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研究成果紹介

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    • 気候変動/エネルギー/GX
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    2021.07.21
    • 気候変動/エネルギー/GX
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    メタンハイドレート(*1)資源開発支援を目的とした新コンセプト技術を開発~深海底の生物資源を活用した固化技術~

    本研究成果のポイント 国産資源としての期待が高まるメタンハイドレート商業化において技術的課題とされている出砂トラブルに対処する新しい技術開発を進めている。 天然にすでに存在する微生物の機能を活用し、抗井周辺の地層を固めることで出砂を抑制し、長期生産を可能とする効果が期待できる。   概要 日本周辺海域を対象としてJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が主体となり、2013年に世界初のメタンハイドレート海洋産出試験を、2017年には第2回の同試験を実施するなど商業化に向けた取り組みが進められている。過去2回の海洋産出試験では、一部の生産井 (注2) においてメタンハイドレート層から砂が流入し坑井を詰まらせる出砂という現象により試験が中断されるなどの課題が指摘されている。   この課題を解決する手法として天然に存在する微生物の作用に着目し、広島大学大学院先進理工系科学研究科社会基盤環境工学プログラムの畠俊郎教授(2021年3月まで富山県立大学教授)は、JOGMECと共同で抗井周辺の地層を広範囲に固化させることで坑井への出砂を抑制する技術の開発を進め、日本と米国で特許を取得した。 図1 地層固化のイメージ(左側イラスト)と高圧環境下で微生物が作り出す結晶鉱物(右側画像) 日本近海のメタンハイドレート胚胎層を再現した圧力条件(13MPa)で温度条件を変えて結晶析出試験を行った結果、30℃ではほぼカルサイト、13℃ではカルサイト80%、アラゴナイト20%と異なる炭酸カルシウム種が析出することを確認した。   用語解説 (注1)メタンハイドレート 天然ガス資源の一種であるメタンハイドレートは、水分子が水素結合により形成する籠(かご)状の格子の中にメタン分子を取り込んだ固体結晶で燃える氷とも呼ばれる。 メタンハイドレート1m3から約165m3生成されるメタンは都市ガスの主成分として使われる無色・無臭のガスである。このメタンを主成分とする「天然ガス」は燃焼時の二酸化炭素の排出量が石油や石炭を燃焼させた時より少ないため環境に優しいクリーンなエネルギーと言われており、メタンハイドレートは次世代エネルギーとして期待されている。 https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1001711/1001759.html(外部リンクに移動します) (注2)生産井 坑井の使用目的に基づいた分類の一つで、資源を汲み上げて採取する役割を持ったものを意味する語。本件では、メタンハイドレートの生産を目的に掘る坑井のことを示す。   論文情報 掲載誌: Journal of Natural Gas Science and Engineering 論文タイトル: Microbial-induced carbonate precipitation applicability with the methane hydrate-bearing layer microbe 著者名: Toshiro Hata、Alexandra Clarà Saracho、Stuart K. Haigh、Jun Yoneda、Koji Yamamoto DOI: https://doi.org/10.1016/j.jngse.2020.103490   特許情報 特許(日本):特許第6842765号(2021年3月取得) 特許(米国):Patent No.10914151(2021年2月取得) 報道発表資料(462.47 KB) 論文掲載ページ (Journal of Natural Gas Science and Engineeringに移動します) 広島大学研究者総覧 (畠 俊郎 教授)   【お問い合わせ先】 大学院先進理工系科学研究科 教授 畠 俊郎 Tel、Fax:082-424-7784 E-mail:thata*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 経営/組織運営/デザイン
    2025.09.04
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 経営/組織運営/デザイン
    グリーンウォッシング 尺度開発に関する研究

    グリーンウォッシング(greenwashing)発生 ▶︎環境配慮に関連した企業の宣言と実態が一致せず、消費者の誤解を招く現象 企業のサステナブル(SDGs)宣言→製品・サービスに予期しなかった事態が発生→Washだと非難され、企業ブランド価値低下発生   研究内容 【企業のグリーンウォッシングを数値化する】   greenwashing 語のテキストマイニング   質問票調査実施 尺度開発を通じて期待していること ①Greenwashingの診断表・保険開発   ②Greenwashing ガイドブック作成   研究計画 企業のグリーンウォッシングを抑制するための取り組み 社会に対する波及効果 ブランド成果と消費者・顧客への反応 環境経営への社員の知識レベルをアップする教育プログラムの開発   実用化に向けた課題 green経営に関する持続的な関心と投資が必要 多様な企業からのデータ収集が必要→尺度の信頼性アップ   最後に 協力依頼事項 greenwashing尺度の活用:保険開発以外にも、多様な製品・サービスへの活用可能性がある(例:クラウドファンディング) 環境経営に関わる社員の知識レベルをアップする教育プログラムの開発   研究者 徐恩之(SEO EUNJI) 広島大学 大学院人間社会科学研究科 准教授

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 資源
    2025.07.15
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 環境エネルギー
    • 資源
    ナトリウムを利用したアンモニア合成法を開発 -プラチナなどの貴金属触媒を使用せず、安価なナトリウムのみで実現-

    本研究成果のポイント ナトリウムを利用した触媒およびケミカルルーピングプロセス(*1)によるアンモニア(*2)合成法を創出 常圧-1.0MPa(10気圧)程度の水素、窒素からアンモニアを合成可能 圧倒的な資源的優位性を有するナトリウムのみで構成される貴金属触媒(*3)フリーの技術を確立   概要 広島大学自然科学研究支援開発センター:宮岡裕樹教授、同大学スマートソサイエティ実践科学研究院:恒松紘喜(D2)、同大学大学院先進理工系科学研究科:市川貴之教授らの研究グループは、ナトリウムを触媒、あるいはケミカルルーピングプロセスの反応体として利用したアンモニア合成技術を開発した。この手法は、常圧-1.0 MPa(10気圧)程度の圧力下で水素と窒素からアンモニアを合成可能であり、かつ貴金属等の触媒を必要としないため、再生可能エネルギーの利用を目的とした元素戦略(*4)的に優位な小規模分散型のアンモニア合成手法(*5)としての展開が期待される。本研究成果は、Q1ジャーナルである国際科学誌「International Journal of Hydrogen Energy」に掲載されました。   背景 現在、脱炭素化、カーボンニュートラルに向けたさまざまな取り組みが世界的に進められている。太陽光や風力等の自然エネルギーをはじめとした再生可能エネルギーの利用拡大は重要な課題の一つである。これら変動的かつ偏在的なエネルギーを効率的に利用するための媒体(二次エネルギー)として水素が注目されているが、貯蔵や輸送時のコストが課題となっている。近年、化成品や肥料の原料として知られるアンモニア(NH3)は、上述した再生可能エネルギーを効率的かつ低コストに貯蔵・輸送するためのキャリア、或いはCO2フリーの燃料として注目を集めている。現在、NH3の合成には、約500 ℃、250気圧以上という高温高圧条件で行われるハーバー・ボッシュ法(*6)が用いられているが、連続運転により大量合成を行うことでメリットが得られる技術として確立されている。従って、偏在する自然エネルギーの利用を考えた場合、より低温低圧条件で制御可能な小規模分散型のNH3合成技術が望ましく、このような技術が確立されれば、再生可能エネルギーの変動吸収や需要に対する供給の調整といったことが可能となる(図1)。   NH3合成においては、安定な三重結合(*7)を有する窒素分子(N2)を原子状(N)に分離する窒素解離プロセスが重要であり、この窒素解離のために、1000 °C近い高温条件やプラズマ、遷移元素や希土類元素等の金属触媒を利用するのが一般的である。一方、我々の研究グループでは、リチウム(Li)やナトリウム(Na)に代表されるアルカリ金属の窒素解離能に注目し、それらの触媒能の評価や既存の触媒プロセスとは異なる多段階の化学反応でNH3合成を行うケミカルルーピングプロセスの研究開発を進めてきた。   研究成果の内容 本研究グループでは、LiH、Li合金、Na合金を用いたアンモニア合成技術を提案し、それらの研究開発を進めてきた。本研究では、水素化ナトリウム(NaH)(*8)を用いたNH3合成技術の検討を行った。 まず、水素(H2)と窒素(N2)の混合ガス気流中でNaHを400 ℃まで加熱しNH3合成特性を評価した。図2(右)に結果を示す。 375 ℃で最も高い反応率:約550 mmol/g hが得られ、この値は、先行研究におけるLiあるいはNa合金触媒のNH3合成速度:

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    2025.09.04
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    【フェニックスセミナー2025まとめ】未来をつくるカーボンニュートラルイノベーション

    概要 フェニックス協力会主催(協力:株式会社広島銀行)にて、2025年9月4日にひろぎんキャリア共創センターにて、フェニックスセミナー2025(研究シーズ発表会)vol.2を開催しました。 当日は、企業や研究者など80名ほどが参加し、市川教授の基調講演(「広島県におけるカーボンニュートラルの動向」)や若手研究者による研究の最前線についての発表がありました。セミナー後は、懇親会も開催。直接研究者とコミュニケーションをとることで、研究とビジネスをつなげるきっかけの場となりました。 研究者・発表した研究シーズリスト 近藤 雅征(瀬戸内CN国際共同研究センター・准教授) ーアジアにおける温室効果ガス吸排出、及び気候変動の現状   江種 浩文 (経済学部・客員講師) ー太陽光発電の「価値分離」を通じたCO2フリー水素の低コスト化検討   砂本 礼志(大学院先進理工系科学研究科・D2) ーアンモニアメタネーション研究   三木江 翼 (大学院先進理工系科学研究科・助教) ー有機半導体を用いた光触媒による太陽光水素製造に関する研究   徐 恩之(大学院人間社会科学研究科・准教授) ーグリーンウォッシュの尺度開発に関する研究   周聖逸(大学院人間社会科学研究科・D2) ーグリーン懐疑主義が消費者のグリーン購買意図に与える影響:情報探索および罪悪感の役割   フェニックス協力会とは 「地域社会・国際社会との共存」を具現化する取組みとして、2010年11月、地域社会、特に地域産業界への更なる貢献を目的として設立。 150社ほどの企業・団体が所属し、広島大学オープンイノベーション本部産学連携部門(事務局)から、産学連携に関連する情報発信や、会員企業の皆さまにご活用いただけるさまざまなサービスなどを発信しています。

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    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
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    2026.01.27
    • 環境エネルギー
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    朝に光をあびて夜に産卵するクラゲの発見 ─Clytia sp. IZ-Dがもつ新たな生物時計のしくみ─

    本研究成果のポイント 多くのクラゲは、「暗→明」の光変化(明刺激)から数時間以内に産卵する。一方、宮城県の海で新たに採集されたClytia sp. IZ-Dは、明刺激から14時間たった後にようやく産卵するという珍しい性質をもっていた。 卵の成長過程や卵成熟誘起ホルモンの種類は近縁種間で共通していたが、Clytia sp. IZ-Dは一定の周期で自動的にホルモンの分泌や受容をするように変化していた。すなわち、ホルモンの分泌・受容の制御に基づいた、新たな『生物時計』のしくみを獲得したと考えられる。 このしくみの獲得によって、Clytia sp. IZ-Dは日照に左右されにくい産卵方法を手に入れるとともに、近縁種からの種分化を果たしたと推測される。   概要 ヒドロ虫綱のClytia hemisphaericaをはじめとした多くのクラゲは、暗から明への移行(明刺激)直後の卵成熟誘起ホルモンの分泌、その受容による卵成熟を経て、1〜2時間後に産卵します。今回、宮城教育大学大学院教育学研究科の橘井瑠伽大学院生・出口竜作博士、広島大学大学院統合生命科学研究科の竹田典代博士、ソルボンヌ大学・国立科学研究センター(フランス)のEvelyn Houliston博士・百瀬剛博士の研究グループは、宮城県の海で新たに採集されたClytia sp. IZ-Dが明刺激を受けてもすぐには産卵せず、14時間もたってから同調して産卵するという珍しい性質をもつことを発見しました。卵の成長過程や卵成熟誘起ホルモンの種類などは近縁種間で共通していましたが、Clytia sp. IZ-Dは明刺激がなくても約20時間周期で自動的にホルモンを分泌・受容し、産卵に至ることがわかりました。また、明刺激があると、産卵は24時間周期に調整されました。すなわち、Clytia sp. IZ-Dは卵成熟誘起ホルモンの分泌・受容に立脚した新たな『生物時計』のしくみを獲得し、朝の光を利用して夜に産卵するように「進化」したと推測されます。このしくみの獲得によって、悪天候にも左右されにくい産卵方法を手に入れるとともに、近縁種からの種分化を果たしたのかもしれません。クラゲの生殖戦略や種分化、新たな生物時計のしくみの解明につながる、重要な発見です。 本研究成果は、2026年1月6日に科学誌PLOS Biology速報版に掲載されました。   背景 多くのクラゲは、光変化を利用して卵や精子の放出を同調させ、受精を成功させています。例えば、Clytia hemisphaerica(注1)は、明け方の明刺激(暗→明)から2時間後に産卵します(図1)。これは、明刺激によって生殖巣から分泌された卵成熟誘起ホルモン(注2)を受容した卵母細胞(注3)が2時間かけて卵成熟(注4)を進行させ、受精可能になってから放出されるからです。明刺激の逆の、夕刻の暗刺激(明→暗)に反応して産卵に至るエダアシクラゲのような種もいます。明刺激や暗刺激は1日1回ずつ起こることから、クラゲの産卵は24時間周期でくりかえされます。しかし、C. hemisphaericaや同じヒドロ虫綱のヒドラはいくつかの重要な時計遺伝子を失っていることもあり、クラゲの産卵に生物時計(注5)や概日リズム(注6)といったしくみはこれまで想定されていませんでした。   研究成果の内容 宮城県の海岸で新たに採集されたウミコップ属のクラゲ、Clytia sp. IZ-D(注7)を12時間明-12時間暗の明暗周期で飼育すると、暗への移行から2時間後の産卵を毎日くりかえしました(図1)。最初は、暗刺激(明→暗)への反応と思われていたのですが、明暗時間の長さなどを変えた実験により、実は明刺激に反応しており、それから14時間もたってから産卵していることがわかりました。また、光をあて続けた条件(恒明条件)では、20時間周期で産卵をくりかえすこともわかりました(図2)。すなわち、Clytia sp. IZ-Dは20時間周期で自動的に産卵する性質を備えているものの、明刺激がそれを24時間周期に調整している(図2)ことになります。   Clytia sp. IZ-Dの体内での卵母細胞の成長過程は、C. hemisphaericaと基本的に同じでした。また、卵成熟誘起ホルモンの有効濃度やホルモン投与後の減数分裂過程も両者で共通していました。一方で、Clytia sp. IZ-Dの体内の卵母細胞が低濃度(生理的濃度)のホルモンに反応できるようになるには、恒明条件では前回の産卵から18時間、明暗周期のある条件では21〜22時間を要しました。Clytia sp. IZ-Dはこれまで知られていなかったしくみ──卵母細胞の低濃度ホルモンに対する応答能力獲得のタイミングがその2時間後(卵成熟完了後)の産卵のタイミングを決める──をもっているようです(図2)。 図1. Clytia sp. IZ-Dの産卵 (A) Clytia sp. IZ-Dの顕微鏡写真 (B) Clytia sp. IZ-Dのイラスト (C) 単離した生殖巣からの産卵の様子 (D) Clytia hemisphaericaとClytia sp. IZ-Dの産卵のタイミング 図2. 恒明と12時間明-12時間暗の条件下でのClytia sp. IZ-Dの卵成熟・産卵のタイミング   以上の結果から、Clytia sp. IZ-Dは卵成熟ホルモンの分泌・受容に立脚した新たな生物時計や概日リズムのしくみを獲得し、朝の光を利用して夜に産卵するように「進化」したと推測されます。このしくみの獲得によって、悪天候にも左右されにくい産卵方法を手に入れるとともに、近縁種からの生殖隔離(注8)と種分化(注9)を果たしたのかもしれません。   今後の展望 Clytia sp. IZ-Dのもつ、新たな生物時計や概日リズムのしくみを理解するには、光受容や卵母細胞の成長の制御などに関わる分子(遺伝子)にどのような変異が生じたのかを明らかにしていく必要があります。また、産卵のタイミングの変化が実際に生殖隔離や種分化につながった例について、他のクラゲも含めて広く調べていくことも大切です。他の海産動物のように、概日リズムだけでなく月齢や温度にも影響される、複雑な卵成長や産卵のしくみを理解する手がかりとしても期待されます。Clytia sp. IZ-Dは飼育しやすく、温度変化にも強いクラゲです。中学校の理科や高等学校での生物における生殖分野の学習などに活用する道も探っていきたいと考えています。   謝辞 本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業 (課題番号20K06736)、公益財団法人日本科学協会 笹川科学研究助成 (研究番号2025-4059)、フランス国立科学研究センター生物学研究所 海洋生物学国際共同研究補助金の支援を受けました。   用語説明 注1. Clytia hemisphaerica:刺胞動物門ヒドロ虫綱軟クラゲ目ウミサカズキガヤ科ウミコップ属のクラゲ。ゲノム情報を含め、分子生物学的な基盤が整っている。   注2. 卵成熟誘起ホルモン(Maturation-inducing hormone, MIH):卵母細胞に作用し、減数分裂(卵成熟)を誘発するホルモン。C. hemisphaericaでは、ペプチド(WPRPaやその類似物質)であることがつきとめられている (https://journals.biologists.com/dev/article/145/2/dev156786/48822/)。   注3. 卵母細胞:減数分裂を完了する前の段階の卵細胞。   注4. 卵成熟:卵母細胞が減数分裂をおこない、受精可能な卵になっていく過程。   注5. 生物時計:生物がそなえていると考えられる時間測定のしくみ。概日リズムは生物時計の代表例。   注6. 概日リズム (サーカディアンリズム, circadian rhythm):およそ1日の周期で変動する生物現象。光などの外界の変化を受けることにより、ちょうど24時間周期に補正される。時計遺伝子による制御のしくみが明らかになっている生物現象もある。   注7. Clytia sp. IZ-D:C. hemisphaericaと同じウミコップ属のクラゲ。ウミコップ属のクラゲは形態的差異が乏しいため、種の同定が困難であり、正式な学名をつけることができていない。なお、宮城県では、Clytia sp. IZ-Dによく似たClytia sp. IZ-Cというクラゲも採集されているが、このクラゲはC. hemisphaericaと同様に明刺激から2時間程度で産卵する。   注8. 生殖隔離:なんらかの遺伝的差異による隔離。出現場所や産卵時期が異なることなどによる「交配前隔離」や、生じた子が不稔になることなどを含む「交配後隔離」がある。   注9. 種分化:同じ種の生物の集団間に生殖隔離が生じ、2つ以上の種が形成されること。   論文情報 タイトル: A light-entrained clock mechanism in a hydrozoan jellyfish synchronizes evening gamete release 著者: Ruka Kitsui, Noriyo Takeda, Evelyn Houliston, Ryusaku Deguchi*, Tsuyoshi Momose* *責任著者: 宮城教育大学 出口竜作、フランス ソルボンヌ大学・国立科学研究センター 百瀬剛 掲載誌: PLOS Biology DOI: 10.1371/journal.pbio.3003502 URL: https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3003502   報道発表資料.pdf(504.95 KB) 掲載雑誌:PLOS Biology   【お問い合わせ先】 宮城教育大学大学院教育学研究科 出口 竜作 博士 TEL:022-214-3413 e-mail:deguchi@staff.miyakyo-u.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • バイオエコノミー
    2026.05.08
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    広島大学の丸山史人教授が、米国エネルギー省JGI 2026 年度Community Science Program大型研究支援に世界でわずか14 件の採択プロジェクトの一つに日本から唯一採択 ~未解明の地下水微生物研究で国際競争を勝ち抜く快挙~

    ポイント 米国エネルギー省(Department Of Energy; DOE) Joint Genome Institute (JGI)の2026年度Community Science Program (CSP)大型研究支援公募において、世界でわずか14件の採択プロジェクトの一つに広島大学・丸山史人(まるやまふみと)教授の提案が選出されました。日本からの採択は丸山教授の1件のみです。 過去の採択実績では、プリンストン大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)、 スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校など海外トップクラスの研究機関の教授が多く、今回はプリンストン大学、シカゴ大学、デューク大学、米国やフランスの国立研究所などの研究者が参画しており、国際的にも極めて競争率が高く名誉ある成果です。 DOE-JGIのCSPプログラムでは、数十万~数百万ドル相当の大規模ゲノム解析、ハイスループットDNAシーケンス、計算資源などの支援が採択課題に無償提供されます。 CSP採択プロジェクトの多くは研究成果をNatureやScienceといった世界最高峰の学術誌に発表しており(https://jgi.doe.gov/user-science/publications)、質の高い国際共同研究が推進されています(※例:JGIによるソルガム(バイオエネルギー作物)ゲノム解析研究が2009年にNature掲載)。 丸山教授の採択課題は、未培養で未知の地下水生微生物Patescibacteria門を対象に、その共生的な生態をゲノム解析によって解明し、地下環境での物質循環の役割に迫る革新的研究です。環境中の膨大な未解明微生物の機能解明を通じ、物質循環・環境微生物学に新たな展開が期待されます。 日本からCSP大型枠に採択される例は極めて稀であり、広島大学からの採択は国際舞台における国内研究者の存在感を示す画期的な成果と言えます。   概要広島大学IDEC国際連携機構の丸山史人教授の研究プロジェクトが、米国エネルギー省(DOE)の合同ゲノム研究所(Joint Genome Institute, JGI)による2026年度コミュニティ・サイエンス・プログラム(CSP)大型研究支援公募において、世界14件の採択プロジェクトの一つに選ばれました。日本からの採択は本件のみで、他の採択者には、プリンストン大学、シカゴ大学、デューク大学、米国やフランスの国立研究所など世界的トップクラスの研究機関の教授らが名を連ねています。また、過去の採択者にも日本国内の研究者がプロジェクトの代表となっている例は確認されていません。CSP大型公募は、エネルギーの持続可能性、気候変動への対応、水・環境資源の保全といった地球規模課題の解決(DOEミッションの内容を反映)に資する大規模ゲノム科学プロジェクトを世界中から募るもので、その採択は極めて狭き門を突破したことを意味します。本採択により、丸山教授のチームはDOE-JGIから大規模なゲノム解析支援を無償提供され、最先端の環境ゲノム研究を推進します。   背景DOE-JGIはカリフォルニア州ローレンスバークレー国立研究所に拠点を置く、米国エネルギー省の合同ゲノム研究施設です。CSP(コミュニティ・サイエンス・プログラム)はDOE-JGIの主要なユーザープログラムであり、世界中の研究者が提案する斬新なゲノム科学プロジェクトに対し、シーケンス解析やデータ解析といったサービスを無償提供するものです 。特に「大型(Large-Scale)」枠の公募では、数年スケールで大量のゲノムデータを生成する野心的な提案が求められます。このCSPは、毎年公募、採択される年1回の大型公募であり、2026年度においては世界中から応募が寄せられ、その中から厳正な国際ピアレビューを経て14件のみが採択されました。また、CSP採択プロジェクトは過去に数多く画期的な成果を生み出しており、その成果論文がNature、Scienceといった著名科学誌に掲載される例も少なくありません。こうした背景から、本プログラムへの採択は研究資源の獲得だけでなく、研究の国際的な評価・発信につながる名誉ある業績と位置付けられています。 日本からDOE-JGI CSPに採択される事例はきわめて少なく、本件は数年ぶりの快挙となりました。広島大学の丸山教授の採択は、日本の環境ゲノム・微生物研究が国際舞台で高く評価された証と言えます。   研究内容今回採択された丸山教授の研究課題は、「未培養Patescibacteria門微生物の地下水における物質循環機能の解明:共生的相互作用の解析を通じて」(原題:Uncovering the roles of uncultivated Patescibacteriota in groundwater biogeochemical cycling through the analysis of symbiotic interactions)です 。Patescibacteria門(分類学上はPatescibacteriotaとも呼称)は、近年存在が明らかになった超小型細菌群で、培養が困難な「未培養微生物」の一大系統です。これらの細菌はゲノムサイズがわずか0.5~1.0百万塩基対程度(100-300nm)と極端に小さく、他の生物に普通存在する必須遺伝子の多くを欠失しており、その大半が他の微生物に寄生・共生する形で生存していると考えられています 。しかし、こうした極小細胞の微生物が地下水環境でどのような役割を果たし、他の微生物とどのように関わっているのかは未解明のままでした。 丸山教授らのプロジェクトでは、JGIの支援する大規模ゲノム解析技術を駆使し、地下水中のPatescibacteria門細菌およびその共生相手となる微生物群集のDNAを包括的に解析します。具体的には、地下水試料からメタゲノム解析を行い高品質なゲノム配列を再構築することで、Patescibacteria門に属する複数種のゲノム情報を取得し、そこに潜む代謝経路や相互作用遺伝子を明らかにします。また、得られたゲノムから推定される機能に基づき、Patescibacteriaが共生相手からどのような栄養素や代謝産物をやりとりしているのか、逆に地下水中の炭素・窒素など物質循環プロセスに与える影響を解明することを目指します。さらに、必要に応じて単一細胞ゲノム解析や分子生態学的手法も組み合わせ、Patescibacteria門細菌と他の微生物との共生関係の実態に迫ります。本研究により、地下深部の環境で長らくブラックボックスとされてきた微生物生態系の一端が解明され、新規微生物の機能や進化の謎に光を当てることが期待されます。   今後の展開丸山教授のプロジェクトは、2026年度からDOE-JGIの支援のもと本格始動します。今後数年間でテラバイト級のDNAシーケンスデータが産出され、人工知能(AI)も活用した大規模データ解析により、地下水中微生物の未知の生態が次第に明らかになっていく見込みです。得られた知見は、地下環境における炭素循環や養分循環モデルの高度化、さらには環境浄化や資源エネルギー分野への応用に貢献することが期待されます。また、本採択を契機に広島大学はDOE-JGIや海外トップ研究者との連携を一層深め、国際共同研究の展開や本課題の共同受賞者であるスマートソサイエティ実践科学研究科博士課程2年の福士宗幸氏を含めて、人材交流を促進していきます。将来的には、本プロジェクトの成果論文を国際学術誌へ発表し、広島大学発の環境ゲノム研究として世界に発信する予定です。丸山教授は「本研究により、地下に広がる未知の微生物世界の解明が進み、環境微生物学のフロンティアを切り拓きたい」と抱負を述べています。本学は引き続き最先端研究を通じて地球規模課題の解決に貢献していきます。   <Joint Genome Institute(JGI)の公式発表ページはこちら> https://jgi.doe.gov/user-science/science-stories/jgi-announces-fy26-large-scale-portfolio-our-community-science-program   報道発表資料(240.68 KB) 研究者ガイドブック(丸山 史人教授)   【お問い合わせ先】 広島大学 IDEC国際連携機構環境遺伝生態学研究分野 教授丸山史人(まるやまふみと) E-mail:fumito*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2026.01.09
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    メスのメダカの性行動を行うモチベーションは排卵周期にシンクロする ~メスがオスを受け容れる行動を生み出す神経回路の解明に期待~

    本研究成果のポイント ゲノム編集により排卵できなくなったメダカのメスは、性行動のモチベーションがなくなり、オスの求愛を受け容れなくなった メスのメダカにおける排卵発生のタイミングと性行動のモチベーションが上昇するタイミングを正確に明らかにし、排卵が脳に伝わることで性行動を促す神経内分泌メカニズムの実体を提唱した この神経細胞を起点として、メスがオスを受け容れる行動を生み出す神経回路の全容解明につながると期待   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科 富原壮真 助教(研究当時:東京大学 大学院理学系研究科 博士課程)、下舞凜子(研究当時:東京大学 大学院理学系研究科 修士課程)、大阪医科薬科大学 医学部 中城光琴 助教、東京大学 岡良隆 名誉教授、東京農工大学 大学院農学研究院応用生命化学部門 馬谷千恵 助教(研究当時:東京大学 大学院理学系研究科 助教)の研究グループは、メダカのメスの性行動に対するモチベーション(性的受容性)が、一日周期で回る排卵周期に同期して変動することを明らかにしました。   一般に魚類のメスが産卵するためには、卵巣に発達した卵がある状態でオスを受け容れるといったように、卵巣の状態と性的受容性を同期させることが重要です。しかし、卵巣の状態を脳に伝え性的受容性を制御する神経内分泌メカニズムがどのようなものなのか、その詳細は明らかになっておりませんでした。   今回の研究では、ゲノム編集技術※1を用いて卵巣の状態が異なるメスメダカを作出し、卵巣の状態の中でも特に「排卵※2が起きたこと」がメスの性的受容性の促進に寄与していることを明らかにしました。また、メダカのメスを経時的に観察することで、排卵と性行動のそれぞれが起こるタイミングを正確に捉え、排卵の直後から性行動が起こることを示しました。さらに、卵巣において排卵時に分泌されるホルモンが脳内の神経細胞に直接受け取られることで、性的受容性が促進することを示唆する結果を得ました。これは、メスの性的受容性を排卵周期に同期して上昇させる神経内分泌メカニズムの実体を提唱するものです。   本研究により、魚類メスの性的受容性を促進する神経回路の理解が進むとともに、新たな繁殖技術など水産増養殖法の改良に向けた研究にもつながると期待されます。 本研究成果は、英国科学誌「Journal of Neuroendocrinology」に、2026年1月9日(金)(日本時間)にオンライン公開されました。   背景 魚類は、脊椎動物の中でも特に多様化した動物であり、さまざまな種が海や川などの世界中の水域に生息しています。この魚類たちは、一般にそれぞれの種の雌雄で性行動を行うことで、新たな子孫が生まれ、種が存続していきます。多くの魚類の性行動は、オスがメスに求愛行動を行うことで開始され、メスが求愛を受け容れるかどうかが繁殖成功の鍵となります。一方、メスはいつでもオスを受け容れるわけではなく、卵巣に発達した卵が存在し、卵が産める状態になった時にのみオスを受け入れることが多くの種で報告されています。このように魚類メスがオスを受け容れて性行動を行うモチベーションすなわち性的受容性は、卵巣の状態に同期して上昇し、これによってメスは正確なタイミングでオスの求愛を受け容れることができます。しかし、魚類において卵巣の状態を脳に伝える神経内分泌メカニズムがどのようなものなのか、その詳細は明らかになっていませんでした。   本研究で用いたメダカは、一日周期で卵を産み、また定型的な性行動のパターンを示すため、性行動の解析に適した魚です。また、卵巣での卵発達を制御する神経内分泌メカニズムの知見が豊富であるため、卵巣の状態と性的受容性を同期する仕組みの理解に適切なモデルであると考えました。   研究成果の内容 メダカをはじめとする魚類のメスにおいては、脳の視床下部に存在する神経細胞や脳下垂体から分泌されるホルモンによって卵巣における卵の成長が制御されています。このため、ゲノム編集技術でこの卵巣機能制御に関与する遺伝子を機能不全にしたメスメダカの性行動を解析し、オスから求愛を受けるかどうかや、その求愛を最終的に受け容れるかどうかを解析しました。その結果、脳下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)※3の遺伝子の一部が欠損し、発達した卵を持ちながら排卵することが出来ないメスメダカ(LH欠損メダカ)は、オスから正常に求愛されるにも関わらず、その求愛を一切受け容れませんでした。また、正常なメダカのメスの排卵が起こるタイミングと性行動を行うタイミングを経時的に観察した結果、排卵は飼育室の照明が点灯する約2時間前に起き、一方で性行動は照明点灯の1.5〜1時間前に行われることを正確に明らかにました。このように、性行動は排卵の起きた直後に行われることがわかり、メスの性的受容性は排卵することで上昇することが示唆されました。   次に、このLH欠損メダカに排卵時に卵巣から分泌されることが報告されている性ステロイドホルモン17α, 20β-DHP※4と受容体※5をともにするP4※6を投与すると、オスと性行動をする様子が観察され、性的受容性が回復しました。興味深いことに、P4の投与では排卵そのものが回復することはなかったため、P4が卵巣に作用し排卵が起き、結果的に性的受容性が回復したのではなく、投与したP4が直接脳内に受容されることで性的受容性が回復したことが考えられます。実際、17α, 20β-DHPやP4の受容体は、終脳腹側野や視索前野といった脳内の性行動に関与することが報告されている領域に存在する神経細胞で発現しており、自然条件下でも排卵時に卵巣から分泌されるホルモンが脳内で直接受容され、この神経細胞が性的受容性の促進に関与する経路が存在することが示唆されました。   今後の展開 本研究により、魚類メスの性的受容性を促進することに寄与する神経細胞の実体が一部明らかになりました。今後はこの神経細胞を起点として、メスがオスを受け容れる行動を生み出す神経回路の全容解明につながると期待されます。   論文情報 掲載雑誌名:Journal of Neuroendocrinology 掲載日:2026年1月9日 タイトル:Sexual Receptivity Increases in Synchrony with the Ovulatory Cycle in Female Medaka 著者:富原 壮真、下舞 凜子、中城 光琴、岡 良隆、馬谷 千恵 DOI:https://doi.org/10.1111/jne.70119   参考資料   用語解説 ※1ゲノム編集技術:生物のゲノムDNAのうち、目的の遺伝子領域を酵素の“ハサミ”で切断することでその遺伝子の機能を欠損、あるいは改変する技術。 ※2排卵:卵巣内で発達した濾胞(卵を包む袋状の構造)が破れ、卵が卵巣の外に放出される現象。体外受精を行う魚類の多くは、メスが排卵された卵を腹内部に蓄え、オスと性行動を行うことで卵を体外に放出する。この体外に放出する現象は放卵といい、排卵とは異なる現象である。 ※3黄体形成ホルモン(Luteinizing hormone; LH):脳下垂体から分泌されるホルモンで、複数のアミノ酸が繋がったペプチド。脊椎動物に広く保存されているホルモンであり、哺乳類では排卵に加え、卵を成長させる機能も担う。一方で魚類においてこのホルモンは排卵を制御し、卵の成長は別のホルモン(濾胞刺激ホルモン)が担う。 ※417α, 20β-DHP:メダカをはじめとした魚類の多くにおいて、排卵時に卵巣から分泌されるホルモン。このホルモンは、脳下垂体から分泌されたLHが卵巣の細胞の受容体に結合することで卵巣の細胞から産生・分泌され、濾胞を破って卵を濾胞の外に放出する現象(排卵)を引き起こす。 ※5受容体:細胞内または細胞膜に存在するタンパク質で、ホルモンや神経伝達物質のような特定の分子(リガンド)を選択的に受け取り、細胞内外の情報を伝達する。 ※6P4:17α, 20β-DHPと似た構造を持つものの、メダカにおいては排卵を引き起こすことのないホルモン。17α, 20β-DHPとP4は同じ受容体※5を活性化するため、これらのホルモンは同じ細胞に受容されることが予想される。   報道発表資料.pdf(372.84 KB) 掲載雑誌:Journal of Neuroendocrinology 研究者ガイドブック(富原 壮真 助教)   【お問い合わせ先】 〈研究に関すること〉 広島大学大学院統合生命科学研究科 助教富原 壮真 Tel:082-424-7458 E-mail:tomihara@hiroshima-u.ac.jp   東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門 助教馬谷 千恵 Tel:042-367-5696 E-mail:chie@go.tuat.ac.jp   〈報道に関すること〉 広島大学広報室 TEL:082-424-6762 FAX:082-424-6040 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   東京農工大学総務課広報室 TEL:042-367-5930 E-mail:koho2@cc.tuat.ac.jp

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    2026.02.04
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    防風林近くの農業湿地では、ヒバリ、ケリなど草原や湿地に棲む野鳥が減少することを確認 ~農業生産と生物多様性保全を両立させる農地管理の実現へ~

    本研究成果のポイント 水田やハス田では、防風林※1の近くでオオヨシキリやホオジロなど林や藪を好む鳥やムクドリは増える一方、ヒバリやケリのような開けた環境を必要とする草原・湿地性鳥類は棲みにくくなります。これは、防風林があることでその林の中にキツネや猛禽類などの捕食者が身を隠しやすくなるため、などが考えられます。 草原性鳥類は、防風林に隣接する地点では、防風林から約1km離れた開放的な環境に比べて、個体数が約70%少ないことが分かりました。 本研究は、防風林を一律に増やすよりも、草原・湿地性鳥類が利用する開放的な農業湿地※2環境を途切れずに残すよう配置・管理する方が、農地全体の生物多様性の維持に有効であることを示しています。   概要 広島大学大学院先進理工系科学研究科の久野真純助教らは、農業湿地景観における防風林が鳥類群集※3に与える影響を明らかにしました。石川県河北潟周辺の農業湿地で調査した結果、防風林の周辺ではシジュウカラやコゲラを含む林の縁を好む鳥の種類や数が増える一方で、ヒバリなど草原性の鳥の数や、ケリなどのチドリ類、サギ類、カモ類など湿地性の鳥の種類が減少することが分かりました。 特に草原性鳥類(ヒバリとキジ)では、防風林に隣接する地点で個体数が大きく減り、開放環境と比べて約70%少ないことが明らかになりました(図1)。本研究は、防風林を一様に増やすだけでは農地全体の生物多様性の向上につながらない場合があることが示されました。今後は、開放的な環境が連続するよう防風林の配置や管理を工夫することがだと考えられます。 本研究成果は、2026年1月15日に、国際学術誌「Journal of Environmental Management」にオンライン掲載されました。 また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。   論文情報 掲載雑誌:Journal of Environmental Management 論文題目:Shelterbelts support edge birds but limit grassland and wetland specialists in agricultural landscape 著者: K久野真純・出口翔大・Wenhuan Xu・Xike Xiao・Keinosuke Sannoh・Xinli Chen・本村健 DOI: https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2026.128583 図1:草原性の鳥の個体数と防風林までの距離の関係性を表したグラフ(Hisano et al. 2026を元に改変)   背景 農業集約化に伴う生息地の単純化は、世界的に農地鳥類の減少を引き起こしてきました。これに対応するため、各国の農業環境計画では、防風林や生け垣林などの農地樹林帯を維持・植栽することが推奨され、林縁性※4や森林性の鳥類を支える有効な手段と考えられてきました。一方で、こうした直線状の樹林帯は、草原性・湿地性鳥類にとって生息地を分断し、樹林帯を利用する猛禽類などに捕食される危険を高める可能性が指摘されています。   これまで、北米ヨーロッパの草原・畑地景観では、防風林や樹林帯が鳥類群集に与える影響が研究されてきましたが、アジア・モンスーン気候帯に広がる水田やハス田などの農業湿地景観では、その影響はほとんど検証されていませんでした。農業湿地は、自然湿地が減少した地域において、多くの湿地性・開放環境性鳥類にとって重要な代替生息地となっており、渡り鳥の中継地としても重要な役割を果たしています。そのため、農業湿地における防風林の効果を理解することは、生物多様性保全と農地管理の両立を考えるうえで重要な課題です。   研究成果の内容 本研究では、石川県河北潟周辺の農業湿地景観(水田・ハス田)を対象に、防風林の有無や距離が鳥類群集に与える影響を調べました。その結果、防風林は藪・林縁性鳥類の種数や個体数を増加させる一方で、草原性および湿地性スペシャリストの生息を制限することが明らかになりました。とくに草原性鳥類では、防風林に隣接する地点で個体数が著しく低下し、防風林から約1km離れた開放環境と比べて約70%少ないことが示されました。 これらの結果は、防風林が林縁性鳥類にとっては営巣や隠れ場所として機能する一方で、見通しの良い開放環境を必要とする地上営巣種にとっては、生息地の縮小や捕食リスクの増加をもたらす可能性を示しています。防風林は鳥類の多様性を一様に高めるのではなく、鳥類群集の構成そのものを変化させる要因であることが明らかになりました。  石川県河北潟のハス田に隣接して設けられた防風林の例。農地の風害対策として設置された防風林は、林や藪を利用する鳥類のすみかになる一方で、広く見通しのよい環境を必要とする鳥類にとっては、生息地利用の妨げの要因となることがある。 撮影:久野真純   防風林の影響を受けやすいと考えられる湿地性の鳥ケリ(左)と、草原性の鳥ヒバリ(右)。いずれも日本各地の水田で見られる種だが、本研究により、防風林に近い環境では生息地として利用しにくくなる可能性が示された。撮影:久野真純   期待される成果 本研究は、防風林や農地樹林帯の効果を、特定の種だけでなく鳥類群集全体の視点から評価し、農業湿地景観における管理上のトレードオフ※5を明確に示した点に特徴があります。これにより、防風林を含む農地樹林帯の維持・植栽がすべての鳥類にとって一様に有益であるという前提 (Hinsley and Bellamy 2000, Heath et al. 2017) を見直す科学的根拠を提供しました。 本研究成果は、農業環境計画や土地利用計画において、防風林を「増やすべき要素」として一律に扱うのではなく、どこに、どの程度配置するかを検討する必要性を示しています。とくに、草原性・湿地性スペシャリスト※6や地上営巣種が生息する農業湿地では、開放環境の連続性を確保することが、生物多様性の維持にとって重要であることが示唆されました。   さらに、水田やハス田などの農業湿地が、自然湿地の減少が進む地域において、渡り鳥や湿地性鳥類の重要な代替生息地となっている点を踏まえると、防風林の配置や規模を適切に設計することで、林縁性鳥類を支えつつ、国際的に減少傾向にある湿地性・草原性鳥類の生息地機能を損なわない農地管理が可能になると期待されます。これらの知見は、日本国内にとどまらず、アジア・モンスーン気候帯を中心とした世界の農業湿地において、持続的な農業と生物多様性保全を両立させる景観管理の指針として活用されることが期待されます。   今後の展開 本研究は、防風林の一律的な拡大が必ずしも農地生物多様性の向上につながらないことを示しました。今後は、防風林の配置や間隔、規模といった設計要素が、鳥類や捕食者の行動にどのように影響するかを、より詳細に検証する必要があります。また、季節や土地利用の違いを踏まえ、農業湿地全体の中でどの程度の開放環境を維持すべきかを明らかにすることが重要です。将来的には、防風林と開放環境を適切に組み合わせた景観設計指針を提示することで、農業生産と生物多様性保全を両立させる農地管理の実現に貢献することを目指します。   用語解説 ※1防風林:農地の風害防止を目的として植えられた直線状の樹木帯。農業生産を支える一方で、鳥類にとっては林縁環境や移動経路として機能することがある。 ※2農業湿地:水田やハス田など、人為的に管理されているが、水域や湿地環境の性質を持つ農地。自然湿地が減少した地域では、多くの湿地性生物の代替生息地となっている。 ※3鳥類群集:同じ地域に生息する複数の鳥類種からなる集まり。 ※4林縁性鳥類:森林と開放環境の境界(林縁)を主な生息場所として利用する鳥類。藪や樹木を隠れ場所や営巣場所として利用する種が多い。 ※5トレードオフ:ある対策によって得られる利益と、同時に生じる不利益の関係。本研究では、防風林が林縁性鳥類を支える一方で、草原・湿地性鳥類の生息を制限する関係を指す。 ※6草原性・湿地性スペシャリスト:草原や湿地などの開放的な環境に特化して生息する鳥類。見通しの良い環境を好み、地上で営巣する種も多い。   その他 本研究に取り組むきっかけは、これまでイギリスやアイルランド、ブルガリア、スイスなど、ヨーロッパを訪れた際に目にした農業景観にあります。ヨーロッパの農地には、畑や草地の境界にヘッジロー(生け垣林)が設けられており、日本の農村風景とは大きく異なる印象を受けました。農地の中に、周囲とは明瞭に異なる「緑の線」が連続している景観が、強く心に残りました。 一方で、日本の農地では、水田など広く開けた空間が人工湿地として機能しており、ヒバリやケリなど、見通しの良い環境を好む鳥たちが利用しています。こうした違いを実際に現地で見比べるなかで、「ヨーロッパで良いとされている農地での植栽が、日本の農地でも同じように良い結果をもたらすのだろうか」という疑問を抱くようになりました。とくに、共同研究者の出口翔大博士(福井市自然史博物館)と議論を重ねるなかで、ヘッジローや防風林のような線状の樹木構造は、林縁性の鳥類には居場所を提供する一方で、開放環境を必要とする鳥類にとっては、かえって生息しにくい環境をつくっているのではないか、という考えに至りました。この疑問が、本研究を進める原動力となりました。   本研究は、NPO法人河北潟湖沼研究所(河北潟研究奨励助成)、日本学術振興会(科研費・若手研究:21K17912)および広島大学スタートアップ経費による支援を受けて実施されました。   参考 Heath, S. K., C. U. Soykan, K. L. Velas, R. Kelsey, and S. M. Kross. 2017. A bustle in the hedgerow: Woody field margins boost on farm avian diversity and abundance in an intensive agricultural landscape. Biological Conservation 212:153-161.   Hinsley, S. A., and P. E. Bellamy. 2000. The influence of hedge structure, management and landscape context on the value of hedgerows to birds: a review. Journal of Environmental Management 60:33-49.   報道発表資料(648.85 KB) 掲載ジャーナル:Journal of Environmental Management 研究者ガイドブック(久野 真純 助教)   【お問い合わせ先】 大学院先進理工系科学研究科理工学融合プログラム(開発科学分野) 久野 真純助教 Tel:082-424-6905FAX:082-424-6904 E-mail:hisano*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

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    2026.02.05
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    瀬戸内海のイカナゴが突然減った謎に迫る ―環境変動で捕食される危険性が高まったことが原因―

    本研究成果のポイント 瀬戸内海東部におけるイカナゴの漁獲量が2017年に急減した背景には、水温上昇、餌不足、捕食者の増加が重なって作用していたことを明らかにしました。 イカナゴを捕食する可能性のある魚食性の魚類14種は、2016年以降に個体数の多い状態が続いていました。 春から初夏に十分な餌をとれないと夏眠の開始が遅れ、捕食される危険性が高まることが示唆されました。   概要 広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所の米田道夫主任研究員らの研究グループは、瀬戸内海東部において春季の主要な漁獲対象種であるイカナゴの漁獲量が2017年に急減し、その後も低水準が続いている要因を調査しました。その結果、水温の上昇と餌不足といった環境変動が重なったことで、2016年にイカナゴが捕食される危険性が急激に高まり、これが2017年の漁獲量の急減につながった主要因であることを明らかにしました。 本研究成果は、2026年1月2日に学術雑誌Marine Environmental Researchに掲載されました。また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けました。   〈論文発表〉 論文タイトル:Local environmental changes boost predation risk in forage fish: application to the sand lance in the eastern Seto Inland Sea   著者:谷口碧1、米田道夫2、西川哲也3、中村政裕2、森岡泰三2、冨山毅1* 1 広島大学大学院統合生命科学研究科; 2 国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所; 3兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター   *Corresponding author(責任著者) 掲載雑誌:Marine Environmental Research 215: 107827 DOI: 10.1016/j.marenvres.2025.107827   背景 イカナゴはイカナゴ科に属する小型魚で、瀬戸内海の東部、特に大阪府、兵庫県、香川県において重要な水産資源であり、3~4月にかけて漁獲される稚魚は「くぎ煮」の材料として広く親しまれてきました。瀬戸内海東部におけるイカナゴの漁獲量は、減少傾向にありながらも、2016年までは年間1万トン以上を維持してきました。しかし、2017年にイカナゴの漁獲量は前年の約1割まで急激に落ち込み、その後も回復せず、現在まで3千トン未満の低水準が続いています(図1)。これまで、この減少の背景として、「海がきれいになりすぎたこと(栄養塩濃度の低下)により、イカナゴの餌となる動物プランクトンが減少し、その結果、イカナゴの産卵量が低下した可能性」が指摘されてきました。しかし、餌環境の悪化や産卵量の減少は、通常は時間をかけて徐々に進行する現象であるため、イカナゴの漁獲量が2017年に突発的に大きく減少した理由は明確にはなっていませんでした。   研究成果の内容 本研究では、 (1) イカナゴを捕食する魚類の増減に着目した長期データ解析、 (2) 水温上昇と餌不足がイカナゴの行動に及ぼす影響を調べる飼育実験、 を行いました。   (1) イカナゴは冬に生まれ、春~初夏にかけて活発に餌を食べて栄養を蓄えた後、夏に砂に潜って冬まで眠る「夏眠」という習性を持っています。このため、夏眠に入る前までに十分な栄養を蓄えられるかどうかが、生き残りにとって重要です。そこで、1~7月における魚食性魚類14種(サワラ、ブリ、ハモ、スズキ、ヒラメなど)の漁獲情報を解析し、捕食者の分布状況の変化を調べました。その結果、2015年以前と2016年以降で状況は大きく異なり、2016年から捕食者が急激に増加していたことが明らかになりました(図2)。   (2) 餌が十分な条件と餌が不足した条件でそれぞれイカナゴを飼育し、行動の違いを比較しました。その結果、餌が不足したイカナゴでは夏眠の開始が遅れることがわかりました。この影響は、水温の上昇による影響よりも大きく、餌不足の状態では、夏眠までに栄養を蓄えるためにイカナゴは長時間活動し続ける必要があることが示されました。これは、捕食者と遭遇する機会、すなわち「捕食される危険性」が高まることを意味します。 以上から、瀬戸内海東部のイカナゴには、餌不足と水温上昇、さらに捕食者の増加が重なって作用していたことが明らかとなりました。特に、2016年に捕食者が急激に増えたことにより、その年に夏眠に入るイカナゴが大きく減少し、その結果、冬の産卵量が激減したと考えられます。このことが、2017年に稚魚が急激に減少した主な要因として説明されました。   今後の展開 イカナゴの資源量や漁獲量は全国的に減少しています。その要因は海域ごとに異なる可能性もあるため、それぞれに調べる必要があります。これまでの資源変動の研究では、水温や餌環境など、生き物の成長や繁殖に直接関与する要因(ボトムアップ効果)が主に注目されてきました。一方で、本研究では捕食者の増減が資源変動に関与する可能性(トップダウン効果)が示され、このアプローチによる新たな科学的な検証が可能となりました。トップダウン効果は野外で直接検証することが難しいものの、長期的な漁獲データ解析と飼育実験を組み合わせた統合的なアプローチによって、科学的な検証が可能となることを示した点に、本研究の意義があります。今後は、本研究の枠組みを他海域や他の魚種に適用し、急激な環境変化のもとで起こる資源変動の仕組みを解明していくことが重要です。   参考資料 図1 瀬戸内海におけるイカナゴの漁獲量 図2 魚食性魚類の分布密度(赤色が高く、青色が低いことを示す)   【プレスリリース】瀬戸内海のイカナゴが突然減った謎に迫る―環境変動で捕食される危険性が高まったことが原因―.pdf(351.29 KB) 掲載ジャーナル:Marine Environmental Research 研究者ガイドブック(冨山 毅 教授)   <研究に関すること> 広島大学大学院統合生命科学研究科教授冨山毅 Tel:082-424-7941 E-mail:tomiyama@hiroshima-u.ac.jp   国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所主任研究員米田道夫 Tel:0193-63-8121 E-mail:yoneda_michio55@fra.go.jp   <報道に関すること> 広島大学 広報室 TEL:082-424-4518 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   国立研究開発法人水産研究・教育機構経営企画部広報課 E-mail:Fra-pr@fra.go.jp

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    2025.11.20
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    ウニ幼生に光で行動を調節する脳のような神経細胞群が存在することを発見

    脳を持たないとされてきたウニ幼生に、光で行動を調節する「脳のような」の神経細胞群(中枢)を見いだしました。この神経細胞群は、脊椎動物の脳と一部共通する特徴が確認され、後口動物の共通祖先までさかのぼる脳機能の起源に関する新たな示唆を提供する結果となりました。 本研究は、ウニ幼生の前端部神経外胚葉に、非視覚性光感受性ニューロン(「見る」ためではなく、光を感じて応答する神経)の細胞群を同定しました。これにより、脊椎動物の脳に相当する「中枢」が、脳を持たないとされてきた棘皮動物(ウニ)にも存在する可能性が示唆されました。これらの神経細胞群は、光を感知するタンパク質である非視覚オプシン(Opn5L)や、脊椎動物間脳の形成を担うrx、otx、six3、lhx6などの制御遺伝子を発現します。また、この細胞領域を統合的に解析したところ、Opn5Lの機能低下で光依存的な遊泳行動が損なわれることが分かりました。こういった分子特徴は脊椎動物の脳領域のそれと一部重なることから、ウニ幼生に存在する非視覚性の光受容中枢は、後口動物の共通祖先に由来する脳機能の素地を残している可能性を示します。 非視覚オプシンを発現する神経とその周辺領域の発生過程を厳密かつ系統横断的に比較することは、脊椎動物の脳を含む中枢神経の進化や多様化の過程を解く上で、新たな理論や見解を提供すると期待されます。     【研究代表者】 筑波大学生命環境系 谷口 俊介准教授 千葉大学大学院医学研究院 露崎 弘毅特任講師 京都大学大学院理学研究科 山下 高廣講師 広島大学ゲノム編集イノベーションセンター 山本 卓教授     【研究の背景】 進化の過程における中枢神経(脳)の獲得は、ヒトを含む脊索動物の多様化を支えた重要な出来事です。しかし、神経や脳が動物進化のどの段階で生まれ、どの系統でどのように複雑化したのかは、よく分かっていません。脳・中枢神経の主要な役割は外界情報を統合して適応的な運動へ変換することであり、その起源の解明は生物学の根本課題です。 一方、後口動物注1)では、前方神経外胚葉に由来する脳領域(前脳など)が光情報処理の中核を担うと考えられ、表層には、視覚オプシン、深部には非視覚オプシン(いずれも光を感知するタンパク質)が配置されるという脊椎動物との共通性が示唆されています。しかしながら、脊椎動物と最も近縁の棘皮動物門(ウニなど)注2)には集中して存在する「脳領域」が見えにくく、前後軸の明瞭な指標も乏しいため、脊椎動物型の脳がいつ、どのように現れたかをたどることは容易ではありません。 それでも近年、前後軸が明確な成長段階であるウニ幼生で、前脳様の遺伝子発現やそれを結ぶ制御ネットワーク、さらに光などの環境情報を行動へ統合する神経回路が明らかになりつつあります。非視覚オプシン様の受容体も複数同定され、光による遊泳や消化活動の調節に関与する例が報告されています。こうした知見を踏まえ、本研究では、ウニ幼生において非視覚的な光受容を担う「脳様」領域を、遺伝子発現と機能の両面から定義し、脊椎動物の脳に通じる組織化が棘皮動物との共通祖先にさかのぼる可能性を示しました。     【研究内容と成果】 本研究では、バフンウニ(Hemicentrotsu pulcherrimus)幼生の前端部神経外胚葉に存在する「非視覚的な光受容を担う脳様領域(神経細胞群)」を単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)注3)とin situ ハイブリダイゼーション注4)にて特定し、行動解析によってその機能を統合的に定義しました。幼生期の神経細胞は稀少で検出が難しいため、Delta–Notch による側方抑制注5)を阻害する薬剤を用いて神経細胞数を一時的に増やし、神経集団の解像度を高めました。その結果、これまで一様とみなされがちだったセロトニン注6)作動性ニューロンが、前方群と背側群という二つの集団に分かれており、背側群は非視覚オプシン(Opn5L)を発現していることを見いだしました(図1)。 遺伝子発現の空間解析では、背側群と前方群とでは、形態と配置のいずれもが異なること、さらに特定の転写因子セットが背側群に偏って現れることを明らかにしました。背側群の一部細胞は上皮層から脱落して移動し、前方群の近傍に合流する過程がライブイメージング注7)で観察され、移動性ニューロンとしての性質を持つことが示唆されました。これは、後口動物のうち脊索動物に特有と考えられてきた神経移動が、ウニ幼生にも備わっている可能性を示す重要な知見です。 機能面では、Opn5L の機能低下により、連続照明下で沈降(浮遊喪失)行動が有意に抑えられ、光入力が遊泳・浮沈の制御に直接関与することを実証しました。加えて、セロトニン合成関連の制御因子や領域指定因子の発現解析から、当該領域が脊椎動物の終脳/間脳と似た分子設計原理を持つことが示されました(図2)。以上より、ウニ幼生には非視覚光受容を核とする脳様中枢が存在し、環境光情報を行動へ統合する回路の一部が保存されている可能性が高いことが明らかになりました。これは、後口動物共通祖先にさかのぼる脳機能の起点を、具体的な細胞群と遺伝子プログラムとして提示する成果です。     【今後の展開】 今後は、光→行動の回路に関するより詳細な解析や、比較発生・比較ゲノミクスによる系統横断検証(棘皮・半索・脊索動物での保存/分岐の同定)を進め、非視覚オプシン中枢の普遍性と系統特異性の理解を深めます。最終的には、脳の「はじまり」の設計図を、細胞系譜、遺伝子ネットワーク、行動出力の三層で統合し、脊椎動物脳の起源と多様化に対する新しい指標の提示を目指します。   参考図 図1(左)ウニ幼生を背側から見た模式図。前端部(水色)領域は前端部神経外胚葉、つまり脊索動物でいうところの脳領域に類似する。しかし、発生初期にここに存在するセロトニン神経は単一のタイプとされ、それほど複雑さはないとみなされていた。(右)この脳領域に対してscRNA-seqを行ったところ、セロトニン神経が2集団から構成され、それぞれ異なる遺伝子発現をしていることが明らかになった。特に体の後方背側に位置する集団は非視覚オプシンとともに、脊索動物では間脳形成に関与している遺伝子群が発現していることが明らかになった。 図2前後方向に区画分けされたウニ幼生(左図)の脳様領域と、脊椎動物であるマウスの脳(右図)の比較。発現遺伝子プロファイルの比較で、前後軸に沿った類似性が見られた。   用語解説 注1) 後口動物 系統進化上、左右相称動物を大きく二つに分けた時の分類群の一つ。原腸陥入(消化管の元となる原腸が形成される過程)の際の原口(入口部分)が肛門になり、原腸の前端部が体表と接する部分に新たに口ができるグループ。脊索動物と棘皮動物、半索動物を含む。 注2) 棘皮動物門 分類学上の階級(界・門・綱・目・科・属・種)の中で、門で分類した場合のグループの一つ。ウニ、ナマコ、ヒトデ、クモヒトデ、ウミユリの仲間を含む。 注3) 単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq) 多細胞生物の体を構成する細胞それぞれに発現しているmRNAを細胞ごと網羅的に解析する手法。どの細胞にどのような遺伝子が発現しているのかを知ることができる。 注4) in situハイブリダイゼーション 細胞内において特定のmRNAの分布を検出する手法。特定の配列を持つmRNAにラベルをつけ、細胞内のターゲットとなるmRNAと結合(ハイブリダイゼーション)させてラベルを検出する。 注5) Delta-Notchによる側方抑制 隣接する細胞が相互作用することで互いに異なる運命をもたらすメカニズムで、多くの動物の神経細胞分化の過程で見られる現象。DeltaとNotchはいずれも細胞膜上の膜タンパク質で、隣接する一方の細胞のDeltaがもう一方の細胞のNotchと結合することで、この細胞でのDeltaの発現を抑制し、役割の異なる細胞を分化させる。 注6) セロトニン 神経伝達物質の一つ。ヒトの脳にも存在しており、精神安定など、さまざまな機能を果たしている。ウニでは、脳を構成する神経の中で最も早く形成される。 注7)ライブイメージング 光学顕微鏡を用いて生きたままの生き物の動きや細胞の変化を直接観察する手法。今回はウニ胚の細胞膜と核を蛍光タンパク質によって標識し、それをレーザー光で光らせたものを観察した。   研究資金 本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「多細胞システムにおける細胞間相互作用とそのダイナミクス」研究領域(JPMJPR194C, JPMJPR1945;2019-2022年度)、科学技術振興機構(JST) 研究成果展開事業が助成するA-STEP(JPMJTR204E; 2019-2024年度)、日本学術振興会が助成する科学研究費基盤研究(B)(23K23933; 2022-2025年度)、(C)(23K11312;2023-2027年度)、(若手)(19K20406: 2019-2022 年度)日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業 CREST「マルチセンシングネットワークの統合的理解と制御機構の解明による革新的医療技術開発」研究領域(22gm1510007; 2022-2027年度)、東レ科学振興会が助成する東レ科学技術研究助成(2018-2020年度)、武田科学振興財団が助成するライフサイエンス研究奨励(2015年度)による助成によって実施されました。   掲載論文 【題名】 Non-Visual Photoreceptive Brain Specification in Sea Urchin Larvae (ウニ幼生における非視覚光受容に関与する脳領域の形成) 【著者名】 #Junko Yaguchi, *#Koki Tsuyuzaki, Ikutaro Sawada, Atsushi Horiuchi, Naoaki Sakamoto, Takashi Yamamoto, Takahiro Yamashita, *Shunsuke Yaguchi (*責任著者、#equal contribution) 【掲載誌】 Nature Communications 【掲載日】 2025年11月19日 【DOI】 10.1038/s41467-025-65628-9   【プレスリリース】ウニ幼生に光で行動を調節する脳のような神経細胞群が存在することを発見.pdf(1.42 MB)掲載誌:Nature Communications 研究者ガイドブック(山本卓教授)   【問い合わせ先】 【研究に関すること】 谷口俊介(やぐちしゅんすけ) 筑波大学生命環境系/下田臨海実験センター准教授 TEL: 0558-22-1317 E-mail: yag@shimoda.tsukuba.ac.jp URL: https://sites.google.com/site/yaguchisea/home X@urchin_lab   【取材・報道に関すること】 筑波大学 広報室 TEL: 029-853-2040 E-mail: kohositu@un.tsukuba.ac.jp   千葉大学 広報室 TEL: 043-290-2018 E-mail: koho-press@chiba-u.jp   京都大学 広報室 国際広報班 TEL: 075-753-5729 E-mail: comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp   広島大学 広報室 TEL: 082-424-4518 E-mail: koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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    • 気候変動/エネルギー/GX
    2021.02.21
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    環境に優しい新規無機系構造色コーティング材

      目標・狙い 我々の暮らしを豊かにする様々なモノには多彩な着色がなされている。一般的にその着色に使われている塗料は有機色素を中心とした染料、あるいは無機顔料が用いられている。 しかし、有機染料は、熱や光エネルギーなどによって分解してしまうため、時間がたつと色褪せが起こり長期使用には耐えられない。また、無機顔料は、有機染料に比べて優れた耐候性を有している一方で、環境や人体に対し有害な元素を含むものが多いため毒性への懸念が高まっており、万能ではない。 また、今後、従来型の染料や顔料に含まれる物質への規制がますます強化されると考えられ、安全かつ退色しない色材の開発が急務となっている。 このような背景から、安全・サスティナブルな材料とプロセスで創る新規無機系色材の開発を目指す。   想定される市場・製品・産業分野 塗装が必要な製品を扱う企業   概要 アプローチ①アンモニアを用いない金属酸窒化物合成とその色材制御 金属産窒化物顔料は、毒性が懸念される重金属ではなく、チタンやタンタルなどの金属を用いることができるため、安心・安全な材料の一つとして注目されている。 しかし、その合成には毒性が非常に高いアンモニアガスを使うことが一般的であり、合成のスケールアップは容易ではなく、工業化の障壁となっている。 本アプローチでは、この従来のアンモニアガスを用いる手法に代わる安全な方法として、窒素源に尿素を用いる合成法を開発。尿素は毒性の懸念が低く、安価であることに加え、固体であるため、取り扱いが容易であり、汎用の電気炉での酸窒化物合成が可能となる。また、尿素の量を変えて酸窒化物中の酸素/窒素比を変化させることなどで、色度を調整することが可能である。 本研究の優位性 アンモニアの代わりに安全・安価な尿素を使用することで、汎用の電気炉での酸窒化物合成が可能 用いる尿素の量で酸窒化物の色調の制御が可能   アプローチ②電気泳動堆積法による構造色コーティング 構造発色性材料は染料や顔料とは全く異なるメカニズムで呈色するため、構造が壊れない限り、色褪せせず、汎用の安価かつ安全性の高い物質を用いて発色させることができる。 用いる材料は、主にガラスの主成分であるSiO2の球状粒子と炭素や四酸化三鉄などの黒色物質。粒子の集積構造で構造色が発現し、用いる粒子のサイズを変えることで容易に様々な色を生み出すことができる。 一方で、構造発色性材料のコーティング膜を形成する際、1)大面積や曲線の表面に均一なコーティングが困難であること、また2)耐久性が低い(すぐコーティングが落ちる)、といった問題があった。 これらの問題に対し、 1)自動車の塗装などに使われる電気泳動堆積法(図2)を用いる。この手法を用いることで、迅速に様々な基材にコーティング膜を形成することができる。また、フォークのような複雑な形状の表面にも均一にかつ簡単にコーティングすることができる(図3)。 2)電着法に工夫をし、粒子を泳動させて基材表面に堆積させるだけでなく、同時に接着剤の役割を果たす物質を電気化学的に析出させ、これで粒子同士や粒子と基材表面を接着させる方法を用いることで(図4)、その耐久性は飛躍的に改善。フォークにコーティングしたものを消しゴムに突き刺す試験でも、従来のものは膜が剥離し金属表面が露出してしまうのに対し、今回のものは剥離せず色を保つことができる。(図5)また、pHなどの電着条件を適切に調整することで、粒子の並び方を規則的な状態のものと、乱れた状態のものに作り分けることができます。つまり、オパールのように見る角度で色が変化するタイプのものと、見る角度で色が変わらないマットな印象のものに作り分けることができる(図6)。 本研究の優位性 粒子のサイズを変えるだけで様々な色を生み出せ、また、電着条件を適切に調整することで、構造色の角度依存性のありなしの作り分けが可能であるため、多様なカラーリングが実現できる。 複雑な形状の表面にも均一にかつ簡単にコーティングすることができる 耐久性の高い構造発色性材料のコーティングが可能である   論文 Inorg. Chem., DOI: 10.1021/acs.inorgchem.0c03758 (2021). ACS Appl. Mater. Interfaces, 12, 40768 (2020). Eur. J. Inorg. Chem., 2019, 1257 (2019). RSC Adv., 18, 10776 (2018). Inorg. Chem., 57, 13953 (2018). NPG Asia Mater., 9, e355 (2017). ほか   外部資金の獲得状況 科学研究費助成事業 基盤研究(B) (2020-2022). 科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) (2019-2020) 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) (2018-2021) ほか   研究者からのメッセージ 構造発色性材料、複合アニオン化合物、有機-無機ハイブリッド材料などにご興味があれば、ぜひご連絡ください。   研究者 片桐清文(KATAGIRI KIYOFUMI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

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    2025.11.11
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    パンダ模様のヨコエビ、2種目を新たに発見!見た目はそっくりでも系統は別 ~日本沿岸の生物多様性理解に期待~

    本研究成果のポイント 和歌山県・大阪府沿岸の潮間帯から、パンダ模様の新種のヨコエビ「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」を発見。 同じくパンダ模様を持つすでに発見されているパンダメリタヨコエビとは系統的に近縁ではなく、模様の類似は「他人の空似」であることを確認。 日本沿岸の生物多様性の高さを示す成果であり、未調査地域の分類学的研究が新種発見や種の保全に向けた重要な基礎データになる可能性を示唆。   概要 和歌山県と大阪府の沿岸の潮間帯から新種のヨコエビ「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」が発見されました。本種は体長5~10 mmで、砂地の転がる石の下に生息しています。「ヨコエビ」という名前は、体の左右どちらかの面を下にして、横になって素早く移動する姿に由来します。 この種は以前よりその存在が知られていましたが、分類が難しく、種が明らかではありませんでした。今回、詳細な形態観察と遺伝子解析を行なった結果、メリタヨコエビ属の新種であることが明らかになりました。 ヨリパンダメリタヨコエビは白黒のパンダ模様という特徴的な色彩をもちますが、これは私たちが2024年に新種として公表したパンダメリタヨコエビによく似ています。これら2種がパンダ模様をもつ理由についてはよく分かっていませんが、捕食者から逃れるためのカモフラージュの役割を果たしていると考えられます。興味深いことに、遺伝子解析の結果、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビは系統的に近縁ではないことが明らかになりました。このことは、両種にみられる特徴的なパンダ模様は、実は他人の空似であることを示します。 この新種の発見により、日本の沿岸域におけるメリタヨコエビ属の種多様性が、従来の研究で予想されていた以上に高いことが明らかになりました。 今後、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビの生態や行動を詳しく調べることで、パンダ模様をもつ理由を明らかにできることが期待されます。 ヨリパンダメリタヨコエビ Melita pandina.内山りゅう氏撮影     背景 日本沿岸は、世界でもヨコエビ類の種多様性が高いことで知られています。 メリタヨコエビ属は世界で65種が知られる大きな分類群ですが、日本近海における分類学的研究は十分には行われていませんでした。     研究成果の内容 今回、和歌山県と大阪府の沿岸の潮間帯でフィールド調査を行ったところ、白黒のパンダ模様のメリタヨコエビ属の未記載種が見つかりました。 この特徴的な色彩は、私たちの研究グループが2024年に新種として公表した同属のパンダメリタヨコエビに次ぐ2種目です。 詳細な形態比較の結果、新種のヨコエビは白黒のカラーパターンや脚の形態などの特徴により、同属の全ての既知種と区別されることが分かりました。しかし、特徴的なパンダ柄が既知種のパンダメリタヨコエビと被るため、新種の命名は難航しました。そこで、パンダ好きとして知られる文筆家でラジオパーソナリティーの藤岡みなみさんに和名の命名を依頼。パンダメリタヨコエビよりも「もっと」パンダっぽい色彩をしていることから「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」と名付けていただきました。 ※和名:生物の日本語での名前学名:世界共通の生物の名前 興味深いことに、遺伝子解析の結果、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビは系統的に近縁ではないことが明らかになりました。このことは、両種にみられる特徴的なパンダ模様は、実は他人の空似である可能性が高いことを示します。パンダ柄は、それぞれの種で独立に進化した「収れん進化」(系統的に離れた生物が、似た環境や生活様式に適応する中で、似た形質や機能を持つようになる進化)の結果だと考えられます。    今後の展開 ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビの生態や行動を詳しく調べることで、パンダ模様をもつ理由を明らかにできることが期待されます。 未調査地域におけるヨコエビ類の分類学的研究を進めることで、さらなる新種の発見が予想されます。このような分類学的研究を続けることで、日本列島の沿岸環境における生物多様性の解明が期待されるとともに、種の保全に向けた重要な基礎データとなることが期待されます。   新種の命名者、藤岡みなみさんのコメント 「すでにパンダのようなヨコエビがいるのに、もっとパンダらしい新種が見つかった」と伺って、とても驚きました。大変恐れ多いことながら、親しみを込めてちょっぴり韻を踏んだ名前を提案させていただきました。ヨリパンダメリタヨコエビ。ぜひ一度、声に出してみてください。   参考資料 本研究成果は、動物学に関する幅広い研究成果を掲載している国際学術雑誌Zoological Science(ズーロジカル サイエンス)に発表されます。 タイトル:Black-and-white disruptive coloration may be convergent: a new species of Melita (Amphipoda: Melitidae) from Japan 著者:Ko Tomikawa, Shigeyuki Yamato and Hiroyuki Ariyama 巻・ページ:42巻 DOI: https://doi.org/10.2108/zs250074   掲載雑誌:Zoological Science 研究者ガイドブック(富川 光 教授)   【お問い合わせ先】 大学院人間社会科学研究科教師教育デザイン学プログラム 富川光(とみかわこう)教授 Tel:082-424-7093 E-mail:tomikawa@hiroshima-u.ac.jp

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