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    2026.02.25
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    鎖骨頭蓋異形成症の新たな病態モデルを確立 〜Runx2のミスセンス変異が骨と歯の形成に与える影響〜

    本研究成果のポイント 鎖骨等の未発達や無形性により発症する鎖骨頭蓋異形成症(※1)の患者さんと同じタイプのRunx2(※2)ミスセンス変異(※3)を持つマウスモデルの系統を確立しました。このマウスを用いて、骨や歯の根が分かれる過程にも異常が生じることを明らかにしました。   概要 広島大学大学院医系科学研究科の小川咲希大学院生、樋口真之輔助教(研究当時)、吉本由紀特任助教/日本学術振興会特別研究員(研究当時)、宿南知佐教授の研究グループは、同研究科の星野麻里大学院生(研究当時)、濱田充子助教、内部健太准教授、岡本哲治教授(研究当時)、谷本幸太郎教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の山本卓教授、京都大学大学院農学研究科の佐久間哲史特定教授、京都大学医生物学研究所の渡邊仁美助教、近藤玄教授、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の小守壽文教授らの研究グループとの共同研究で、生まれつき骨や歯の発達に異常が起こる「鎖骨頭蓋異形成症」の原因を詳しく調べるため、骨形成の鍵となる遺伝子Runx2に、患者さんと同じタイプの変化を導入した新しいモデルマウスを作製しました。 このマウスでは、人の患者さんと同様に、鎖骨の発達不全や頭の骨のつなぎ目が閉じないといった特徴が確認されました。また、歯の形成を詳しく調べたところ、上あごの一番目の永久歯で、歯の根が分かれる過程に異常が生じ、本来はできない「根のような小さな突起」ができることを発見しました。 これらの結果から、Runx2の働きが弱くなることで、骨だけでなく歯の根が分岐する過程にも影響が及ぶことが明らかになりました。本研究で作製したモデルマウスは、鎖骨頭蓋異形成症の病態解明や、将来の治療法開発に役立つと期待されます。   本研究成果は、2025年12月27日付けで、「Journal of Bone and Mineral Research」に掲載されました。   <発表論文> 論文タイトル Functional impact of pathogenic mutations in the Runt homology domain of mouse Runx2 on skeletal and dental phenotypes in cleidocranial dysplasia 著者 小川咲希1, 2、樋口真之輔1、吉本由紀1、星野麻里1, 3、三浦重徳1、濱田充子3、渡邊仁美4、佐久間哲史5、Hu Kadi1、緒方駿1, 2、内部健太6、藤本勝巳1、山本卓7、岡本哲治3、國松亮2、外丸祐介8、谷本幸太郎2、近藤玄4、小守壽文9、Denitsa Docheva10、宿南知佐1   1. 広島大学・大学院医系科学研究科・生体分子機能学 2. 広島大学・大学院医系科学研究科・歯科矯正学 3. 広島大学・大学院医系科学研究科・口腔腫瘍制御学 4. 京都大学・医生物学研究所・再生組織構築研究部門・統合生体プロセス分野 5. 京都大学・大学院農学研究科・ゲノム編集育種講座(産学共同) 6. 広島大学・大学院医系科学研究科・顎顔面解剖学 7. 広島大学・大学院統合生命科学研究科・分子遺伝学 8. 広島大学・自然科学研究支援開発センター 9. 長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科・分子腫瘍生物学 10. Dept. of Musculoskeletal Tissue Regeneration, König-Ludwig-Haus & University of Wuerzburg   掲載雑誌 Journal of Bone and Mineral Research DOI番号 10.1093/fjbmr/zjaf201.   背景 鎖骨頭蓋異形成症は、生まれつき骨や歯の発達に異常が起こる疾患です。鎖骨が十分に発達しなかったり、頭の骨のつなぎ目が閉じにくかったり、永久歯への生え替わりが遅れるほかに、余分な歯が多く出来るなどの問題を伴うことも少なくありません。 この疾患の主な原因は、骨が出来る過程や軟骨が成長して成熟していく過程を調節する鍵となる「RUNX2」という分子の働きが不十分になるために起こります。特に、この分子の中でも重要な部分である「Runtホモロジードメイン」(※4)に異常が発生するケースが多く報告されています。しかし、これまで、患者さんで見られる「Runtホモロジードメイン」の異常や変異を忠実に再現した動物モデルが存在せず、どのように骨や歯に異常が生じるのかは、十分にわかっていませんでした。そのため、患者さんで見出されたものと同様の変異を遺伝子に導入した新しい疾患モデルマウスの開発が求められてきました。   研究成果の内容 本研究では、ゲノム編集技術を用いて、Runx2の機能に必須であるRuntホモロジードメインの232番目のアルギニンがグルタミンに置換されたミスセンス変異を有する新規の鎖骨頭蓋異形成症モデルマウスを作製しました(図1)。ヘテロ接合体(※5)では、ヒトの鎖骨頭蓋異形成症に特徴的な鎖骨の低形成および大泉門の開存が観察されました。ホモ接合体(※6)では、1997年にCell誌で初めて報告されたRunx2欠失マウスと同様に、膜性骨化(※7)が観察されず(図2)、ミスセンス変異蛋白質の転写活性化能が消失し、発現量も著しく低下していることが明らかになりました。また、ミスセンス変異と欠失変異(※8)のいずれでも、ヘテロ接合体では、上顎第一大臼歯の歯根が分かれる過程の異常により、本来なら平らになるべき髄床底(※9)に小さな根様の突起が生じることが見出されました(図3)。本研究により、ミスセンス変異によって、骨形成の鍵となる転写因子Runx2の機能が失われ、ハプロ不全(※10)によって、上顎第一大臼歯の歯根分岐過程に異常が起こることが明らかになりました。   今後の展開 これらの成果は、鎖骨頭蓋異形成症で起こる骨や歯の異常を理解する手がかりとなり、歯の再生医療や将来の治療法開発につながることが期待されます。   参考資料 図 1〜3は、Journal of Bone and Mineral Research誌に掲載された図を引用・改変したものです (doi.org/10.1093/jbmr/zjaf201)。   用語解説 (※1)鎖骨頭蓋異形成症 骨や歯の形成に異常を生じる遺伝性の疾患です。鎖骨が短いあるいは欠失している、頭蓋骨の縫合が閉じないあるいは閉じるのが遅い、といった症状が主に見られますが、特に患者さんにとって問題となるのが、乳歯が抜けず永久歯が生えてこないことや余分な歯ができてしまうことです。   (※2)Runx2 骨を形成する骨芽細胞の分化に必須の遺伝子です。ヒトでは第6染色体、マウスでは第17染色体に位置し、いずれも8つのエクソンから構成されています。骨芽細胞の形成に重要な遺伝子の発現を制御する転写因子として働きます。   (※3)ミスセンス変異 蛋白質を構成するアミノ酸の1つが、塩基配列の変化により他のアミノ酸に置換されることで異常な蛋白質が生じる変異です。   (※4)Runtホモロジードメイン Runx2とそのファミリー遺伝子の蛋白質に存在する、DNA結合に必須の機能を持つ構造(ドメイン)です。約128アミノ酸で構成されており、異なる生物間でも高度に保存されています。   (※4)ヘテロ接合体 父親と母親から1つずつ受け継いだ一対の遺伝子(対立遺伝子)が異なっている状態を示します。どちらか片方の形質が現れる場合や、2つの中間の形質が現れる場合があります。   (※6)ホモ接合体 父親と母親から1つずつ受け継いだ対立遺伝子の両方に野生型とは異なる変異が生じている状態を示します。   (※7)膜性骨化 脊椎動物の骨の形成過程の種類の一つです。膜性骨化は、結合組織の未分化な間葉系細胞から直接骨芽細胞が分化し骨が形成される様式で、はじめに軟骨が形成されてから骨が形成される内軟骨性骨化とは異なります。膜性骨化は、鎖骨や頭蓋骨、下顎骨の一部などで主にみられます。   (※8)欠失変異 遺伝子の塩基配列の中で塩基がいくつか欠失することにより、欠失部位以降のアミノ酸が変化し、本来よりも早い段階で蛋白質の生成が止まってしまう変異です。   (※9)髄床底 大臼歯のような複数の歯根を持つ歯では、歯根間に平坦な構造が形成されます。髄床底は、歯の神経(歯髄)を支えるために重要な部位です。   (※10)ハプロ不全 対立遺伝子のうち片方が機能不全の場合に、正常な遺伝子の量が不足することによって疾患が発症する現象です。   報道発表資料(828.06 KB) 掲載ジャーナル:Journal of Bone and Mineral Research 研究者ガイドブック(宿南 知佐 教授)   <研究に関すること> 広島大学大学院医系科学研究科医歯薬学専攻生体分子機能学 教授宿南知佐 TEL:082-257-5628FAX:082-257-5629 E-mail:shukunam@hiroshima-u.ac.jp URL:http://tnmd.hiroshima-u.ac.jp/j_html/j_index.html   <報道(広報)に関すること> 広島大学広報室 TEL:082-424-4383Fax:082-424-6040 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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    2026.05.11
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    “ヤゲン軟骨の秘密”を解明 〜飛ぶ鳥と走る鳥で異なる胸骨の形はどう生まれるのか〜

    本研究成果のポイント 飛翔する鳥は胸骨に「竜骨突起」を持つ一方、走行性の鳥は平らな胸骨を持つことに着目 軟骨前駆細胞の増殖を促すTGF-β(※1)シグナルが、竜骨突起形成細胞では長く活性化する TGF-βシグナル活性化の“異時性(※2)”が、竜骨突起の有無を決めることを世界で初めて発見 骨格形態の多様化メカニズムの解明に加え、胸郭変形症の発症機序の理解にもつながる成果   概要脊椎動物の骨格は実に多様で、それぞれの動物の行動様式に適応した形をとります。鳥類の胸骨形態の違いはその典型例です。飛翔する鳥(胸峰類)は、胸骨の中央に「竜骨突起」と呼ばれるブレード状の構造を持ち、これが強力な飛翔筋の土台となります。一方、ダチョウやエミュー(※3)など走って移動する鳥(平胸類)は、この突起を持たず平らな胸骨をしています。こうした違いは進化の過程で生まれましたが、その仕組みはこれまでよく分かっていませんでした。 九州大学大学院システム生命科学府の権昇俊大学院生、理学研究院の熱田勇士講師は、農学研究院の江川史朗助教、熊本大学生命資源研究・支援センターの沖真弥教授、鄒兆南助教、広島大学大学院統合生命科学研究科の本田瑞季助教と共同で、この問題解決に取り組みました。竜骨突起は胚発生期に形成されることから、研究グループはニワトリ胚(胸峰類)とエミュー胚(平胸類)を実験モデルとして、まず胸骨発生過程を比較しました。その結果、両者とも同じように胸骨のもととなる前駆細胞が現れるものの、ニワトリではこの前駆細胞が長く増え続けて竜骨突起をつくるのに対し、エミューでは早い段階で成熟してしまい、突起が形成されないことを明らかにしました。さらに、この違いの鍵となるのが「TGF-βシグナル」という細胞間の情報伝達であることを突き止めました。ニワトリではこのシグナルが長く働き続けることで細胞の増殖が保たれ、竜骨突起の形成につながります。本研究は、発生過程におけるシグナル活性化のタイミングのわずかな違い(異時性)が、飛べる鳥と飛べない鳥という大きな形態差を生み出すことを示したものです。 本研究成果は英国の国際学術誌「Nature Communications」に2026年4月29日(水)にオンライン掲載されました。   研究者からひとこと「鳥が飛べるかどうかは、目に見える翼や羽だけでなく、体の中の胸骨の形や、骨格の軽量化など、様々な要因が重なって決まります。脊椎動物の飛翔に必須な構造である竜骨突起について、発生シグナルのタイミングという視点からその進化、発生機構の一端を明らかにできて嬉しいです。」(権昇俊)   「本研究では、シグナル活性化のタイミングのわずかな違いが、骨格形態、ひいては行動様式の大きな違いにつながることを示しました。次に焼鳥屋さんで食事をされる際には、この研究内容を思い出しながらヤゲン軟骨を味わっていただければ、研究者冥利に尽きます。」(熱田勇士)   研究の背景と経緯脊椎動物の骨格系は、主要な構成成分(ハイドロキシアパタイトやコラーゲンなど)は体の部位や生物種間で顕著な違いはありませんが、大きさや形状はバラエティに富みます。鳥類内でも骨格形態には種間差があり、特に飛翔可能な鳥類である胸峰類と、進化の過程で飛ぶことをやめた平胸類との間には大きな違いがあります。胸峰類はその分類名が示すように、胸骨の正中線上に鋭く突き出したブレード状の構造を持ちます。この構造は「竜骨突起」と呼ばれます(参考図A)。あまり聞き馴染みがないように思われますが、ニワトリの若鶏の竜骨突起の一部は、実はヤゲン軟骨として食されています。飛ぶ鳥はこの竜骨を持つおかげで、筋肉の付着面積を拡大でき、飛翔に必要となる分厚い胸筋をつくることができます(参考図B)。一方で、走鳥類はこの突出構造を進化の過程で失ったため、私たちのような平坦な胸骨を持ちます(参考図A、B)。そのため平胸類とも呼ばれます。竜骨突起の存在については飛翔に必須の構造として古くから知られていましたが、竜骨突起形成を制御する分子、あるいは種間における突起の有無を決めるメカニズムは謎に包まれていました。   研究の内容と成果胸骨は発生過程において、まず鋳型となる軟骨がつくられ、その後、硬い骨に置き換えられることで形成されます。権大学院生らは、胸峰類のニワトリと平胸類のエミューを実験対象として選定し(参考図A、B)、鳥類胸骨のテンプレートとなる軟骨形成について研究を行いました。意外に思われるかも知れませんが、ニワトリは家畜化され飛ぶのが苦手ですが、未だに飛翔する鳥の体型を保っており、胸峰類のモデルになりえます。一方のエミューは新たな家畜として注目されているオーストラリア原産の鳥類で、平胸類の中でも比較的有精卵を入手しやすいこと、近年ゲノム解析が進んだことなどから研究に利用しました。 研究グループははじめに、胸骨形成過程のどのプロセスで違いが生まれるのかを観察しました。胸骨の元となる前駆細胞は側板中胚葉(※4)の一部から生じることが知られています。観察の結果、前駆細胞は両者とも同じ発生段階にて出現することがわかりました。また、左右の側板中胚葉から生まれた前駆細胞が体の正中線まで移動し、そこで癒合することで一枚の胸骨板がつくられますが、そのプロセスにおいても顕著な違いは認められませんでした。しかしながら、さらに発生段階を進めると、ニワトリ胚では前駆細胞が増殖を続け、竜骨突起を形成していく一方で、エミュー胚では前駆細胞が、早期に増殖が低下した成熟軟骨へと分化するため突起形成が起きないことがわかりました。 次に、本田助教、沖教授および九州大学の大川恭行教授らによって開発された、光照射技術とRNAシーケンス(※5)法を組み合わせた領域特異的な遺伝子発現解析法(PIC-RNA-Seq)を用いて、両種の前駆細胞における遺伝子発現パターンを網羅的に調べました。すると、前駆細胞では成熟細胞と比べて、TGF-β(形質転換増殖因子β)シグナルの活性化レベルが高いことが明らかになりました。さらに、独自に確立した前駆細胞の培養系や、胚内での前駆細胞の遺伝子操作技術を活用することで、前駆細胞におけるTGF-βの役割を調べたところ、TGF-βが前駆細胞の増殖に必要不可欠な働きを担うことがわかりました。 これらの結果は、ニワトリでは前駆細胞においてTGF-βシグナル活性化が持続することで、増殖が促され突起を形成する一方で、エミューではTGF-βが早期に低下するため、前駆細胞の増殖が低下し突起形成が起きないことを示唆しています(参考図C)。   今後の展開今後は、このTGF-βの活性化の異時性がどのように生まれるかについて、遺伝子発現制御の観点から研究を進めます。いわゆるエピジェネティックな解析を実施し、TGF-βの発現のオン・オフを決めるゲノムDNA配列を同定します。さらに、ニワトリ、エミューに加え、高い飛翔能力と相対的に大きな竜骨突起を持つハチドリのゲノム情報も利用し、そのDNA配列が進化の過程でどのように変化してきたのかについて明らかにすることを目指します。 研究成果の概要 TGF-βシグナルの異時的な活性化が鳥類胸骨の形態多様性を生み出すことを解明 (A)ニワトリ胸骨上には竜骨突起がある一方で、エミューには突出構造がない。 (B)竜骨突起は分厚い胸筋が付着する足場となる。 (C)成果の要約図:エミューではTGF-βシグナルの活性化が早期に減弱するが、ニワトリでは活性化が維持され前駆細胞の増殖が続く。   用語解説(※1) TGF-β・・・細胞の増殖や分化を調節するシグナル分子の一つ。 (※2) 異時性・・・ヘテロクロニー。発生過程における現象の起こるタイミングの違いを指す。 (※3) エミュー・・・オーストラリアに生息する飛べない大型の鳥。 (※4) 側板中胚葉・・・胚の外側に位置する中胚葉の一部。体壁や内臓のもとになる組織。 (※5) RNAシーケンス・・・どの遺伝子が使われているか(発現するか)を網羅的に調べる方法。   謝辞本研究は、創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS、JP23ama12107 and JP25ama121017)、創発的研究支援事業(JST、JPMJFR214G)、科研費基盤研究(C)(JSPS、JP25K09649)、住友財団基礎科学助成、武田科学振興財団ライフサイエンス研究助成の支援を受け行われたものです。また、研究を進めるにあたりご協力いただいた農学研究院研究教育支援センター、トランスクリプトミクス研究会、日本蛇族学術研究所、そして、エミュー有精卵を供給してくださったきやまファームに感謝申し上げます。筆頭著者の権大学院生は、K-SPRING採択者(JST、JPMJSP2136)および学振特別研究員(JSPS、JP24KJ7193)として研究を遂行しました。   論文情報掲載誌:Nature Communications タイトル:Heterochronic activation of TGF-β signaling drives the diversity of the avian sterna 著者名:Seung June Kwon, Zhaonan Zou, Mizuki Honda, Shiro Egawa, Shinya Oki, Yuji Atsuta DOI:10.1038/s41467-026-72602-6   【九州大学】“ヤゲン軟骨の秘密”を解明〜飛ぶ鳥と走る鳥で異なる胸骨の形はどう生まれるのか〜.pdf(632.61 KB) 論文掲載ページ (Nature Communicationsに移動します) 広島大学研究者ガイドブック (本田瑞季 助教)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 九州大学大学院理学研究院・生物科学部門・動物発生学研究室 講師熱田勇士(アツタユウジ) TEL:092-802-6556FAX:092-802-4270 Mail:atsuta.yuji.360*m.kyushu-u.ac.jp   <報道に関すること> 九州大学広報課 TEL:092-802-2130FAX:092-802-2139 Mail:koho*jimu.kyushu-u.ac.jp   熊本大学総務部総務課広報戦略室 TEL:096-342-3269FAX:096-342-3110 Mail:sos-kohojimu.k@umamoto-u.ac.jp   広島大学 広報室 TEL:082-424-3701FAX:082-424-6040 Mail:koho*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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    2024.05.08
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    微生物ガス発酵を用いた基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)製造によるカーボンリサイクル

    背景 地球環境問題への対応のため、化石燃料に替えてバイオマス資源を利用し、また、発生する二酸化炭素を化学原料や燃料として再利用するカーボンリサイクルの早期実現が、喫緊の課題となっている。 バイオマス資源から糖質のみを抽出して、発酵法により有用な化学物質を合成する手法はあるが、原料が食料と競合、糖以外の有機物が利用困難、糖化処理の高コストなどの弱点がある。 バイオマス資源から比較的容易に得られるメタン、水素、一酸化炭素、二酸化炭素などの合成ガスから、有用な化学物質が合成できれば、カーボンリサイクルの自由度が大幅にアップする。 ホモ酢酸菌と呼ばれる嫌気性細菌の一群は、合成ガスから酢酸を生成することができる。酢酸以外の有用な化学物質が合成できれば、炭素循環型社会を支える有用技術となる。     概要 酢酸菌を遺伝子組み換えして基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)を生産     好熱性ホモ酢酸菌の1種Moorella thermoaceticaの野生株は、糖のみならず、CO2、H2、COを原料・エネルギー源として、酢酸を生成する代謝系を持つ。 遺伝子組み換えにより、 thermoaceticaが作る中間体アセチル-CoAを材料として、独自開発の遺伝子組換え技術により耐熱性酵素を導入することで、目的の基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)を生成することに成功した。 生産物が低沸点であることを活用し発酵/分離を統合した合成ガス高温発酵プロセスを開発した。     合成ガスからの基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)生成 作製した菌は合成ガスを基質として、上記基礎化学品を生産する。 菌体当たりの生産速度 アセトン: 90 mg/g-菌体/時間(CO:H2比 = 1:1)。 すなわち、10g/Lの菌体があれば、約1g/L/hの高速アセトン生産が可能になる。 2-プロパノール(アセトン生産経路にアルコール脱水素酵素を追加することで生成):30 mg/g-菌体/時間 エタノール(アルコール脱水素酵素およびエネルギー代謝改善酵素を導入することで生成):70mg/g-菌体/時間   開発した菌は、55℃から65℃で培養可能であり、蒸留発酵により生産物を回収しながら、物質生産を継続でき、分離・精製工程の負荷を低減できる。     本研究の優位性 化石燃料フリー、さらに、他で発生するCO2を利用して、有用化学物質を生産可能 バイオマス資源から糖化プロセスを経て有用化学物質を生産する発酵プロセスに比較して、原料が食料と競合しない糖に限定されず、有機物なら何でも利用可能である。 中温微生物による従来プロセスと比較して、発酵しながら分離(蒸留)するので、分離・精製工程の負荷や排水処理コストを低減可能である。 バイオマスや廃棄物等から比較的容易に生成可能な合成ガス、火力発電からの二酸化炭素、太陽光や風力発電で生成させた水素等、多様な組み合わせで、フレキシブルに有用化学物質を生産可能である。 合成ガスから有用化学物質を生産する既存の化学プロセスと比較して、例えば、メタノール合成プロセスのような高温・高圧の処理やガス組成の厳密な制御を必要としない。     期待される用途 生成物は有機溶媒として使われるほか、日本のプラスチック生産量の約半分を占めるポリエチレン、ポリプロピレン、C2-C4の化学品の合成前駆体として用いられる。 本技術を、バイオマスや廃プラ等による安価な合成ガス、火力発電所等からの二酸化炭素、太陽光や風力等からの水素と組み合わせることにより、今後のマテリアルカーボンリサイクルフロー実現のための重要技術となることが期待される。     実用化に向けての課題 菌株育種:合成ガスからの目的産物の生産を確認済みだが、酢酸が副生する点が未解決である。また、CO2/H2を原料とした際に生産性が低下する課題が未解決である。 プロセス開発:合成ガスおよびCO2/H2を原料とした発酵装置を開発した。しかし、開発アセトン発酵プロセスと、安価な合成ガス原料および製造プロセス、および各種化成品製造プロセスとのインターフェース技術は未確立である。 LCA: 実用化に向けて、高精度なプロセス設計に基づく、LCAおよび経済性評価も必要となる。     企業への期待 菌株育種:ガス発酵微生物のハイスループット育種技術の共同開発 プロセス開発:開発アセトン発酵プロセスと、安価な合成ガス原料および製造プロセス、および各種化成品製造プロセスとの親和性検討とインターフェース技術の共同開発、および詳細プロセス設計に関わる共同研究 LCA: 高精度なプロセス設計に基づく、LCAおよび経済性評価に関わる共同研究     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :アセトンを生成する組換え好熱性細菌及びそれを用いたアセトンの製造方法 出願番号 :特願2020- 96417 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :中島田豊、加藤淳也、加藤節、竹村海正   発明の名称 :イソプロパノールを生成する組換え好熱性細菌及びそれを用いたイソプロ パノールの製造方法 出願番号 :特願2023-058275 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者:中島田 豊, 加藤 淳也, 加藤 節, 竹村 海生, 松尾 赳志   発明の名称 :モーレラ属細菌の遺伝子組換え法 特許番号:特許5963538 権利者:国立大学法人広島大学, 国立研究開発法人産業技術総合研究所 発明者:酒井 伸介, 高岡 一栄, 中島田 豊,岩崎 祐樹, 矢野 伸一, 村上 克治, 喜多 晃久     論文 Metabolic engineering of Moorella thermoacetica for thermophilic bioconversion of gaseous substrates to a volatile chemical 国際科学誌「AMB Express」に 2021年23月 23 日にオンライン掲載   Isopropanol production via the thermophilic bioconversion of sugars and syngas using metabolically engineered Moorella thermoacetica 国際科学誌「Biotechnology for Biofuels and Bioproducts」に 2024年1月28 日にオンライン掲載     本研究は以下の研究助成を受けて産業技術総合研究所との共同研究により行われた。 科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業 探索加速型「地球規模課題である低炭素社会の実現」 領域「「ゲームチェンジングテクノロジー」による低炭素社会の実現」 (研究科題名:再生可能エネルギーを活用した有用物質高生産微生物デザイン)     研究者からのメッセージ 合成ガスや水素など普通の微生物発酵にはなじみのない原料を使う新しい発酵技術です。代謝工学的な微生物育種技術とともに、安全かつ高性能な発酵プロセスの技術開発が必要なチャレンジングな試みです。しかし、本技術が社会実装できれば、微生物発酵は生産物だけではなく菌体そのものもタンパク源となり、物質文明を支える基礎化学品と食糧の併産も可能な夢の技術になりえます。   研究者 中島田豊(Nakashimada Yutaka) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 教授

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
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    2022.06.27
    • 環境エネルギー
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    シンプル酵素触媒による効率的な有用物質変換

    背景 従来の微生物細胞による物質生産は、宿主とする微生物を生かしながら行うため、基質・原料が宿主細胞の代謝にも使われ、様々な代謝物質が副産物として生成される。 原料が副産物の生成にも使用されるため、目的の物質が低収率となる。 不要な副産物生成抑制のために、細胞代謝を改変して最適化する手法がとられるが、これには多大な時間と手間を要す。     概要 10~20℃で生育可能な低温菌を宿主として、中温菌の酵素を発現させ、化学品生成経路を構築する。この細胞を中温(40~50℃)で熱処理し、低温菌の代謝酵素を失活させる。これにより、中温菌由来の酵素のみによる物質生産が可能になる。 また、熱処理により低温菌細胞が部分的に壊れるため、膜透過性が向上し、原料・基質が細胞内に自由に入ることができ、界面活性剤等の薬品処理が不要になる。   本研究の優位性 既に実用化されているAspergillus属細菌や、大腸菌を用いた微生物変換法に比べて、不要な副産物の生成がなく、収率が高い。 副産物生成抑制のため、従来必要であった細胞代謝の改変が不要となり、多大な時間と手間を省くことができる。 基質の膜透過性向上のため、従来必要であった界面活性剤等の薬剤処理が不要となる。 中温加熱処理のみで高い生産性と収率が得られる「シンプル酵素触媒」であり、有用物質生産のコスト削減が期待される。     期待される用途 ➢応用例1:3-HPA(ヒドロキシプロピオンアルデヒド)の生成 3-HPAはグリセロールから変換されるアルデヒドであり、アクリル酸の原料として利用される有用化学品である。 廃グリセロールは有用な資源であるにも関わらず活用されていないため、グリセロールを使用して物質変換の検討を行った。 細胞を培養・回収・洗浄、熱処理後(45℃・15min)、3-HPAの収率を調査。ほぼ100%の割合で3-HPAに変換できた。 ➢応用例2:1,3-PD(プロパンジオール)の生成 1,3-PDは抗菌性を併せ持つ保湿剤として効果があり、化粧品等に利用されている有用化学品である。 応用例1の3-HPA生成系後半にDhaTを導入することにより1,3-PDを生成。 DhaTは還元力を必要とするため、補酵素NADHの添加が必要となるが、FDH(ギ酸デヒドロゲナーゼ)も発現させた細胞を構築することにより、NADH無添加で1,3-PDの生成が可能となり、収率5%で生成した。   ➢応用例3:アスパラギン酸の生成 アスパルテームの原料でC4基幹化学品であるアスパラギン酸を、フマル酸から生産した。 宿主の代謝酵素による競合反応を熱処理で抑制することにより、副産物のリンゴ酸生成が低下し、収率が向上した。 細胞をアルギン酸ナトリウムで固定化することにより、繰り返し利用が可能になり、95%以上の変換効率を9回維持できた。   ➢応用例4:イタコン酸の効率的生産 C5基幹物質のイタコン酸は、コンタクトレンズやニトリル製品などのポリマー素材として有用な化合物である。 従来のAspergillus terrusによる生成方法は、合成経路が代謝系と競合すること、合成酵素が異なるオルガネラに分かれていることが課題となっていた。 Shewanella属細菌にアコニターゼ(coli)、cis-アコニット酸脱炭素酵素(Aspergillus terrus)を発現させて培養、回収、洗浄、熱処理後(45℃、15min)、クエン酸を導入、高収率でイタコン酸を生成できた。 高収率でイタコン酸を生成し(左のグラフ)、(洗浄操作)を与えなければ、触媒を繰り返し利用して、5回の変換が可能(右のグラフ)である。 実用化に向けての課題 今後、触媒の安定的利用に関する検討を進めたい。     企業への期待 酵素機能を最大限発揮可能な本触媒による、物質変換プロセスの実用化を目指す企業との共同研究を希望する。     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :低温菌を用いたイタコン酸の製造方法 出願番号 :特願2018-124796 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :田島誉久、加藤純一、羅宮臨風     論文 田島 誉久,緋田 安希子,加藤 純一:低温菌シンプル酵素触媒による効率的な物質変換,Journal of Environmental Biotechnology, 21(1), 9-16, 2021(環境バイオテクノロジー学会誌21巻1号)doi: 10.50963/jenvbio.21.1_9 Mojarrad, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Psychrophile-based simple biocatalysts for effective coproduction of 3-hydroxypropionic acid and 1,3-propanediol, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 85(3), 728-738 (2021) doi: 10.1093/bbb/zbaa081 Mojarrad, K. Hirai, K. Fuki, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Efficient production of 1,3-propanediol by psychrophile-based simple biocatalysts in Shewanella livingstonensis Ac10 and Shewanella frigidimarina DSM 12253, Journal of Biotechnology, 323, 293-301 (2020) doi: 10.1016/j.jbiotec.2020.09.007 Luo, M. Fujino, S. Nakano, A. Hida, T. Tajima, J. Kato: Accelerating itaconic acid production by increasing membrane permeability of whole-cell biocatalyst based on a psychrophilic bacterium Shewanella livingstonensis Ac10, Journal of Biotechnology, 312, 56-62 (2020) doi:10.1016/j.jbiotec.2020.03.003 Tajima, K. Tomita, H. Miyahara, K. Watanabe, T. Aki, Y. Okamura, Y. Matsumura, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient conversion of mannitol derived from brown seaweed to fructose for fermentation with a thraustochytrid, Journal of Bioscience and Bioengineering, 125(2), 180-184 (2018) doi:10.1016/j.jbiosc.2017.09.002 Tajima, M. Hamada, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient aspartic acid production by a psychrophile-based simple biocatalyst, Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology, 42(10) 1319-1324, (2015) doi:10.1007/s10295-015-1669-7 Tajima, K. Fuki, N. Kataoka, D. Kudou, Y. Nakashimada, J. Kato: Construction of a simple biocatalyst using psychrophilic bacterial cells and its application for efficient 3-hydroxypropionaldehyde production from glycerol, AMB Express, 3(1), 69 (2013) doi: 10.1186/2191-0855-3-69     研究者からのメッセージ 本技術は多種多様な酵素の効率的変換を細胞から酵素を抽出せずに容易に実現できるものであり、バイオ変換の生産性向上に有望と考えています。本触媒にご興味がございましたら是非ご連絡ください。     研究者 田島誉久(TAJIMA TAKAHISA) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 准教授

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    2022.02.08
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    亜リン酸を用いる遺伝子組換え体の実用的封じ込め

    亜リン酸を用いて遺伝子組換え体を封じ込める実用的手法​ ​ 技術の説明​ 生物の必須栄養素であるリンの代謝系を遺伝的に改変し、亜リン酸という天然には存在しない化合物がないと生存できなくなる性質を創り出す技術を開発した。​ これにより、遺伝子組換え微生物利用の安全性を大きく高め、培養プロセスの経済性向上、開放系利用など新たな可能性を切り拓く有用微生物株の実用化に貢献できる。​   優位性​ 従来の生物学的封じ込め手法は、効果が弱いか、あるいは高い効果を得るためには非常に複雑な手法や高価な化合物が必要であった。​ 本手法はシンプルであり、大腸菌をはじめとするバクテリアに広く適用可能である。また、培養のコストもかからず、実用向きである。​   亜リン酸​ 3価のリンを有する​ 通常の生物は利用できない​ 環境中には有効な濃度で存在しない​   封じ込め株は亜リン酸がないと死滅​   想定される用途​ 1、微生物を用いたバイオプロセス全般。​ 2、遺伝子組換えによる新たな有用菌株に対して、本手法適用によりGILSP(特殊な培養条件下以外では増殖が制限されること、病原性がないこと等のため、最小限の拡散防止措置を執ることにより使用できる遺伝子組換え微生物)の認定取得。​ 3、さらに封じ込め効果を高めることで、将来的には開放系での利用に展開できる可能性がある。​ ➢微細藻類のオープンポンド培養​ ➢プロバイオティクス・医療用途​ ➢生物を用いた土壌や地下水等の汚染の修復等​   本技術に関する知的財産権 発明の名称: 形質転換体、形質転換体の製造方法、および、 当該形質転換体を用いた還元型リン化合物の有無の検出方法 出願番号:特願2016-170317 出願人:広島大学 発明者:廣田隆一、黒田章夫   発明の名称: 亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の製造方法及びその利用 出願番号:特許5892621 出願人:広島大学 発明者:黒田章夫、廣田隆一   発明の名称: 亜リン酸デヒドロゲナーゼタンパク質の製造方法及びその利用 出願番号:US特許9273290B2 出願人:広島大学 発明者:黒田章夫、廣田隆一   実用化に向けた課題​ 株の作製について 現在のところ大腸菌のみで実証済。シアノバクテリアにおける実証を進めている。​ 亜リン酸輸送体の機能的発現が重要。Htx輸送体は、グラム陰性のバクテリア以外では、機能しない可能性がある。多くの生物に適合性を高める必要がある。​ 遺伝子破壊系が確立している必要がある。簡便な作製原理を検討中。​   株の利用について 現時点では「遺伝子組換え生物等の第二種使用等」の拡散防止措置が必要。​ 安全評価試験をクリアし、安全性の高さが認められれば、確認申請や拡散防止措置の緩和などが適用される可能性がある。→装置、廃棄プロセスの簡素化が可能になる。​ 人為起源の亜リン酸(農業資材、工業廃棄物)に留意する必要がある。​ ​ ​   企業への期待​ 実用スケールにおける有効性の実証(微細藻類を希望)​ 封じ込め株の安全性評価の共同試験(大腸菌、微細藻類)​   研究者 廣田 隆一​(RYUICHI HIROTA) 広島大学​ 大学院統合生命科学研究科​ 教授 ​

    • 食料/農林水産業
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    2022.01.20
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    難溶性リン可溶化細菌の植物種子・根圏定着能の改良

    研究の背景 肥料の三要素の一つであるリン肥料資源は、全量輸入に依存する戦略資源のため、肥料価格の高騰を招く。 リン肥料は、土壌中でリン酸カルシウムのような難溶性リン等になる。多くの植物はリン酸カルシウムを上手に利用できず、リン利用効率は低くなるため、難溶性リンの利用性を高めることが出来れば、リン減肥栽培やリン肥料資源の節約に繋がる。 リン酸カルシウムを可溶化する難溶性リン可溶化細菌や、病害を防除する拮抗細菌といった植物の生育に有益な細菌「植物生育促進細菌」が有効だが、植物種子・根圏に定着せず、有効に機能しない。(共生関係を築かない。) 細菌が定着しなければ、その効果は発揮されない。 概要 植物生育促進細菌の実用化のため、植物の種子・根圏での細菌の定着能の向上かつ一定の細菌数を維持すべく、細菌の※バイオフィルム形成に着目した。   ※バイオフィルム 細菌が生産・放出する粘性多糖類に細菌自身が取り込まれた膜状構造物。 例)台所のヌメリ、川底の石など   難溶性リン可溶化細菌の遺伝的改良 1.難溶性リン(リン酸カルシウム)可溶化細菌を単離して検定し、リン酸カルシウム可溶化能が高い細菌X株を特定。 2.細菌X株を遺伝的に改良して、バイオフィルム形成能が高くなった細菌株を選抜。 3.選抜された株によるバイオフィルム形成能を評価した結果、MT-5株のバイオフィルム形成量が最も多かった。   バイオフィルム形成能が高くなった改良型細菌株(MT-5)とイネ種子を24時間共培養して、その後激しく洗浄し、付着細菌数の変化を2度に渡り調査した。 その結果、MT-5株ではイネ種子での定着能が向上した。   本研究の優位性 植物生育促進細菌など有効な細菌を、その細菌の植物との共生能に関わらず、様々な植物種に定着させることができるようになり、持続的な生育促進効果が期待できる。 種子コーティング技術との組み合わせにより、さらなる効果アップが期待される。     想定される用途 土壌に蓄積された難溶性リンの可溶化を促進することが期待されるため、減肥栽培に利用。(肥料コスト削減) 低リン土壌における作物栽培。 植物種子・根圏での定着能の改良技術は、他の非共生型の植物生育促進細菌(拮抗細菌、植物ホルモン産生細菌など)にも応用可能。     実用化に向けての課題 難溶性リン可溶化細菌の植物の種子・根圏での定着能の向上については開発済みだが、定着能のさらなる改良は継続して実施する。 どのような植物種や土壌で最も効果的なのか、使用条件の最適化が必要となる。 種子表面に難溶性リン可溶化細菌をコーティングして普及させたいので、最適なコーティング方法の検討をする。     企業への期待 以下の技術を保有あるいは開発・改良を行う企業との共同研究を希望。 優れた種子コーティング技術 減肥に有効な資材の開発 非共生型の植物生育促進細菌(拮抗細菌など)の植物種子・根圏定着能の改良     本技術に関する知的財産権 発明の名称   :新規微生物及びその作成方法 出願番号  :特願2018-505856(特許第6952349号) 出願人:広島大学 発明者:上田晃弘     論文 植物生育促進細菌の実用化に向けた試み 上田晃弘、大戸貴裕、近藤もも、大村尚 土と微生物 73: 5-9. (2019)   Identification of the genes controlling biofilm formation in the plantcommensal Pseudomonas protegens Pf-5 Ueda A, Ogasawara S, Horiuchi K Archives of Microbiology 202: 2453-2459 (2020)     研究者からのメッセージ 持続的な農作物生産には肥料資源をかしこく使う必要があります。 微生物の力を使って、土壌中に蓄積された未利用の肥料資源を有効に活用するための研究を行っています。     研究者 上田晃弘(UEDA AKIHIRO) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 教授

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
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    • 医療/ヘルスケア
    2020.10.21
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    低コストで大量繁殖・飼育ができる新規実験動物

    目標・狙い “カエル”はヒトと同じ脊椎動物に属する両生類の代表として、古くから実験に用いられてきた。現在では大量飼育が容易なツメガエルが主に用いられてきた。 実験動物にはそれぞれの特徴や性質があるので、カエル類を使った実験や研究では不十分な場合もある。 我々は、カエルと同じ両生類に属するイモリを実験動物として整備することで、両生類を用いた実験システムの充実化や利便性の向上を目指している。   想定される市場・製品・産業分野 カエルと同じ両生類の実験動物材料として、以下の分野における活用 農薬業界 医薬品開発 毒性・環境評価   概要 脊椎動物であるイモリは実験動物としての有用性は認められていたものの、従来の種は大量繁殖が不可能であり、利便性が低い動物とされていた。 本研究では、年間数千個もの卵を産卵するイベリアトゲイモリに着目。ホルモン処理による一年中の産卵や人工授精法を確立した。 イベリアトゲイモリは文献的には性成熟に1年半以上かかるとされていたが、飼育条件(給餌、水温など)を変えることにより生育速度を早め、雄は6ヶ月、雌は9ヶ月までに短縮すると同時に、大量のイモリを安定的に飼育する技術を開発した。 その結果、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となった。   本研究の優位性 有尾両生類(イモリやサンショウウオ類)において、低コストで大量繁殖・飼育ができる唯一の実験動物。 ゲノム編集技術との相性が良いため、実験目的に合わせた遺伝子の改変が可能。   論文 Matsunami et al. “A comprehensive reference transcriptome resource for the Iberian ribbed newt Pleurodeles waltl, an emerging model for developmental and regeneration biology.” DNA Res. (2019) 26:217-229. doi: 10.1093/dnares/dsz003.PMID: 31006799 Suzuki et al. “Cas9 ribonucleoprotein complex allows direct and rapid analysis of coding and noncoding regions of target genes in Pleurodeles waltl development and regeneration.” Dev Biol. (2018) 443:127-136. doi: 10.1016/j.ydbio.2018.09.008 Hayashi et al. “Molecular genetic system for regenerative studies using newts.” Dev Growth Differ. (2013) 55:229-36. doi: 10.1111/dgd.12019   外部資金の獲得状況 住友財団基礎科学研究助成 内藤記念科学奨励金・助成金 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(代表) 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(分担)他   研究者からのメッセージ イベリアトゲイモリを安定的に飼育する技術の開発により、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となりました。イベリアトゲイモリを介した研究にご興味のある企業の方は是非一度ご相談ください。   研究者 林利憲(HAYASHI TOSHINORI) 広島大学 両生類研究センター 教授

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