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    2025.01.07
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    リサイクルができる画期的な新規汎用ゴム材料

    背景 エチレン-プロピレンゴムは、対候性、オゾン性、熱、光、および化学薬品に対する優れた耐性をもつ最も一般的なゴム材料である。 ゴム材料は、自動車や建材のチューブ、シール、ガスケットなど、様々な工業製品に利用されており、発生する膨大な廃ゴムのリサイクルが喫緊の課題となっている。 加硫プロセスにより製造された従来のゴムは、再生プロセスにおいて深刻な物性の劣化が生じるため、リサイクル不可である。 本研究は、リサイクル可能な新たなゴム材料を開発し、マテリアルリサイクルによる閉ループプロセスの実現を目指す。     リサイクルを可能にする取組み ゴムに弾性を付与するためには、原料の高分子(ポリマー)を相互に架橋させる必要がある。現在、このために硫黄を加える加硫プロセスを用いているが、この「加硫」がリサイクルを阻害している。 従来の加硫に代わり、可逆的に架橋および切断ができる共有結合による架橋プロセスを実現する。 ボロンを用いる架橋が一般的だが、ゴム材料用のポリマーにボロンを結合させることは非常に困難である。 本研究は、独自の触媒を用いて、高分子材料を合成する段階で、ボロンを組み込むことに成功した。     新しいプロセス ①エチレン、プロピレン、ボロン酸コモノマー(保護マスク付き)を新開発触媒を用いて、配置共重合しボロン含有ポリマーを合成 ②酸性条件下での加水分解によりマスク除去 ③ボロン酸の熱脱水縮合によりポリマーを架橋させて、ボロン架橋エチレン–プロピレンゴムを生成 (以下リサイクルプロセス) ④アルコール分解により脱架橋 ⑤脱架橋ポリマー中のボロン酸エステルを酸性メタノールを用いてボロン酸に変換してボロン含有ポリマーを再生   ボロン架橋エチレン-プロピレンゴムの特性 (1)引っ張り強さ・応力–歪特性 ボロン架橋ゴムの引っ張り強度は、従来の硫黄加硫ゴムより高く、エチレン含有量が増えるとより高い。 ボロン含有量を増やすと破断時の伸び歪を大きくできる。 (2)繰り返し引っ張りによる特性変化 2回目以降の応力-歪曲線は、ほぼ重なり合い、優れた弾性特性を示す。   (3)複数回のリサイクル後の特性変化 リサイクルに伴う引っ張り強度と破断伸びの劣化はない。   (4)雰囲気耐性・長期間安定性 ホウ素架橋は沸騰水、アルコール、酸に対して耐性があり、長期間安定性もある。 本研究の優位性 ゴムの製造プロセスにおいて、非可逆的な硫黄を用いる加硫処理に代えて、ボロンを介してポリマーを架橋させることにより、架橋-架橋解除の可逆処理を可能にする新たなプロセスを提案した。 ポリマーへのボロン組み込みは困難なため、独自の触媒を用いることにより、ポリマーの合成段階で重合とボロン組み込みを同時に行う新たな方法を見出した。 新たなプロセスのもとに、エチレン-プロピレンゴムを試作し、その機械的特性が従来の硫黄加硫品より優れ、環境安定性も高く、また、リサイクル性にも優れていることを実証した。     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :共重合体、共重合体の製造方法及び回収方法 特願 :2022-169053 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :田中亮、塩野毅、中山祐正     論文 Commodity Rubber Material with Reversible Cross-linking Ability:Application of Boroxine Cross-links to Ethylene-Propylene Rubber Yusuke Bando, Shin-ichi Kihara, Hiroya Fujii, Yuushou Nakayama, Takeshi Shiono, and Ryo Tanaka* https://doi.org/10.1021/acs.macromol.4c01312 Macromolecules 2024, 57, 7565−7574     研究者からのメッセージ 一般的なゴム材料は構造が整然としていない化合物ですが、我々の作ったものは架橋点が非常に美しく並び、網目が均一に分布しているため、より強いゴム材料になり得る可能性を秘めています。 実用化に向けたさらなる特性改善や課題解決を企業との共同研究で推進したいと考えております。       研究者 田中亮(TANAKA RYO) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    2024.07.23
    • 環境エネルギー
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    未利用の低温排熱から発電できる新規有機熱電変換材料

    背景 資源枯渇あるいは地球温暖化への対応のため、化石燃料に代わる太陽光、風力、水力、地熱などの自然エネルギー利用のニーズが高まる一方で、世界で消費されるエネルギーの内、約3分の2が未利用のまま排熱として捨てられており、この排熱の利用拡大が合わせて重要な課題となっている。 この排熱は80%以上が200℃以下の中低温排熱であり、温水供給など熱としての利用促進は図れているものの、利用先が限定的である。一部でも電力に変換できれば、利用価値は飛躍的に増す。 高温の熱源が得やすい化石燃料利用の場では、大容量化にも対応しやすい従来の熱サイクルのシステムが有効であったが、中低温排熱は周囲環境との温度差が小さいため電力への変換効率が低く、コスト的にも成立しない。 熱を電気に直接変換する熱電変換技術は、比較的小さな温度差、且つ小容量の熱源にも対応しやすくシステムがシンプルである等、メリットが大きい。 従来の熱電変換材料は、特殊で量産化にも不向きであったため、放射性同位元素の熱を利用する宇宙探査分野や人間の体温を利用する時計など、特殊な用途に限られていたが、現在の資源や地球環境の制約のなかで、その利用拡大のニーズは非常に高まっている。     熱電変換の原理 1.熱電変換材料の両端を高温(HOT)と低温(COLD)にさらすと、両端の温度差 (ΔT) に比例して電位差 (ΔV) が生じる。この比例定数をゼーベック係数 (S) と呼ぶ。Sの値が大きいほど大きな電位差を生じることができる。 2.電位差が生じると材料の中に電流 (I)が流れ、電力を生む。材料の電気伝導率 (σ) が大きいほど、多くの電流が流れ、大きな電力を得ることができる。 3.温度差があると材料の中に熱流 (J) を生じる。同じ電力を生み出すための熱量は少ない方が効率が良いので、材料の熱伝導率(κ)は小さい方がよい。     従来の熱電変換材料 これまでの材料は大半が金属化合物のため、希少金属やTeなど毒性のある元素を含む金属など、一般的な利用に不向きなものが多い。 作動温度が500K以上のものが多く、低温で使用可能な材料が限定的である。     有機化合物を用いた熱電変換デバイスの特長 一般的な元素からなる有機化合物であり原材料が安価 多様な反応設計により低毒性の材料創出が可能 豊富な埋蔵資源をもつ元素を利用可能 デバイスに軽量・柔軟性を付与可能 溶液プロセスにより安価な製造コスト実現が可能     期待される用途 工場や自動車から排出される200℃以下の中低温排熱を利用する発電 オフィスや家庭の電子機器の発熱を利用する発電 特殊環境に置かれる自立型機器における電力供給 など     新規有機熱電変換材料への要求性能 小さな温度差で大きな電位差の生成 大きな電力を得るための高い電気伝導性 少ない熱量で発電するための低い熱伝導性 使用環境における材料の耐久性・安全性 低い製造コスト     研究成果の内容 1)カーボンナノチューブ/導電性高分子複合体 新規熱電変換材料の候補として単層カーボンナノチューブ (SWCNT) があり、ゼーベック係数が比較的高く、電気伝導率も非常に高いが、熱伝導率が非常に高いため、単体での熱電変換性能は大きくない。 SWCNTを導電性高分子と複合化すると、熱伝導率 κ が0.5~0.7Wm-1K-1程度と高分子材料並みに極端に低下することがわかっている。 そこで、SWCNTと熱電変換材料として有望視されている導電性高分子(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸), PEDOT:PSS)の複合体を作り、電気特性を検討した。 図示のとおり、複合体において、SWCNTの割合を増やしていくと、電気伝導率 (σ)、ゼーベック係数 (S)、電力因子 (PF) の値は増加するが、70~80%程度の割合でピークとなり、それ以上では逆に低下することがわかった。 この複合割合において、複合体の電気伝導率 (σ) の値がSWCNT単体より高くなるのは、顕微鏡写真中にモデル化して示すように、 PEDOT:PSSがSWCNTの繊維の結節点に付着することにより接触点の電気抵抗が低下したことが考えられる。     2)有機化合物の自在な構造制御により新規高分子材料を創出 カーボンナノチューブと導電性高分子の複合体が優れた熱電変換特性を示すことがわかったので、次に、導電性高分子材料そのものの高性能化について検討した。 PEDOTは導電性に優れているものの、溶剤への溶解性が乏しく、また、分子量が低く製膜性に乏しいという欠点がある。 一方、ポリ(3-ヘキシルチオフェン) (P3HT) は溶解性・製膜性には優れているが、PEDOTに比べると導電性が低い。 これらの欠点を克服するため、PEDOTとP3HTの構成要素(モノマーユニット)を異なる割合で含む共重合体 (PE2HT, PE1HT) などの新規導電性高分子の開発に成功した。     3)ドーピング処理により新規高分子材料に電荷を注入 新規高分子膜に電荷を注入して、導電性を付与するための、電気化学的ドーピング処理システムを考案した。 対象高分子膜、電解質溶液、三つの電極(作用、参照、対)、電位を付加する二つのポテンショスタット、電流を測定するクーロメータからなる。 電極電位 (E1) を変化させることにより電荷の注入を制御する。そのとき、クーロメータにより注入電荷密度を定量する。 同時に対象高分子膜に電位差 (E2) を付加して、電流を測定することにより、高分子材料の電気伝導率をその場測定することができる。     4)電極電位によってドープ率および電気伝導率を制御 新たに合成したPEDOTとP3HTの構成要素(モノマーユニット)を異なる割合で含む共重合体について電気特性を測定した。 ドーピングの電極電位を高くするとドープ率(電荷を注入された分子の割合)が増加し、対応して電気伝導度も大きくなる。 モノマーユニットの割合や電極電位によってドープ率や電気伝導率を制御することが可能になる。   5)添加物とドープ率によって熱電変換特性を制御 P3HTやPEDOT: PSSの熱電変換特性についてもドープ率との相関を解析することに成功した。 ドープ率を増加させると電気伝導率は大きくなるが、逆に、ゼーベック係数は低下する。 PEDOT:PSSにおいてはエチレングリコール (EG) あるいはジメチルスルホキシド (DMSO) を添加すると、電気伝導率は大きくなるが、ゼーベック係数は低くなる。 熱電変換材料から得られる電気出力の指数となる電力因子 (PF) は、ドープ率増加とともに大きくなり、ドープ率10%近傍でピークとなる。 無次元性能指数 (ZT) も同様の傾向を示す。 電力因子や無次元性能指数の値は、電気伝導度 (σ) とゼーベック係数 (S) の値の相反関係に依存するため、最も高い性能を得るために、ドープ率の制御が非常に重要になることがわかった。     本研究の優位性 導電性高分子とカーボンナノチューブの複合体が示す特異な熱電変換特性を見出し、有機化合物を用いた熱電変換デバイスの高い可能性を示した。 多様な反応設計による自在な構造制御により、高性能な熱電換特性を示す有機高分子材料の候補を提案した。 合成した有機高分子材料に導電性を付与するドーピング処理において、熱電変換の特性をその場でモニターしながら処理が可能な新システムを提案した。 ドーピングの際の電極電位とドープ率により熱電変換特性が大きく変わることを示し、これらを制御することにより高い熱電変換特性を得ることができることを示した。     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 特許 :特許第7061361号 特許権者 :国立大学法人広島大学 発明者 :今榮一郎、播磨裕     論文 Imae, Ichiro; Ogino, Ryo; Tsuboi, Yoshiaki; Goto, Tatsunari; Komaguchi, Kenji; Harima, Yutaka, “Synthesis of EDOT-containing polythiophenes and their properties in relation to the composition ratio of EDOT”, RSC Advances (2015) 5(103), 84694-84702. Imae, Ichiro; Akazawa, Ryosuke; Harima, Yutaka, “Seebeck coefficients of regioregular poly(3-hexylthiophene) correlated with doping levels”, Physical Chemistry and Chemical Physics (2018) 20(2), 738-741. Imae, Ichiro; Koumoto, Takashi; Harima, Yutaka, “Thermoelectric properties of polythiophenes partially substituted by ethylenedioxy groups”, Polymer (2018) 144, 43-50. Imae, Ichiro; Shi, Mengyan; Ooyama, Yousuke; Harima, Yutaka, “Seebeck coefficients of poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrene sulfonate) correlated with oxidation levels”, Journal of Physical Chemistry C (2019) 123(7), 4002-4006. Imae, Ichiro; Akazawa, Ryosuke; Ooyama, Yousuke; Harima, Yutaka, “Investigation of organic thermoelectric materials using potential-step chronocoulometry: Effect of polymerization methods on thermoelectric properties of poly(3‐hexylthiophene)”, ournal of Polymer Science(2020) 58(21), 3004-3008. Imae, Ichiro; Yamane, Haruka; Imato, Keiichi; Ooyama, Yousuke, “Thermoelectric properties of PEDOT:PSS/SWCNT composite films with controlled carrier density”, Composites Communications (2021) 27, 100897 (6pp.). Imae, Ichiro; Uehara, Hirokii; Imato, Keiichi; Ooyama, Yousuke, “Thermoelectric properties of conductive freestanding films prepared from PEDOT:PSS aqueous dispersion and ionic liquids”, ACS Applied Materials and Interfaces (2022) 14(51), 57064-57069.     研究者からのメッセージ 研究者の有する「多様な反応設計による自在な高分子の構造制御技術」と「独自のドーピングシステム」を活用して、新規有機熱電変換材料のさらなる性能向上を目指す。このための基礎研究と実用化のための検討を企業との共同研究で進めたい。     研究者 今榮一郎(Imae Ichiro) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
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    2024.06.17
    • 環境エネルギー
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    絶対零度近くの温度を効率よく実現する新規磁気冷凍材料

    磁気冷凍の原理 ①磁気冷凍材料に磁場を印加すると、原子の持つ磁石(磁気モーメント)が整列して、材料の温度が Ti  に上昇する。 ② 放熱先(Ti より少し低い温度)に放熱する。 ③ 磁場を除去(消磁)すると、磁気モーメントの向きがバラバラになり、材料の温度が Tʄ  まで降下する。 ④ 冷却対象( Tʄ  より少し高い温度)から吸熱(対象物を冷却)が生じる。   磁気冷凍の特長 磁気冷凍材料への磁場のオン/オフだけで冷却が可能なためシステムが簡単であり、原理的に冷却効率が高い。 従来の気体冷凍サイクルでは到達困難な極低温までの冷却が可能となる。 オゾン層破壊や温室効果のある冷媒が不要であり、また、極低温域では高価で入手困難なヘリウム同位体などの冷媒が不要となる。   期待される用途 絶対零度近傍(~ 0.1K)レベル:量子コンピューター、極微量元素分析、ダークマター検出やX線天文学に有用   磁気冷凍材料への要求性能 絶対零度近傍での高い磁気冷凍性能(磁気熱量効果) 外界との吸・放熱を迅速に行うために高い熱伝導性 使用環境における材料の耐久性   研究の概要 (1)イッテルビウム系金属間化合物 YbCu4Ni に注目した イッテルビウム系金属間化合物YbCu4Niの特徴 化学的に安定であるため、扱いやすい。 熱伝導率が高いため、効率的に冷却能力を伝達可能である。 合金中のYb原子の割合が高く、単位体積当たりのエントロピー量が多いため、少量での磁気冷凍が可能である。 エントロピーの温度依存性 S (T ) より、磁場 8 Tで、1.8 Kから0.13 Kまでの冷却が期待できる。 (2)YbCu4Niの冷凍性能の基礎試験 1)目的 磁気冷凍材料YbCu4Niの最低到達温度の検証を目的とする。   2)装置構成(図参照) 試料(e)17gを輻射熱シールド(h)内に断熱保持させる。 全体を予備冷却用の市販冷凍機に搭載する。(冷凍機には磁場印加用の電磁石と排気装置付) 試料に温度センサーを接着し、温度を計測する。   3)試験手順 1)試料を市販の冷凍機により1.8Kまで予備冷却する。 2)磁場を印加(10T以下)、1.8 Kを保持する。 3)試料雰囲気を真空排気(10-4 Torr 以下)する。 4)0.6T/minの速度で消磁する。 5)試料の温度変化を計測する。   4)試験結果 初期印加磁場5T、8T、10Tの条件で、それぞれ最低到達温度0.22K、0.17K、0.16Kが得られた。 エントロピーの温度依存性から予測した最低到達温度0.18K(5T)、0.13K(8T)ともほぼ一致した。   (3)YbCu4Ni の大型合金の作製 1)目的 YbCu4Niの実用化のため、大型試料を作製し、冷却能力を向上させる。   2)作成方法および結果 1)高周波加熱炉において、YbとCu4Ni合金を、アルゴンガス雰囲気中で溶解する。 2)700℃で7日間アニール後、水中で急冷する。 3)69gの YbCu4Ni の大型インゴットを得ることができた。   (4)YbCu4Niの大型試料を用いた断熱消磁冷却試験 1)装置構成変更の内容(基礎試験装置を一部改造) 試料の断熱支持部分を、グラファイト棒から熱伝導率の低いストローに変更した。 試料を17gから53gに大型化した。   2)試験手順:初期磁場 8 T、初期温度 1.8 K、消磁速度 0.6 T/minの条件で冷凍実験を行う。 1)磁場8 Tを印加する。 2)試料を市販の冷凍機により、1.8Kまで予備冷却する。 3)試料雰囲気を真空排気する。 4)0.6 T/minの速度で消磁する。 5)試料の温度変化を計測して、基礎試験結果等と比較する。 3)試験結果 大型試料を用いることにより、断熱性を向上させ、0.3 K以下の極低温状態を3時間以上保持できることを実証できた。 A:基礎試験と同じ装置 B:基礎試験装置の断熱支持部分をグラファイト棒からストローに変更した装置 C:ストローおよび大型試料を使用した装置   本研究の優位性 以下の特長をもつ新規磁気冷凍材料YbCu4Niを見出し、実際に材料を試作し、磁気冷凍能力を実証した。 絶対零度近傍までの磁気冷凍(断熱消磁冷却)が可能である。 熱伝導率が高く、迅速な吸放熱が可能なため実用性が高い。 化学・物理的に安定である。 磁気冷凍に有効なイッテルビウム原子の割合が高い結晶構造のため、単位体積当たりのエントロピーの総量が大きく、少量でも冷却可能である。 高価あるいは希少な元素を使用していない。     想定される用途 量子コンピューター 極微量元素分析 ダークマター検出およびX線天文学 量子物性物理学     論文 Journal of Applied Physics, 131 013903 (2022),“Magnetic refrigeration down to 0.2K by heavy fermion metal YbCu4Ni”Yasuyuki Shimura, Kanta Watanabe, Takanori Taniguchi, Kotaro Osato, Rikako Yamamoto, Yuka Kusanose, Kazunori Umeo,  Masaki Fujita, Takahiro Onimaru, Toshiro Takabatae     研究者からのメッセージ 磁気冷凍材料の組成の調整による性能向上や、新たな磁気冷凍材料の探索および、社会実装を目指した大型化や形状の工夫、冷却システムの開発を、材料製造や冷凍機製作を行う企業と共に共同研究を進めたい。   研究者 志村恭通(SHIMURA YASUYUKI) 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    2024.05.08
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    微生物ガス発酵を用いた基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)製造によるカーボンリサイクル

    背景 地球環境問題への対応のため、化石燃料に替えてバイオマス資源を利用し、また、発生する二酸化炭素を化学原料や燃料として再利用するカーボンリサイクルの早期実現が、喫緊の課題となっている。 バイオマス資源から糖質のみを抽出して、発酵法により有用な化学物質を合成する手法はあるが、原料が食料と競合、糖以外の有機物が利用困難、糖化処理の高コストなどの弱点がある。 バイオマス資源から比較的容易に得られるメタン、水素、一酸化炭素、二酸化炭素などの合成ガスから、有用な化学物質が合成できれば、カーボンリサイクルの自由度が大幅にアップする。 ホモ酢酸菌と呼ばれる嫌気性細菌の一群は、合成ガスから酢酸を生成することができる。酢酸以外の有用な化学物質が合成できれば、炭素循環型社会を支える有用技術となる。     概要 酢酸菌を遺伝子組み換えして基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)を生産     好熱性ホモ酢酸菌の1種Moorella thermoaceticaの野生株は、糖のみならず、CO2、H2、COを原料・エネルギー源として、酢酸を生成する代謝系を持つ。 遺伝子組み換えにより、 thermoaceticaが作る中間体アセチル-CoAを材料として、独自開発の遺伝子組換え技術により耐熱性酵素を導入することで、目的の基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)を生成することに成功した。 生産物が低沸点であることを活用し発酵/分離を統合した合成ガス高温発酵プロセスを開発した。     合成ガスからの基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)生成 作製した菌は合成ガスを基質として、上記基礎化学品を生産する。 菌体当たりの生産速度 アセトン: 90 mg/g-菌体/時間(CO:H2比 = 1:1)。 すなわち、10g/Lの菌体があれば、約1g/L/hの高速アセトン生産が可能になる。 2-プロパノール(アセトン生産経路にアルコール脱水素酵素を追加することで生成):30 mg/g-菌体/時間 エタノール(アルコール脱水素酵素およびエネルギー代謝改善酵素を導入することで生成):70mg/g-菌体/時間   開発した菌は、55℃から65℃で培養可能であり、蒸留発酵により生産物を回収しながら、物質生産を継続でき、分離・精製工程の負荷を低減できる。     本研究の優位性 化石燃料フリー、さらに、他で発生するCO2を利用して、有用化学物質を生産可能 バイオマス資源から糖化プロセスを経て有用化学物質を生産する発酵プロセスに比較して、原料が食料と競合しない糖に限定されず、有機物なら何でも利用可能である。 中温微生物による従来プロセスと比較して、発酵しながら分離(蒸留)するので、分離・精製工程の負荷や排水処理コストを低減可能である。 バイオマスや廃棄物等から比較的容易に生成可能な合成ガス、火力発電からの二酸化炭素、太陽光や風力発電で生成させた水素等、多様な組み合わせで、フレキシブルに有用化学物質を生産可能である。 合成ガスから有用化学物質を生産する既存の化学プロセスと比較して、例えば、メタノール合成プロセスのような高温・高圧の処理やガス組成の厳密な制御を必要としない。     期待される用途 生成物は有機溶媒として使われるほか、日本のプラスチック生産量の約半分を占めるポリエチレン、ポリプロピレン、C2-C4の化学品の合成前駆体として用いられる。 本技術を、バイオマスや廃プラ等による安価な合成ガス、火力発電所等からの二酸化炭素、太陽光や風力等からの水素と組み合わせることにより、今後のマテリアルカーボンリサイクルフロー実現のための重要技術となることが期待される。     実用化に向けての課題 菌株育種:合成ガスからの目的産物の生産を確認済みだが、酢酸が副生する点が未解決である。また、CO2/H2を原料とした際に生産性が低下する課題が未解決である。 プロセス開発:合成ガスおよびCO2/H2を原料とした発酵装置を開発した。しかし、開発アセトン発酵プロセスと、安価な合成ガス原料および製造プロセス、および各種化成品製造プロセスとのインターフェース技術は未確立である。 LCA: 実用化に向けて、高精度なプロセス設計に基づく、LCAおよび経済性評価も必要となる。     企業への期待 菌株育種:ガス発酵微生物のハイスループット育種技術の共同開発 プロセス開発:開発アセトン発酵プロセスと、安価な合成ガス原料および製造プロセス、および各種化成品製造プロセスとの親和性検討とインターフェース技術の共同開発、および詳細プロセス設計に関わる共同研究 LCA: 高精度なプロセス設計に基づく、LCAおよび経済性評価に関わる共同研究     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :アセトンを生成する組換え好熱性細菌及びそれを用いたアセトンの製造方法 出願番号 :特願2020- 96417 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :中島田豊、加藤淳也、加藤節、竹村海正   発明の名称 :イソプロパノールを生成する組換え好熱性細菌及びそれを用いたイソプロ パノールの製造方法 出願番号 :特願2023-058275 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者:中島田 豊, 加藤 淳也, 加藤 節, 竹村 海生, 松尾 赳志   発明の名称 :モーレラ属細菌の遺伝子組換え法 特許番号:特許5963538 権利者:国立大学法人広島大学, 国立研究開発法人産業技術総合研究所 発明者:酒井 伸介, 高岡 一栄, 中島田 豊,岩崎 祐樹, 矢野 伸一, 村上 克治, 喜多 晃久     論文 Metabolic engineering of Moorella thermoacetica for thermophilic bioconversion of gaseous substrates to a volatile chemical 国際科学誌「AMB Express」に 2021年23月 23 日にオンライン掲載   Isopropanol production via the thermophilic bioconversion of sugars and syngas using metabolically engineered Moorella thermoacetica 国際科学誌「Biotechnology for Biofuels and Bioproducts」に 2024年1月28 日にオンライン掲載     本研究は以下の研究助成を受けて産業技術総合研究所との共同研究により行われた。 科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業 探索加速型「地球規模課題である低炭素社会の実現」 領域「「ゲームチェンジングテクノロジー」による低炭素社会の実現」 (研究科題名:再生可能エネルギーを活用した有用物質高生産微生物デザイン)     研究者からのメッセージ 合成ガスや水素など普通の微生物発酵にはなじみのない原料を使う新しい発酵技術です。代謝工学的な微生物育種技術とともに、安全かつ高性能な発酵プロセスの技術開発が必要なチャレンジングな試みです。しかし、本技術が社会実装できれば、微生物発酵は生産物だけではなく菌体そのものもタンパク源となり、物質文明を支える基礎化学品と食糧の併産も可能な夢の技術になりえます。   研究者 中島田豊(Nakashimada Yutaka) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 教授

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 量子
    2023.12.13
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 量子
    三原色発光するシリコン量子ドットフィルム

    量子ドットの特徴 量子ドットとは、大きさが数ナノメートルの発光性の半導体ナノ結晶であり、次のような特徴がある。 1)粒子サイズによりフルカラー発光 2)高効率発光 3)極採色(狭い発光幅で有機ELの3-4倍の色域) 4)溶液プロセスによる低温・大気圧でのデバイス製造   背景 米国の調査会社(グローバルインフォメーション)によると、量子ドットの市場規模は2026年に86億ドルに到達と試算されている。 量子ドットは夢の光材料とよばれ、最近、量子ドットの大画面TVやタブレットが市場に出回り始めているが、現在の商品または研究で主力の量子ドットは、インジウム系(レアメタル)、カドミウム系、鉛系などの重金属を使用しており、材料入手難や毒性等の課題がある。 本研究グループは、入手容易で安全な材料であるシリコンを用いた量子ドットの研究を進めており、これまでに、発光量子収率が70%超えるSi量子ドット(SiQD)を報告している。この値は、単結晶シリコンの発光量子収率0.1%と比較すると飛躍的に高い。これまでに、三原色発光するSiQD(2009年)、白色発光するSiQD(2012年)、青色SiQD LED(2015年)、1/380のコストでのSiQDの製造法(2020年)、最大80%を超える発光量子収率を持つ赤色SiQD(2022年1月)、もみ殻を原料とした赤・オレンジ発光のSiQD LED(2022年2月)なども報告してきた。 この度、三原色発光する溶液分散型のSiQDを合成し、それらの量子ドットフィルムの作製、加速劣化試験を行い、更に、発光と劣化の機構を解明した。     研究の詳細 光の三原色で発光するSi量子ドット(SiQD)フィルムを作成し、太陽光照射、熱水への浸漬(80℃、湿度100%)の加速劣化試験で評価した。 成果の概要は次の通りである。     概要1三原色発光する溶液分散型SiQDを合成 三原色(赤・青・緑)発光する溶液分散型SiQDを、それぞれ異なる手法で化学合成した。(図1) それぞれの発光ピークの波長は、赤(660 nm)、緑(530 nm)、青(400 nm)であった。 発光効率(発光量子収率)は、赤(34%)、緑(20%)、青(12%)であった。 SiQDの表面は異なる官能基で化学修飾され、赤(炭化水素基)、緑(アミノ基)、青(シロキサン基:Si-O-Si結合)である。     概要2三原色発光するSiQDフィルムを作成 得られたSiQD溶液を、それぞれ高分子フィルムに分散し、赤・青・緑発光するSiQDフィルムを得た。 このSiQDフィルムは、フレキシブルで伸縮性を有する。(図2)     概要3SiQDフィルムの耐久性評価【太陽光への暴露試験】 赤・緑色発光のSiQDフィルムは、太陽光に照射後6hで、発光強度が急減し、安定した発光になった。青色シリコン量子ドットは8日間の太陽光照射に対し、発光強度(発光量子収率)の劣化は少なく、80%の発光強度が保たれた。(図3) 太陽光照射への耐久性は、量子ドットと高分子フィルム、それぞれの光吸収特性に依存しており、劣化のメカニズムは、化学修飾基の結合切断と考えられる。     概要4SiQDフィルムの耐久性評価【熱水への浸漬試験】 青色SiQDフィルムを、80℃の熱水に12日間浸漬する加速劣化試験を行った。(図4) 12日間の発光強度の劣化は15%程度で、驚異的な耐久性を示した。 青色SiQDの高い耐久性は、表面の強固なシロキサン結合によると考えられる。 青色SiQDフィルムを80℃の熱水へ浸漬すると、発光量子収率が上昇した。これは、未反応の表面官能基の後続反応によるシロキサン結合の増加によると考えられる。 熱水耐久性試験において、シリコーンエラストマー系よりフッ素樹脂系ポリマーの母材で、高い耐久性が観測された。     概要5発光メカニズム SiQDの発光と粒子サイズの関係について、本研究の結果と過去の文献データを比較した。(図5) 図中においてデータは、発光メカニズムの違いにより、上下二つのデータ群に分かれている。 上部は表面効果(量子ドットの表面に結合した官能基が新しい発光準位を作る)による発光、下部は量子閉じ込め効果(粒子がナノサイズになると同じ物資でも発光色が変わる)による発光である。曲線(赤色)は、量子閉じ込め効果に対応する理論計算(有効質量近似)の結果を示す。 この結果から、本研究で得られた赤色SiQDの発光は量子閉じ込め効果、緑色SiQDと青色SiQDの発光は表面効果によるものと考えられる。       本研究の優位性 現在の商品または研究で主力の量子ドットは、インジウム系(レアメタル)、カドミウム系、鉛系などの重金属を使用しており、材料入手難や毒性等の課題があるのに対し、本研究では、入手容易で安全な材料であるシリコンを用いている。 これまでに、発光量子収率が70%超えるSi量子ドット(SiQD)を報告している。この値は、単結晶シリコンの発光量子収率01%と比較すると飛躍的に高い。また、三原色発光するSiQD(2009年)、白色発光するSiQD(2012年)、青色SiQD LED(2015年)、1/380のコストでのSiQDの製造法(2020年)、最大80%を超える発光量子収率を持つ赤色SiQD(2022年1月)、もみ殻を原料とした赤・オレンジ発光のSiQD LED(2022年2月)など、一連の研究成果を出している。 本研究は、三原色発光する溶液分散型のSiQDを合成し、それらの量子ドットフィルムを実際に作製して、その発光特性を明らかにしたうえで、加速劣化試験を行い、耐久性の評価まで行っている。     期待される用途 安全・安心・安価な発光体ならびにフレキシブル発光フィルムとして、マイクロLED、VR、AR、折り曲げディスプレイ、照明、生医学イメージングの他、超高効率太陽電池(量子ドット太陽電池)での利用が期待される。     実用化に向けての課題 より広範な波長・色の実現、発光効率の上昇、耐久性の向上 三原色SiQDのLEDへの搭載     企業への期待 実用化に向けた課題解決のための共同研究 実用化に向けたシステムの概念設計とフィージビリティスタディ     本技術に関する知的財産権 発明の名称:シリコン量子ドット前駆体、シリコン量子ドット、及びそれらの製造方法 出願番号:特願2020-154517 公開番号:特開2022-048615 出願人:国立大学法人広島大学 発明者:齋藤健一     論文 Stability of Silicon Quantum Dots Against Solar Light/Hot Water: RGB Foldable Films and Ligand Engineering Keisuke Fujimoto1, Toma Hayakawa2, Yuping Xu1, Nana Jingu3, and Ken-ichi Saitow*1-4 1.広島大学 大学院理学研究科(化学専攻) 2.広島大学 理学部(化学科) 3.広島大学 大学院先進理工系科学研究科(化学プログラム) 4.広島大学 自然科学研究支援開発センター(研究開発部門物質科学部) * 責任著者   掲載誌:2022年11月6日発刊のアメリカ化学会のサステナブル化学の学術誌ACS Sustainable Chemistry & Engineering (IF=9.224)で公開。以下は論文のリンク先。(https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.2c03791)     研究者からのメッセージ 量子ドットは,2023年のノーベル化学賞の受賞テーマです。私のところにも多くのメディアから問い合わせを頂きました。量子ドットの利用は,蛍光体,LEDはもちろんのこと,バイオマーカー,医薬品,太陽電池,光触媒など非常に多岐にわたります。これはノーベル財団の公式プレスリリースでも発表されています。これまでの量子ドットは,レアメタルまた重金属系の量子ドットでしたが,環境問題が益々重要となる現在,また生体適合性の視点からも,シリコン製量子ドットの重要性は大変高くなることでしょう。企業の皆様と共同研究を行い,その成果をもとに実用化へつなげ,世界へ量子ドットとそのデバイスを供給できる日が一日でも早く来ることを,願ってやみません。     研究者 齊藤一彦(SAITO KAZUHIKO) 広島大学 大学院人間社会科学研究科 教授

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    2023.05.12
    • 環境エネルギー
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    貴金属触媒を使用しない常圧のアンモニア合成法を開発

    背景 太陽光や風力等の再生可能エネルギーの変動的かつ偏在的なエネルギーの利用媒体として水素が有効であるが、水素はガス密度が低いため効率的な貯蔵や輸送のためには超高圧縮あるいは極低温による液化が必要となる。 化成品や肥料の原料として知られるアンモニア(NH3)は、水素原子を多く含み、燃焼してもCO2を排出しないうえに、簡単に液化*するため貯蔵や輸送が容易であり、水素キャリアとして有効である。(*常温で約8気圧、常圧で約-33℃で液化) 現在、アンモニア合成には、約 500℃、250 気圧以上の高温高圧プロセスであるハーバー・ボッシュ法が用いられているが、偏在する自然エネルギーの利用を考えた場合、より低温・低圧条件で制御可能な小規模分散型のアンモニア合成技術が求められる。 このため、遷移元素や希土類元素等の金属触媒を用いた新しいアンモニア合成の研究が進んでいるが、貴金属触媒が必要になる等課題も多い。 再生可能エネルギー変換技術としての小規模分散型NH3合成プロセス 研究の詳細:水素化リチウムを用いた新しいアンモニア合成プロセス 水素化リチウム(LiH)を用いたケミカルルーピングによるアンモニア( NH3) 合成プロセスは、①LiH の窒化反応、②NH3 合成及び LiH の再生反応の二段階で構成される。 1.LiHの窒化反応: 4LiH + N2 → 2Li2NH + H2 2.NH3 合成及び LiH の再生反応: 2Li2NH + 4H2 → 2NH3 + 4LiH このような NH3 合成法は、一般的な触媒プロセス(N2+3H2→2NH3)とは異なる熱力学平衡で NH3 合成を制御できるため、例えば、高温においても高収率な NH3 合成が可能になる。   ① LiHの窒化反応 (試験その1) 数mg のLiH の固体サンプルと窒素(N2)ガスを、大気圧下で室温から500℃まで加熱しながら反応させ、サンプルの重量変化から求めた反応率と発生水素のスペクトル強度を測定した。(グラフB) 加熱開始約80分、400℃から水素の放出を伴いリチウムイミド(Li2NH)を生成している。 但し、反応率は500 ℃まで加熱した時点で約30%、その後500℃で保持しても約60%程度に留まった。 反応後の試料の電子顕微鏡写真(緑色)によると、生成物が融解凝集し粗大粒子を形成してように見え、固体のLiH 表面で生成するLi2 NH が凝集し、連続的な反応の進行を妨げていると考えられる。   (試験その2) 反応過程での生成物の凝集を抑制するため、化学的に安定なLi2OをLiH に混合して反応の安定化を図った。(グラフA) LiH+Li2O 混合体は、LiH 単相の場合よりやや早く反応を開始し、反応速度低下なく反応開始後約100 分でほぼ100%の反応率に達した。 反応後試料の電子顕微鏡写真(赤色)では、生成物の明確な凝集は見られず、期待した反応制御の効果が見える。   ②NH3 合成及び LiH の再生反応 ①のLiHの窒化反応で得られた生成物を大気圧下の水素(H2)気流中で加熱した。 LiHのみ(グラフB)及びLiH+Li2O (グラフA)のいずれの生成物からも約260℃からアンモニア(NH3) の生成が観測され、LiH の再生も確認された。 この反応においても反応①と同様にLi2O混合による効果が見られ、反応率100%までの時間が短くなった。   以上の結果より、500℃以下の常圧条件下でLiHの窒化、NH3合成/再生反応によるアンモニア合成が可能で、さらに、 安定物質Li2Oの混合により、粒子の凝集による反応への阻害を抑制することが可能であると示された。   反応モデル LiHのみあるいはLiHに安定化物質Li2Oを混合した場合の、窒化反応後の走査型電子顕微鏡(SEM)画像と反応の推定模式図を下図に示す。 LiHのみの場合:生成物(Li2NH)が溶けて隣の粒子と繋がり粗大化していることから、模式図の様にLiHとN2の反応はLiHの表面で進行し、生成物のLi2NHが凝集してLiHを覆うことにより反応の進行を阻害していることが推察される。 LiH+Li2Oの場合:粒子の粗大化がなく、別途行ったEDS元素マッピングによると、Li2NHがLi2Oの周囲に分散して、小さく結晶化しているようにみえる。   本研究の優位性 LiHのみ、あるいはLiHに安定化物質Li2Oを混合した場合の、窒化反応後の走査型電子顕微鏡(SEM)画像と、反応の推定模式図を下図に示す。 LiHのみの場合:生成物(Li2NH)が溶けて、隣の粒子と繋がり粗大化していることから、模式図の様にLiHとN2の反応は、LiHの表面で進行し、生成物のLi2NHが凝集してLiHを覆うことにより反応の進行を阻害していることが推察される。 LiH+Li2Oの場合:粒子の粗大化がなく、別途行ったEDS元素マッピングによるとLi2NHがLi2Oの周囲に分散して小さく結晶化しているようにみえる。   期待される用途 再生可能エネルギーを貯蔵・輸送するためのアンモニアの合成   実用化に向けての課題 窒化反応及び合成/再生反応のための適正温度を反応熱を用いて自立的に維持し、効率的に反応を持続させるための熱マネージメントを含めた反応制御システムに関する研究に取り組む予定である。 本研究では、反応制御のための混合物質として酸化リチウム(Li2O)を用いたが、同様な安定物質であればこれに代替可能であるため、実用化に向けて、酸化アルミニウム、酸化シリコン、結晶性グラファイトなど、より安価な物質の利用を検討したい。   企業への期待 実用化に向けた課題解決のための共同研究 実用化に向けたシステムの概念設計とフィージビリティスタディ   本技術に関する知的財産権 発明の名称:アンモニアの合成方法 出願番号:特願2021-137414 公開番号:特開2023-31740 出願人:国立大学法人広島大学 発明者:宮岡裕樹、市川貴之、斉間等   論文 論文:Improvement of Kinetics on Ammonia Synthesis under Ambient Pressure by Chemical Looping process of Lithium Hydride 著者:Kentaro Tagawa, Hiroyuki Gi, Keita Shinzato, Hiroki Miyaoka*, Takayuki Ichikawa 雑誌:The Journal of Physical Chemistry C, 2022, in press. ※本研究は、科学研究費助成事業基盤研究(B):20H02465 の助成の下,広島大学窒素循環エネルギーキャリア研究拠点における共同研究として実施された。   研究者からのメッセージ 2050年カーボンニュートラルの実現に向けた基盤技術の創出を目指しています。 再生可能エネルギーの有効利用を目的とした,小型分散型,低圧,高効率アンモニア合成技術の確立に挑戦します。     研究者 宮岡裕樹(MIYAOKA HIROKI) 広島大学 自然科学研究支援開発センター 教授

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    2023.04.04
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    野良猫用公衆トイレの設置効果の検証

    本研究の優位性 野良猫の糞尿被害を、忌避剤と公衆トイレを併用して軽減可能であることを立証 猫の糞尿被害を通して、ヒトと動物の共生についての課題点を顕在化     研究内容 背景 猫の糞尿には人獣共通感染症の寄生虫やバクテリア、ウイルスを含んでいる可能性があり、糞尿被害による自治体への苦情は多いが、糞尿汚染に関する研究報告は少ない。環境省は野良猫用トイレの設置を推奨しているが、その効果は検証されていない。そこで、約200頭の野良猫が生息している『猫の街』尾道市において、糞尿被害に悩まされている寺院に開発中の忌避剤*と猫用公衆トイレを設置して、糞を対象に猫用トイレの効果を検証した。 *忌避剤は本研究終了後に一般発売された。     研究の概要 植物プランターを利用したトイレに雨よけの屋根を付けたものを6台作成して、市販の猫砂を敷き詰め、境内及び墓地の異なる地点に6箇所設置した。同時に、トイレへの排泄を確認するための赤外線センサーカメラを4台、事前調査で判明していた5カ所の排泄地点へ忌避剤を設置した。 週に一度、カメラのバッテリー及びデータ回収の際にトイレと境内を清掃し、糞を採集して重量を計測した。   寺院に居ついている17頭の野良猫のうち、個体識別ができた3頭(猫A、B、C)について、トイレ設置前後の糞重量を比較した結果、忌避剤活用によるトイレの設置は、糞の減少に効果的であった。 野良猫はトイレトレーニングを行っていないが、トイレを設置した週から3頭ともトイレを利用していた。トイレでの排泄回数は14週間で、Aが81.3%、Bが88.6%、Cが100%と頻繁に出没する猫ほど使用頻度が高かった。また、対象区として設定した2つの公園と1つの神社の合計8地点では、糞重量は減少しなかった。   猫のトイレの利用を増やすためには、生息する頭数+1台のトイレの設置が必要であり、トイレの大きさや清掃頻度、敷材等をさらに検証する余地がある。   猫用公衆トイレを設置すると野良猫の糞尿被害の減少に効果的だが、設置後も清掃や点検といった人の手が必要となる。猫の行動圏は観光客や地域住民による餌付けに影響を受けるので、給餌だけでなくトイレ管理や糞尿の清掃を行うことで地域トラブルの減少へ繋がる。     期待される効果 野良猫の糞尿被害発生地域における猫用公衆トイレの設置促進 猫用公衆トイレ設置による地域トラブルの減少     企業・自治体への期待 猫用公衆トイレに最適な素材(猫砂・屋根・容器等)の開発に興味のある企業との共同研究 野良猫に関わる課題解決にむけて調査・検証を行いたい企業または自治体との連携 地域猫活動の推進や課題解決に取り組んでいる自治体との連携     論文 Seo,A. & Tanida, H.,The effect of communal litter box provision on the defecation behavior of free-roaming cats in old-town Onomichi, Japan,Applied Animal Behaviour Science 224 (2020) 104938. 妹尾あいら・谷田創. 酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体にシトラールを添加したネコ用忌避剤の効果,ペストロジー 32(1) (2017) 1-6. 妹尾あいら・谷田創. 自由徘徊ネコに対する酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体の忌避効果の検証, ヒトと動物の関係学会誌 44 (2016) 42-48.     研究者からのメッセージ 野良猫とヒトの福祉向上と共生社会を目指し、広島県内のさまざまな地域でフィールドワークに取り組んでいます。 地域住民の声を直接聞き、自治体等とも協力することで、成果を地域に還元できる研究を行っています。   研究者 妹尾あいら(SEO AIRA) 広島大学 酪農エコシステム技術開発センター 助教

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    2022.12.27
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    大気圧プラズマCVD法による分子ふるいシリカ膜の常温常圧製膜法

    背景・狙い 膜分離法は省エネルギーな分離技術であり、化学プロセスにおける高純度製品の生産や水処理、CO2分離などの環境分野におけるキーテクノロジーである。 シリカ膜は耐熱性や耐薬品性に優れ、従来の高分子膜が適用困難なプロセスにも適用可能な革新的な分離技術である。 従来のシリカ膜製膜プロセスは高温を必要とするため、材料が限定されて高コストであることやスループットが低いことが課題である。 製膜プロセスの常温常圧化は、製膜プロセスの連続化や大面積化に有利であるとともに、多様な材料とのハイブリッドによる分離機能の強化が期待できる。     研究の詳細 多孔性シリカ膜について 多孔性シリカ膜とは -シリカネットワークが造る微細孔構造によって分子をサイズの違いで分離する機能(分子ふるい)を有する。 -微細孔構造(細孔径や親和性)を制御することで多様な分離系に好適な分離性能を有する膜を作製することができる。 -耐熱性、耐酸化性、耐薬品性に優れる。   多孔性シリカ分離膜の一般的な構造 機械的強度を与える多孔質の支持体上に形成した中間層の上に分離膜を形成した非対称構造を有する。   多孔性シリカ分離膜の製造法 【従来法】化学気相蒸着(CVD)法 ・ ゾル-ゲル法 ➢ 機械的強度と高透過分離性を両立するために、一般的にシリカ膜は、多孔質の支持体の上に中間層を形成し、その上に分離機能を有するシリカ薄膜層を重ねた非対称構造となっている。 ➢ このシリカ薄膜層を形成する主要な方法として、CVD法やゾル-ゲル法が用いられてきたが、これらの製造プロセスは500~600℃程度の高温処理を伴うため、長時間の反応を必要とし、耐熱性の観点から使用できる支持体が高価なセラミック材料に限定されていた。 ➢ 低圧プラズマを用いるプラズマCVD法による製膜も提案されているが、真空排気系が必要で、連続化や大面積化に限界があった。   【新技術】大気圧プラズマCVD法(Atmospheric-Pressure Plasma-Enhanced CVD) ➢新たに非平衡大気圧プラズマを利用したCVD法を開発し、大気圧プラズマがつくる反応場を利用することで、バルク温度を室温近傍の低温に抑えたうえで、高い分離性を有するシリカ膜の製膜が可能となった。 ➢大気圧プラズマを用いることで、一般的な低圧プラズマとは異なり真空排気系を必要としない常温常圧での製膜が可能となり、連続処理や複雑形状への製膜が容易になった。 ➢大気圧プラズマ中の豊富な反応活性種を利用することで、従来法では長時間(数時間)を要したシリカ膜の製膜を数分レベルの超高速で行うことが可能となった。 大気圧プラズマCVDによるシリカ膜の製膜 (a) 製膜の様子,(b) 膜形成メカニズム,(c) 気体透過特性のCVD時間依存性     応用例  CO2分離膜 二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)あるいはメタン(CH4)との膜透過性(permeance)の違いを利用したガス分離が可能である。 300℃程度の熱処理により、ガス選択性のさらなる向上が可能になる。   本研究の優位性 シリカ膜の製膜に高温工程(500~600℃)を伴う従来のゾル-ゲル法や熱CVD法と比較して – 非平衡大気圧プラズマを用いることにより製膜温度の低温化が達成された。 – 低温化により有機材料とのハイブリッド膜など、更なる高機能膜の製造が可能になる。 – 大気圧プラズマCVD法では、常温常圧かつワンステップのドライプロセスでの製膜が可能になった結果、製膜工程が大幅に簡素化され、分子ふるいシリカ膜の製膜コストの大幅低減が可能になる。     期待される用途 水素分離や二酸化炭素分離をはじめとする各種ガス分離 チタニア等の各種セラミック膜の製膜への応用     実用化に向けての課題 現在、水素分離や二酸化炭素分離について実用レベルの透過選択性を達成可能な段階まで開発済であるが、実験室レベルの製膜のため、大面積化やモジュール化の点で検討が必要である。 今後、気体分離のみならず、浸透気化・蒸気透過や水系・非水系ろ過など、様々な分離系への応用に向けた試験を行う必要がある。 様々な分離系への応用に向けては、分離系に応じた細孔径の制御技術の確立も必要と思われる。     企業への期待 膜の大面積化やモジュール化に共同で取り組んでいただける企業、分離膜に限らずセラミック薄膜の常温常圧ドライ製膜に関心のある企業との共同研究を希望。 気体分離をはじめとする分子分離への展開を考えている企業には本技術の導入が有効と思われる。     本技術に関する知的財産権 発明の名称: 気体分離フィルタの製造方法 出願番号: 特願2016-14990 公開番号: 特開2017-131849 特許番号:特許6683365 出願人: 広島大学 発明者: 都留稔了,長澤寛規,金指正言     論文 Nagasawa, Y. Yamamoto, N. Tsuda, M. Kanezashi, T. Yoshioka, T. Tsuru, Atmospheric-pressure plasma-enhanced chemical vapor deposition of microporous silica membranes for gas separation, J. Membr. Sci., 524 (2017) 644-651. Nagasawa, T. Kagawa, T. Noborio, M. Kanezashi, A. Ogata, T. Tsuru, Ultrafast synthesis of silica-based molecular sieve membranes in dielectric barrier discharge at low temperature and atmospheric pressure, J. Am. Chem. Soc., 143 (2021) 35-40. Nagasawa, R. Yasunari, M. Kawasaki, M. Kanezashi, T. Tsuru, Facile low-temperature route toward the development of polymer-supported silica-based membranes for gas separation via atmospheric-pressure plasma-enhanced chemical vapor deposition, J. Membr. Sci., 638 (2021) 119709.   研究者からのメッセージ 大気圧プラズマCVD法は、種々の機能性薄膜を低温・高速かつ大面積に作製可能な技術であり、今後は、シリカ系分離膜に限らず、様々な分野の薄膜への応用を進めていきたいと考えています。   研究者 長澤寛規(NAGASAWA HIROKI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    • 気候変動/エネルギー/GX
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    2022.12.26
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    シリカ系多孔質膜の開発と各種膜分離プロセスへの応用

    背景・狙い 高純度製品の生産、環境有害物質の除去といった分離操作は、化学工業において重要なプロセスである。 シリカ、ジルコニアなどの無機材料、および有機・無機ハイブリッド材料に着目し、製膜・評価技術の確立、透過・分離特性の検討を通じてあらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行っている。 研究の詳細 膜分離法の種類 膜分離法の種類   シリカ系多孔質膜とは – 膜材料 シリカ、シリカ-ジルコニアなどの複合酸化物無機材料 有機材料と無機材料のハイブリッド – 特徴 100 nm程度の薄膜製膜が可能 製膜が容易、優れた耐熱性、耐溶媒性 細孔径のナノチューニングが可能 シリカ系多孔膜の特徴、想定される分離対象   シリカ系多孔膜の作製法ゾル-ゲル法 アルコキシシランを加水分解および架橋反応させて調製したゾルをナノレベルで制御し、多孔質の基材にコーティングして薄膜を形成する製膜法である。 薄膜製膜により高透過を図り、分離系に応じて精密に制御した細孔径により分離性をコントロールする。 ゾルゲル法による多孔質シリカ膜の作製法   ゾル-ゲル法によるネットワーク構造制御技術(分子ふるい制御) Si前駆体の選定、製膜条件(焼成温度、雰囲気) カチオン、アニオンドープ セラミック複合酸化物(Y-SiO2-ZrO2、carbon-SiO2-ZrO2) ゾル-ゲル法によるネットワーク構造制御技術(分子ふるい制御)   ゾル-ゲル法によるネットワーク構造制御技術(吸着性制御) ゾルーゲル法によるネットワーク構造制御技術(吸着性制御)   応用例 1.メタン水蒸気改質への水素分離膜の応用 ● 水蒸気改質の反応場に型反応器を組み込み、生成ガスから水素のみを分離して系外に抽出した。 ● 系外への水素の選択的分離により平衡反応率を超える反応率となった。 メタン水蒸気改質への水素分離膜の応用   2. オルガノシリカ膜による水素/有機ハイドライド分離 ● Si-R-Siを有する前駆体を用いることで、従来のシリカ膜よりもルースな細孔構造を有する分離膜を開発。有機ハイドライド脱水素反応における水素分離への応用が可能。 オルガノシリカ膜のH2の透過特性 3.プロピレン/プロパン分離へのFドープシリカ(F-SiO2)膜の応用 ●Fドープによりプロピレンが透過可能なルースな構造に変化し,細孔構造が均一化することで,近接混合物のプロピレンとプロパン分離で選択性が大きく向上した。   4.地球温暖化ガス(二酸化炭素)分離回収 ●CO2と親和性を有する有機官能基をハイブリッドすることで、CO2分離(燃焼排ガス、バイオガス)に応用可能な分離膜を開発した。 アミン系Si前駆体とのハイブリッドによるCO2透過性制御 6.Carbon-SiO2-ZrO2膜によるアルコール脱水(浸透気化法) ●セラミック複合酸化物であるSiO2-ZrO2を形成する際の有機キレートを所定の条件で炭化されることで,耐水性に優れた高い分離性能を有するアルコール脱水膜を開発した。 Carbon-SiO2-ZO2膜によるアルコール脱水(浸透気化) 6.Carbon-SiO2-ZrO2膜によるメタノール分離(浸透気化法) ●セラミック複合酸化物であるSiO2-ZrO2を形成する際の有機キレートの種類を制御することで、細孔径を脱水膜よりもルースに制御可能で、様々なメタノール分離系への応用が可能であることを明らかにした。 Carcon-SiO2-ZrO2膜によるメタノール分離(浸透気化)   7.有機溶媒逆浸透による超省エネ分離 ●従来型蒸留法は最小仕事の1000倍以上のエネルギーが必要である。逆浸透法を用いることにより従来型と比較して1/10~1/100のエネルギーで分離が可能となるが、高圧に耐えられる膜が必要となる。 ●オルガノシリカによる逆浸透膜を開発し、無機膜のため超高圧操作で省エネルギーな有機溶媒分離を達成した。 ●蒸留代替による省エネルギーの実現により、持続可能な化学プロセスに貢献可能である。 有機溶媒逆浸透による超省エネ分離   本研究の優位性 金属性の水素分離膜と比べて - 酸性ガスによる劣化やコーキングがない - 高い透過流束が得られる - 細孔径のチューニングが可能である   高分子膜と比べて - 耐熱性や耐有機溶剤性に優れる   期待される用途 ガス分離:希ガス、水素、アンモニア、酸素、二酸化炭素、炭化水素(エチレン/エタン、プロパン/プロピレン、ブタン/ブテン)など 浸透気化分離:各種アルコール水溶液の脱水、有機酸(酢酸など)の脱水、有機物/有機混合物(アルカン/芳香族) 逆浸透・ナノ濾過:有機溶媒系濾過、高温・高圧での濾過、非水溶液有機溶媒RO(メタノール/トルエンなど)   実用化に向けての課題 実ガスや実液を用いた分離性評価、長期安定性評価など 実用化に向けて、水素モジュール化の技術も既に確立(1mの長尺モジュールも製造可能)   企業への期待 セラミック製造技術を持つ企業との共同研究 燃料電池メーカーやガス製造等各種化学プロセス・環境プロセス関連企業との分離膜応用に向けた共同研究     本技術に関する知的財産権 発明の名称: 逆浸透膜フィルタ 出願番号: 特願2012-112239 公開番号: 特開2012-254449 特許番号: 特許第5900959号 出願人: 広島大学 発明者:都留稔了,吉岡朋久,金指正言     発明の名称: 分離フィルタの製造方法 出願番号: 特願2014-220030 公開番号: 特開2015-110218 特許番号: 特許第6474583号 出願人: 広島大学 発明者: 都留稔了,王金輝,金指正言,吉岡朋久     発明の名称: 分離膜及びその製造方法 出願番号: 特願2015-090801 公開番号: 特開2016-203125 特許番号: 特許第6548215号 出願人: 広島大学 発明者: 金指正言,都留稔了     発明の名称: 水蒸気を含有する混合ガス用気体分離フィルタ及びその製造方法 出願番号: 特願2015-109949 公開番号: 特開2016-221453 特許番号: 特許第671169号 出願人: 広島大学 発明者: 任秀秀,金指正言,都留稔了     発明の名称: 物質量測定方法、細孔径分布導出方法、物質量測定装置及び細孔径分布導出装置 出願番号: 特願2016-014990 公開番号: 特開2017-191073 特許番号: 特許第6842686号 出願人: 広島大学 発明者: 都留稔了,長澤寛規,金指正言     論文 1.M. Kanezashi, Y. Yoneda, H. Nagasawa, K. Yamamoto, J. Ohshita, T. Tsuru: Gas permeation properties for organosilica membranes with different Si/C ratios and evaluation of microporous structures. AIChE J. 63: 4491-4498, 2017.   2.M. Kanezashi, T. Matsutani, H. Nagasawa, T. Tsuru: Fluorine-induced microporous silica membranes: Dramatic improvement in hydrothermal stability and pore size controllability for highly permeable propylene/propane separation. J. Membr. Sci., 549: 111-119, 2018.   3.M. Guo, M. Kanezashi, H. Nagasawa, L. Yu, J. Ohshita, T. Tsuru: Amino-decorated organosilica membranes for highly permeable CO2 capture. J. Membr. Sci., 611: 118328 (p.1-10), 2020.   4.M. Kanezashi, N. Hataoka, R. Ikram, H. Nagasawa, T. Tsuru: Hydrothermal stability of fluorine-induced microporous silica membranes: effect of steam treatment conditions. AIChE J., 67: e17292 (p.1-11), 2021.   5.M. Takenaka, H. Nagasawa, T. Tsuru, M. Kanezashi: Hydrocarbon permeation properties through microporous fluorine-doped organosilica membranes with controlled pore sizes. J. Membr. Sci., 619: 118787 (p.1-10), 2021.   6.S. Lawal, M. Kanezashi: A brief overview of the microstructural engineering of inorganic–organic composite membranes derived from organic chelating ligands. Membranes, 13: 390 (p.1-34), 2023.   7. X. Niu, N. Moriyama, H. Nagasawa, T. Tsuru, M. Kanezashi: Hydrothermally robust carbon-silica-zirconia ceramic membranes for efficient pervaporation dehydration. J. Membr. Sci., 730: 124197 (p.1-13), 2025.   8. X. Niu, M. Kanezashi: Microstructure engineering of silica-derived membranes and their applications in molecular separation. Bull. Chem. Soc. Jpn, 98: uoaf030 (p.1-24), 2025.   研究者からのメッセージ 地球レベルでの環境負荷が問題となる現在では、持続可能な社会を構築するためにどのような貢献ができるかが重要です。膜分離工学は、化学や医薬などすべての工業プロセスで重要な役割を果たし、水処理、H2、CO2分離のような環境問題の解決においてもキーテクノロジーとなるため、Sustainable Development Goals(SDGs)への貢献が大きい技術です。当研究室では、シリカ、ジルコニアなどの無機材料、および有機・無機ハイブリッド材料に着目し、製膜・評価技術の確立、透過・分離特性の検討を通じてあらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行っています。

    • デジタル/AI
    2022.11.11
    • デジタル/AI
    メカトロニクス制御技術と動力学シミュレーション技術

    研究の概要 【研究者によるシーズ紹介動画】   1.人間と協働するロボット制御技術 【事例】 応答が穏やかな目標値追従制御技術「プロクシベースト・スライディングモード制御(PSMC)」 ロボットの位置決め制御などに利用できる安全な目標追従制御技術です。 通常動作時の正確な位置制御性能は損なわずに、異常発生時に滑らかでオーバーシュートを起こさない緩やかな動作を実現します。 ロボットの位置制御だけでなく、他の様々な制御(接触力、空気圧、液圧、電圧、電流など)にも使える可能性があります。   2.リアルタイム/インタラクティブシミュレーション技術 【事例】極端な変形下でも計算を続行できる変形シミュレーション技術 通常のシミュレーション技術では、極端な変形が起こると、ソフトウェアのエラーが起こったり、計算が発散してあり得ない挙動が起こったりしてしまうことが多々あります。 この変形シミュレーション技術では、要素がつぶれて裏返るような極端な変形下においても計算を続行できます。 ゴム・スポンジ・生体組成など変形が激しい部材のシミュレーションに応用できる可能性があります。   想定される市場・製品・産業分野 産業用ロボット・メカトロニクス制御 CAE ゲーム・動画作成   特許 特開2020-113214:制御装置 特許第6934173号:力制御装置、力制御方法及び力制御プログラム 特許第6032811号:アドミッタンス制御を用いた力制御装置および位置制御装置   論文 Kikuuwe: “Dynamics Modeling of Gear Transmissions with Asymmetric Load-Dependent Friction,” Mechanism and Machine Theory, vol.179, p.105116, 2023. Kikuuwe, T. Okada, H. Yoshihara, T. Doi, T. Nanjo and K. Yamashita: “A Nonsmooth Quasi-Static Modeling Approach for Hydraulic Actuators,” Transactions of ASME: Journal of Dynamic Systems, Measurement, and Control, vol.143, no.12, p.121002, 2021. Kikuuwe: “A Brush-Type Tire Model with Nonsmooth Representation,” Mathematical Problems in Engineering, Vol.2019, Article 9747605, 2019 Kikuuwe: “Torque-Bounded Admittance Control Realized by a Set-Valued Algebraic Feedback,” IEEE Transactions on Robotics, Vol.35, No.5, pp.1136-1149, 2019. Kikuuwe: “A Time-Integration Method for Stable Simulation of Extremely Deformable Hyperelastic Objects,” The Visual Computer, Vol.33, No.10, pp.1335-1346, 2017. Kikuuwe, K. Kanaoka, T. Kumon and M. Yamamoto: “Phase-Lead Stabilization of Force-Projecting Master-Slave Systems with a New Sliding Mode Filter,” IEEE Transactions on Control Systems Technology, Vol.23, No.6, pp.2182-2194, 2015.   研究者からのメッセージ 産業界での困りごとの情報は、我々の研究によって貴重なヒントになります。メカトロニクス制御、シミュレーション等で困りごとがありましたら、まずはご相談ください。 共同研究、共同開発、コンサルティングなど、様々な形態での協業が可能です。 下記の情報もご覧ください。 ホームページ:https://home.hiroshima-u.ac.jp/kikuuwe/index_j.html YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/kikuuwe/ 研究成果に関するスライド:https://speakerdeck.com/kikuuwe/   研究者 菊植亮(KIKUUWE RYO) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

    • 環境エネルギー
    2022.10.13
    • 環境エネルギー
    バイオマス燃焼灰有効活用のための分級プロセスの開発

    背景 FIT制度導入により、木質バイオマスの発電量は増加する一方、発電の際に生じる燃焼灰の処分費は発電売上に対して約8%課せられており、採算性が非常に悪い。 木質燃料(建築廃材は含まない)を使用しているボイラー発電施設から排出された燃焼灰の中で、有効利用可能なものは産業廃棄物とみなされないため、燃焼灰の有効利用は循環型社会の構築のために必要不可欠である。   研究内容 1.  燃焼灰の結晶構造を分析 ボイラー灰、サイクロン灰、バグフィルター灰のマスバランスとカリウム割合を分析。その結果、粒子径の小さいバグフィルター灰のカリウム濃度が高く、燃焼灰のカリウム濃度は粒子径に依存していた。 燃焼灰の結晶構造を解析した結果、燃焼灰は肥料として有効なKCl、CaCO3、K2CO3を含んでいた。   2.燃焼灰の肥料としての有効性検討 カリウム濃度の高い燃焼灰を採取するため、非常に粒子径の小さい燃焼灰が得られる分級システムを設計。実証試験において、カリウム濃度35~40%の燃焼灰を回収することに成功した。 分級技術により、選択的に微細な燃焼灰を得ることで、燃焼灰のカリウム成分を濃縮可能とした。   燃焼灰は重金属(Pb、Cr、Hg)を含んでおり、Pb、Hgは分級することで一緒に濃縮されてしまう可能性があるが、化成肥料の公定規格に対して十分低いため、肥料として使用可能である。 採取した燃焼灰の成分を溶出試験したところ、燃焼灰のカリウムは水溶性とク溶性の両方を示しており、肥料として有効である。   3.アドオン型プラントによるカリウム濃縮実証 従来の設備を活用したアドオン型プラントを作成して実証実験を行った。   その結果、燃焼灰のカリウム成分の濃縮を連続的に実現することに成功した。   本研究の優位性 従来のプラントに分級プロセスを追設することにより、カリウム成分を濃縮した燃焼灰を採取することが可能である。 燃料となる木質バイオマスや、採集した燃焼灰に、特別な処置を施す必要がない。 1/4を輸入に頼っているKCl肥料の国内供給化へ繋がる。   想定される市場・産業分野 バイオマスを燃焼、ガス化して発電や化学製品を生産している企業 バイオマスを利用したボイラーや設備を扱っている企業 肥料業界   企業への期待 工場規模での実効性が確認できており、様々なバイオマス発電設備に適用できる可能性があります。 燃焼灰処分費用の削減とSDGsへの貢献を同時に達成できる本技術を検討頂けると光栄です。   論文 – Utilization of woody biomass combustion fly ash as a filler in the glue used for  (2018) – plywood production, ADVANCED POWDER TECHNOLOGY, 31巻, 11号, pp. 4482-4490 (2020) – Existence Form of Potassium Components in Woody Biomass Combustion Ashes and Estimation Method of Its Enrichment Degree, ENERGY & FUELS, 32巻, 1号, pp. 517-524 (2018) – Utilization of incineration fly ash from biomass power plants for zeolite synthesis from coal fly ash by microwave hydrothermal treatment, ADVANCED POWDER TECHNOLOGY, 29巻, 3号, pp. 450-456 (2018) – Morphology of woody biomass combustion ash and enrichment of potassium components by particle size classification, FUEL PROCESSING TECHNOLOGY, 156巻, pp. 1-8 (2017)     研究者からのメッセージ 紹介した肥料への再資源化以外にも、合板製造用充填材、土壌改良用ゼオライトへの再資源化法についても研究しています。   研究者 福井国博(Fukui Kunihiro) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

    • 半導体
    • 素材
    2022.08.09
    • 半導体
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    究極の微小不揮発性メモリ素子

    背景 不揮発性メモリには微細化・高密度化の物理的限界値(約1Tbit/inchi2)が存在するとされている。 各国の国家プロジェクトが、熱アシスト法など新たな技術によりその限界突破を図り、目標記録密度約5~10Tbit/inchi2を目指している。   本研究の優位性 単一分子で分極ヒステリシス(メモリ効果)を示す究極の微小誘電材料の開発に世界で初めて成功。 メモリ材料として用いればHDDの記録密度を1000倍向上させる新たな強誘電メモリ素子の開発に成功。   概要 籠型形状分子のプレイスラー型ポリオキソメタレートに着目した。分子内部の中心から外れた上下2箇所にイオン安定サイトを有しており、そのどちらか1箇所に1つの陽イオンが包接されている(占有率は上下ともに50%)。 イオン(Mn+)がどちらかの安定サイトに停止すると、分子分極が生じる。エネルギー障壁”U”に対して十分に低い温度域では   イオンが移動できず、電場を印加することでイオンの移動を強制的に誘起できる。 籠型分子は一分子であり、室温下で分極ヒステリシスや自発分極を示す。この分子を「単分子誘電体」と名付けた。 上記性質により、イオン(Mn+)の位置によって1と0の情報を表現する仕組みである。 室温以上(<350K)で分極ヒステリシスを示すことから、早い段階での実用化が期待できる。 本系は単一分子で分極の履歴現象を示すことから, 新たな形態でのメモリ材料開発が可能となる。(例・ポリマーに分散させた状態など)     期待される用途 超高密度不揮発性メモリ(記録密度理論値:1Pbit/inchi2) 焦電性を利用した熱センサーや単分子アクチュエータなど   企業への期待 半導体・電子部品メーカー 電気機器メーカー 材料メーカー   本技術に関する知的財産権 発明の名称 :分子性金属酸化物クラスター、分子性金属酸化物クラスター結晶、分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体、分子メモリ、結晶メモリ及び分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法 – 特許番号 : 第6650138号 – 出願人 : 広島大学 – 発明者 : 西原禎文、加藤智佐都、井上克也   発明の名称 :マルチフェロイック材料及びそれを用いたメモリ – 特許番号 : 第6723602号 – 出願人 : 広島大学 – 発明者 : 西原禎文、丸山莉央、加藤智佐都、井上克也   発明の名称 : 電界効果トランジスタ及びメモリ装置 – 出願番号 : 2019-118917 – 出願人 : 広島大学 – 発明者 : 西原禎文、早瀬友葉、藤林将、井上克也     論文 “Giant Hysteretic Single-Molecule Electric Polarisation Switching Above Room Temperature”, C. Kato, R. Machida, R. Maruyama, R. Tsunashima, X. –M. Ren, M. Kurmoo, K. Inoue, S. Nishihara, Angew. Chem. Int. Ed., 57(41), 13429-13432 (2018). Angew. Chem., 57(41), 13429-13432 (2018) “Welcome to the single-molecule electret device”, S. Nishihara, Nature Nanotechnol., 15, 966-967 (2020).   外部資金の獲得状況 科研費(基盤研究(B)) ・科研費(挑戦的研究(開拓)) ・JST, さきがけ ・JST,START ・JST,A-STEP   研究者からのメッセージ 「単分子誘電体」は、基礎研究から生まれた真に新しい物性材料であり、現在、社会実装に向けて取り組んでいます。この次世代単分子誘電体メモリにご興味があれば、ぜひご連絡ください。   研究者 西原禎文(NISHIHARA SADAFUMI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

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