像を並べている。構造モデルの赤、青、水色、オレンジはそれぞれ5員環、6員環、7員環、8員環を表す。全画像のスケールバーは1 nmを示す。(原論文の図を改変したものを使用しています。)   研究助成本研究は、科研費「学術変革領域研究(A)(課題番号:JP20H05849)」、「基盤研究B(課題番号:22H01950)」、科研費「若手研究(課題番号:23K13665)」、科研費「基盤研究A(課題番号:23H00148)」の支援により実施されました。   発表者・共同研究グループ情報東京大学 大学院新領域創成科学研究科 岩田孝太特任研究員:研究当時 杉本宜昭教授 大学院理学系研究科 橘省吾教授 北海道大学低温科学研究所 大場康弘准教授 九州大学大学院理学研究院 奈良岡浩教授 広島大学大学院先進理工系科学研究科 薮田ひかる教授   論文情報雑誌名:Nature Communications 題名:Chemical structure of organic molecules in asteroid Ryugu revealed by high-resolution atomic force microscope 著者名:Kota Iwata*, Yasuhiro Oba, Hiroshi Naraoka, Hikaru Yabuta, Shogo Tachibana, and Yoshiaki Sugimoto* DOI: 10.1038/s41467-026-71484-y URL: https://doi.org/10.1038/s41467-026-71484-y   注意事項(解禁情報) 日本時間4月14日18時(英国夏時間14日午前10時)以前の公表は禁じられています。   用語解説 (注1)小惑星リュウグウ: 太陽系誕生時の情報を色濃く残す炭素質の近傍小惑星。これまで、宇宙由来の有機分子の研究は主に地球に落下した隕石を用いて行われてきたが、大気圏突入時の熱や地球の生物による汚染を完全に排除できないという課題があった。しかし、探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから極めて新鮮な試料を地球に持ち帰ったことで、純粋な地球外有機物の分析が可能となった。   (注2)原子間力顕微鏡(AFM): 鋭い針(探針)を観察対象(試料)に近づけて、探針先端の原子と試料表面の原子との間に働く力を測定することで試料表面を観察する顕微鏡。試料の導電性を問わず用いることができる。    (注3)員環: 分子中の環(リング)を形づくる原子の数を表す用語。原子5個からなる環は「5員環」、7個からなる環は「7員環」と呼ばれる。   (注4)化学進化: 個々の原子から、分子へ、さらに巨大な分子へと多様な分子へと進化していくこと。宇宙の塵表面上で、長い時間をかけて生命の材料となるような有機分子が形成されることがわかってきている。   (注5)分子雲: ガスや塵が濃密に集まった宇宙空間の領域で、太陽のような星や惑星系が形成される前の状態。   報道発表資料(407.27 KB) 掲載ジャーナル:Nature Communications 研究者ガイドブック(薮田 ひかる教授)   【お問い合わせ先】 東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授杉本宜昭(すぎもとよしあき) Tel:04-7136-4058E-mail:ysugimoto*k.u-tokyo.ac.jp   北海道大学低温科学研究所 准教授大場康弘(おおばやすひろ) Tel:011-706-5500E-mail:oba*lowtem.hokudai.ac.jp   広島大学大学院先進理工系科学研究科 教授薮田ひかる(やぶたひかる) Tel:082-424-7474E-mail:hyabuta*hiroshima-u.ac.jp   東京大学大学院新領域創成科学研究科 広報室 Tel:04-7136-5450E-mail:press*k.u-tokyo.ac.jp   北海道大学 社会共創部 広報課 Tel:011-706-2610E-mail:jp-press*general.hokudai.ac.jp   広島大学 広報室 Tel:082-424-3749E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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    2025.08.21
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    広域の飛翔体に対する羽ばたき振動検出法

    この研究成果は、2025年8月21、22日に国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)主催の大学見本市2025~イノベーション・ジャパンに出展しました。   技術概要ダイナミクスベースド画像認識に基づいた、実時間画素レベル振動イメージングをコア技術とする。特に鳥やドローンなど移動する飛翔体を対象として、複数対象を瞬時に、高い時空間分解能で高倍率撮影するアクティブ振動カメラで広域モニタリングを実現する。   想定される活用事例広域空間での飛翔体モニタリングを実現するスマートセンシング技術を具現化し、空路整備のされていない自由な自然空間において、アンチドローン/スマートアグリ/バードストライク対策等、近年社会問題となっている具体的な応用場面を想定した事業構想を持つ。   1.背景・研究目的 近年、鳥類による経済的被害がますます注目されている 従来の検出方法 遠距離目標の低可視性が識別精度に大きい影響がある 2.技術概要・システム構成 鳥類の振動信号に含まれる特徴 提案手法の概念図とシステム構成 3.検出実験 30m離れた位置からの対象観測 4.想定活用事例 広域な空域を低コストで監視・管理することが可能 研究者 島﨑航平 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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