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    • 環境エネルギー
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    2025.11.11
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    • 海洋
    パンダ模様のヨコエビ、2種目を新たに発見!見た目はそっくりでも系統は別 ~日本沿岸の生物多様性理解に期待~

    本研究成果のポイント 和歌山県・大阪府沿岸の潮間帯から、パンダ模様の新種のヨコエビ「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」を発見。 同じくパンダ模様を持つすでに発見されているパンダメリタヨコエビとは系統的に近縁ではなく、模様の類似は「他人の空似」であることを確認。 日本沿岸の生物多様性の高さを示す成果であり、未調査地域の分類学的研究が新種発見や種の保全に向けた重要な基礎データになる可能性を示唆。   概要 和歌山県と大阪府の沿岸の潮間帯から新種のヨコエビ「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」が発見されました。本種は体長5~10 mmで、砂地の転がる石の下に生息しています。「ヨコエビ」という名前は、体の左右どちらかの面を下にして、横になって素早く移動する姿に由来します。 この種は以前よりその存在が知られていましたが、分類が難しく、種が明らかではありませんでした。今回、詳細な形態観察と遺伝子解析を行なった結果、メリタヨコエビ属の新種であることが明らかになりました。 ヨリパンダメリタヨコエビは白黒のパンダ模様という特徴的な色彩をもちますが、これは私たちが2024年に新種として公表したパンダメリタヨコエビによく似ています。これら2種がパンダ模様をもつ理由についてはよく分かっていませんが、捕食者から逃れるためのカモフラージュの役割を果たしていると考えられます。興味深いことに、遺伝子解析の結果、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビは系統的に近縁ではないことが明らかになりました。このことは、両種にみられる特徴的なパンダ模様は、実は他人の空似であることを示します。 この新種の発見により、日本の沿岸域におけるメリタヨコエビ属の種多様性が、従来の研究で予想されていた以上に高いことが明らかになりました。 今後、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビの生態や行動を詳しく調べることで、パンダ模様をもつ理由を明らかにできることが期待されます。 ヨリパンダメリタヨコエビ Melita pandina.内山りゅう氏撮影     背景 日本沿岸は、世界でもヨコエビ類の種多様性が高いことで知られています。 メリタヨコエビ属は世界で65種が知られる大きな分類群ですが、日本近海における分類学的研究は十分には行われていませんでした。     研究成果の内容 今回、和歌山県と大阪府の沿岸の潮間帯でフィールド調査を行ったところ、白黒のパンダ模様のメリタヨコエビ属の未記載種が見つかりました。 この特徴的な色彩は、私たちの研究グループが2024年に新種として公表した同属のパンダメリタヨコエビに次ぐ2種目です。 詳細な形態比較の結果、新種のヨコエビは白黒のカラーパターンや脚の形態などの特徴により、同属の全ての既知種と区別されることが分かりました。しかし、特徴的なパンダ柄が既知種のパンダメリタヨコエビと被るため、新種の命名は難航しました。そこで、パンダ好きとして知られる文筆家でラジオパーソナリティーの藤岡みなみさんに和名の命名を依頼。パンダメリタヨコエビよりも「もっと」パンダっぽい色彩をしていることから「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」と名付けていただきました。 ※和名:生物の日本語での名前学名:世界共通の生物の名前 興味深いことに、遺伝子解析の結果、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビは系統的に近縁ではないことが明らかになりました。このことは、両種にみられる特徴的なパンダ模様は、実は他人の空似である可能性が高いことを示します。パンダ柄は、それぞれの種で独立に進化した「収れん進化」(系統的に離れた生物が、似た環境や生活様式に適応する中で、似た形質や機能を持つようになる進化)の結果だと考えられます。    今後の展開 ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビの生態や行動を詳しく調べることで、パンダ模様をもつ理由を明らかにできることが期待されます。 未調査地域におけるヨコエビ類の分類学的研究を進めることで、さらなる新種の発見が予想されます。このような分類学的研究を続けることで、日本列島の沿岸環境における生物多様性の解明が期待されるとともに、種の保全に向けた重要な基礎データとなることが期待されます。   新種の命名者、藤岡みなみさんのコメント 「すでにパンダのようなヨコエビがいるのに、もっとパンダらしい新種が見つかった」と伺って、とても驚きました。大変恐れ多いことながら、親しみを込めてちょっぴり韻を踏んだ名前を提案させていただきました。ヨリパンダメリタヨコエビ。ぜひ一度、声に出してみてください。   参考資料 本研究成果は、動物学に関する幅広い研究成果を掲載している国際学術雑誌Zoological Science(ズーロジカル サイエンス)に発表されます。 タイトル:Black-and-white disruptive coloration may be convergent: a new species of Melita (Amphipoda: Melitidae) from Japan 著者:Ko Tomikawa, Shigeyuki Yamato and Hiroyuki Ariyama 巻・ページ:42巻 DOI: https://doi.org/10.2108/zs250074   掲載雑誌:Zoological Science 研究者ガイドブック(富川 光 教授)   【お問い合わせ先】 大学院人間社会科学研究科教師教育デザイン学プログラム 富川光(とみかわこう)教授 Tel:082-424-7093 E-mail:tomikawa@hiroshima-u.ac.jp

    • 宇宙
    2025.11.18
    • 宇宙
    132億年前の銀河に超高温の星間塵 ~天の川の5倍の熱さ 猛烈な星形成で加熱~

    本研究成果のポイント 1,132億年前(宇宙誕生から6億年)の遠方銀河「Y1」は、観測史上最遠方の星間塵の検出例です。アルマ望遠鏡による観測から、塵の温度が絶対温度90ケルビン(摂氏マイナス180度)と測定され、他の遠方銀河より2〜3倍、天の川銀河より5倍も高温であることが判明しました。 2,銀河Y1では、天の川銀河の約180倍もの速さで星が形成されており、このような急速な星形成の結果、塵の温度が異常に加熱されている可能性が示されました。 3,この発見は、銀河の元素進化や星間塵の蓄積過程という長年の謎を解く手がかりとなります。     概要 宇宙誕生からわずか6億年後に存在した銀河「Y1」は、これまでに星間塵※1の光が検出された銀河の中で最遠方のものです。 今回、早稲田大学理工学術院の井上昭雄(いのうえあきお)教授、名古屋大学大学院理学研究科の田村陽一(たむらよういち)教授、筑波大学大学院数理物質科学研究科の橋本拓也(はしもとたくや)助教、広島大学宇宙科学センターの稲見華恵 (いなみはなえ) 准教授を含む国際研究チームは、南米チリのアルマ望遠鏡※2を用いて、Y1の星間塵の温度が絶対温度90ケルビン(摂氏マイナス180度)にも達することを明らかにしました。この温度は、これまでに測定された遠方銀河の星間塵の温度の2倍から3倍も高温であり、天の川銀河の星間塵の温度に比べると5倍も高温です。Y1は天の川銀河の約180倍という猛烈なペースで星を生み出しており、急速な銀河成長の最中にあると考えられます。今回の研究は、初期宇宙の銀河の中で元素や星間塵がどのように蓄積していくのかを理解する重要な手がかりとなります。 本研究成果は、国際学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に2025年11月12日に公開されました。 論文名:A warm ultraluminous infrared galaxy just 600 million years after the big bang 最遠方の星間塵が検出された銀河Y1(丸で囲まれた赤い色の天体)。背景はジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で取得された画像(赤外線の波長を擬似的にカラーで表現) Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, J. Diego (Instituto de Física de Cantabria, Spain), J. D’Silva (U. Western Australia), A. Koekemoer (STScI), J. Summers & R. Windhorst (ASU), and H. Yan (U. Missouri)   キーワード 初期宇宙、最遠方銀河、銀河形成、星形成、星間塵、元素進化、アルマ望遠鏡、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡   (1)これまでの研究で分かっていたこと 宇宙が誕生して間もない時代には、星や銀河が現在とは異なる条件のもとで急速に形成されたと考えられています。しかし、その詳しい仕組みはまだ明らかではありません。これまでの観測から、遠方(=初期宇宙)の銀河にも塵(ちり)が存在することがわかっており、若い銀河にも関わらず大量の塵を含む例が報告されていました。元素や塵がある程度の量まで蓄積するには時間がかかるとする説もあり、「多すぎる塵の問題」として長年知られていました。   (2)新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと 広島大学を含む国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、約133億光年彼方にある銀河「Y1」(赤方偏移8.3)を観測しました。Y1は宇宙誕生からわずか6億年後に存在した非常に若い銀河であり、また、これまでに星間塵の光が検出された最遠方の銀河です。※3従来の電波望遠鏡と比べ、アルマ望遠鏡の大きな特色の一つである、短波長の電波観測機能を活用して、波長0.44ミリメートルの電波を観測したところ、Y1はこの波長で明るく輝いていることを発見しました。 その輝きは、銀河内の塵粒子が星の光で異常に加熱されていることを示しています。解析の結果、塵の温度は絶対温度約90ケルビン(摂氏マイナス180度)であることが判明しました。これは他の遠方銀河に比べて、2倍から3倍も高い温度です。また、天の川銀河の星間塵の温度と比べると約5倍もの極めて高い温度でした。 Y1では1年間に太陽180個分もの質量の星が生み出されており、私たちの天の川銀河(約1太陽質量/年)の180倍に相当します。このような激しい星形成は一時的な現象と考えられ、初期宇宙で銀河が急速に成長する仕組みを理解する上で重要な観測例です。まさに、Y1が「超高温の星工場」であることが明らかになりました。 さらに、この極めて高温の塵の存在は、他の若い銀河に見られる「多すぎる塵の問題」を説明する可能性を示唆します。実は、少量で高温の塵と、大量で低温の塵とは、波長1ミリメートルを超えるような電波では同じ程度の明るさで輝くため見分けがつきません。従来の観測はこのような長い波長の観測に限られていたため、それによって推定された塵の量は過大評価されてきた可能性があると分かりました。   (3)研究の波及効果や社会的影響 今回の成果は、初期宇宙における星形成と銀河進化の理解を大きく前進させるものです。「なぜ若い銀河に塵が多いのか」という長年の謎を解明する手がかりを与えるだけでなく、宇宙初期における元素や星間塵の蓄積過程の理解にもつながります。また、今回実施したような波長の短い電波の観測で正確に塵の温度を測定し、塵の総量を見直すことが今後重要になります。   (4)課題、今後の展望 今後さらに多くの遠方銀河を観測し、Y1のような超高温の塵がどれほど一般的に存在するのかを明らかにする予定です。また、アルマ望遠鏡の高解像度観測によって、銀河内部で星や塵がどのように分布しているのかを詳しく調べる計画です。これにより、初期宇宙で銀河がどのように成長し、多様な形へ進化していったのかが解明できると期待しています。   (5)研究者のコメント Y1の星間塵の温度が絶対温度90ケルビンという、これまでに見たことがない高い温度であることに驚きました。初期宇宙の銀河ではかなり特別なことが起こっているようです。これからもアルマ望遠鏡で宇宙の塵の観測を続け、銀河の誕生と成長の物語を解き明かしていきたいです。 (6)用語解説 ※1星間塵 炭素やケイ酸塩の固体微粒子。典型的なサイズは0.1マイクロメートルと推定されています。地球のような惑星の材料となります。   ※2アルマ望遠鏡 日本、米国、欧州の三者協力により、南米チリで建設、運用されている世界最大の電波望遠鏡。   ※3銀河Y1の星間塵の輝きは2019年に報告されました。現時点で正確に距離が測定された銀河のうち、星間塵の光が検出された最遠方の銀河です。発見当時のプレスリリースはこちらです。 https://alma-telescope.jp/news/press/macs0416-201903.html   (7)論文情報 雑誌名:Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 論文名:A warm ultraluminous infrared galaxy just 600 million years after the big bang 執筆者名(所属機関名):T. J. L. C. Bakx 1*、Laura Sommovigo2、Yoichi Tamura3、Renske Smit4、Andrea Ferrara5、Hiddo Algera6、Susanne Aalto1、Duncan Bossion7、Stefano Carniani5、Clarke Esmerian1、Masato Hagimoto3、Takuya Hashimoto8,9、Bunyo Hatsukade10,11,12、Edo Ibar13,14、Hanae Inami15、Akio K. Inoue16,17、Kirsten Knudsen1、Nicolas Laporte18、Ken Mawatari17,19、Juan Molina13,14、Gunnar Nyman20、Takashi Okamoto21、Andrea Pallottini5,22、W. M. C. Sameera1、Hideki Umehata3、Wouter Vlemmings1 and Naoki Yoshida12   *:責任著者 1:Chalmers University of Technology, Sweden 2:Flatiron Institute, USA 3:Nagoya University, Japan 4:Liverpool John Moores University, UK 5:Scuola Normale Superiore, Italy 6:Institute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica, Taiwan 7:Institute of Physics of Rennes, France 8,9:University of Tsukuba, Japan 10:National Astronomical Observatory of Japan, Japan 11:The Graduate University for Advanced Studies, SOKENDAI ,Japan 12:University of Tokyo, Japan 13:Universidad de Valpara´ıso, Chile 14:Millenium Nucleus for Galaxies (MINGAL),Chile 15:Hiroshima University, Japan 16,17,19:Waseda University, Japan 18:Aix Marseille Universit´e, Japan 20:University of Gothen- burg, Sweden 21:Hokkaido University, Japan 22:Universit´a di Pisa, Italy 掲載日時:2025年11月12日 掲載URL:https://academic.oup.com/mnras/article/544/2/1502/8318242 DOI:https://doi.org/10.1093/mnras/staf1714   掲載誌:Monthly Notices of the Royal Astronomical Society     【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 早稲田大学理工学術院教授井上昭雄 Tel:03-5286-3090E-mail:akinoue*aoni.waseda.jp   名古屋大学大学院理学研究科教授田村陽一 Tel:052-789-2846E-mail:ytamura*nagoya-u.jp   筑波大学大学院数理物質科学研究科 助教橋本拓也 Tel:029-853-4319E-mail:hashimoto.takuya.ga*u.tsukuba.ac.jp   広島大学宇宙科学センター 准教授稲見華恵 Tel:082-424-5765E-mail:hanae*hiroshima-u.ac.jp     <広報に関すること> 早稲田大学 広報室 Tel:03-3202-5454E-mail:koho*list.waseda.jp   名古屋大学 総務部広報課 Tel:052-558-9735E-mail:nu_research*t.mail.nagoya-u.ac.jp   筑波大学広報局 Tel:029-853-2040E-mail:kohositu*un.tsukuba.ac.jp   広島大学広報室 Tel:082-424-3749E-mail:koho*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 宇宙
    2025.11.14
    • 宇宙
    ブラックホールに落ち込むプラズマの構造が明らかに! ― NASAの気球に世界最大の日本製の望遠鏡を搭載―

    本研究成果のポイント 1. ブラックホールの極限環境を、X線(硬X線注1)観測では新しい「偏光注2」という手法から解き明かしました。 2. 気球搭載型望遠鏡 XL-Calibur(エックスエル-カリバー)注3 により、地球からおよそ7000光年離れたブラックホール「はくちょう座 X-1 (Cygnus X-1)」注4からの15-60 keV(1.5-6万電子ボルト)の硬X線を観測しました。 (YouTube動画「NASA XL-CALIBUR Launch」で検察 NASA XL-CALIBUR Launch) 3. 日本製の世界最大のX線集光ミラー注5などにより、従来よりも20倍も高い感度で観測データを取得することに成功しました。 4. これまでブラックホール周辺にコロナ(高温のプラズマ領域)が存在することが知られていましたが、その形状を決定できる観測結果がありませんでした。今回のXL-Caliburの観測結果は、直径125 kmのブラックホールの中心から2000 km以内で明るく輝くコロナが、ブラックホールから数十億kmにわたって噴出する巨大なプラズマジェットと垂直方向に整列している(伴星から奪った物質が落ち込む円盤に沿って平べったい構造をしている)ことを示します。 5. 本研究成果により、ブラックホール近傍のコロナプラズマの構造を制限することができ、ブラックホール近傍の物理過程の理解に重要な手がかりを提供しました。   概要 広島大学大学院先進理工系科学研究科の高橋弘充准教授、大阪大学大学院理学研究科の松本浩典教授、JAXA宇宙科学研究所の前田良知助教、愛媛大学大学院理工学研究科の粟木久光教授らを含む気球搭載型望遠鏡 XL-Calibur国際研究チームは、ブラックホールに物質が落ち込む前にどのように渦を巻き、莫大なエネルギーを放出するのか、その環境をより深く理解するために、硬X線放射の「偏光」観測を実施しました。 X線偏光観測ミッションXL-Caliburは、2024年7月にスウェーデンからカナダへ向けた約6日間の長距離気球フライト中に、ブラックホールX線連星である「はくちょう座 X-1」を観測しました。XL-Caliburの観測により、「はくちょう座 X-1」から放射される15-60 keVのX線について、偏光情報(偏光度と偏光角)をこれまでよりも約20倍も高い感度で観測することに成功し、最も精密な制約を得ることができました。XL-Caliburの結果を、直径125 kmのブラックホールの中心から2000 km以内で明るく輝くプラズマ領域(コロナ)が、ブラックホールから数十億kmにわたって噴出する巨大なプラズマジェットと垂直方向に整列していることを示しています。この結果から、コロナは、伴星から奪った物質が渦状に落ち込む円盤に沿って、平べったい構造をしていることが明らかになりました。 今後は、改良した気球実験や人工衛星によるX線の偏光・測光・分光の観測結果、理論研究から、様々な質量のブラックホール(太陽質量の数倍から100億倍もの超巨大サイズ)において、ブラックホールに吸い込まれつつある物質が重力の影響をどのように受けているかが明らかにされ、中心に存在するブラックホールの特性(自転速度)やブラックホールが及ぼす相対論的な効果(時空のゆがみ)などの理解が進むと期待されます。 本ミッションでは、日本の研究者が装置の中核となるX線集光ミラーの製作・較正を担当しました。日本の技術力が国際観測の鍵を担った形となっています。   論文情報 【掲載誌】The Astrophysical Journal 【論文タイトル】XL-Calibur Polarimetry of Cyg X-1 Further Constrains the Origin of its Hard-state X-ray Emission 【著者】Hisamitsu Awaki, Matthew G. Baring, Richard Bose, Jacob Casey, Sohee Chun, Adrika Dasgupta, Pavel Galchenko, Ephraim Gau*, Kazuho Goya, Tomohiro Hakamata, Takayuki Hayashi, Scott Heatwole, Kun Hu*, Daiki Ishi, Manabu Ishida, Fabian Kislat, Mózsi Kiss*, Kassi Klepper, Henric Krawczynski, Haruki Kuramoto, Lindsey Lisalda, Yoshitomo Maeda, Hironori Matsumoto, Shravan Vengalil Menon, Aiko Miyamoto, Asca Miyamoto, Kaito Murakami, Takashi Okajima, Mark Pearce, Brian Rauch, Nicole Rodriguez Cavero, Kentaro Shirahama, Sean Spooner*, Hiromitsu Takahashi, Keisuke Tamura, Yuusuke Uchida, Kasun Wimalasena, Masato Yokota, Marina Yoshimoto *責任著者   【著者所属】 a 広島大学 大学院先進理工系科学研究科(高橋弘充, 呉屋和保, 横田雅人) b 大阪大学 大学院理学研究科(松本浩典, 袴田知宏, 倉本春希, 宮本愛子, 村上海都, 白濱健太郎) c JAXA宇宙科学研究所(石田学, 前田良知, 内田悠介, 伊師大貴, 宮本明日香) d 愛媛大学 大学院理工学研究科(粟木久光, 善本真梨那) 【DOI】https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae0f1d 【論文公開日】2025年11月14日   背景 ブラックホールに降着し(降り積もり)吸い込まれる物質は、強い重力によって非常に高温に熱せられ(約1000万度)、X線で明るく輝いています。そのため、X線観測によって、ブラックホール近傍での降着物質の物理状態を明らかにすることができれば、中心に存在するブラックホール自身の物理量や、強い重力場における一般・特殊相対論的な効果も観測することができると期待されています。しかし、これまでの時間変動(測光)やエネルギー(分光)の観測だけでは、降着物質がどのような状態にあるのか長年にわたって議論が平行線をたどっていました(遠方にあるため画像では「点」にしか見えず、構造は調べられていません)。 偏光観測は、画像、時間変動、エネルギーの測定とは異なり、高エネルギー粒子が放射する光子の偏光(電場の振動方向が偏っている)情報から、物質から直接届いたのか、どこかで反射・散乱されてきたのかという幾何構造を推定することができます。電波や可視光では一般的な手法ですが、X線やガンマ線の帯域では技術的な困難から、これまでに硬X線の帯域で偏光情報を取得できたのは、我々が2016年に実施したPoGO+気球実験だけでした(ただし上限値で制限がかけられたのみ)。   研究成果の内容 2024年7月、日本チームを含む国際共同研究チームは、気球望遠鏡 XL-Calibur を用いた新たな観測により、ブラックホール周辺の極限的な環境を明らかにしました。このミッションは、米国ワシントン大学が主導し、日本からは広島大学、大阪大学、JAXA宇宙科学研究所、愛媛大学などの研究者が世界最大のX線集光ミラーを提供して中心的な役割を果たしています。 観測対象は、地球から約7,000光年の距離にあるはくちょう座X-1(Cyg X-1)。1964年に発見され、天の川銀河で最初に「ブラックホール」であると広く受け入れられたX線天体です。ブラックホールの質量は太陽の約21倍。ブラックホールの周囲には、落ち込む物質と噴き出す物質が以下の3つの構成要素を形成していると考えられています: 1. 降着円盤:近傍の恒星から奪った物質が円盤状に渦を巻いて落ち込む。 2. コロナプラズマ:降着円盤からの光にエネルギーを与えて、より高エネルギーにする高温プラズマ。 3. プラズマジェット(アウトフロー):ブラックホールの自転に伴う時空のねじれと強磁場により、一部の物質が極方向に高速で噴き出す流れ。 XL-Caliburの観測は、特にコロナプラズマ(2番目)の形状と位置、起源に強い制約を与えています。以前のPoGO+の観測では、硬X線の偏光が微弱(偏光度が8.6%以下)であることしか分かっていませんでしたが、今回のXL-Caliburでは感度が約20倍も向上したことにより、偏光度がおよそ5.0%であることが測定することができました。この結果、直径125 kmのブラックホールの中心から2000 km以内で明るく輝くコロナが、ブラックホールから数十億kmにわたって噴出する巨大なプラズマジェットと垂直方向に整列していることが分かりました。 従来の我々のPoGO+実験による観測結果では、コロナがブラックホール近傍100kmに局在するようなコンパクトな形状ではなく、広がって存在していることがだけが分かっていました。今回のXL-Calibur実験による観測結果から、広がったコロナの形状は円盤に沿った平べったい構造であることを明らかにすることができました。   今後の展開 この情報は、NASAの偏光衛星IXPE(2–8 keVの低いエネルギー)や、JAXAのXRISMなどの分光衛星、さらに最新のコンピュータシミュレーションと組み合わせることで、今後数年でブラックホールおよびその近傍におけるより精密な物理モデルが構築されると期待されています。XL-Caliburチームでは、次は南極からのフライトにより、他のブラックホールや強磁場の中性子星の偏光観測を目指しています。 国際協力で実現した気球実験XL-Calibur国際共同研究チームには、ワシントン大学、ニューハンプシャー大学、大阪大学、広島大学、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)、スウェーデン王立工科大学(KTH)、NASAゴダード宇宙飛行センターおよびワロップス飛行施設など、計13機関以上が参加しています。ミッション代表はワシントン大学の Henric Krawczynski教授。   用語解説 注1)硬X線: X線とガンマ線の間のエネルギーをもつ電磁波。今回観測した硬X線のエネルギー帯は15–60 keV(可視光の約1.5万~6万倍のエネルギー)。 注2)偏光: 通常の光は色んな方向に電場が振動しています。人工的にはサングラス、自然界では水面での反射などにより、ある特定の方向のみに振動している状況を偏光した光と呼びます。 「偏光度」は偏光している光の割合、「偏光角」はその向きを表します。これらの測定により、ブラックホール近傍で超高温プラズマがどのような形状で暴力的に運動しているのかを知ることができます。また、同様の観測を中性子星や星雲のような他のX線天体に行うことで、宇宙で最も強力な磁場構造の形状を明らかにすることもできるのです。 注3)X線を北極圏の上空40km(地球の大気0.3%しかない上空)から観測 天体からのX線は、地球大気で吸収されてしまうため、宇宙(に近い上空)から観測をする必要があります。 研究チームは2024年7月、NASAの直径100mに膨らむ科学気球によって、XL-Caliburを上空40kmの成層圏まで上昇させ、大気の影響をほぼ受けない高度から天体観測を行いました。フライト時間は、スウェーデンからカナダにかけて5.5日間(7月9日から14日)。 人工衛星として打ち上げることができれば、より長い観測時間を得ることができますが、より高い信頼性・確実性が求められるため、世界初を目指す偏光観測のような野心的な検出器を載せるのは難しく、また開発期間も長くなってしまいます。我々は偏光観測に特化した気球実験として開発したことで、複数回のフライトを重ねることで検出器の性能を向上させ、最先端技術の利用しつつ、総重量2トンもの大型の検出器で観測することができました。これの結果が、低コストでありながら、他の人工衛星のミッションに先駆けて信頼性の高い硬X線の偏光観測へと実を結びました。 注4)「はくちょう座 X-1」(Cygnus X-1) 1964年に発見され、銀河系で初めて「本物のブラックホール」として広く認められた天体です。このブラックホールは伴星(超巨星)と密接に公転する連星系を形成しているため、ブラックホールX線連星と呼ばれます。もし我々が肉眼でCyg X-1を見ようとすれば、その見かけの大きさは月の幅の2千万分の1しかありません。したがって、直接像を撮れないほど小さな天体の形状を推定するには、従来の測光・分光観測に加え、今回新しく実現した偏光観測が非常に有効なのです。 注5)X線集光ミラー(日本製で世界最大) X線を集光するためには、金属表面での全反射や結晶間隔を利用したブラッグ反射が利用されます。(眼鏡のレンズは透過してしまうため使えない) 今回利用したミラーは、213枚のアルミニウムシェルにそれぞれ10〜140層の白金–炭素の二層膜をコーティングしたものです。硬X線は、炭素を透過して、白金と白金の間隔に応じたエネルギーがブラッグ反射して効率良く集光されます。   注1)硬X線 注2)偏光 注3)X線を北極圏の上空40km(地球の大気0.3%しかない上空)から観測(NASA) 左:可視光(Digitized Sky Survey)で観測した「はくちょう座X-1」。伴星の超巨星が青白く見える。右:「はくちょう座X-1」の想像図。https://chandra.harvard.edu/photo/2011/cygx1/左側の中心の暗い部分がブラックホール。右側の青白い星が伴星(超巨星)。赤い円盤が降着円盤。上下に伸びる構造がプラズマジェット。今回の研究対象のコロナプラズマはブラックホールのごく近傍に存在。 注5)X線集光ミラー(日本製で世界最大) 図1:2024年7月9日にスウェーデンから放球されたXL-Calibur(エックスエル-カリバー)気球(YouTube動画「NASA XL-CALIBUR Launch」 NASA XL-CALIBUR Launch) 図2:翌日(7月15日)に着陸場所を上空から確認した写真(NASA)。無事に気球ゴンドラの回収が済んでおり、次回の南極フライトに向けて準備を進めています。 図3:XL-Caliburによる観測結果。ブラックホール近傍の高温コロナによって放射される硬X線の偏光方向が、電波で観測されている巨大ジェット(白色)と向きが揃っている(平行)ことが分かりました。IXPE衛星による軟X線の観測結果がピンク。 図4:今回判明したコロナの想像図(断面図)。コロナは円盤に沿って平べったい形状をしている(ジェットとは垂直方向に広がっている)ことを明らかにすることができました。 図5:X線望遠鏡の仕組み◎名古屋大学U研X線グループ◎研究プロジェクト その他 本研究は、文部科学省科学研究費補助金(課題番号:19H01908, 19H05609, 20H00175, 20H00178, 21K13946, 22H01277, 23H00117, and 23H00128)による支援を受けたほか、JAXA小規模計画、SPring-8の支援も受けています。   【広島大学】ブラックホールに落ち込むプラズマの構造が明らかに!~NASAの気球に世界最大の日本製の望遠鏡を搭載~_2.pdf(2.08 MB) 掲載誌:The Astrophysical Journal 研究者ガイドブック(高橋 弘充 准教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授高橋 弘充(たかはし ひろみつ) TEL:082-424-7430FAX:082-424-0717 E-mail:hrtk@hiroshima-u.ac.jp   <広報に関すること> 広島大学広報室 Tel:082-424-3749 E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   大阪大学理学研究科庶務係 TEL: 06-6850-5280 FAX06-6850-5288 E-mail:ri-syomu*office.osaka-u.ac.jp   愛媛大学総務部広報課 TEL:089-927-9022 E-mail:koho*stu.ehime-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • バイオエコノミー
    2025.11.20
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    ウニ幼生に光で行動を調節する脳のような神経細胞群が存在することを発見

    脳を持たないとされてきたウニ幼生に、光で行動を調節する「脳のような」の神経細胞群(中枢)を見いだしました。この神経細胞群は、脊椎動物の脳と一部共通する特徴が確認され、後口動物の共通祖先までさかのぼる脳機能の起源に関する新たな示唆を提供する結果となりました。 本研究は、ウニ幼生の前端部神経外胚葉に、非視覚性光感受性ニューロン(「見る」ためではなく、光を感じて応答する神経)の細胞群を同定しました。これにより、脊椎動物の脳に相当する「中枢」が、脳を持たないとされてきた棘皮動物(ウニ)にも存在する可能性が示唆されました。これらの神経細胞群は、光を感知するタンパク質である非視覚オプシン(Opn5L)や、脊椎動物間脳の形成を担うrx、otx、six3、lhx6などの制御遺伝子を発現します。また、この細胞領域を統合的に解析したところ、Opn5Lの機能低下で光依存的な遊泳行動が損なわれることが分かりました。こういった分子特徴は脊椎動物の脳領域のそれと一部重なることから、ウニ幼生に存在する非視覚性の光受容中枢は、後口動物の共通祖先に由来する脳機能の素地を残している可能性を示します。 非視覚オプシンを発現する神経とその周辺領域の発生過程を厳密かつ系統横断的に比較することは、脊椎動物の脳を含む中枢神経の進化や多様化の過程を解く上で、新たな理論や見解を提供すると期待されます。     【研究代表者】 筑波大学生命環境系 谷口 俊介准教授 千葉大学大学院医学研究院 露崎 弘毅特任講師 京都大学大学院理学研究科 山下 高廣講師 広島大学ゲノム編集イノベーションセンター 山本 卓教授     【研究の背景】 進化の過程における中枢神経(脳)の獲得は、ヒトを含む脊索動物の多様化を支えた重要な出来事です。しかし、神経や脳が動物進化のどの段階で生まれ、どの系統でどのように複雑化したのかは、よく分かっていません。脳・中枢神経の主要な役割は外界情報を統合して適応的な運動へ変換することであり、その起源の解明は生物学の根本課題です。 一方、後口動物注1)では、前方神経外胚葉に由来する脳領域(前脳など)が光情報処理の中核を担うと考えられ、表層には、視覚オプシン、深部には非視覚オプシン(いずれも光を感知するタンパク質)が配置されるという脊椎動物との共通性が示唆されています。しかしながら、脊椎動物と最も近縁の棘皮動物門(ウニなど)注2)には集中して存在する「脳領域」が見えにくく、前後軸の明瞭な指標も乏しいため、脊椎動物型の脳がいつ、どのように現れたかをたどることは容易ではありません。 それでも近年、前後軸が明確な成長段階であるウニ幼生で、前脳様の遺伝子発現やそれを結ぶ制御ネットワーク、さらに光などの環境情報を行動へ統合する神経回路が明らかになりつつあります。非視覚オプシン様の受容体も複数同定され、光による遊泳や消化活動の調節に関与する例が報告されています。こうした知見を踏まえ、本研究では、ウニ幼生において非視覚的な光受容を担う「脳様」領域を、遺伝子発現と機能の両面から定義し、脊椎動物の脳に通じる組織化が棘皮動物との共通祖先にさかのぼる可能性を示しました。     【研究内容と成果】 本研究では、バフンウニ(Hemicentrotsu pulcherrimus)幼生の前端部神経外胚葉に存在する「非視覚的な光受容を担う脳様領域(神経細胞群)」を単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)注3)とin situ ハイブリダイゼーション注4)にて特定し、行動解析によってその機能を統合的に定義しました。幼生期の神経細胞は稀少で検出が難しいため、Delta–Notch による側方抑制注5)を阻害する薬剤を用いて神経細胞数を一時的に増やし、神経集団の解像度を高めました。その結果、これまで一様とみなされがちだったセロトニン注6)作動性ニューロンが、前方群と背側群という二つの集団に分かれており、背側群は非視覚オプシン(Opn5L)を発現していることを見いだしました(図1)。 遺伝子発現の空間解析では、背側群と前方群とでは、形態と配置のいずれもが異なること、さらに特定の転写因子セットが背側群に偏って現れることを明らかにしました。背側群の一部細胞は上皮層から脱落して移動し、前方群の近傍に合流する過程がライブイメージング注7)で観察され、移動性ニューロンとしての性質を持つことが示唆されました。これは、後口動物のうち脊索動物に特有と考えられてきた神経移動が、ウニ幼生にも備わっている可能性を示す重要な知見です。 機能面では、Opn5L の機能低下により、連続照明下で沈降(浮遊喪失)行動が有意に抑えられ、光入力が遊泳・浮沈の制御に直接関与することを実証しました。加えて、セロトニン合成関連の制御因子や領域指定因子の発現解析から、当該領域が脊椎動物の終脳/間脳と似た分子設計原理を持つことが示されました(図2)。以上より、ウニ幼生には非視覚光受容を核とする脳様中枢が存在し、環境光情報を行動へ統合する回路の一部が保存されている可能性が高いことが明らかになりました。これは、後口動物共通祖先にさかのぼる脳機能の起点を、具体的な細胞群と遺伝子プログラムとして提示する成果です。     【今後の展開】 今後は、光→行動の回路に関するより詳細な解析や、比較発生・比較ゲノミクスによる系統横断検証(棘皮・半索・脊索動物での保存/分岐の同定)を進め、非視覚オプシン中枢の普遍性と系統特異性の理解を深めます。最終的には、脳の「はじまり」の設計図を、細胞系譜、遺伝子ネットワーク、行動出力の三層で統合し、脊椎動物脳の起源と多様化に対する新しい指標の提示を目指します。   参考図 図1(左)ウニ幼生を背側から見た模式図。前端部(水色)領域は前端部神経外胚葉、つまり脊索動物でいうところの脳領域に類似する。しかし、発生初期にここに存在するセロトニン神経は単一のタイプとされ、それほど複雑さはないとみなされていた。(右)この脳領域に対してscRNA-seqを行ったところ、セロトニン神経が2集団から構成され、それぞれ異なる遺伝子発現をしていることが明らかになった。特に体の後方背側に位置する集団は非視覚オプシンとともに、脊索動物では間脳形成に関与している遺伝子群が発現していることが明らかになった。 図2前後方向に区画分けされたウニ幼生(左図)の脳様領域と、脊椎動物であるマウスの脳(右図)の比較。発現遺伝子プロファイルの比較で、前後軸に沿った類似性が見られた。   用語解説 注1) 後口動物 系統進化上、左右相称動物を大きく二つに分けた時の分類群の一つ。原腸陥入(消化管の元となる原腸が形成される過程)の際の原口(入口部分)が肛門になり、原腸の前端部が体表と接する部分に新たに口ができるグループ。脊索動物と棘皮動物、半索動物を含む。 注2) 棘皮動物門 分類学上の階級(界・門・綱・目・科・属・種)の中で、門で分類した場合のグループの一つ。ウニ、ナマコ、ヒトデ、クモヒトデ、ウミユリの仲間を含む。 注3) 単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq) 多細胞生物の体を構成する細胞それぞれに発現しているmRNAを細胞ごと網羅的に解析する手法。どの細胞にどのような遺伝子が発現しているのかを知ることができる。 注4) in situハイブリダイゼーション 細胞内において特定のmRNAの分布を検出する手法。特定の配列を持つmRNAにラベルをつけ、細胞内のターゲットとなるmRNAと結合(ハイブリダイゼーション)させてラベルを検出する。 注5) Delta-Notchによる側方抑制 隣接する細胞が相互作用することで互いに異なる運命をもたらすメカニズムで、多くの動物の神経細胞分化の過程で見られる現象。DeltaとNotchはいずれも細胞膜上の膜タンパク質で、隣接する一方の細胞のDeltaがもう一方の細胞のNotchと結合することで、この細胞でのDeltaの発現を抑制し、役割の異なる細胞を分化させる。 注6) セロトニン 神経伝達物質の一つ。ヒトの脳にも存在しており、精神安定など、さまざまな機能を果たしている。ウニでは、脳を構成する神経の中で最も早く形成される。 注7)ライブイメージング 光学顕微鏡を用いて生きたままの生き物の動きや細胞の変化を直接観察する手法。今回はウニ胚の細胞膜と核を蛍光タンパク質によって標識し、それをレーザー光で光らせたものを観察した。   研究資金 本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「多細胞システムにおける細胞間相互作用とそのダイナミクス」研究領域(JPMJPR194C, JPMJPR1945;2019-2022年度)、科学技術振興機構(JST) 研究成果展開事業が助成するA-STEP(JPMJTR204E; 2019-2024年度)、日本学術振興会が助成する科学研究費基盤研究(B)(23K23933; 2022-2025年度)、(C)(23K11312;2023-2027年度)、(若手)(19K20406: 2019-2022 年度)日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業 CREST「マルチセンシングネットワークの統合的理解と制御機構の解明による革新的医療技術開発」研究領域(22gm1510007; 2022-2027年度)、東レ科学振興会が助成する東レ科学技術研究助成(2018-2020年度)、武田科学振興財団が助成するライフサイエンス研究奨励(2015年度)による助成によって実施されました。   掲載論文 【題名】 Non-Visual Photoreceptive Brain Specification in Sea Urchin Larvae (ウニ幼生における非視覚光受容に関与する脳領域の形成) 【著者名】 #Junko Yaguchi, *#Koki Tsuyuzaki, Ikutaro Sawada, Atsushi Horiuchi, Naoaki Sakamoto, Takashi Yamamoto, Takahiro Yamashita, *Shunsuke Yaguchi (*責任著者、#equal contribution) 【掲載誌】 Nature Communications 【掲載日】 2025年11月19日 【DOI】 10.1038/s41467-025-65628-9   【プレスリリース】ウニ幼生に光で行動を調節する脳のような神経細胞群が存在することを発見.pdf(1.42 MB)掲載誌:Nature Communications 研究者ガイドブック(山本卓教授)   【問い合わせ先】 【研究に関すること】 谷口俊介(やぐちしゅんすけ) 筑波大学生命環境系/下田臨海実験センター准教授 TEL: 0558-22-1317 E-mail: yag@shimoda.tsukuba.ac.jp URL: https://sites.google.com/site/yaguchisea/home X@urchin_lab   【取材・報道に関すること】 筑波大学 広報室 TEL: 029-853-2040 E-mail: kohositu@un.tsukuba.ac.jp   千葉大学 広報室 TEL: 043-290-2018 E-mail: koho-press@chiba-u.jp   京都大学 広報室 国際広報班 TEL: 075-753-5729 E-mail: comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp   広島大学 広報室 TEL: 082-424-4518 E-mail: koho@office.hiroshima-u.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 資源
    2025.11.27
    • 環境エネルギー
    • 資源
    希少で高価な貴金属を用いず低濃度の二酸化炭素を直接資源化 ~マンガンを使った高耐久光触媒で人造石油原料を効率生成~

    本研究成果のポイント 地球に豊富な元素「マンガン」を使い、希少金属を一切用いずに二酸化炭素を還元する光触媒系を開発 従来、二酸化炭素を人造石油の原料となる一酸化炭素に還元するには、ほぼ100%の高濃度二酸化炭素が必要であったが、この光触媒システムにより、希薄な濃度(1-10%)の二酸化炭素を還元することが可能となった   概要 広島大学大学院先進理工系科学研究科の鴨川径特任助教、石谷治特任教授らの研究グループは、可視光照射により低濃度の二酸化炭素(CO2)を、有用な化学物質である一酸化炭素(CO)へ効率的かつ選択的に直接還元する光触媒システムの開発に成功した。 今回開発された光触媒システムは、地球に豊富に存在するマンガンを含む金属錯体*1触媒と、有機色素*2からなり、希少で高価な金属を一切使わずにCO2を資源化できる。 さらに今回開発された光触媒は、マンガン錯体の優れたCO2捕集能を活用できるので、低濃度(1-10%)のCO2を、濃縮することなく効率的に還元できる。この光触媒反応で選択的に得られるCOは、化学産業において有用な化合物であり、人造石油の原料でもある。本成果は、火力発電所や製鉄所からの排気ガス中のCO2を、エネルギーとコストのかかるCO2濃縮過程を経ずに直接資源化できるCCU技術*3への活用が期待される。   なお、研究成果は、10月17日にアメリカ化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。また、広島大学から論文掲載料の助成を受けた。   論文情報 タイトル:Efficient and Selective Photocatalytic Conversion of Low-Concentration CO2 to CO Using Mn-Complex Catalysts. 掲載ジャーナル:J. Am. Chem. Soc. 2025, 147 (43), 39284-39297. 著者:K. Kamogawa*, H. Koizumi, O. Ishitani.* *責任著者 DOI:10.1021/jacs.5c10694     背景 太陽光を利用したCO2の光触媒還元資源化は、人類が直面している地球温暖化とエネルギー及び炭素資源不足の問題を一挙に解決する技術として注目されている。 しかし、これまで開発されたCO2還元光触媒の多くは、純粋なCO2を還元することを目指していた。しかし工場や発電所の排ガス中のCO2濃度は数%~20%程度と低く、その中からCO2を分離・回収するには多大なエネルギーと費用を要する。 そのため、排ガス中の希薄なCO2を直接資源化できる光触媒システムの開発が求められている。また、多量のCO2を処理するためには、光触媒を形作る物質は、安価であり、かつ多量に使用可能でなければならない。     研究成果の内容 本研究では、マンガン錯体触媒の配位子に立体的に嵩高いメシチル基を導入することで光触媒耐久性を大幅に向上させることに成功した。また、トリフルオロエタノール(CF3CH20H)と少量のジイソプロピルエチルアミン(DIEA、図1左上)を共存させると、このマンガン錯体触媒が、低濃度のCO2しか含まないガスからもCO2を効率よく捕集し分子内に取り込むことを見出した(図1)。  この反応により捕集されたCO2は、今回開発した光触媒システムにおいて効率よくCOへと選択的に還元できる。 図1. マンガン錯体触媒によるCO2捕集反応:捕集されたCO2(赤字)は、光触媒反応システムで効率よく還元される。   このマンガン錯体触媒と有機色素4DPAIPN*4(図2左)を含む溶液に可視光を照射すると、高い耐久性と効率でCO2がCOへと選択的に変換された。さらにこの光触媒システムは、反応容器中のCO2濃度を10%さらに1%へと低下させても優れた光触媒能を維持した。  図2に、100%, 10%および1%CO2雰囲気下でそれぞれ光触媒反応を行った際のCO生成の経時変化を示す。10%と1%CO2雰囲気下では、100%CO2雰囲気下の約88%と44%の速度でCOが生成し、高い光触媒反応速度が維持されることがわかる。   図2. 有機色素4DPAIPNと様々なCO2濃度下での光触媒反応の結果     今後の展開 本研究によって、地球上に多く存在する元素だけで構成された触媒と有機色素を用いて、排ガス中の低濃度CO2からでも、濃縮過程を経ることなく有用な化学原料を生み出す新しいカーボンリサイクル技術を開発できる可能性が示された。  今後は、さらなる耐久性の向上、実際の排ガス中での性能評価や水の還元剤としての利用など、実用化に向けて必要な機能の構築と評価に取り組んでいく。     従来研究と本研究の対比 ●従来(貴金属触媒) ・使用金属:貴金属(Re、Ru、Ir) ・必要なCO₂濃度:ほとんどの系で高濃度 ・CO₂濃縮工程:ほとんどの系で濃縮が必須 ・反応効率(希薄 CO₂):ほとんどの系で反応速度が大幅に低下 ・工業的スケール性:高コストで困難   ●本研究(Mn 光触媒) ・使用金属: Mn(安価・豊富) ・必要なCO₂濃度:1–10%の低濃度で可 ・CO₂濃縮工程:濃縮不要 ・反応効率(希薄 CO₂):10%:88%、1%:44%(純 CO₂と比較した反応速度) ・工業的スケール性:低コストで拡大可能     謝辞 本研究は、科学技術振興機構知財活用支援事業「スーパーハイウェイ」の支援を受けて行われた。     用語解説 *1金属錯体: 金属イオンが配位子と呼ばれる分子やイオンと結合することでできた化合物 *2有機色素の役割: 可視光を吸収し、還元剤から触媒に電子を渡す役割をする。 *3CCU技術: Carbon Capture and Utilizationの略、低濃度CO2を捕集して資源化する技術の総称 *44DPAIPN: EL素子用の化合物として開発された。可視光をよく吸収し、酸化還元反応にも安定で、光触媒反応に利用できる基本的性質を有している。図2に構造を示す。     報道発表資料(544.14 KB) 掲載ジャーナル:J. Am. Chem. Soc. 研究者ガイドブック(石谷 治 特任教授)   【お問い合わせ先】 広島大学大学院先進理工系科学研究科石谷治 Tel:082-424-7340FAX:082-424-7340 E-mail:iosamu*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

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    • 気候変動/エネルギー/GX
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    2025.12.12
    • 環境エネルギー
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    • バイオエコノミー
    外来遺伝子を残さない安全なゲノム編集を藻類で実現! ―藻類バイオ燃料の実用化に向け、新しい遺伝子編集方法を開発―

    本研究成果のポイント バイオディーゼルなどの燃料生産が期待される微細藻類“ナンノクロロプシス*1”において、遺伝子を安全に改変できるよう「塩基編集*2システム」を搭載した脱落可能なDNAベクターを開発しました。 この塩基編集システムは、DNA二本鎖切断(DNA Double-strand Breaks, DSBs)*3を導入しない安全な遺伝子改変システムであるため、外来遺伝子を残さず(外来遺伝子フリー*4)、必要な変異だけを導入できる安全な方法です。この技術を使うことで、遺伝子改変後も外来遺伝子を含まないナンノクロロプシスを構築することが可能になりました。 脱落可能なベクターにより樹立できる外来遺伝子の残らないゲノム編集生物はカルタヘナ法*5の定める遺伝子組換え生物には該当しないため、屋外培養などの幅広い用途への応用が期待できます。     概要 広島大学ゲノム編集イノベーションセンターの諸井桂之研究員、山本卓教授および栗田朋和特任准教授は、非常に多くの油脂を蓄積する微細藻類、ナンノクロロプシスにおいて脱落可能な塩基編集ベクターを開発しました。この技術により変異導入時にDSBsを介さずに外来遺伝子を含まないナンノクロロプシスのゲノム編集株を樹立する手法を確立しました。 本研究成果は令和7年11月27日に英国Nature research社の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。 論文情報 掲載雑誌:Scientific Reports 論文題目:“Double-strand break-free and transgene-free genome editing in the microalga Nannochloropsis oceanica using removable vectors containing the CRISPR base editing system” 著者: Keishi Moroi, Yamamoto, Tomokazu Kurita* 広島大学ゲノム編集イノベーションセンター *:責任著者 DOI: 10.1038/s41598-025-26657-y 背景 微細藻類は細胞内に多量の油脂や有用物質を蓄積させるため、バイオディーゼルなどの生産が期待されていますが、生産コストなどの面で課題があるため、多くの研究者が微細藻類の分子育種を進めています。現在までに非常に効率の良いゲノム編集ツールが微細藻類で使用されて多くのゲノム編集藻類が構築されましたが、それらはDNA二本鎖切断(DSBs)を導入してから藻類細胞のDSB修復機構依存的に変異を導入していました。一方でこのようなDNAの二本鎖切断が稀に大規模なゲノムDNAの削除や染色体間での組換えなど宿主細胞に有毒で不都合な改変も起こっていました。 研究成果の内容 本研究ではナンノクロロプシスにおいてCEN/ARS*6を含む脱落可能ベクターに塩基編集用の発現カセットを搭載して、図のように塩基置換後に脱落可能なベクターを構築しました。この塩基編集ベクターによりナンノクロロプシスの内在性の5種の遺伝子における6つの標的サイトにおいて塩基置換の導入に成功しました。塩基置換効率は29.2%から47.6%で、塩基置換後のベクターの脱落にも成功しました。 今後の展開 本研究により確立したDSBフリー且つ、外来遺伝子が残らないゲノム編集法を用いて屋外培養可能、かつ油脂蓄積効率の高い“高機能藻類”の樹立が期待されます。DSBフリーのゲノム編集システムは複数箇所同時改変でも標的サイト間での大規模な遺伝子の脱落や染色体間での組換えといった不都合な改変が起こり難く、また脱落可能ベクターはマーカーの再利用が可能になるため、本システムは、細胞内の多数の遺伝子を改変する際に非常に有効であると考えられます。本研究で確立した外来遺伝子フリー塩基編集システムは藻類バイオディーゼル*7の実用化に必須の基盤技術と考えられます。 用語解説 *1ナンノクロロプシス 直径 2〜5μmほどの小さな海の植物プランクトンです。培養環境に応じてバイオディーゼルに変換できる油脂を大量に蓄積すること、オメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)を豊富に含有することなど多くの特長を持つことから、さまざまな分野で活用されています。 *2塩基編集 Clustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR)–CRISPR-associated protein 9 (Cas9)には2つのヌクレアーゼドメインがあり、標的部位にDNA二本鎖切断を導入します。このヌクレアーゼの片方を失活したnCas9はDNAの2本鎖の片方のみを切断する酵素でCas9ニッカーゼと言います。このnCas9に塩基の脱アミノ化を行うデアミナーゼを融合して、標的部位の塩基を別の塩基に置換するのが塩基編集です。本研究では、nCas9にヤツメウナギのデアミナーゼであるPmCDA1とウラシルDNAグリコシレーション阻害タンパク質を結合した融合タンパク質を使用しています。PmCDA1は標的配列のシトシンのアミノ基を脱離させてウラシルに置換します。ウラシルはチミンと同様にアデニンと塩基対を形成するため、最終的にシトシンをチミンに変換できます。このような塩基編集システムをシトシンベースエディター(cytosine base editors, CBE)と言います。ウラシルDNAグリコシレーション阻害タンパク質はPmCDA1により変換されたウラシルが細胞内の塩基除去修復機構により取り除かれ、別の塩基に変換されるのを防ぐ役割があります。 *3DNA二本鎖切断(DNA Double-strand Breaks, DSBs) 生命の設計図であるゲノムDNAは二本のDNA鎖が二重螺旋構造を形成していますが、この二本の鎖の両方を切断するのがDSBsです。DSBsが導入されると細胞内のDSB修復系が機能し基本的には元通り修復されます。しかし一定の割合で修復システムのエラーによりゲノムDNAに変異が導入されます。この現象を利用してDSBsを介したゲノム編集ツールは特定部位に結合してDSBsを導入、標的遺伝子に変異を導入しますが、この時に稀に標的以外の遺伝子を含む大規模な遺伝子の削除や、染色体間での置換など、宿主細胞にとって有害で不都合な反応が起こることがあります。このような反応は特に特にゲノムDNAの複数の場所でDSBsを同時に導入した場合に起こることがあるため、複数の遺伝子を同時に改変する場合には特にDSBフリーのシステムが重要になります。 *4外来遺伝子フリーシステム 異種生物由来や合成された配列など、外来のDNA配列を含む生物を遺伝子組換え生物(Gene Modified Organisms, GMOs)と言います。GMOsはカルタヘナ法に基づく生物学的封じ込めの規定があるため、屋外培養などには非常に強い使用制限があります。CEN/ARSを持つベクターは細胞内でゲノムDNAの外で維持されるエピソーマルベクターとして振舞い、抗生物質による選択圧が無い培養条件では自然に脱落します。このように最終的に外来遺伝子が残らないシステムを外来遺伝子フリーシステムと言います。 *5カルタヘナ法 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律。日本国内において、遺伝子組換え生物の使用等について規制をし、生物多様性条約カルタヘナ議定書を適切に運用するための法律で、遺伝子組換え生物が生物多様性へ影響を及ぼさないかどうか事前に審査することや、適切な使用方法について定められています。 *6CEN/ARS 出芽酵母の染色体の安定性に関わる配列であり、CEN/ARSはCentromere and autonomous replication sequenceの略で、出芽酵母の汎用low copyベクターに使用されています。最近このCEN/ARSを持つベクターが珪藻やナンノクロロプシスにおいても細胞内でゲノムDNAの外でエピソーマルベクターとして安定に維持されることが報告されていました。 *7藻類バイオディーゼル 微細藻類は環境ストレスなどに応じて細胞内に多量の油脂を蓄積します。この油脂に含まれる脂肪酸を脂肪酸メチルエステルに変換して使用する燃料です。藻類による油脂の生産は光合成によりCO2を吸収するため、大気中のCO2を増加させない次世代の再生可能エネルギーとして期待されています。   報道発表資料(733.68 KB) 掲載ジャーナル:Scientific Reports 研究者ガイドブック(栗田 朋和 特任准教授)   【お問い合わせ先】 広島大学ゲノム編集イノベーションセンター 特任准教授 栗田 朋和 Tel:082-424-4008 E-mail:kuri616*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 医療/ヘルスケア
    2025.12.10
    • 医療/ヘルスケア
    肺が硬くなる病気を防ぐヒントは“遺伝子の調整役”にあった! ―マイクロRNA『miR-26a』を全身から無くすと 肺線維症を防げることを発見―

    本研究成果のポイント マイクロRNA*1(miR)の1つであるmiR-26aを持たないマウスでは肺が硬くなる変化(線維化)が起きにくいことを世界で初めて報告しました。 本研究の成果によって、miR-26aを標的とした新たな線維化治療の開発につながることが期待されます。     概要 広島大学大学院 医系科学研究科 分子内科学の濱田 亜理沙大学院生、下地 清史助教、中島 拓講師、服部 登教授は、同大学病院 未来医療センターの 味八木 茂教授(現 香川大学医学部 組織細胞生物学講座 教授)、免疫学の 保田 朋波流教授らと共同で研究を行い、「miR-26aが全身で欠損すると肺線維症が軽度になること」を発見し、そのメカニズムについて新たな知見を蓄積しました。この研究成果は肺線維症に対するマイクロRNAを使用した治療を開発する上で大きく貢献すると期待されます。 本研究は、JSPS地域中核・特色ある研究大学強化促進事業JPJ00420230011の支援を受けたもので、研究成果は2025年11月4日に国際学術雑誌である『Molecular Therapy – Nucleic Acids』オンライン版に掲載されました。 また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。 発表論文 ・ 論文名:Systemic miR-26a deficiency attenuates pulmonary fibrosis via PTEN upregulation and downstream TIMP-1 suppression ・ 著者名:Arisa Hamada1#, Kiyofumi Shimoji1#, Taku Nakashima1*, Kakuhiro Yamaguchi1, Shinjiro Sakamoto1, Yasushi Horimasu1, Takeshi Masuda1, Hiroshi Iwamoto1, Hironobu Hamada2, Yun Guo3, Tomoharu Yasuda3, Shigeru Miyaki4,5,6, and Noboru Hattori1 1:広島大学大学院医系科学研究科 分子内科学2:同 生体機能解析制御科学 3:同 免疫学4:同 整形外科学5:広島大学病院 未来医療センター 6:香川大学医学部 組織細胞生物学 #:筆頭著者、*:責任著者 ・ 掲載雑誌名:Molecular Therapy – Nucleic Acids(Q1) ・ DOI:10.1016/j.omtn.2025.102765 背景 肺線維症は、もともとスポンジのように柔らかいはずの肺が少しずつ硬くなってしまう病気です。だんだんと呼吸がしにくくなり、現在も完全に治す方法のない難病です。 細胞の中では、遺伝子の働きを抑えるマイクロRNA(miR)と呼ばれる小さな核酸があり、遺伝子のスイッチを調整しています。最近ではこのマイクロRNAも線維化に関わることが分かってきましたが、どのマイクロRNAがどのような仕組みで線維化を引き起こすのかまだ十分に明らかになっていません。 これまでの研究で、miR-26aというマイクロRNAを肺から無くすと、線維化が悪化するということが分かっており、そこからmiR-26aには“線維化を抑える働きがある”と考えられていました。しかし、肺だけではなく全身からmiR-26aが無くなった場合にどうなるのかはわかっていませんでした。 そこで本研究では、全身からmiR-26aを無くした場合、肺線維症にどのような影響が出るのかを調べ、その仕組みを明らかにすることを目的としました。 研究成果の内容 「全身でmiR-26aが無くなると肺が硬くならない」 本研究では、全身のmiR-26aを無くしたマウスと普通のマウスを用いてブレオマイシン*2による肺線維症モデルを作製し比較しました。すると、全身のmiR-26aを無くしたマウスではブレオマイシンを投与しても肺がほとんど硬くなりませんでした。さらに詳しく調べると、炎症の程度は普通のマウスとほぼ同じで、炎症の強さが違うから線維化が軽くなったわけではないことがわかりました。 「鍵は PTEN と TIMP-1」 RNAシーケンス*3を行って詳しく調べると、全身のmiR-26aを無くしたマウスではブレオマイシンを投与した後に細胞の信号を抑えるタンパクPTENが増えており、その結果、線維化を進めるTIMP-1というタンパクが減ることがわかりました。 今後の展開 今回の研究は、これまでに言われていた「(肺の一部で)miR-26aが無いと線維化が悪くなる」という報告とは逆に「(全身で)miR-26aが無いと線維化が軽くなる」という新しい視点を提示しました。これは、マイクロRNAが働きかける細胞の種類によって、肺での反応が大きく変わる可能性を示しています。今後、どの細胞でmiR-26aを抑えると効果が出るのかを詳しく調べることで、肺線維症の新しい治療につながる可能性があります。 参考資料 本研究の要旨 用語説明 *1 マイクロRNA:20〜25塩基程度の短いRNAで、標的となる遺伝子が つくられる量(発現)を抑えることで、細胞の機能や病気の進行に影響を与える。 *2 ブレオマイシン:抗がん剤の一種であるブレオマイシンという薬をマウスの 肺に投与することで肺が硬くなり肺線維症に似た状態になる。 *3 RNAシーケンス:次世代シーケンサーを用いてメッセンジャーRNA(mRNA) などの配列情報を網羅的に読み取り、遺伝子の発現量を解析する手法のこと。   【プレスリリース】肺が硬くなる病気を防ぐヒントは“遺伝子の調整役”にあった!-マイクロRNA『miR-26a』を全身から無くすと肺線維症を防げることを発見-.pdf(335.15 KB) 掲載誌:Molecular Therapy – Nucleic Acids 研究者ガイドブック(中島拓講師)   【問い合わせ先】 <研究に関すること> 広島大学大学院 医系科学研究科 分子内科学中島 拓 Tel:082-257-5196FAX:082-255-7360 E-mail:tnaka@hiroshima-u.ac.jp   <広報に関すること> 広島大学広報室 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

    • 医療/ヘルスケア
    2025.12.10
    • 医療/ヘルスケア
    口内の歯周病菌(F. nucleatum)の多さが、 多発性硬化症の重症度と関連することを明らかにしました

    本研究成果のポイント 多発性硬化症の患者では、舌苔中の歯周病菌 Fusobacterium nucleatum の多さが、身体障害の重症度(EDSS)と関連していることが明らかになりました。 概要 広島大学大学院医系科学研究科 脳神経内科学および広島大学病院 口腔総合診療科の共同研究により、多発性硬化症の患者の舌苔中で、歯周病菌 Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム; F. nucleatum)が多いほど、身体障害の重症度(EDSS)が高い傾向があることが明らかになりました。 本研究成果は学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。 また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。 背景 多発性硬化症(MS)は、脳や脊髄などの中枢神経を覆う「髄鞘」がという膜が傷つくことで、歩行障害や感覚障害などが生じる自己免疫性の脱髄疾患です。MSの発症・進行には腸内細菌叢の異常などの環境要因が関与すると報告されています。一方で、口腔内にも様々な細菌(口腔マイクロバイオーム)が多数存在し、関心が高まっています。 研究成果の内容 今回私たちの研究チームでは、F. nucleatumという菌に着目しました。F. nucleatum は歯周病の原因菌であり、他の菌とくっつくことで、歯周病だけでなく血管内皮障害や血液脳関門の破綻など、多くの病気に関与することが報告されています。本研究は、多発性硬化症患者で口腔内の歯周病菌と重症度の関連を臨床的に示した初めての報告です。 • 対象:自己免疫性脱髄疾患患者98例(MS 56、NMOSD 31、MOGAD 11) • 方法:舌苔サンプルを採取し、qPCR法で歯周病菌(F. nucleatum, P. gingivalis, P. intermedia, T. denticola)の相対存在量を測定 • 結果: • MS患者のうち、F. nucleatum の相対存在量が高い群では、EDSS ≥ 4 の割合が有意に高く(61.5 % vs 18.6 %, p = 0.003)、多重比較補正後も有意差が維持されました(p = 0.036)。 ・ F. nucleatum と他の歯周病菌を同時に多く有する「共存群」では、MS患者にて重症例(EDSS ≥ 4)の割合がさらに高く(37.5 % vs 10.0 %, p = 0.015)。この共存傾向が重症化と関連する可能性が示唆されました(参考資料の図参照)。 ・ NMOSDおよびMOGADでは同様の関連は認められず、F. nucleatum の関与はMSに特異的な傾向を示しました。 つまり、多発性硬化症の患者で、舌の細菌の中に歯周病菌「Fusobacterium nucleatum(F. nucleatum)」が多い人ほど、身体障害が重いことが初めて確認されました。 今後の展開 より大規模な多施設共同研究により、F. nucleatum の関与メカニズムを免疫学的に検証します。 サイトカイン解析やメタゲノム解析を組み合わせ、口腔―腸―中枢神経の炎症連関(oral–gut–brain axis)の全体像を解明します。 将来的には、歯科的介入(口腔ケアや歯周治療)による疾患修飾療法(病気の原因や進行に直接作用し、そのスピードや重症度を変化、抑制させる治療法)の可能性を探る臨床研究へ展開する予定です。 発表論文 掲載誌:Scientific Reports 論文タイトル:The periodontal pathogen Fusobacterium nucleatum is associated with disease severity in multiple sclerosis 著者:Hiroyuki Naito, Masahiro Nakamori*, Hiromi Nishi, Megumi Toko, Tomoko Muguruma, Hidetada Yamada, Takamichi Sugimoto, Yu Yamazaki, Kazuhide Ochi, Hiroyuki Kawaguchi, Hirofumi Maruyama DOI:10.1038/s41598-025-22266-x 参考資料 図F. nucleatum および他の歯周病菌の相対存在量が高い患者の割合(%) MS、NMOSD、MOGADの3群において、F. nucleatum と他の歯周病菌がともに高い相対存在量を示す患者の割合をEDSSスコア別に比較しました。MS群ではEDSS≧4の患者で高割合を示し(37.5% vs 10.0%, p=0.015)、NMOSDとMOGADでは有意差を認めませんでした。MSにおけるF. nucleatum共存菌の増加が疾患重症化と関連する可能性が示唆されました。   用語解説 多発性硬化症(MS):中枢神経の脱髄を特徴とする自己免疫疾患です。再発と寛解を繰り返しながら進行し、歩行障害や視力障害を呈します。 EDSSスコア:Expanded Disability Status Scale。0–10で身体障害の程度を評価する国際的指標です。 歯周病菌 Fusobacterium nucleatum:嫌気性グラム陰性桿菌で、歯周病の主要原因菌のひとつです。他の細菌を凝集させてバイオフィルムを形成する“架け橋菌”として知られ、炎症性サイトカインを誘導して免疫応答を活性化させます。近年では、神経や血管、消化管など様々な臓器の炎症性疾患への関与も指摘されており、当科の研究でも本菌に対する血清抗体価が脳卒中の予後不良と関連することを報告しています。 マイクロバイオームヒトの体に共生する微生物(細菌・真菌・ウイルスなど)の総体   【プレスリリース】口内の歯周病菌(F.nucleatum)の多さが、多発性硬化症の重症度と関連することを明らかにしました.pdf(362.78 KB) 掲載誌:Scientific Reports 研究者ガイドブック(内藤裕之助教)   【問い合わせ先】 広島大学大学院医系科学研究科 脳神経内科学 TEL:082-257-5201 FAX:082-505-0490 助教 内藤 裕之 講師 中森 正博 E-mail:naitohi6@hiroshima-u.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 食料/農林水産業
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2025.12.05
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    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    海藻の辛味成分がイネ栽培に被害をもたらす害虫を駆除!

    本研究成果のポイント イネ栽培に深刻な被害をもたらす害虫であるイネシンガレセンチュウ(*1)を駆除する物質を、褐藻の一種であるアミジグサ(*2)から特定しました。今後、環境にやさしい新たな農薬開発等へ繋がることが期待されます。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科の飯田愛実(博士課程後期)、太田伸二名誉教授、根平達夫准教授、大村尚准教授らの研究グループは、瀬戸内CN国際共同研究センターの加藤亜記准教授と共同で、海藻の一種「アミジグサ」が強い辛味を示すことを見出し、それらの化学構造を解明しました。さらに、広島県立総合技術研究所農業技術センターの星野滋博士の協力を得て、この辛味成分が、農業害虫である「イネシンガレセンチュウ」に対して殺線虫活性(線虫に対する殺虫効果)を示すことを明らかにしました。この研究成果は、国際学術雑誌「Phytochemistry」2026年2月号オンライン版に、2025年9月27日に先行掲載されました。また、広島大学から論文掲載料の助成を受けております。 論文情報 論文題目: Diterpenoids from the brown alga Dictyota dichotoma with nematicidal activity against the plant parasitic nematode Aphelenchoides besseyi 著者: 飯田愛実1、根平達夫1、加藤亜記2、星野滋3、大村尚1,*、太田伸二1,* 1. 広島大学大学院統合生命科学研究科 2. 瀬戸内CN国際共同研究センター 3. 広島県立総合技術研究所農業技術センター * 責任著者 掲載雑誌: Phytochemistry (Q1) DOI番号:https://doi.org/10.1016/j.phytochem.2025.114691 背景 イネシンガレセンチュウ(図1)は、イネ心枯線虫病(*3)を引き起こす農業害虫です。この線虫の感染はイネ種子の収量減少とコメの品質低下を引き起こします。近年、従来の化学合成農薬の使用が大幅に制限されていることから、それらと同等の効果を持つ環境に優しい農薬の研究開発に関心が高まっています。このような背景から、殺線虫剤の供給源として天然物に注目が集まっています。これまで、海藻が有している殺線虫効果に関してはほとんど知られていませんでした。そこで、食用にされていない海藻類の有効利用を目的にして研究を開始しました。 研究成果の内容 未利用海藻類の有効利用の可能性を探る過程で、海藻の一種であるアミジグサ(図2)を齧(かじ)ると強い辛味を感じることがわかりました。アミジグサを有機溶媒で抽出し、その化学成分を分析機器によって解析した結果、新規3種を含む11種の成分の化学構造を明らかにしました。それぞれの化学成分について、イネシンガレセンチュウに対する殺虫活性を評価したところ、分子内に「α,β-不飽和1,4-ジアルデヒド」と呼ばれる構造を持っていることから強い辛味を有する既知物質「4β-ヒドロキシディクチオジアールA」(図3)が、殺線虫効果を示すことが分かりました。 今後の展開 今後、殺線虫活性物質が有する化学構造のうち、どのような構成部位が活性に重要であるかなどのメカニズムを解明し、より有効性の高い物質を開発できれば、新しい農業害虫防除剤の開発につながるものと期待されます。 研究助成 本研究はダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)の支援を受けたものです。また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。 用語解説 (*1)イネシンガレセンチュウ: 学名Aphelenchoides besseyi アフェレンコイデス科の植物寄生性線虫。世界の水稲作地帯に広く発生し、イネの種子を介して伝播する。 (*2)アミジグサ: 学名Dictyota dichotoma アミジグサ科の小型褐藻で、世界各地の沿岸に生息している。その成分には、ウニなどの海洋植食動物に対する摂食阻害作用の他、抗菌・抗酸化などの薬理活性が既に報告されているが、産業利用は進んでいない。 (*3)イネ心枯線虫病: イネシンガレセンチュウが寄生しておこるイネの病害。感染したイネは、葉先が白く枯れた症状(俗称「ほたるいもち」)を示し、栄養不足に陥り、穂の小型化や籾粒数の減少がみられる。また、玄米の粒重が増加せず、屑米や黒点米が発生することがある。この病害は収量を10%~30%減少させることが報告されている。 参考資料 図1:イネシンガレセンチュウ (体長約0.7 mm) 図2:アミジグサ (高さ約10 cm) 図3:4β-ヒドロキシディクチオジアールA (赤丸枠部分は「α,β-不飽和1,4-ジアルデヒド構造」)     報道発表資料.pdf(253.99 KB) 掲載雑誌:Phytochemistry 研究者ガイドブック(大村 尚 准教授)   【お問い合わせ先】 広島大学大学院統合生命科学研究科准教授大村尚 Tel:082-424-6502 E-mail:homura@hiroshima-u.ac.jp

    • 医療/ヘルスケア
    2025.11.19
    • 医療/ヘルスケア
    肥満や肝炎「MASH」発症の新規メカニズムを明らかに!~治療薬開発に向けた第一歩~

    本研究成果のポイント 代謝機能障害関連脂肪肝炎 (MASH)の発症にPin1という酵素が関与することを明らかにしました。現時点では、ほとんど治療薬のない病気に対し、新たなアプローチでの治療法開発が期待されます。   概要 広島大学大学院医系科学研究科医化学講座の中津祐介准教授、浅野知一郎名誉教授を中心とした研究グループは、プロリン異性化酵素Pin1がMASHの発症に重要であることを明らかにしました。この病気は現時点で有効な治療薬がないのですが、今回の発見により、今後、Pin1を標的としたMASH治療法の開発につながる可能性があります。   論文タイトル: Pin1 mediates metabolic dysfunction-associated steatohepatitis in mice fed high-fat, high-cholesterol diet by regulating both PPARα and acetyl CoA carboxylase. 掲載雑誌:Biochim. Biophys. Acta. Mol. Basis Dis. (2026年2月号に掲載) 著者:1中津祐介、2佐野朋美、1中西魅加子、3松永泰花、1, 4神名麻智、 2兼松隆、1浅野知一郎 1. 広島大学大学院医系科学研究科医化学講座 2. 九州大学大学院歯学研究院口腔機能分子科学分野 3. John W. Deming Department of Medicine, Tulane University School of Medicine, 4. 山陽小野田市立山口東京理科大学工学部機械工学科   背景 代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)とは、肥満や糖尿病などの生活習慣病が原因で肝臓に脂肪が蓄積し、炎症や線維化(傷)が起こる病気です。近年、患者数が増加しており、放っておくと肝癌につながる可能性があるため、早期の治療が重要ですが、現時点では生活習慣の改善や体重の減少などの手段しかなく、決定的な治療薬は存在しません。 決定的な治療薬がない原因の一つとして、MASHがどのようにして発症するのかがまだ十分に分かっておらず、病気のどの部分を薬で狙えばよいのかはっきりしない点が挙げられます。 そのため、MASHの発症に関わる新しい原因(因子)を見つけることが求められていました。   研究成果の内容 本研究では、Pin1という酵素が、上述したMASHの原因である可能性について調べるため、肝臓の大部分を占める肝細胞からPin1を取り除いたマウスを用いて解析を行いました。普通のマウスに高カロリーな餌を長期間与えると、肥満とともにMASHを発症します。一方、Pin1を取り除いたマウスに同じ餌を与えても肥満やMASHになりにくいことがわかりました。 そこで、その原因を調べたところ、Pin1がPPARというたんぱく質の働きを妨げていることがわかりました。PPARは肝臓で脂肪を分解したり、エネルギーの消費を促すホルモン「FGF21」を作るように促す働きがあるのですが、Pin1がPPARの機能を抑制することで、肝臓で脂肪が蓄積しやすくしていることを明らかにしました。さらに、Pin1には肝臓で脂肪を作り出す働きをもつ「アセチルCoAカルボキシラーゼ」という酵素を増やす働きもありました。 つまりPin1は、肝臓で脂肪の分解を妨げると同時に脂肪の合成を促す働きをもつため、肥満やMASHの発症に関与していることがわかりました。   今後の展開 今回の研究は、マウスを用いて肝臓のPin1を欠損させると肥満やMASHが改善することを明らかにしました。今後は、Pin1の選択的阻害剤の開発やPin1の阻害剤が肥満やMASHを改善するかを検討する必要があります。   謝辞 本研究は、科学研究費補助金(研究代表者:中津祐介、浅野知一郎、佐野朋美)、土谷記念医学振興基金(研究代表者:中津祐介)、山口内分泌疾患研究振興財団(研究代表者:中津祐介)、薬理研究会(研究代表者:中津祐介)、朝日生命成人病研究所研究助成(研究代表者:中津祐介)、持田記念医学薬学振興財団(研究代表者:中津祐介)の支援で行われました。 また、広島大学からの論文掲載料の支援を受けています。   参考資料 本研究の概略図     報道発表資料(373.64 KB) 掲載誌:Biochim. Biophys. Acta. Mol. Basis Dis. 研究者ガイドブック(中津祐介准教授)     【お問い合わせ先】 大学院医系科学研究科医化学講座中津祐介 Tel:082-257-5138 E-mail:nakatsu@hiroshima-u.ac.jp

    • 医療/ヘルスケア
    2025.11.19
    • 医療/ヘルスケア
    リンパ管の病気「リンパ管奇形」に対して、漢方薬「越婢加朮湯」が有効であることを確認しました~半数以上の患者さんで患部の腫れを20%以上縮小、世界初 臨床試験で実証~

    本研究成果のポイント 先天性のリンパ管の病気「リンパ管奇形」に対して、漢方薬「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」が有効であることを世界で初めて確認しました。   概要 広島大学病院漢方診療センターの小川恵子教授(研究代表者)らの研究グループは、全国8施設の小児外科・放射線科と共同で行った臨床研究において、漢方薬「越婢加朮湯(TJ-28)」が小児リンパ管奇形(lymphatic malformation: LM)に有効であることを明らかにしました。この成果は、米国医学会の国際誌 JAMA Network Open(2025 年11 月3 日号)に掲載されました。 また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。 論文情報 ・論文タイトル:Eppikajutsuto for Treatment of Lymphatic Malformations in Children: A Nonrandomized Clinical Trial ・著者:Keiko Ogawa-Ochiai, MD, PhD(広島大学病院 漢方診療センター)ほか ・掲載誌:JAMA Network Open 2025 年11 月3 日 ・doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.40897 https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/10.1001/jamanetworkopen.2025.40897?guestAccessKey=330f0c68-47b9-46c5-8851-24ecb13f6048&utm_source=for_the_media&utm_medium=referral&utm_campaign=ftm_links&utm_ content=tfl&utm_term=110325 ・試験登録番号:Japan Registry of Clinical Trials(jRCTs041210007) ・研究助成:日本医療研究開発機構(AMED)「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業 (リンパ管奇形に対する越婢加朮湯の効果を評価する治験のプロトコール作成、リンパ管奇形に対する越婢加朮湯の効果を評価する臨床研究) 背景 リンパ管奇形とは、生まれつきリンパ管の病気の一種です。リンパ管という管がうまくつくられなかったことで、体の中の老廃物や余分な水分が袋状に溜まりコブをつくってしまう病気で、このコブが顔や首回りによくできるため、気道を圧迫して呼吸がしづらくなったり、見た目上の問題などを引き起こします。 従来の治療法である硬化療法(コブの中に薬を注射して小さくする方法)や外科手術によるコブ切除は効果がある一方で、治療後の腫れにより気道を閉塞してしまうリスクがあるほか、近年注目される「mTOR 阻害薬シロリムス」という薬は、免疫力が低下し、他の病気に感染してしまうリスクや、口内炎などの副作用が課題となっており、新たな治療法が求められていました。 https://cure-vas.jp/list/lymphatic-malformation/ 難治性血管腫・血管奇形 薬物療法研究班ホームページより 研究成果の内容 今回、リンパ管奇形の治療に「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」という漢方薬を活用することを見出しました。越婢加朮湯はむくみや炎症をやわらげる効果がある漢方薬で、古代中国の医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』に由来します。日本では1986年に厚生労働省により承認され、保険収載されています。1 日あたり約120円程度と経済的であり、外来で安全に使用できる治療法です。 本研究では、体重25kg 以下の小児19 人に越婢加朮湯を6 か月間投与し、その効果を調べました。MRI により画像検査を行ったところ、52.6%の症例で病気の部分が20%以上縮小し、顔や首回りでは83.3%の小児に効果が見られました。副作用は軽度なものが多く、重い副作用を発症したのは1 人だけでした。また、薬の継続率も高く、約9 割が実際にきちんと飲まれており、多くの子どもが継続して治療を受けら れたことがわかりました。 本研究は、広島大学病院を中心に、金沢大学、慶應義塾大学、大阪大学、日本大学、国立成育医療研究センター、昭和医科大学、聖マリアンナ医科大学、全国8 施設が共同で実施しました。MRI 画像解析は中央判定により行われました。   今後の展開 本研究成果は、難治性疾患に対する漢方薬の科学的有効性を示す初のエビデンスとして、国内外の小児外科・小児科・放射線科・形成外科・皮膚科・漢方医学領域に新たな治療選択肢を提供するものです。今後は、長期予後の検証や、分子標的薬との併用・比較研究を通じて、より個別化された治療モデルの確立を目指します。この結果を基に、世界のリンパ管奇形の子供たちに漢方薬での治療が可能になるように尽力したいと思っています。     報道発表資料(553.19 KB) 掲載誌:JAMA Network Open 研究者ガイドブック(小川恵子教授)   【お問い合わせ先】 広島大学病院 漢方診療センター 教授 小川 恵子(おがわ けいこ) E-mail:okeiko22@hiroshima-u.ac.jp TEL:082-257-1921(内線 6921)

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    2025.11.07
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    銅酸化物の高温超伝導体で特殊な電子状態「ノード金属」を発見

    【本研究のポイント】 銅酸化物高温超伝導体で、世界で初めて「ノード金属」と呼ばれる特殊な電子状態を観測。 超伝導転移温度を大きく超える高温でも超伝導電子が存在することを発見し、それが「ノード金属」をもたらしていることを提唱。 三層構造が最も高い転移温度を示す理由を「ノード金属」に基づいて解明し、室温超伝導の物質設計に重要な指針を提示。     【概要】 広島大学放射光科学研究所准教授の出田真一郎、同大学技術専門職員の有田将司、京都大学大学院人間・環境学研究科教授の吉田鉄平、東京大学大学院理学系研究科名誉教授の藤森淳、内田慎一、同大学低温科学研究センター助教の藤井武則、弘前大学大学院理工学研究科教授の渡辺孝夫(研究当時)、同大学博士課程学生の足立伸太郎(研究当時、現職京都先端科学大学工学部講師)、自然科学研究機構分子科学研究所/総合研究大学院大学准教授の田中清尚、産業技術総合研究所主任研究員の石田茂之、東北大学大学院工学研究科助教の野地尚(研究当時)らと、台湾国立清華大学、米国スタンフォード大学の国際共同研究チームは、銅酸化物高温超伝導体(*1)のなかでCuO2面 (*2) を3枚もつ三層系銅酸化物の電子状態を詳細に調べ、超伝導転移温度 (Tc)を越える温度領域で、「ノード金属」(*3)と呼ばれる特殊な金属状態を世界で初めて観測しました。   当研究グループは、放射光を用いた高分解能の角度分解光電子分光(*4)により、ノード金属状態のキャリア濃度依存性を明らかにしました。その結果、キャリア量が非常に少ないCuO2面でも、Tcよりはるかに高い温度から超伝導電子が存在することを発見しました。さらに、超伝導を特徴づけるエネルギーギャップが従来の高温超伝導体よりも著しく大きいことがわかりました。これは、外側2枚と内側1枚のCuO2面の間で生じる「近接効果」(*5)により超伝導が安定化されたことを示しています。三層系が最大のTcを示す機構を明らかにした本研究成果は、高温超伝導の起源の解明に貢献するとともに、室温超伝導に向けた高いTcを示す物質設計の指針になることが期待されます。   本研究成果は「Nature Communications」において2025年10月27日付(イギリス時間)でオンライン掲載されました。本研究は科学研究費事業(課題番号:20H01861、22K03535、23K20229、24K06961、25400349)、台湾国家科学及技術委員会、教育省、米国エネルギー省による支援を受け、広島大学放射光科学研究所共同研究委員会により採択された研究課題(課題番号:22AG006、23BG011)、および、分子科学研究所により採択された研究課題(課題番号:29-549, 31-572, 31-861)のもとで実施されました。     【論文情報】 〈雑誌〉Nature Communications(Q1) 〈題名〉Proximity-Induced Nodal Metal in an Extremely Underdoped CuO2 Plane in Triple-layer Cuprates 〈著者〉Shin-ichiro Ideta*, Shintaro Adachi, Takashi Noji, Shunpei Yamaguchi, Nae Sasaki, Shigeyuki Ishida, Shin-ichi Uchida, Takenori Fujii, Takao Watanabe, Wen O. Wang, Brian Moritz, Thomas P. Devereaux, Masashi Arita, Chung-Yu Mou, Teppei Yoshida, Kiyohisa Tanaka, Ting-Kuo Lee, Atsushi Fujimori*(*責任著者) 〈DOI〉10.1038/s41467-025-64492-x     【背景】 1986年に発見された銅酸化物高温超伝導体は、来年で発見から40周年という節目を迎えます。「超伝導」とは、物質を冷やすとある温度で電気抵抗が突然ゼロになる現象です。アルミニウムや鉛のような単体金属では、絶対零度に近い液体ヘリウム温度(-273℃)まで冷却しないと超伝導を示さないのに対し、銅酸化物高温超伝導体は、安価な液体窒素温度(-196℃)の高温で超伝導を示すため、送電ケーブルやリニアモーターカー、エネルギー貯蔵、医療分野など、幅広い応用が期待されています。しかし、発見から40年近く経った現在も「なぜ高い温度で超伝導がおこるのか」という起源は未解明です。そのため、物性物理学における最も挑戦的な課題として世界中の研究者の関心を集めています。 その中でも、特に重要な問題が、「多層系」の超伝導転移温度(Tc)です。超伝導は、モット絶縁体(*6)である2次元のCuO2面にキャリア(ホールまたは電子)を供給することで発現しますが、経験的にCuO2面が3枚ある三層系でTcが最大化することが知られています。しかし、なぜ三層構造だと最も高いTcが得られるのか、そして、そのときの電子の振る舞いについては長年の謎でした。     【研究成果の内容】 銅酸化物高温超伝導体は、電荷供給層からCuO2面にキャリアが供給されることで超伝導が発現します(図1a)。三層系銅酸化物では1単位格子に3枚のCuO2面があり、外側の2枚には多くのキャリアが入り、内側の1枚には少量しか注入されません。この内側CuO2面は、外側2枚に挟まれて「保護」されるため、平坦で清浄な状態が保たれ、超伝導に理想的な環境をもつと考えられます。 当研究グループは、この内側CuO2面のキャリア量を減らし、モット絶縁体に近い状態で超伝導電子がどのように振る舞うかを調べました。放射光を用いた高分解能角度分解光電子分光法(ARPES)の測定により、キャリア濃度が極端に減少した内側CuO2面を直接観測しました。通常、このような低キャリア状態ではモット絶縁体となり超伝導を維持できないと考えられます。しかし、実際には非常に大きなd波超伝導が実現していることを発見しました(図1b)。 さらに温度を上げても、Tcの約1.5~2倍に至る高温領域までd波の節構造を保持した「ノード金属」状態と呼ばれる特殊な状態が続くことを世界で初めて観測しました(図2)。この結果は、Tcを大きく超える温度から内側CuO2面で超伝導電子が形成され始めていることを意味しています。また、外側CuO2面からの「近接効果」が内側CuO2面の超伝導を安定化させ、d波超伝導を維持していることを見出しました。 これらの成果は、三層構造が最も理想的に超伝導を安定化させ、高いTcを実現する理由を示すものです。 図1: 3枚の超伝導層(CuO2面)をもつ三層系銅酸化物高温超伝導体の結晶構造。(a)3枚のCuO2面が、電荷供給層によって挟まれている。この電荷供給層を酸素アニールや原子置換を行うことでホールや電子がCuO2面に供給され、CuO2面のキャリア量が変化し超伝導が発現する。電荷供給層に近い外側CuO2面の方が内側CuO2面よりもキャリア量が多い。本研究では、内側CuO2面由来の電子状態で「ノード金属」を初めて観測することに成功した。(b)CuO2面でのエネルギーギャップの形がd波対称性をもつ状態の模式図。超伝導電子が角度依存性をもち、ノード(節)、アンチノード(腹)の方向がある。ノード方向は、図(b)の45°方向の矢印で示す銅原子-銅原子方向、アンチノード方向は図(b)の上矢印で示す銅原子-酸素原子方向に対応する。d波超伝導はノード方向でエネルギーギャップがゼロ、アンチノード方向で最大となる。 図2: 銅酸化物高温超伝導体でのエネルギーギャップ。エネルギーギャップは、ノード方向(節方向)においてゼロであり、アンチノード方向(腹方向)で最大となるd波超伝導を示す(図1b)。(a)内側CuO2面でのエネルギーギャップの温度変化。T < Tcの超伝導状態では、ノード方向でエネルギーギャップがゼロ、アンチノード方向でエネルギーギャップが最大となるd波超伝導が存在する。温度を上昇させていくとT = 1.5-2Tcまでd波ギャップが維持されるノード金属状態が存在することが本研究で明らかになった。これは、T = 1.5-2Tcで既に超伝導電子が形成され始める前駆的超伝導電子が存在することを意味している。T > 2Tcでは、ノード金属状態が崩壊し、フェルミアークと呼ばれるフェルミ面の一部が消失したアーク上のフェルミ面のみが観測される。     【今後の展開】 本研究により、三層系銅酸化物高温超伝導体で最も高いTcを発現させる理由と、超伝導電子の形成過程という長年の謎を解明しました。この成果は、高温超伝導の発現機構の理解を大きく前進させるものです。特に高温で超伝導電子が形成されることは、高いTcをもつ物質の設計や応用研究、さらには室温超伝導の実現に向けた重要な指針になると期待されます。     【用語説明】 (*1)銅酸化物高温超伝導体:銅(Cu)と酸素(0)を含む層状構造を持つ化合物で、比較的高い温度(液体窒素温度以上)で超伝導を示す物質群です。Bi系銅酸化物高温超伝導体では、単層系でTcは-233℃、二層系で-178℃、三層系で-163℃となり三層系で最大のTcを示します。   (*2)CuO2面:銅酸化物高温超伝導体に共通して存在する二次元的な銅と酸素からなる層です。CuO2面自体は電子が強いクーロン反発で局在しているため絶縁体ですが、この層に電子やホール(正孔)を供給すると、電子は運動できるようになり金属的な性質を示すようになります。CuO2面は銅酸化物高温超伝導の「舞台」ともいえる存在です。三層以上の銅酸化物を多層系銅酸化物高温超伝導体と呼び、本研究で対象としています。   (*3)ノード金属:銅酸化物高温超伝導体では、超伝導状態で超伝導ギャップがゼロとなる節(ノード)構造を保持します(d波超伝導)。ノード金属は、Tc以上の常伝導状態でも超伝導状態と同じようなノード方向のフェルミ準位にのみ電子が残る特殊な電子状態です。   (*4)角度分解光電子分光:物質の電子構造を調べるための先端的な実験技術です。物質に放射光や紫外線レーザーなどの光を入射したときに放出される光電子のエネルギーと放出角度を計測することで、物質内部で波動として振る舞う電子を特徴づけるエネルギーと波数の分布を調べることができます。   (*5)近接効果:多層構造を持つ銅酸化物高温超伝導体において、隣接するCuO2面同士が量子力学的に影響し合い、超伝導性が伝播・強化される現象です。特に、超伝導秩序が強い層から弱い層へと「しみ出す」ように伝わることで、全体のTcが向上することがあります。これは、単層系では見られない多層系特有の性質です。   (*6)モット絶縁体:本来は金属のように電気が流れるはずの物質が、電子同士の強い反発によって動けなくなり、絶縁体になる状態を「モット絶縁体」と呼びま す。銅酸化物高温超伝導体の母物質はこのモット絶縁体であり、超伝導の発現 を理解する出発点として重要視されています。   【プレスリリース】 銅酸化物の高温超伝導体で特殊な電子状態「ノード金属」を発見 ~三層構造が高い超伝導を実現する仕組みの解明へ~.pdf(604.04 KB) 掲載雑誌:Nature Communications 研究者ガイドブック(出田真一郎 准教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 広島大学放射光科学研究所 准教授 出田 真一郎 Tel:082-424-6294 E-mail:idetas@hiroshima-u.ac.jp   <報道に関すること> 広島大学 広報室 〒739-8511東広島市鏡山1-3-2 TEL:082-424-4518FAX:082-424-6040 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   自然科学研究機構分子科学研究所 研究力強化戦略室広報担当 TEL:0564-55-7209FAX:0564-55-7340 E-mail:press@ims.ac.jp   総合研究大学院大学 総合企画課 広報社会連携係 TEL:046-858-1629FAX:046-858-1648 E-mail:kouhou1@ml.soken.ac.jp   東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室 E-mail:media.s@gs.mail.u-tokyo.ac.jp   京都大学 広報室国際広報班 TEL:075-753-5729 FAX:075-753-2094 E-mail:comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp   弘前大学理工学研究科総務グループ総務担当 TEL:0172-39-3510 FAX:0172-39-3513 E-mail:r_koho@hirosaki-u.ac.jp   京都先端科学大学広報センター TEL 075-406-9121 FAX 075-406-9130 E-mail:kouhou@kuas.ac.jp

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