難治性がんを克服するがん抗原提示細胞化mRNA療法の開発
アピールポイント
- 難治固形がんを対象とした腫瘍内投与型mRNA-LNP治療薬
- がん細胞を抗原提示細胞様にリプロラミングし、腫瘍内部でT細胞性免疫監視を誘導
- ①高い有効性 ②煩雑な操作不要 ③ユニバーサル ④効果持続性 ⑤低い副作用 ⑥免疫療法併用で効果
研究者のねらい
- 1,有効な治療が存在せず5年生存率が20%以下の難治がんに対し、新たな治療法を開発する。
- 2

・がん細胞は免疫細胞によって認識され、攻撃される。
・ただし、免疫細胞を活性化できるのは、免疫細胞によって認識される目印をもったがん細胞だけである。
・この性質を「がんの免疫原性」と呼ぶ。
- 3,「がんの免疫原性」低下は予後不良因子

・体内にがんができても免疫が機能していれば、がん細胞が排除され「がん」を発症しない。しかし、「がんの免疫原性」が低下すると、T細胞の働きが弱まりがんを発症してしまう。
・免疫細胞であるT細胞が腫瘍内部に活発に浸潤している高免疫原性がんと比較して、T細胞浸潤がほとんどみられない低免疫原性がんは、様々ながん種において特に予後が悪い。
・がんの免疫原性を上昇させれば,難治がんであっても治療できる可能性が高まる。
研究内容
1,既存の免疫療法の課題

・これらはいずれもT細胞や樹状細胞などの免疫細胞を活性化するものであり、がん細胞に対して直接作用するわけではない。
・低免疫原性の難治がんでは、免疫細胞が認識する目印が消失しており、そのためがん細胞が隠れて見えない状態となっている。これでは、免疫細胞をいくら活性化しても高い治療効果を発揮できない。
2,抗原提示細胞化mRNAの導入による抗原提示細胞化

①この問題を解決する手段として、腫瘍内部にLNP化したmRNAを導入する。
②mRNAが導入されたがん細胞は、mRNAの効果によってがん細胞が免疫細胞のように変化し、免疫反応を引き起こせるようになる。
③その結果、がんを認識するT細胞が選択的に活性化して増殖し、腫瘍内部からがんを攻撃できるようになる。
④さらに、がんのバリアも解除されるため、既存の免疫療法を併用することで、さらに高い治療効果が期待できる。
3,免疫監視誘導mRNA-LNPの構造と外観

ヒトに感染するEBウイルスの研究から、特定のEBウイルス遺伝子が免疫細胞を強力に活性化してがんを抑制することを見出し、学術雑誌に発表 (1-4)。
4,免疫監視誘導mRNA-LNPの腫瘍縮小効果
・これまでに2タイプのmRNA-LNP(1. EBウイルス遺伝子型 (HMR-001); 2. ヒト転写遺伝子型 (HMR-002))を開発し、がん細胞を免疫細胞へとリプログラミングすることに成功。
・ mRNA-LNPを腫瘍に投与することで、劇的な腫瘍縮小効果を確認した。
・さらに、人にとって異物であるウイルス由来の遺伝子を用いる代わりに、人の遺伝子である2種類の転写因子を用いることでも同様の効果が得られることを発見。以上、論文投稿中のためデータ非公開。
・これらの技術はいずれも基礎特許出願済み。
5,先行技術と比較した優位性
・がん細胞を抗原提示細胞に変化させる新規作用機序で、世界初の技術
・従来の免疫療法が奏功しない腫瘍にも効果
【優位性】
①寛解が望めるがん治療効果
②前培養など煩雑な操作が不要
③オーダーメイドではないため診断を受けたがん患者に迅速に使用可能
④免疫記憶を誘導するため長期的効果が期待
⑤腫瘍に限定したデリバリーであり、副作用がでにくい

想定される用途・応用先
【対象とするがん】
・難治性固形がん:特にステージ3-4胃がん、スキルス胃がん
・対象とするがん種を今後拡大予定
【投与方法】
・腫瘍内投与(内視鏡手術や腹腔鏡下手術が可能ながん種)
・チェックポイント阻害剤など既存治療との併用を想定
関連情報
【関連特許】
発明の名称 : ウイルス由来遺伝子発現による抗腫瘍免疫誘導方法
【その他】
・AMED次世代がん事業 ・PSI GAPファンド事業
・事業化推進機関:広島ベンチャーキャピタル、パートナーズファンド
・2025-2026年度計画:ヒトがん検体を用いたin vitro, in vivo POC取得、
mRNA持続期間延長の検証、有効性向上させる併用薬剤の検討など
・治験薬製造:広島大学PSI GMP教育研究センター
【関連特許】
Yamane et al. 投稿中
Jin, Y. et al. Front. Immunol., 2025
Tamura et al. Front. Immunol., 2024
Li, X. et al. Sci. Immunol., 2024
Wirtz, T. et al. PNAS, 2016
Zhang, B. et al., Cell, 2012
【企業への要望】
・当研究室との共同研究開発に興味のある企業様を募集しております。
研究者
保田 朋波流(YASUDA TOMOHARU)
広島大学
大学院医系科学研究科(医)
教授
2025年BioJapan出展