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    2013.04.01
    • 半導体
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    大気圧プラズマビームを用いた超高速・高温熱処理技術

    アピールポイント 従来のレーザープロセスと比較して装置コストを大幅に低減 従来プラズマに比べ、高パワー密度かつ大面積処理が可能 半導体基板、ガラス素材、フィルム素材、鉄板などに対する局所的・極表面熱処理   研究者のねらい 従来の大気圧・高エネルギー熱プラズマに対し、ワーク表面でのパワー密度が格段に高く、さらに磁場走査により大面積処理を可能とすることを特徴とした、熱プラズマジェットを用いたミリ秒オーダーの高温熱処理技術を開発しています。 本技術は、レーザーを用いた熱処理と同程度の高パワーを、10分の1以下の装置コストで実現可能であり、レーザーと異なり、被熱処理物が透明であっても熱処理が可能です。 半導体中の不純物活性化や、耐熱性の低い基板の瞬間過熱による極表面熱処理などの半導体デバイス分野への応用に加え、ガラスやフィルム素材、鉄板の局所的、または極表面のみの熱処理技術など、これまで実現できなかった新たな応用も期待できます。   研究内容 約1万度のプラズマジェットを大気圧下で発生させ、これを被熱処理物にミリ秒程度の短時間照射することにより、被処理物の表面(数10µm)のみを選択的に1,000℃以上の高温で熱処理することを可能にしました。 本プロセスの応用例として、ガラス基板上の非晶質Si膜を同技術により熱処理し、多結晶化したSi膜を用いて**薄膜トランジスタ(TFT)**を作製しました。その結果、電界効果移動度61 cm²V⁻¹s⁻¹、しきい値電圧3.4 Vという良好なトランジスタ特性を得ています。   【特許】 特願2019-118679表面処理装置   【論文】 “Large area annealing by magnetic field scanning of atmospheric pressure thermal plasma beam,” Jpn. J. Appl. Phys., 59 (2020) SJJF01-1.   研究者 東清一郎(Higashi Seiichirou) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

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    2026.01.21
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    強相関電子系物質の相図におけるパラダイムシフト -半世紀使われてきたドニアック相図を超えて-

    概要 理化学研究所(理研)放射光科学研究センター物理・化学系ビームライン基盤グループの山岡人志客員研究員、富山県立大学工学部教養教育センターの谷田博司准教授、広島大学放射光科学研究所(HiSOR)のアイケ・シュヴィア助教(研究当時)、シブ・クマール助教(研究当時)、有田将司技術専門職員、島田賢也教授(同大学放射光科学研究所所長)、関西学院大学の山本義哉大学院生(研究当時)、水木純一郎教授、高知大学の田島史郎大学院生(研究当時)、小野寺健太大学院生(研究当時)、西岡孝教授らの国際共同研究グループは、奇妙な異方性(磁気秩序が磁化の起こりやすい方向に起きない)を備えた反強磁性秩序[1]を示す近藤半導体[2]Ce(Ru1-xRhx)2Al10において、伝導電子とセリウム(Ce)が持つ4f電子[3]との結合(c-f混成[4])の異方性を考慮した新しい相図[5]を提案しました。 本研究成果は、高温超伝導体、次世代メモリ、高効率エネルギー変換デバイス、次世代コンピュータなどへの応用が期待される強相関電子系化合物[6]の物性発現の理解と新物質開拓に貢献すると期待されます。 今回、国際共同研究グループは、近藤半導体であるCeRu2Al10とそのルテニウム(Ru)の一部をロジウム(Rh)で置換した物質について、広島大学放射光科学研究所(HiSOR)のビームラインおよび理研放射光科学研究センターの大型放射光施設「SPring-8」[7]の放射光を用いた実験を駆使し、電子構造を調べ、少量のRh置換により引き起こされた電子構造の質的な変化、すなわちリフシッツ転移[8]が生じることを見いだしました。また、公表から約半世紀が経過した今でもなお強相関電子系の基底状態を記述する最も基本的な概念である相図(ドニアック相図(Doniach phase diagram)[9])を発展させ、方位依存性を持った「羅針盤」としての新しい相図を提案しました。 本研究は、科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版(2025年12月24日付)に掲載されました。   新たに提案した異方的c-f混成を扱う高次元の相図   背景 物質の中には無数の電子が存在します。それらは相互に影響し合い、超伝導や磁気/電荷秩序といった相転移[10]を示します。物の性質を扱う物性物理において、相転移の研究は花形の一つです。元素の組合せや原子のナノ配列構造(結晶構造)の特徴を反映した種々の相転移が知られていますが、こうした基礎研究は、現代社会を支える基盤技術(例えば磁気メモリなど)につながっています。 近藤半導体CeM2Al10(M:遷移金属のRu、オスミウム(Os)、鉄(Fe)など、Al:アルミニウム)は直方晶[11]の化合物です(図1(a))。近藤半導体では、磁気秩序が生じることは通常期待されませんが、CeRu2Al10とCeOs2Al10では常識に反し、約30ケルビン(K:絶対温度の単位)で反強磁性(AFM:antiferromagnetic)秩序が生じます。この転移温度は、大抵のCe化合物と比べて数倍高いものです。また、反強磁性秩序でのCeの磁気モーメントの向き(磁気異方性)も異常で、通常の磁性体では期待されない方向を向いてしまいます。このように奇妙な反強磁性秩序のカギとして、特に伝導電子とCe 4f電子との結合(c-f混成)の異方性が指摘されてきました。しかし、肝心の電子構造は未解明のままでした。 そこで山岡客員研究員らは、角度分解光電子分光(ARPES)[12]実験(図1(b))を行い、CeRu2Al10では確かにc-f混成が異方的であることを明らかにしました注1)。この結果は、CeRu2Al10で生じる奇妙な反強磁性秩序が遍歴性[13]を有すことを浮き彫りにし、当時提唱されていた理論モデルを支持する内容でした注2)。 図1 CeRu2Al10の結晶構造、ARPES実験のセットアップ (a)CeRu2Al10の結晶構造。結晶系は直方晶(黄色四角枠)。Ru-Al10から成るクラスタ(灰色)がac2次元面を成し、b方向に積層している。クラスタの中心にRu(白っぽい灰色)が、クラスタの隙間にCe(黒色)がいる。小さい球はAlを表す。 (b)ARPES実験の例。光速に近い速度で運動する電子が向きを変えるときに放出する放射光を単結晶試料に入射させて、光電効果で飛び出した光電子を検出器で捉える。図中左下に示すように、物質中では電子の占める軌道によって結合エネルギーが異なる。単結晶の方位を変えながら光電子のエネルギーと運動量を調べることで、3次元的な電子構造の情報を得ることができる。本研究では図中の角度θを±10度程度の範囲でデータを積分し、c-f混成の異方性に関する情報を得た。なお実験では、Ceの4d-4fの共鳴条件に相当するエネルギーである122電子ボルト(eV)の放射光を入射させて行った。   注1) H. Yamaoka et al., J. Phys. Soc. Jpn. 93, 124704 (2024). 注2) S. Hoshino and Y. Kuramoto, Phys. Rev. Lett. 111, 026401 (2013).   研究手法と成果 今回、国際共同研究グループは、CeRu2Al10のRuサイトを周期表でRuの一つ右隣にある元素Rhに一部置き換えたCe(Ru1-xRhx)2Al10について、ARPES実験を行いました。Ce(Ru1-xRhx)2Al10の最大の特徴は、CeRu2Al10の異常な磁気異方性を解消し、磁気モーメントが期待される通りの向きを向くようになることです。この劇的な変化は、わずか5%程度のRh置換で起こります。このとき同時に転移温度も若干下がりますが、依然として同程度に高い温度を維持します。ここでも、c-f混成の強度と異方性がカギとなることが指摘されてきましたが、肝心の電子構造は未解明のままでした。 そこで国際共同研究グループは、CeRu2Al10およびCe(Ru1-xRhx)2Al10について、広島大学放射光科学研究所(HiSOR)のビームラインBL-1でARPES実験を行い、c-f混成に異方性があることを見いだしました。さらに、理研放射光科学研究センターSPring-8のビームラインBL12XUとBL12B2において実施した分光実験とX線回折実験の結果を合わせて、電子構造の変化、いわゆるリフシッツ転移がRh置換によって起きていることを明らかにしました。 図2(a)と(b)は、ARPES実験のデータを各結晶軸について積分して得たスペクトルです。これによりc-f混成の強度の異方性を調べることができます。図を見ると、フェルミエネルギー[14]近傍のスペクトル強度が明らかに違います。また、強度の強い方向がRh置換で変化しています。これは、Rh置換によってc-f混成の強い方向が切り替わったことを、実験的に明瞭かつ端的に示す結果です。 図2 CeRu2Al10とCe(Ru0.9Rh0.1)2Al10の実験結果 ARPES測定のデータを、結晶のa、b、c軸方向に積分した図。「f1」と示した信号が強い場合にc-f混成が強い。CeRu2Al10ではc方向のc-f混成が強いが(a)、Ce(Ru0.9Rh0.1)2Al10ではb軸方向に強いことが明瞭に分かる(b)。これは、リフシッツ転移がRh置換で生じたことを示している。こうしてわずかなRh置換により、c-f混成の強い方向が切り替わることを実験的に初めて明らかにした。 図3(a)は、強相関電子系化合物の特徴を説明するために約50年来用いられてきたドニアック相図の概念を、模式的に示したものです。c-f混成が弱い領域では電子は局在的(特定の原子などに強く束縛されている状態)で、局在的反強磁性秩序が生じます。一方c-f混成が強い領域では遍歴的(電子が特定の場所にとどまらず自由に動く状態)で、非磁性の重い電子状態[15]が実現します。両者の中間ではさまざまな異常が発現します。これは、電子の粒子性と波動性[16]の問題に直結します。図中の円はフェルミ面[14]の大きさを表し、円の大きい方がc-f混成の強い状態を示します。 図3(b)は、ドニアック相図の概念を拡張した理論モデルです注2)。局在的反強磁性秩序と重い電子状態の間に、遍歴的反強磁性秩序の領域が割り込み、局在的反強磁性秩序の領域とはリフシッツ転移で隔てられています。これにより、CeRu2Al10の示す反強磁性秩序の遍歴性や、Rh置換で生じるリフシッツ転移を理解できます。 図3 ドニアック描像におけるc-f混成強度と物質の性質の移り変わり (a)ドニアック相図の概念。c-f混成が弱い領域は局在的な反強磁性、強い領域は非磁性の重い電子状態。両者は量子臨界点で隔てられる。量子臨界点とは相転移が起こり物質の状態が大きく変わる場所。(b)拡張されたドニアック相図。中間に遍歴的な反強磁性の領域が割り込む。局在的な反強磁性の領域とは、リフシッツ転移で隔てられている。図中の円により、c-f混成が等方的であることを象徴的に示す。   CeRu2Al10のc-f混成が異方的であるにもかかわらず、ドニアック相図ではc-f混成が等方的に扱われているため(図3)、CeRu2Al10の性質をうまく捉えることができませんでした。そこで国際共同研究グループは、c-f混成の異方性を考慮したより高次元の新しい相図を作成しました(図4)。 図4 新たに提案した異方的c-f混成を扱うドニアック描像の模式図   c-f混成が強くなるにつれ、局在的な反強磁性からリフシッツ転移を経て遍歴的な反強磁性に相転移し、量子臨界点を経て非磁性の重い電子状態へ移行する点は、図3(b)で示した概念と共通する。しかし、c-f混成の異方性を含めることで、従来のc-f混成を等方的に扱う相図よりも、的確に物質の特徴を示すことができる。CeRu2Al10とCe(Ru0.9Rh0.1)2Al10ではc-f混成は異方的で、それぞれc方向、b方向にc-f混成が強いことが楕円で表現されている。45度に傾いた破線はc-f混成が等方的な状況で、従来のドニアック描像はこの線上に対応する。CeRu2Al10ではb方向とc方向での顕著なc-f混成の異方性のため、2次元に拡張した相図で示したが、一般により高次元に拡張することが可能である。   CeRu2Al10とCe(Ru0.9Rh0.1)2Al10では、いずれもc-f混成の強さが異方的で、かつ、その強い方向は、それぞれc軸方向、b軸方向と異なりました。そこで、横軸と縦軸にそれぞれc軸方向とb軸方向のc-f混成の強さを取ることで、c-f混成が異方的な場合でも、その状況をうまく扱うことができるよう、旧来の概念を高次元に拡張した新たな相図を提案しました(図4)。従来のドニアック相図の概念は、c-f混成の強さの観点では1次元的です。新しい相図上では45°斜めの破線の軸上に対応します。 CeRu2Al10はc軸方向のc-f混成が強いため、相図の右側の領域、すなわちc軸方向のc-f混成が強い領域に位置付けられます。このとき、c軸方向にc-f混成の強いことが、c軸方向(横方向)に長い楕円で象徴的に示されています。同様に、Ce(Rh0.9Rh0.1)2Al10では、b軸方向のc-f混成が強いので、相図の左上に、b軸方向(縦方向)に長い楕円で示されています。両者は青い破線で示すようにリフシッツ転移で隔てられていて、今回の実験のようにRhで置換することで、遍歴的反強磁性状態から局在的反強磁性状態へと移行します。その際、c-f混成の強い方向がc軸方向からb軸方向へと大胆に入れ替わる様子が、黄色い矢印で示されています。 c-f混成の強さが弱い場合(図4左下)、あるいは強い場合(図4右上)には、c-f混成の異方性が実質的に消失し、等方的と見なすことができます。その様子は、図3(a)と図3(b)でも示した円により、象徴的に示されています。いわば、CeRu2Al10およびその関連物質は、c-f混成の強い/弱い領域の狭間にあり、種々の異常な性質の起源は、まさにその狭間の世界が生み出したc-f混成の異方性に端を発すると考えることができるようになります。このように提案した新しい相図は、c-f混成の示す異方性を針に据えた、まさに「羅針盤」として機能します。   今後の期待 本研究で得られた知見は、強相関電子系化合物の特徴を記述する最も基本的かつ象徴的な概念を、実験結果に基づき質的に拡張したものです。強相関電子系化合物が示す多様な性質の理解を深化させ、現象の統一的な理解、新たな物質開拓と理論研究の指針を与えます。元をたどれば電子の粒子性・波動性といった量子力学の基本原理に深く関わる概念であることから、本知見のインパクトは物性物理にとどまらず、広く波及し、基礎・応用を含む幅広い分野で活用されることが期待されます。   論文情報 <タイトル> Itinerant to localized heavy electron magnetism in Ce(Ru1-xRhx)2Al10: a direction-dependent phase diagram beyond the Doniach phase diagram   <著者名> Hitoshi Yamaoka, Hiroshi Tanida, Eike F. Schwier, Yoshiya Yamamoto, Shiv Kumar, Masashi Arita, Kenya Shimada, Fumisato Tajima, Renta Onodera, Takashi Nishioka, Hirofumi Ishii, Nozomu Hiraoka, and Jun’ichiro Mizuki   <雑誌> Physical Review Letters   <DOI> 10.1103/hdcf-dycj   補足説明 [1] 反強磁性秩序 隣り合う電子のスピンが互いに反対向きに整列し、全体では磁化の出ない状態(スピンは、量子力学的性質で上向きか下向きの状態しか取れない。スピンの向きがそろうと磁石になる)。   [2] 近藤半導体 強い電子相関により低温でエネルギーギャップを生じ、半導体的振る舞いを示す物質群。ギャップの大きい場合は近藤絶縁体と呼ばれる。「近藤」という名称は、この性質の起源と密接に関係する「金属の電気抵抗極小現象」の謎を世界で初めて解明した日本人物理学者、近藤淳(こんどうじゅん)博士の名前に由来する。物理学の世界で、日本人の個人名が冠された物理現象として有名なものの一つ。   [3] 4f電子 電子の取り得る軌道のうち、軌道角運動量がL=3の状態の軌道を占める電子。セリウム(Ce)などの希土類元素では、空間的に非常に原子核に近い軌道にある4f電子が不対電子となり、磁性を担う。   [4] c-f混成 伝導電子(conduction electron)とf電子(f-electron)とが混ざり合う効果や、混ざり合った状態、あるいは単に伝導電子とf電子との相互作用などを指す。磁気秩序、近藤効果、重い電子状態などのさまざまな現象は、これに端を発する。   [5] 相図 温度、圧力、組成などの関数として物質がどのような相・状態にいるのかを示す状態図。   [6] 強相関電子系化合物 電子間の相互作用が強い物質のこと。この性質が顕著に現れたものに、高温超伝導体、重い電子状態などがあり、物性研究の大きな一分野を成す。   [7] 大型放射光施設「SPring-8」 理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す施設。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。放射光(シンクロトロン放射)とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する細くて強力な電磁波のこと。SPring-8では、遠赤外線から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光が得られるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。   [8] リフシッツ転移 結晶構造が変わらず、電子構造が変化する特殊な転移。熱力学的な相転移([10]参照)とは趣を異にする。   [9] ドニアック相図(Doniach phase diagram) 磁性や重い電子状態を示す化合物において、c-f混成の強さを横軸に、温度を縦軸に取った相図で、c-f混成は等方的に扱われる。1977年にS.ドニアック博士が提案して以来、約50年にわたり用いられてきた。一般に、c-f混成を強くすると、磁性が消え、量子臨界点を超えて非磁性の重い電子状態に移行する。量子臨界点付近では、非自明な超伝導などの風変りな現象が数多く報告されている。   [10] 相転移 磁場や温度、圧力などの外場(外的要因)によって、別の状態へ移行すること。エネルギーの変化の仕方により、1次相転移と2次相転移がある。水の状態変化は1次相転移、反強磁性秩序などは2次相転移に分類される。   [11] 直方晶 七つの結晶系の一つ。直方体で、縦、横、高さの各辺の長さが異なる。それぞれの軸方向は、a軸、b軸、c軸方向としている。   [12] 角度分解光電子分光(ARPES) 単結晶に光を照射し、光電効果で生じた電子の強度とエネルギーを、結晶との方位を変えながら調べる手法。これにより、固体中の電子が持つエネルギーと運動量ベクトルの関係、すなわちバンド構造を直接知ることができる。ARPESはAngle-Resolved Photoemission Spectroscopyの略。   [13] 遍歴性 外殻電子は、その占有軌道の波動関数の空間分布から、所属していた原子近傍に局在するか、結晶中を遍歴する伝導電子と成るかで、大きく二つに分類される。Ceの4f電子は典型的に局在的であるが、わずかに遍歴性も備える。   [14] フェルミエネルギー、フェルミ面 電子を、波数空間上でエネルギーの低い状態から順に詰めたときに、占有する状態と占有しない状態とを分ける境界面(フェルミ面)およびそのエネルギー(フェルミエネルギー)。電子は、統計性の違いからフェルミ粒子に分類される。   [15] 重い電子状態 電子の見かけの質量(有効質量)が100~1,000倍にも増強したように振る舞う異常な金属状態。Ceやイッテルビウム(Yb)、ウラン(U)化合物などで見られる。   [16] 粒子性と波動性 電子のような量子力学的な粒子は、粒子としての性質とともに、波としての性質を持つ。物質の示す性質に深く関わり、量子力学の基本原理の一つである不確定性原理に端を発する。   研究支援 本研究は、広島大学放射光科学研究所のビームラインBL-1、BL-7、BL9A(課題番号:13-A-2、13-B-38、14-A-3、14-A-5、15-A-2、16AG-002、17AG-007、19BG002、21AG003)、SPring-8にある台湾ビームラインBL12XU、BL12B2(課題番号:2013A4251、2013A4255(NSRRC課題番号:2012-3-011))を用いて行われました。   【理化学研究所】強相関電子系物質の相図におけるパラダイムシフト_HP.pdf(650.3 KB) 掲載ジャーナル:Physical Review Letters 研究者ガイドブック(島田 賢也 教授)   発表者・機関窓口 <発表者>※研究内容については発表者にお問い合わせください。 理化学研究所放射光科学研究センター物理・化学系ビームライン基盤グループ 客員研究員 山岡人志(ヤマオカ・ヒトシ)   富山県立大学工学部教養教育センター 准教授 谷田博司(タニダ・ヒロシ)   広島大学放射光科学研究所 助教(研究当時) アイケ・シュヴィア(Eike F. Schwier) 助教(研究当時) シブ・クマール(Shiv Kumar) 技術専門職員 有田将司(アリタ・マサシ) 教授 島田賢也(シマダ・ケンヤ) (同大学放射光科学研究所所長)   関西学院大学 大学院生(研究当時) 山本義哉(ヤマモト・ヨシヤ) 教授 水木純一郎(ミズキ・ジュンイチロウ)   高知大学 大学院生(研究当時) 田島史郎(タジマ・フミサト) 大学院生(研究当時) 小野寺健太(オノデラ・ケンタ) 教授 西岡孝(ニシオカ・タカシ)   <機関窓口> 理化学研究所広報部報道担当 Tel: 050-3495-0247 Email: ex-press@ml.riken.jp   富山県立大学事務局教務課情報研究係 Tel: 0766-56-7500 Email: johokenkyu@pu-toyama.ac.jp   広島大学財務・総務室広報部広報グループ Tel: 082-424-4518 Email: koho@office.hiroshima-u.ac.jp   学校法人関西学院広報部企画広報課 Tel: 0798−54−6873 Email: kg-koho@kwansei.ac.jp   高知大学広報・校友課 Tel: 088-844-8643 Email: kh13@kochi-u.ac.jp

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    • 半導体
    2026.03.05
    • 情報通信
    • 半導体
    サブマイクロ秒・700Gbps超を実現する 低遅延データ圧縮通信技術を開発 ~FPGAクラスタにおける通信ボトルネックの解消に貢献~

    大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII、所長:黒橋 禎夫、東京都千代田区)アーキテクチャ科学研究系 教授/所長補佐、鯉渕 道紘、特任助教 平澤 将一は、国立大学法人 広島大学(学長: 越智 光夫、広島県東広島市)大学院先進理工系科学研究科教授 中野 浩嗣、富士通株式会社(代表取締役社長 時田 隆仁、本店 神奈川県川崎市中原区)シニアプロジェクトディレクター 福本 尚人、リサーチディレクター 本田 巧の研究グループと共同で、FPGAクラスタにおける通信性能を大幅に引き上げる超低遅延・高帯域圧縮通信技術を開発しました。本技術は、FPGA間通信においてデータ圧縮と復号を含めて590ナノ秒という極めて低い遅延を実現し、さらに1 台のFPGAあたり最大757Gbpsの実効通信帯域を達成しました。本成果は、計算性能の高さに比べ通信性能がボトルネックとなっていたためFPGAベースの高性能計算システムに対し、高いスケーラビリティを提供するものです。   近年、書き換え可能な専用回路(FPGA: Field Programmable Gate Array)を多数つなぎ、高速・低遅延・省電力で特定の処理を並列実行できる計算システム(以後、FPGAクラスタと呼ぶ)が注目を集めています。高性能なFPGA カードには高帯域なメモリが搭載され、単体カード内の計算性能およびメモリアクセス性能は大きく向上しています。一方で、FPGA間の通信帯域や通信遅延は依然として制約が大きく、特に集合通信*1を多用する大規模並列処理やAI学習では、通信がシステム全体の性能を支配する要因となっていました。 この問題を解決する手段としてデータ圧縮が注目されていますが、従来のデータ圧縮方式はハードウェア実装の複雑さや処理遅延の増大が課題となり、超低遅延通信には適していませんでした。 本研究では、この問題を解決するデータ圧縮通信技術を開発しました。特徴は、どのような場合でも通信データが元より大きくならない軽量な圧縮方式と、通信路の幅に合わせてデータを整列させる独自の回路構成を組み合わせている点です。図1に示す提案FPGA回路の例では、16個の数値データ(合計512ビット)をメモリから一度に受け取り、これらを圧縮後、256ビット幅の通信路に効率よく送り出します。従来の方式では、圧縮後のデータを通信路の幅にぴったり合わせる処理が難しく、これが通信速度の低下を招いていました。本技術では、まず入力されたデータの並び順を入れ替えることで、複数のデータを同時に並列に圧縮でき、処理を高速化できます。圧縮されたデータは通信路の幅に揃えて送り出されるため、通信帯域を無駄なく活用できます。この例の回路を用いた評価では、実質的に通信性能を非圧縮時と比べて約2倍に高めながら、通信全体の遅延をサブマイクロ秒(100万分の1秒未満)という低遅延に抑えることに成功しました*2。 本技術は、光技術を用いた高速通信回線を備えるFPGAクラスタにおいて実装され、1対1の通信だけでなく、集合通信においても最大757Gbpsという高い通信性能を達成しました。さらに、AIの分散学習で用いられる勾配データの通信に適用したところ、学習結果の精度にほとんど影響を与えないことも分かりました。 図1: 16個(計512ビット)の入力データを圧縮して256ビットに出力する回路例   本成果は、FPGAクラスタに限らず、将来の光インターコネクトを用いた高性能計算システムやAIアクセラレータにおいても有効性が期待されます。今後は、適応的な誤差制御や様々な数値表現への拡張を進め、より幅広い応用分野への展開を目指します。   解説 (*1)複数の計算ノード(FPGAを含)間でデータを一斉に送受信・共有する並列計算向けの通信方式。 (*2)評価に用いたFPGAクラスタは、8台のFPGAを約50Gbpsの専用光リンクで相互に接続する構成。各FPGAは異なるXeonサーバーに格納されている。詳細: Michihiro Koibuchi, Takumi Honda, Naoto Fukumoto, Shoichi Hirasawa, Koji Nakano, A 590-nanosecond 757-Gbps FPGA Lossy Compressed Network, IEEE Transactions on Parallel and Distributed Systems, Volume 37, Issue 4, pp.836-848, 2026 DOI 10.1109/TPDS.2026.3659817.   【プレスリリース】サブマイクロ秒・700Gbps超を実現する低遅延データ圧縮通信技術を開発.pdf(1 MB) 掲載ジャーナル:IEEE Transactions on Parallel and Distributed Systems 研究者ガイドブック(中野 浩嗣教授)   【お問い合わせ先】 <メディアの皆さまからのお問い合わせ先> 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 総務部 総務企画課 企画・広報チーム TEL:03-4212-2164E-mail:media*nii.ac.jp   国立大学法人 広島大学 広報室 TEL:082-424-3749E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 半導体
    • 素材
    2022.08.09
    • 半導体
    • 素材
    究極の微小不揮発性メモリ素子

    背景 不揮発性メモリには微細化・高密度化の物理的限界値(約1Tbit/inchi2)が存在するとされている。 各国の国家プロジェクトが、熱アシスト法など新たな技術によりその限界突破を図り、目標記録密度約5~10Tbit/inchi2を目指している。   本研究の優位性 単一分子で分極ヒステリシス(メモリ効果)を示す究極の微小誘電材料の開発に世界で初めて成功。 メモリ材料として用いればHDDの記録密度を1000倍向上させる新たな強誘電メモリ素子の開発に成功。   概要 籠型形状分子のプレイスラー型ポリオキソメタレートに着目した。分子内部の中心から外れた上下2箇所にイオン安定サイトを有しており、そのどちらか1箇所に1つの陽イオンが包接されている(占有率は上下ともに50%)。 イオン(Mn+)がどちらかの安定サイトに停止すると、分子分極が生じる。エネルギー障壁”U”に対して十分に低い温度域では   イオンが移動できず、電場を印加することでイオンの移動を強制的に誘起できる。 籠型分子は一分子であり、室温下で分極ヒステリシスや自発分極を示す。この分子を「単分子誘電体」と名付けた。 上記性質により、イオン(Mn+)の位置によって1と0の情報を表現する仕組みである。 室温以上(<350K)で分極ヒステリシスを示すことから、早い段階での実用化が期待できる。 本系は単一分子で分極の履歴現象を示すことから, 新たな形態でのメモリ材料開発が可能となる。(例・ポリマーに分散させた状態など)     期待される用途 超高密度不揮発性メモリ(記録密度理論値:1Pbit/inchi2) 焦電性を利用した熱センサーや単分子アクチュエータなど   企業への期待 半導体・電子部品メーカー 電気機器メーカー 材料メーカー   本技術に関する知的財産権 発明の名称 :分子性金属酸化物クラスター、分子性金属酸化物クラスター結晶、分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体、分子メモリ、結晶メモリ及び分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法 – 特許番号 : 第6650138号 – 出願人 : 広島大学 – 発明者 : 西原禎文、加藤智佐都、井上克也   発明の名称 :マルチフェロイック材料及びそれを用いたメモリ – 特許番号 : 第6723602号 – 出願人 : 広島大学 – 発明者 : 西原禎文、丸山莉央、加藤智佐都、井上克也   発明の名称 : 電界効果トランジスタ及びメモリ装置 – 出願番号 : 2019-118917 – 出願人 : 広島大学 – 発明者 : 西原禎文、早瀬友葉、藤林将、井上克也     論文 “Giant Hysteretic Single-Molecule Electric Polarisation Switching Above Room Temperature”, C. Kato, R. Machida, R. Maruyama, R. Tsunashima, X. –M. Ren, M. Kurmoo, K. Inoue, S. Nishihara, Angew. Chem. Int. Ed., 57(41), 13429-13432 (2018). Angew. Chem., 57(41), 13429-13432 (2018) “Welcome to the single-molecule electret device”, S. Nishihara, Nature Nanotechnol., 15, 966-967 (2020).   外部資金の獲得状況 科研費(基盤研究(B)) ・科研費(挑戦的研究(開拓)) ・JST, さきがけ ・JST,START ・JST,A-STEP   研究者からのメッセージ 「単分子誘電体」は、基礎研究から生まれた真に新しい物性材料であり、現在、社会実装に向けて取り組んでいます。この次世代単分子誘電体メモリにご興味があれば、ぜひご連絡ください。   研究者 西原禎文(NISHIHARA SADAFUMI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

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