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研究成果紹介

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    2021.04.01
    • 素材
    プリフォームを要しない炭素繊維強化複合材料の製造プロセスの開発及び特性評価

    アピールポイント 多機能性を有する材料開発 複合材料のプロセスの簡略化可 複合材料の形状自由度の向上可   研究者のねらい 炭素繊維強化金属基複合材料によれば、炭素繊維は、表面に無解メッキ層を有するため、母材金属との濡れ性が良く、従来の高圧鋳造法ほどの高い圧力を必要としない。そのため、製造コストを低減させることが可能となる。母材金属からなる層の間に、炭素繊維の隙間に母材金属が浸透した複合層を有することで、予備成形体を用いることなく製造可能である。複合層における炭素繊維の体積率は7~30 vol.%であり、従来よりも高い体積率で、欠陥のない良好な炭素繊維強化金属基複合材料が得られる。   研究内容 背景: 今まで実現できなかったプリフォームの成形プロセスが必要としない、高体積率(30 vol.%)を有する炭素繊維強化金属基複合材料の製造プロセスの開発することである。   方法: 常温でアルミインゴットの間に炭素繊維を導入し、1073 Kまで温度を上昇した後、一定の圧力(0.8 MPa以下)を加え、加圧鋳造法を行う。図1は作製方法の模式図を示す。   成果: 図2は0.8 MPa下、無毛解を施した炭素繊維を用い作製した複合材料の外観写真である。体積率は7.1   備考 出願番号:特願2019-115782   研究室URL:https://home.hiroshima-u.ac.jp/~zaishitu/Researchgate   ResearchGate:https://www.researchgate.net/profile/Yong_Choi19   Email:ybchoi@hiroshima-u.ac.jp   研究者 崔 能範|チェ ヨンボン(CHOI YONG BUM) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    2013.04.01
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    チタン基複合材料の新たな製造方法

    アピールポイント 高性能性を有する材料開発 複合材料のプロセスの簡略化可 低コスト化可   研究者のねらい チタンと炭素の固相反応を利用したチタン基複合材料の簡易な製造方法を提供することを目的とする。   研究内容 本発明は、チタンマトリックス中に粒子状の炭化チタンが分散したチタン基複合材料の製造方法であって、樹脂に黒鉛粉末、カーボンナノファイバー、又は黒鉛粉末及びカーボンナノファイバーの混合物を分散させてシート状に形成したグラファイトシートと、酸化膜を除去した板状チタンを準備する工程と、圧力方向に離間する前記板状チタンの間に前記グラファイトシートを挟んで積層した積層試料を作製する工程と、チタンの融点をMp(K)とした場合に、前記積層試料を、973K以上Mp以下の温度条件下   備考 特願2019-130578   研究室URL:https://home.hiroshima-u.ac.jp/~zaishitu/Researchgate   ResearchGate:https://www.researchgate.net/profile/Yong_Choi19   Email:ybchoi@hiroshima-u.ac.jp   研究者 崔 能範|チェ ヨンボン(CHOI YONG BUM) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    2013.04.01
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    金属間化合物強化複合材料及びその製造方法

    アピールポイント 複合材料のプロセスの簡略化可 高性能及び低コスト可 形状自由度可   研究者のねらい アルミニウム合金を母材とする強化複合材料において、アルミニウム合金中に金属間化合物が均一に分散させ、強度および耐摩耗性に優れる強化複合材料を、形状の自由度を確保しつつ低コストで製造する技術を提供することにある。   研究内容 従来から、種々の要求に適合する材料を実現するべく、単体の材料では持ち合わせなかった特性を有する、異質な材料を組み合わせた複合材料の開発が様々な分野で行われている。例えば、金属材料の分野においては、アルミニウムの特徴である軽さを維持したまま、その強度や耐摩耗性を向上させるべく、様々な方法により、アルミニウム材料にセラミックス粒子を分散複合化させたセラミックス粒子分散複合アルミニウムを製造する研究例が多い。本研究は、これらとは異なる製造方法として、金属多孔体を溶融金属で   備考 特許権:特許第5988667号「金属間化合物強化複合材料及びその製造方法」   研究室URL:https://home.hiroshima-u.ac.jp/~zaishitu/Researchgate   ResearchGate:https://www.researchgate.net/profile/Yong_Choi19   Email:ybchoi@hiroshima-u.ac.jp   研究者 崔 能範|チェ ヨンボン(CHOI YONG BUM) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    • インフラ
    2011.04.01
    • デジタル/AI
    • モビリティ
    • インフラ
    希薄流および連続流解析へのCIP法の応用

    アピールポイント 高次精度手法 流体方程式の数値解析に適している計算手法 様々な双曲型方程式への適用も可能   研究者のねらい 非平衡希薄気体・中間流の振る舞いを調べる為には、巨視的な物理量に関する方程式(オイラー・ビエス‐トークス方程式)ではなく、速度分布関数の時間発展を扱うボルツマン方程式が必要となるが、複雑な多重積分を含む衝突項を含む為、衝突項の性質を保持したまま簡略化したBGK方程式が用いられる。CIP法は双曲型方程式の高次精度解法であり、かつソロバン格子を併用することで、CIP法の時間空間精度を保持した解適合格子の数値解析手法を構築できる。   研究内容 希薄流の様な平均自由行程が長い、マイクロチャネルの様な系の代表長さが小さい流れでは、クヌッセン数(Kn)が大きい流れを解く為に、BGK方程式を表空間・速度空間2次元(位相空間4次元)に拡張を行い、基礎的な例題等を用いた検証結果を、連続流に近い条件(Kn = 0.002)から希薄流(Kn = 0.05)で衝撃波の反射問題で示す。 実空間にCIP法に適した解適合ソロバン格子を用いることで、ディフューザーの様な内部流で生じる、小Kn数(連続流)での反射衝撃波面・接触不連続面の解像度向上、及び大Kn数(希薄流)で波面が鈍る様子も計算可能である。   論文: T. Yabe and Y. Ogata, A multidimensional approach to rarefied and transitional flows with the CIP method, International Journal of Numerical Methods in Fluids, Vol. 65, 191–206 (2011)   関連図書 矢部 孝,內海 隆行,尾形 陽一「CIP法」森北出版(2003) 矢部 孝,尾形 陽一,滝沢 研二「CIP法とJAVAによるCGシミュレーション」森北出版(2006)   研究者 尾形陽一(OGATA YOICHI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

    • 素材
    2019.03.11
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    鋳放し使用可能なNear-α型チタン合金の設計と特性評価

    アピールポイント 低製造コスト・省エネルギー・地球環境保全に対応したnear-α型Ti合金の開発 DV‑Xaクラスター法による、鋳放し使用可能なnear-α型チタン合金の設計指針   研究者のねらい 本研究では、低製造コスト化による省エネルギーを切り口に、地球環境保全対応の鋳放使用可能なnear-a型Ti合金開発を行う。目下、Ti合金は鋳造後に複雑な加工・熱処理を施すため、高製造コスト化を招いている。そこで、後処理無しに、鋳放し状態での合金の高性能化を念頭に、従来合金に比肩する強度・延性・耐食特性を目標とした。 なお、d電子合金設計法のさらなる高精度化も研究の課題として挙げた。製造プロセス最適化として省エネルギー効率の良く、材質制御まで完了を意図して、浮揚溶解法を用いた。   研究内容 near-a型Ti合金の設計に、DV-Xaクラスター法より得られた、2種の電子パラメータ(Bo:原子間の結合次数、Md:d軌道エネルギーレベル)を用いた。また、溶製した合金の強度、高温耐食性を評価した。得られた主な結果を以下に示す。 備考 論文: Xi-Long Ma, Kazuhiro Matsugi, Zhe-Feng Xu, Yong-Bum Choi, Ye Liu, Jie Hu, Xin-Gang Liu and Hao Huang. Cold crucible levitation melting of near-a titanium alloys and their characterizations. こしき,No.41.2.Xi-Long Ma, Kazuhiro Matsugi, Zhe-Feng Xu, Yong-Bum Choi, Ryohei Matsuzaki, Jie Hu, Xin-Gang Liu and Hao Huang.   研究者 松木一弘(Matsugi Kazuhiro) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

    • 防災
    • インフラ
    2016.04.01
    • 防災
    • インフラ
    災害復旧のための急速展開橋モバイルブリッジ®の研究開発

    アピールポイント インフラの早期復旧システム 新しい橋システムでの人手不足解消 安全なモジュール構造による仮橋の超迅速復旧 研究者のねらい 近年、集中豪雨や地震などの自然災害が多発しており、それに伴って道路や橋梁などのライフラインが崩壊する事例が急増している。我が国は災害が多発する国土であり、それに備えたツールが必要である。しかしながら、人手不足を背景に復旧工事の長期化、復旧コストの増加、作業安全性の低下など課題が多い。現場作業を極力減少し、施工安全性の確保と橋梁流出時のポスト災害に備えた、超迅速架橋を可能とする「架け橋」の実現のため、オリガミ研究から創業した「モバイルブリッジ™」によって安心できる社会インフラを研究開発している。   研究内容 シザーズ構造は宇宙構造・建築分野で活用される展開構造体の一種である。スマート構造を実現するための数理的構造設計で、迅速展開できる最適な構造物およびシザーズ展開の構造解析を研究中である。 シザーズ構造を活用し、仮設橋(モバイルブリッジ)を片持ち状態で折紙のように展開し、対岸の反力を得て負荷を減らす。また、性能に応じて補強弦材を取り付け、高強度化も研究中である。   特許 国際出願番号 PCT/JP2014/003252、特許番号 6068681「シザーズ式伸縮構造」   論文 Y. Chikahiro, I. Ario* et al., Experimental and numerical study of full-scale scissor type bridge, Automation in Construction, 71 (2016), pp.171–180, doi: 10.1016/j.autcon.2016.05.007 動画   研究者 有尾一郎(Ario Ichiro) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 助教

    • 半導体
    • 素材
    2013.04.01
    • 半導体
    • 素材
    大気圧プラズマビームを用いた超高速・高温熱処理技術

    アピールポイント 従来のレーザープロセスと比較して装置コストを大幅に低減 従来プラズマに比べ、高パワー密度かつ大面積処理が可能 半導体基板、ガラス素材、フィルム素材、鉄板などに対する局所的・極表面熱処理   研究者のねらい 従来の大気圧・高エネルギー熱プラズマに対し、ワーク表面でのパワー密度が格段に高く、さらに磁場走査により大面積処理を可能とすることを特徴とした、熱プラズマジェットを用いたミリ秒オーダーの高温熱処理技術を開発しています。 本技術は、レーザーを用いた熱処理と同程度の高パワーを、10分の1以下の装置コストで実現可能であり、レーザーと異なり、被熱処理物が透明であっても熱処理が可能です。 半導体中の不純物活性化や、耐熱性の低い基板の瞬間過熱による極表面熱処理などの半導体デバイス分野への応用に加え、ガラスやフィルム素材、鉄板の局所的、または極表面のみの熱処理技術など、これまで実現できなかった新たな応用も期待できます。   研究内容 約1万度のプラズマジェットを大気圧下で発生させ、これを被熱処理物にミリ秒程度の短時間照射することにより、被処理物の表面(数10µm)のみを選択的に1,000℃以上の高温で熱処理することを可能にしました。 本プロセスの応用例として、ガラス基板上の非晶質Si膜を同技術により熱処理し、多結晶化したSi膜を用いて**薄膜トランジスタ(TFT)**を作製しました。その結果、電界効果移動度61 cm²V⁻¹s⁻¹、しきい値電圧3.4 Vという良好なトランジスタ特性を得ています。   【特許】 特願2019-118679表面処理装置   【論文】 “Large area annealing by magnetic field scanning of atmospheric pressure thermal plasma beam,” Jpn. J. Appl. Phys., 59 (2020) SJJF01-1.   研究者 東清一郎(Higashi Seiichirou) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

    • 素材
    2021.04.01
    • 素材
    熱界面シート及びその製造方法

    アピールポイント 軽量かつ高熱伝導率を有する熱界面材料 低コスト及び容易に製造可 シートの大量生産可   研究者のねらい 熱界面材は、デバイス等の発熱体とヒートシンク等の放熱体との間の微小空隙を埋めるように充填され、発熱体から発生した熱を放熱体へ効果的に伝える役割を担う。本研究は、高熱伝導率、低コストかつ容易に製造することが可能であり、加工の際に端部から切粉が発生せず、軽量かつ高い熱伝導率を有する熱界面シートを提供する。   研究内容 本研究で開発された熱界面シートは、熱可塑性脂と、カーボンナノファイバーを含有する熱界面シートである。製造過程は、混合→塗布工程→乾燥工程→剥離工程であり、シートの厚さは20 μmから100 μmであるが、シートの厚さは自由に変えることが可能である。シートの硬度(Hs, 82–85)、熱伝導率(厚さ方向、14.3 W/mK)の特性を持っている。 また、熱界面シートは適当な大きさに切り出す際に、端面から切粉が発生することが問題であるが、本シート材はその問題を解決され、作業性の効率も上がる。   備考 出願番号:特願2020-138886   研究室URL:https://home.hiroshima-u.ac.jp/~zaishitu/Researchgate   ResearchGate:https://www.researchgate.net/profile/Yong_Choi19   Email:ybchoi@hiroshima-u.ac.jp   研究者 崔 能範|チェ ヨンボン(CHOI YONG BUM) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

    • 介護/福祉
    • 医療/ヘルスケア
    2024.12.04
    • 介護/福祉
    • 医療/ヘルスケア
    主観的な咀嚼能力や咀嚼習慣が不良だと身体機能が低下する可能性があることが判明~高齢者の介護予防へ向けて~

    本研究成果のポイント 65-84歳の地域在住高齢者を対象としたコホート研究(あるグループを追跡して、健康状態の変化を調べる研究)の結果、主観的な咀嚼能力および咀嚼習慣は身体機能の低下と関連することが明らかとなりました。 咀嚼能力および咀嚼習慣を良好な状態に保つことは、高齢者の身体機能の維持に寄与する可能性があると考えられます。   概要 広島大学大学院医系科学研究科の竹下萌乃博士課程前期修了生、内藤真理子教授、愛知県歯科医師会の内堀典保会長らの研究グループは、愛知県の「歯科検診と事後フォローによる高齢者の自立支援と重症化予防への検証及び口腔機能の維持と栄養・運動を含めた総合プログラム検証事業」で収集されたデータから、65-84歳の男女において、身体機能と咀嚼能力および咀嚼習慣が関連することを明らかにしました。 本研究結果は、「BMC Oral Health」に令和6年10月24日付でオンライン掲載されました。 論文情報 論文タイトル:Association of physical function with masticatory ability and masticatory habits: a cohort study 著者:Moeno Takeshita1, Mariko Naito2,*, Rumi Nishimura2, Haruka Fukutani3, Minami Kondo1, Yuko Kurawaki2, Sachiko Yamada4 and Noriyasu Uchibori5 1R&D, Sunstar Inc., Osaka, Japan 2Department of Oral Epidemiology, Hiroshima University Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima, Japan 3Dentistry and Oral Surgery, Japan Community Health Care Organization (JCHO) Tokuyama Central Hospital, Yamaguchi, Japan 4Speech Clinic, Division of Specific Dentistry Hiroshima University Hospital, Hiroshima, Japan 5Aichi Dental Association, Aichi, Japan *Corresponding author   掲載雑誌:BMC Oral Health(Q1) DOI:https://doi.org/10.1186/s12903-024-05051-6   背景 加齢に伴い、疾患や障害は増加し、介護を必要とする人の数も増加する可能性が高くなることから、健康寿命を延伸するための取り組みがますます重要になっています。 身体機能が低いことはフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)や入院等のリスクが高くなると報告されているため、身体機能を適切に評価し、高齢者の健康寿命延伸に対する介入に役立てることは重要です。 先行研究において、客観的または主観的な評価により測定された咀嚼能力は身体機能と相関関係にあることが示されています。一方、「よく噛んで食事をする」といった咀嚼習慣と、身体機能との関連性を検討した研究はほとんどありません。 本研究グループでは、高齢者の身体機能の低下には、咀嚼能力だけではなく咀嚼習慣も関係している可能性があると仮説を立て、検証を行いました。   研究成果の内容 本研究は、厚生労働省の平成30年度老人保健健康増進等事業の採択事業の一つである「歯科検診と事後フォローによる高齢者の自立支援と重症化予防への検証及び口腔機能の維持と栄養・運動を含めた総合プログラム検証事業」のデータを分析しました。対象者は愛知県東浦町在住の65-84歳男女146人です。 身体機能の評価は、基本チェックリスト※1のうち、身体機能を示す5つの質問を用いました。咀嚼能力は機器または歯科医療従事者によって測定された客観データ(客観的咀嚼機能、客観的咬合力、現在歯数)および自記式アンケート※2によって得た主観データ(主観的咀嚼機能、主観的咬合状態)により評価しました。咀嚼習慣は、自記式アンケート※2から得られた回答によって評価しました。 対象者146人(男性77人、女性69人、年齢中央値73人)のうち、30人(20.5%)において1年間で身体機能が低下していました。 性別や年齢といった対象者の背景の差を調整後、身体機能と咀嚼能力および咀嚼習慣の関連を解析したところ、主観的に咬合状態が不良であること(オッズ比6.00 、95%信頼区間1.44–25.05)および咀嚼習慣が不良であること(同6.49 、2.45–17.22)は1年後の身体機能の低下に影響を及ぼしていました。   今後の展開 本研究の結果、地域に暮らす自立高齢者における咀嚼能力および咀嚼習慣は1年後の身体機能と関連していました。高齢者の身体機能を維持するためには、咀嚼能力だけでなく咀嚼習慣にも配慮した早期の介入が必要であると考えられます。今後は長期にわたる追跡と対象者数を増やした調査を実施すること、さらに質問票の信頼性の検証を行うことが必要です。   解説 ※1 基本チェックリスト 介護予防や将来介護が必要となる可能性のあるハイリスク高齢者の早期選定を目的として厚生労働省によって作成された。25の質問に対して「はい/いいえ」で回答する自記式質問票である。7つの領域の質問群から構成され、本研究ではその中の「身体機能」の領域を用いた。   ※2 自記式アンケ―ト ・主観的咀嚼機能(「半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか」に対してはい/いいえで回答)*基本チェックリストNo.13の質問を活用 ・主観的咬合状態(「自分の歯または入れ歯で左右の奥歯をしっかりとかみしめられますか」に対してはい/いいえで回答) ・咀嚼習慣(「ゆっくりよく噛んで食事をしますか」に対してはい/いいえで回答)   報道発表資料(327.67 KB) BMC Oral Health 研究者ガイドブック(内藤 真理子 教授)   【お問い合わせ先】 大学院医系科学研究科口腔保健疫学内藤真理子 Tel:082-257-5959FAX:082-257-5795 E-mail:naitom@hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 介護/福祉
    • 医療/ヘルスケア
    2025.06.10
    • 介護/福祉
    • 医療/ヘルスケア
    高齢者施設の看護職と介護職の連携が入居者の健康状態の変化を察知する鍵に ― 看護職へのインタビュー調査で具体的な看護の役割を解明 ―

    本研究成果のポイント 看護職と介護職による日常的な情報共有が、入居者の健康状態の変化をいち早く察知することにつながると明らかになりました。 看護職は「準備(入居者のいつもの状態や既往歴の把握)」、「評価(介護職からの報告や自身の観察による状態の確認)」、「判断(過去の事例や臨床経験に基づくリスク評価)」という3つの役割を果たして、早期発見につなげていました。 医療資源が限られる高齢者施設において、看護職は「異常な体温」「呼吸状態の異常」「意識レベルの低下」など10項目の兆候を、入居者の健康状態の変化を示す重要なサインとして重視していました。   概要 上智大学総合人間科学部看護学科の大河原啓文助教らの研究グループは、慶應義塾大学看護医療学部の深堀浩樹教授、真志田祐理子助教、日本赤十字看護大学さいたま看護学部の松本佐知子准教授、広島大学大学院医系科学研究科の那須佳津美講師、米国イリノイ大学シカゴ校看護学部のArdith Z. Doorenbos教授との共同研究で、日本の高齢者施設に勤務する看護職23名へのインタビュー調査を実施し、入居者の健康状態の変化を早期に察知するための看護の役割(看護実践)を明らかにしました。   本研究では、看護職が日々の観察や介護職との情報共有を通じて、入居者の健康状態の変化を「いつもと違う何か」として捉え、そこからどのように判断・対応しているのかをテキストデータの解析に用いる継続的比較分析といわれる手法で分析しました。その結果、看護職は「準備(入居者のいつもの状態や既往歴の把握)」、「評価(介護職からの報告や自身の観察による状態の確認)」、「判断(過去の事例や臨床経験に基づくリスク評価)」という実践を通じて、早期に異常を察知していることが明らかになりました。さらに、健康状態の兆候として看護職が重視している、「異常な体温」、「接触困難」、「呼吸状態の異常」、「意識レベルの低下」、「活動性の低下」、「表情や顔色の変化」、「怒りっぽさ」、「体重減少」など10の主要な症状・状態が設定されました。これらの知見は、今後の教育プログラム開発や、看護職と介護職の協働を促進する仕組みづくりに貢献することが期待されます。   背景 世界的な高齢化の進行に伴い、高齢者施設の入居者の健康状態の変化を早期に捉え、回避可能な救急搬送や入院を予防することが重要な課題となっています。高齢者施設の入居者の健康状態の変化は、日常的に入居者に接する介護職が最初に異常を察知することが多く、看護職がそれらの共有を受けて、迅速に判断し、適切に対応することが求められています。   研究成果の詳細 高齢者施設では、入居者の健康状態の変化を早期に察知し、救急搬送や入院を防ぐ看護職の役割が重要です。本研究は、高齢者施設の入居者の健康状態の変化を看護職がどのように察知しているのかを明らかにすることを目的に実施されました。研究チームは、全国14の高齢者施設に勤務する看護職23名にインタビュー調査を実施し、得られたデータをテキストデータの解析に用いる継続的比較分析といわれる手法で分析しました。分析の結果、入居者の健康状態の変化を早期に察知する看護職の役割の内容が明らかになり、「準備(Preparing)」「評価(Assessing)」「判断(Judging)」という3つの役割をしめすカテゴリーが明らかとなりました。これらのカテゴリーにはより細かい内容を示す8つのサブカテゴリーが含まれています。   「準備」では、看護職が日常的に入居者の「いつもの状態」を把握し、既往歴や過去の症状に関する情報を収集するほか、介護職に対して観察すべき視点をあらかじめ共有し、異変の早期発見を支援していました。また、多職種間の定期的な情報共有も重要な実践とされていました。   「評価」では、介護職が日常的なケアの中で「何かいつもと違う」と感じた情報をもとに、看護職が直接入居者の状態を観察し、曖昧な違和感でも変化を見逃さないように、必要に応じて速やかに対応していました。   「判断」では、過去の症例や自身の臨床経験をもとに、状態悪化のリスクを予測し、医療的な介入の必要性を迅速に判断していました。このカテゴリーには、現場経験を通じて培われた感覚的な臨床推論(経験に基づいた直感的な判断力)が多分に含まれており、個々の看護職の経験知の重要性が示唆されました。 さらに、入居者の健康状態の変化として看護職が捉えている兆候についても、10の主要な症状・状態が特定されました。これには、「異常な体温」「摂食困難」「呼吸状態の異常」「意識レベルの低下」「活動性の低下」「表情や顔色の変化」「怒りっぽさ」「体重減少」などが含まれ、これらは介護職からの報告や看護職自身の観察によって把握されていました。   これらの知見から、看護職と介護職の連携が、入居者のわずかな変化を見逃さず、適切な判断につながり状態悪化の予防や早期対応につながっていることが示されました。今後、研究チームでは、本研究で得られた実践知をもとに、看護職のアセスメント力(*1)を高めるための教育プログラムの開発や、現場における実践的なツールの設計や実装に取り組んでいく予定です。また、これらの知見を高齢者施設の管理者や、看護職、介護職が参考にすることで、早期発見と適切な対応によって、回避可能な救急搬送や入院を防ぐことにつながり、入居者の生活の質の向上にも寄与することが考えられます。   用語解説 *1:アセスメント力 看護職が入居者の状態を観察・分析し、健康上の問題やそのリスクなどを的確に判断する力。バイタルサイン、表情、行動などの多様な情報から状態変化や異常の兆候を早期に見極めるために必要な、看護職の専門的能力の一つ。   論文情報 掲載雑誌名 International Journal of Older People Nursing 論文名 Nursing Practice for Early Detection of Long-Term Care Resident Deterioration: A Qualitative Study オンライン版URL https://doi.org/10.1111/opn.70014 論文公開日 2025年2月9日 著者 Hirofumi Ogawara*, Hiroki Fukahori, Yuriko Mashida, Sachiko Matsumoto, Katsumi Nasu, Ardith Z. Doorenbos *責任著者   報道発表資料(1.21 MB) 掲載誌:International Journal of Older People Nursing 研究者ガイドブック(那須 佳津美 講師)   【お問い合わせ先】 広島大学大学院医系科学研究科講師那須 佳津美 E-mail:nasuk*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 資源
    • 海洋
    2024.08.06
    • 資源
    • 海洋
    海洋マントルの有機炭素検出 ―南太平洋アイツタキ島マントル捕獲岩からのアプローチ―

    本研究成果のポイント 南太平洋アイツタキ島のマントル捕獲岩から、深部海洋マントルには表層に存在した有機炭素が存在することを明らかにしました。 マントル中の炭素系物質であるダイヤモンドは、海洋マントルの炭素解析において人的混入の可能性が指摘されていましたが、同じく炭素系物質である炭酸塩鉱物をマイクロスケールで解析することでその問題を克服しました。 本研究成果により、海洋深部マントルまで達する表層からの炭素循環実態解明への貢献が期待されます。 炭酸塩鉱物のマイクロスケール解析   概要 東京大学大気海洋研究所の秋澤紀克助教を中心として、京都大学大学院人間・環境学研究科、広島大学大学院先進理工系科学研究科、東京工業大学理学院、千葉工業大学次世代海洋資源研究センターのメンバーで構成される共同研究チームは、南太平洋アイツタキ島のマントル捕獲岩(注1)を用いて、海洋域のマントル(注2)が有機炭素(注3)を含むことを明らかにしました。本研究では、南太平洋・クック諸島の島であるアイツタキ島で採取されたマントル捕獲岩(図1)に含まれるマントル由来の炭素系物質である炭酸塩鉱物(注4)をマイクロスケールで解析し、その起源は表層から運ばれた有機炭素であることを解明することができました。先行研究では、海洋域のマントル由来ダイヤモンドが、炭素解析において人的に混入した可能性が指摘されており、海洋域のマントルの炭素解析結果が問題視されていました。本研究成果から、海洋域では深部マントルまで達する表層からの炭素循環経路があると推察でき、地球規模での炭素循環実態解明への貢献が期待されます。 図1:アイツタキ島産のマントル捕獲岩の切断断面と鉱物分布解釈図 (a) 岩石の切断面イメージ。 (b) 岩石を構成する鉱物分布解釈図。左下の水色は、マントル捕獲岩の周りの玄武岩部分。マントル捕獲岩は、カンラン石(注5)-直方輝石(注6)-単斜輝石(注7)-スピネル(注8)-ザクロ石(注9)分解物(細粒鉱物集合体)から成ります。   発表内容 現在温暖化が進んでいる地球において、全球的な炭素循環の実態解明は急務となっています。特に、表層を起源とする炭素がマントル中に存在するのか明らかにすることは、マントルを炭素の貯蔵庫と捉える上で重要です。このたび、本共同研究チームは、クック諸島・アイツタキ島に産するマントル捕獲岩に見られる特異な細粒鉱物集合体(図1)が、高圧(〜70 km以深)由来のザクロ石が分解してできたものであることに着想を得て、そのザクロ石分解物中に“保護”されていたマイクロスケールの炭酸塩鉱物脈の炭素と酸素の同位体(注10)分析を実施しました(図2)。詳細な組織観察結果から、この炭酸塩鉱物脈はマントル中で形成されたと考えられるため、マントル中に存在する炭素の起源を明らかにすることができると期待できます。 図2:炭酸塩鉱物のマイクロスケール解析 (a) 炭酸塩鉱物脈の写真。ザクロ石分解物である細粒集合体中のスピネルに発達する脈が炭酸塩鉱物から成ります。 (b) 炭酸塩鉱物脈の採取図。細い針で炭酸塩脈を掘り出し、それを集めて炭素・酸素同位体分析を実施しました。 本研究で使用した炭酸塩鉱物と同様に炭素から成る物質であるダイヤモンドは、マイクロスケールでサイズがとても小さいながらも海洋域のマントル中から報告されていました。しかし、その海洋ダイヤモンドは人的混入物である可能性が指摘されており、その解析結果が問題視されていました。本研究で新たに発見した上記の“保護”された炭酸塩鉱物脈は、マントルのカケラであるマントル捕獲岩が地球深部約70 kmでマグマにより捕獲された後に表層に向かって上昇する途中、マグマがマントル捕獲岩中に侵入する際に形成されたものであり、そのマグマの初生的な炭素記録を保持しています。本研究では、そのマイクロスケールの炭酸塩鉱物脈を採取し、京都大学の極微量安定同位体分析装置(MICAL3c)を用いて炭素と酸素同位体分析を実施しました(図2)。その結果、炭酸塩鉱物脈を作ったマグマの初生的な組成は一般的なマントルの組成と異なり、有機物由来の海洋炭酸塩組成側に外れていることがわかりました(図3)。そのため、マントル中には表層からの有機炭素を起源とする炭素が存在し、マグマ活動を通してそれが表層に放出されることを明らかにすることができました。以上の結果から、海洋域では深部マントルまで達する表層からの炭素循環経路があると推察でき、全球規模での炭素循環実態解明への貢献が期待されます。 図3:炭素・酸素同位体組成図 アイツタキ島のマントル捕獲岩中の炭酸塩鉱物の組成を赤丸で示します。他に、マントル(緑)、大気CO2(灰色)、太平洋堆積物(水色)の組成範囲、有機物由来の海洋炭酸塩の組成プロットを示しています。本研究の炭酸塩鉱物組成は典型的なマントル組成から外れており、有機物由来の海洋炭酸塩の組成範囲に入ります。これは、炭酸塩鉱物の炭素起源が表層由来であったことを示唆します。   論文情報 雑誌名:Marine Geology 題名:Stable carbon and oxygen isotope signatures of mantle-derived calcite in Aitutaki lherzolite xenolith: Implications for organic carbon cycle in the oceanic mantle 著者名:Norikatsu Akizawa*, Toyoho Ishimura, Masako Yoshikawa, Tetsu Kogiso, Akira Ishikawa, Kazuhide Mimura DOI:10.1016/j.margeo.2024.107363 URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0025322724001476   発表者・研究者等情報 東京大学大気海洋研究所 秋澤紀克助教 兼:東京学芸大学非常勤講師   京都大学大学院人間・環境学研究科 石村豊穂教授 小木曽哲教授   広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム 芳川雅子特任教授 兼:広島大学プレート収束域の物質科学研究拠点特任教授   東京工業大学理学院地球惑星科学系 石川晃准教授   千葉工業大学次世代海洋資源研究センター 見邨和英主任研究員 現:産業技術総合研究所地質調査総合センター研究員   研究助成 本研究は、科研費「基盤研究(B)(課題番号:23H01267)」、「基盤研究(B)(課題番号:23H01269)」、「基盤研究(B)(課題番号:24K00733)」、「基盤研究(C)(課題番号:23K03544)」、「基盤研究(C)(課題番号:24K07189)」、「新学術領域研究(研究領域提案型)(課題番号:JP15H05831)」の支援により実施されました。   用語解説 (注1)マントル捕獲岩 地球深部のマントル(注2)は、カケラとしてマグマに取り込まれて地球表面に運ばれます。それを、マントル捕獲岩と呼びます。   (注2)マントル 我々が住んでいる地球表面の地殻の下には、マントルが存在します。マントルの下には金属で形成される核が存在しており、地球は成層構造をしています。   (注3)有機炭素 有機物を構成する炭素です。   (注4)炭酸塩鉱物 1個の炭素原子の周りに3個の酸素が配置した炭酸イオン CO32- が結晶構造を形作る鉱物です。代表的なものとしては方解石(CaCO3)であり、本研究ではこの方解石を解析に用いました。   (注5)カンラン石 マントル物質を構成する鉱物の中で最も多く、主にマグネシウムや鉄、ケイ素を含む緑色のケイ酸塩鉱物です。ペリドットと呼ばれる宝石として親しまれています。   (注6)直方輝石 主にマグネシウムや鉄、ケイ素を含むケイ酸塩鉱物です。マントル物質によく含まれます。   (注7)単斜輝石 カルシウムを多く含み、他にマグネシウムや鉄、ケイ素を含むケイ酸塩鉱物です。マントル物質によく含まれます。   (注8)スピネル マントル物質の中で組成変化に伴い赤色から黒色を示し、主にアルミニウムやクロム、鉄、マグネシウムを含む酸化鉱物です。   (注9)ザクロ石 マントル物質の中で赤色を示し、アルミニウムやカルシウム、マグネシウム、鉄、ケイ素などを主に含む鉱物です。ガーネットと呼ばれる宝石として親しまれています。   (注10)同位体 原子番号が同じで、質量数が異なる元素(原子核の陽子数が同じで、中性子数が異なる元素)を同位体と言います。   参考資料 学術誌:Marine Geology 報道発表資料(593.54 KB) 研究者ガイドブック(芳川 雅子 特任教授)   【お問い合わせ先】 (研究内容については発表者にお問合せください) 東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系海洋底科学部門 助教秋澤紀克(あきざわのりかつ) Tel:04-7136-6142 E-mail:akizawa*g.ecc.u-tokyo.ac.jp   東京大学大気海洋研究所広報戦略室 E-mail:kouhou*aori.u-tokyo.ac.jp   京都大学渉外・産官学連携部広報課国際広報室 Tel:075-753-5729FAX:075-753-2094 E-mail:comms*mail2.adm.kyoto-u.ac.jp   広島大学広報室 Tel:082-424-3749FAX:082-424-6040 E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   東京工業大学総務部広報課 Tel:03-5734-2975FAX:03-5734-3661 E-mail:media*jim.titech.ac.jp   千葉工業大学入試広報部 Tel:047-478-0222 E-mail:cit*it-chiba.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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    2025.10.08
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    地球史上最大の火山活動が海洋プレートを作り変えたことが判明 ――プレート形成過程の包括的理解に道拓く

    岡山理科大学の志藤あずさ講師、東京科学大学の石川晃准教授、広島大学の芳川雅子特任教授らの研究グループは、地震波の解析から、世界最大の海台であるオントンジャワ海台のプレートが、海台を作った時の大規模火山活動で大きく作り変えられたことを明らかにしました。この研究成果は、「Geophysical Research Letters」に掲載されました。   本研究成果のポイント オントンジャワ海台のプレートは層状構造に貫入岩脈群が重なる複合構造をしている オントンジャワ海台のプレートの低速度異常は、熱組成プルーム由来のマグマがプレートを化学的に変化させたことを示唆 海洋プレートが大規模火山活動によって著しい物理化学的改変を経験したことを示す本研究結果は、プレート形成過程の包括的理解につながる 図1. 本研究でわかったオントンジャワ海台のプレートの模式図   背景 オントンジャワ海台は太平洋にある世界最大の海台で、1億1千万年〜1億2千万年前の海底火山活動によってできました。地球史上最大といわれる火山活動は、当時の地球環境を激変させ生物の大量絶滅を引き起こしたと考えられています。この大規模な火山活動の原因は、マントル深部からの上昇流である熱組成プルーム(注1)であることが最近の研究により示されましたが、深部から上昇してくるマグマが、既存の海洋プレートへ与える影響は不明でした。   研究内容と成果 本研究では、オントンジャワ海台周辺の海底地震計や海洋島に設置された地震計によって観測されたPo波So波という高周波の地震波を解析に使用しました。Po波So波は、海洋プレートを伝わる波で、その伝わり方は海洋プレートの内部構造に敏感です。通常Po波So波は、海洋プレート内部にある層状構造によってP波S波が多重散乱することで励起され、海洋プレートの中を数千 kmも伝わります。ところが、オントンジャワ海台周辺で観測されたPo波So波は、So波だけが伝わりにくいという際立った特徴を持っていました。この特徴を再現するようなプレートの内部構造を、地震波形モデリングによって推定した結果、オントンジャワ海台のプレートは層状構造(横縞)に貫入岩脈群(縦縞)が重なった複合構造をしていることがわかりました(図1)。   さらに、オントンジャワ海台のプレートを伝わるPo波So波の速度は通常の海洋プレートよりも顕著に遅いことがわかりました。本研究ではこれらの観測事実を説明するために、オントンジャワ海台のプレート内部を、熱組成プルームからのマグマが貫入岩脈群を形成しながら上昇し、さらにマグマがプレートを化学的に変化(=最肥沃化)(注2)させたというモデルを提案しました。本研究によって示された海洋プレートの物理化学的な改変のモデルは、プレート形成過程の包括的理解につながることが期待されます。本研究成果は「Geophysical Research Letters」に2025年9月30日に掲載されました。 図2.オントンジャワ海台の位置  研究助成 本研究はJSPS科研費(23K03555, 15H03720)の助成を受けました。   論文情報 掲載誌:Geophysical Research Letters タイトル:Dike Swarms in the Oceanic Lithosphere Beneath the Ontong Java Plateau DOI: 10.1029/2025GL115219 著者:Azusa Shito*, Daisuke Suetsugu, Akira Ishikawa, Masako Yoshikawa, Takehi Isse, Hajime Shiobara, Hiroko Sugioka, Aki Ito, Yasushi Ishihara, Satoru Tanaka, Masayuki Obayashi, Takashi Tonegawa, Junko Yoshimitsu   語句説明 (注1)熱組成プルーム:マントル深部からの上昇流(プルーム)のうち、プルームを構成する物質が通常のマントルと化学組成が異なり古い海洋地殻由来物質などを含んでいるもの。 (注2)再肥沃化:マントルを構成するかんらん岩は、部分溶融により発生したメルトが抜けることによりメルト成分に枯渇したかんらん岩に変化する。これとは逆にメルト成分が再充填されるプロセスを再肥沃化と言う。   報道発表資料(744.1 KB) 掲載雑誌:Geophysical Research Letters 研究者ガイドブック(芳川 雅子 特任教授)   【お問い合わせ先】 <研究内容に関する問い合わせ先> 岡山理科大学生物地球学部 講師志藤 あずさ Email: azusas*ous.ac.jp   東京科学大学理学院地球惑星科学系 准教授石川 晃 Email: ishikawa.a.9b1d*m.isct.ac.jp   広島大学大学院先進理工系科学研究科 地球惑星システム学プログラム 特任教授芳川 雅子 Email: masako*hiroshima-u.ac.jp   <報道に関する問い合わせ先> 岡山理科大学企画部企画広報課 TEL:086-256-8508 Email: kikaku-koho*ous.ac.jp   東京科学大学 総務企画部広報課 TEL:03-5734-2975 Email: media*adm.isct.ac.jp   広島大学 広報室 TEL: 082-424-3749 Email: koho*office.hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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