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研究成果紹介

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    2024.06.17
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    絶対零度近くの温度を効率よく実現する新規磁気冷凍材料

    磁気冷凍の原理 ①磁気冷凍材料に磁場を印加すると、原子の持つ磁石(磁気モーメント)が整列して、材料の温度が Ti  に上昇する。 ② 放熱先(Ti より少し低い温度)に放熱する。 ③ 磁場を除去(消磁)すると、磁気モーメントの向きがバラバラになり、材料の温度が Tʄ  まで降下する。 ④ 冷却対象( Tʄ  より少し高い温度)から吸熱(対象物を冷却)が生じる。   磁気冷凍の特長 磁気冷凍材料への磁場のオン/オフだけで冷却が可能なためシステムが簡単であり、原理的に冷却効率が高い。 従来の気体冷凍サイクルでは到達困難な極低温までの冷却が可能となる。 オゾン層破壊や温室効果のある冷媒が不要であり、また、極低温域では高価で入手困難なヘリウム同位体などの冷媒が不要となる。   期待される用途 絶対零度近傍(~ 0.1K)レベル:量子コンピューター、極微量元素分析、ダークマター検出やX線天文学に有用   磁気冷凍材料への要求性能 絶対零度近傍での高い磁気冷凍性能(磁気熱量効果) 外界との吸・放熱を迅速に行うために高い熱伝導性 使用環境における材料の耐久性   研究の概要 (1)イッテルビウム系金属間化合物 YbCu4Ni に注目した イッテルビウム系金属間化合物YbCu4Niの特徴 化学的に安定であるため、扱いやすい。 熱伝導率が高いため、効率的に冷却能力を伝達可能である。 合金中のYb原子の割合が高く、単位体積当たりのエントロピー量が多いため、少量での磁気冷凍が可能である。 エントロピーの温度依存性 S (T ) より、磁場 8 Tで、1.8 Kから0.13 Kまでの冷却が期待できる。 (2)YbCu4Niの冷凍性能の基礎試験 1)目的 磁気冷凍材料YbCu4Niの最低到達温度の検証を目的とする。   2)装置構成(図参照) 試料(e)17gを輻射熱シールド(h)内に断熱保持させる。 全体を予備冷却用の市販冷凍機に搭載する。(冷凍機には磁場印加用の電磁石と排気装置付) 試料に温度センサーを接着し、温度を計測する。   3)試験手順 1)試料を市販の冷凍機により1.8Kまで予備冷却する。 2)磁場を印加(10T以下)、1.8 Kを保持する。 3)試料雰囲気を真空排気(10-4 Torr 以下)する。 4)0.6T/minの速度で消磁する。 5)試料の温度変化を計測する。   4)試験結果 初期印加磁場5T、8T、10Tの条件で、それぞれ最低到達温度0.22K、0.17K、0.16Kが得られた。 エントロピーの温度依存性から予測した最低到達温度0.18K(5T)、0.13K(8T)ともほぼ一致した。   (3)YbCu4Ni の大型合金の作製 1)目的 YbCu4Niの実用化のため、大型試料を作製し、冷却能力を向上させる。   2)作成方法および結果 1)高周波加熱炉において、YbとCu4Ni合金を、アルゴンガス雰囲気中で溶解する。 2)700℃で7日間アニール後、水中で急冷する。 3)69gの YbCu4Ni の大型インゴットを得ることができた。   (4)YbCu4Niの大型試料を用いた断熱消磁冷却試験 1)装置構成変更の内容(基礎試験装置を一部改造) 試料の断熱支持部分を、グラファイト棒から熱伝導率の低いストローに変更した。 試料を17gから53gに大型化した。   2)試験手順:初期磁場 8 T、初期温度 1.8 K、消磁速度 0.6 T/minの条件で冷凍実験を行う。 1)磁場8 Tを印加する。 2)試料を市販の冷凍機により、1.8Kまで予備冷却する。 3)試料雰囲気を真空排気する。 4)0.6 T/minの速度で消磁する。 5)試料の温度変化を計測して、基礎試験結果等と比較する。 3)試験結果 大型試料を用いることにより、断熱性を向上させ、0.3 K以下の極低温状態を3時間以上保持できることを実証できた。 A:基礎試験と同じ装置 B:基礎試験装置の断熱支持部分をグラファイト棒からストローに変更した装置 C:ストローおよび大型試料を使用した装置   本研究の優位性 以下の特長をもつ新規磁気冷凍材料YbCu4Niを見出し、実際に材料を試作し、磁気冷凍能力を実証した。 絶対零度近傍までの磁気冷凍(断熱消磁冷却)が可能である。 熱伝導率が高く、迅速な吸放熱が可能なため実用性が高い。 化学・物理的に安定である。 磁気冷凍に有効なイッテルビウム原子の割合が高い結晶構造のため、単位体積当たりのエントロピーの総量が大きく、少量でも冷却可能である。 高価あるいは希少な元素を使用していない。     想定される用途 量子コンピューター 極微量元素分析 ダークマター検出およびX線天文学 量子物性物理学     論文 Journal of Applied Physics, 131 013903 (2022),“Magnetic refrigeration down to 0.2K by heavy fermion metal YbCu4Ni”Yasuyuki Shimura, Kanta Watanabe, Takanori Taniguchi, Kotaro Osato, Rikako Yamamoto, Yuka Kusanose, Kazunori Umeo,  Masaki Fujita, Takahiro Onimaru, Toshiro Takabatae     研究者からのメッセージ 磁気冷凍材料の組成の調整による性能向上や、新たな磁気冷凍材料の探索および、社会実装を目指した大型化や形状の工夫、冷却システムの開発を、材料製造や冷凍機製作を行う企業と共に共同研究を進めたい。   研究者 志村恭通(SHIMURA YASUYUKI) 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    2024.05.08
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    微生物ガス発酵を用いた基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)製造によるカーボンリサイクル

    背景 地球環境問題への対応のため、化石燃料に替えてバイオマス資源を利用し、また、発生する二酸化炭素を化学原料や燃料として再利用するカーボンリサイクルの早期実現が、喫緊の課題となっている。 バイオマス資源から糖質のみを抽出して、発酵法により有用な化学物質を合成する手法はあるが、原料が食料と競合、糖以外の有機物が利用困難、糖化処理の高コストなどの弱点がある。 バイオマス資源から比較的容易に得られるメタン、水素、一酸化炭素、二酸化炭素などの合成ガスから、有用な化学物質が合成できれば、カーボンリサイクルの自由度が大幅にアップする。 ホモ酢酸菌と呼ばれる嫌気性細菌の一群は、合成ガスから酢酸を生成することができる。酢酸以外の有用な化学物質が合成できれば、炭素循環型社会を支える有用技術となる。     概要 酢酸菌を遺伝子組み換えして基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)を生産     好熱性ホモ酢酸菌の1種Moorella thermoaceticaの野生株は、糖のみならず、CO2、H2、COを原料・エネルギー源として、酢酸を生成する代謝系を持つ。 遺伝子組み換えにより、 thermoaceticaが作る中間体アセチル-CoAを材料として、独自開発の遺伝子組換え技術により耐熱性酵素を導入することで、目的の基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)を生成することに成功した。 生産物が低沸点であることを活用し発酵/分離を統合した合成ガス高温発酵プロセスを開発した。     合成ガスからの基礎化学品(エタノール、アセトン、2-プロパノール)生成 作製した菌は合成ガスを基質として、上記基礎化学品を生産する。 菌体当たりの生産速度 アセトン: 90 mg/g-菌体/時間(CO:H2比 = 1:1)。 すなわち、10g/Lの菌体があれば、約1g/L/hの高速アセトン生産が可能になる。 2-プロパノール(アセトン生産経路にアルコール脱水素酵素を追加することで生成):30 mg/g-菌体/時間 エタノール(アルコール脱水素酵素およびエネルギー代謝改善酵素を導入することで生成):70mg/g-菌体/時間   開発した菌は、55℃から65℃で培養可能であり、蒸留発酵により生産物を回収しながら、物質生産を継続でき、分離・精製工程の負荷を低減できる。     本研究の優位性 化石燃料フリー、さらに、他で発生するCO2を利用して、有用化学物質を生産可能 バイオマス資源から糖化プロセスを経て有用化学物質を生産する発酵プロセスに比較して、原料が食料と競合しない糖に限定されず、有機物なら何でも利用可能である。 中温微生物による従来プロセスと比較して、発酵しながら分離(蒸留)するので、分離・精製工程の負荷や排水処理コストを低減可能である。 バイオマスや廃棄物等から比較的容易に生成可能な合成ガス、火力発電からの二酸化炭素、太陽光や風力発電で生成させた水素等、多様な組み合わせで、フレキシブルに有用化学物質を生産可能である。 合成ガスから有用化学物質を生産する既存の化学プロセスと比較して、例えば、メタノール合成プロセスのような高温・高圧の処理やガス組成の厳密な制御を必要としない。     期待される用途 生成物は有機溶媒として使われるほか、日本のプラスチック生産量の約半分を占めるポリエチレン、ポリプロピレン、C2-C4の化学品の合成前駆体として用いられる。 本技術を、バイオマスや廃プラ等による安価な合成ガス、火力発電所等からの二酸化炭素、太陽光や風力等からの水素と組み合わせることにより、今後のマテリアルカーボンリサイクルフロー実現のための重要技術となることが期待される。     実用化に向けての課題 菌株育種:合成ガスからの目的産物の生産を確認済みだが、酢酸が副生する点が未解決である。また、CO2/H2を原料とした際に生産性が低下する課題が未解決である。 プロセス開発:合成ガスおよびCO2/H2を原料とした発酵装置を開発した。しかし、開発アセトン発酵プロセスと、安価な合成ガス原料および製造プロセス、および各種化成品製造プロセスとのインターフェース技術は未確立である。 LCA: 実用化に向けて、高精度なプロセス設計に基づく、LCAおよび経済性評価も必要となる。     企業への期待 菌株育種:ガス発酵微生物のハイスループット育種技術の共同開発 プロセス開発:開発アセトン発酵プロセスと、安価な合成ガス原料および製造プロセス、および各種化成品製造プロセスとの親和性検討とインターフェース技術の共同開発、および詳細プロセス設計に関わる共同研究 LCA: 高精度なプロセス設計に基づく、LCAおよび経済性評価に関わる共同研究     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :アセトンを生成する組換え好熱性細菌及びそれを用いたアセトンの製造方法 出願番号 :特願2020- 96417 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :中島田豊、加藤淳也、加藤節、竹村海正   発明の名称 :イソプロパノールを生成する組換え好熱性細菌及びそれを用いたイソプロ パノールの製造方法 出願番号 :特願2023-058275 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者:中島田 豊, 加藤 淳也, 加藤 節, 竹村 海生, 松尾 赳志   発明の名称 :モーレラ属細菌の遺伝子組換え法 特許番号:特許5963538 権利者:国立大学法人広島大学, 国立研究開発法人産業技術総合研究所 発明者:酒井 伸介, 高岡 一栄, 中島田 豊,岩崎 祐樹, 矢野 伸一, 村上 克治, 喜多 晃久     論文 Metabolic engineering of Moorella thermoacetica for thermophilic bioconversion of gaseous substrates to a volatile chemical 国際科学誌「AMB Express」に 2021年23月 23 日にオンライン掲載   Isopropanol production via the thermophilic bioconversion of sugars and syngas using metabolically engineered Moorella thermoacetica 国際科学誌「Biotechnology for Biofuels and Bioproducts」に 2024年1月28 日にオンライン掲載     本研究は以下の研究助成を受けて産業技術総合研究所との共同研究により行われた。 科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業 探索加速型「地球規模課題である低炭素社会の実現」 領域「「ゲームチェンジングテクノロジー」による低炭素社会の実現」 (研究科題名:再生可能エネルギーを活用した有用物質高生産微生物デザイン)     研究者からのメッセージ 合成ガスや水素など普通の微生物発酵にはなじみのない原料を使う新しい発酵技術です。代謝工学的な微生物育種技術とともに、安全かつ高性能な発酵プロセスの技術開発が必要なチャレンジングな試みです。しかし、本技術が社会実装できれば、微生物発酵は生産物だけではなく菌体そのものもタンパク源となり、物質文明を支える基礎化学品と食糧の併産も可能な夢の技術になりえます。   研究者 中島田豊(Nakashimada Yutaka) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 教授

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    2023.12.13
    • 環境エネルギー
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    三原色発光するシリコン量子ドットフィルム

    量子ドットの特徴 量子ドットとは、大きさが数ナノメートルの発光性の半導体ナノ結晶であり、次のような特徴がある。 1)粒子サイズによりフルカラー発光 2)高効率発光 3)極採色(狭い発光幅で有機ELの3-4倍の色域) 4)溶液プロセスによる低温・大気圧でのデバイス製造   背景 米国の調査会社(グローバルインフォメーション)によると、量子ドットの市場規模は2026年に86億ドルに到達と試算されている。 量子ドットは夢の光材料とよばれ、最近、量子ドットの大画面TVやタブレットが市場に出回り始めているが、現在の商品または研究で主力の量子ドットは、インジウム系(レアメタル)、カドミウム系、鉛系などの重金属を使用しており、材料入手難や毒性等の課題がある。 本研究グループは、入手容易で安全な材料であるシリコンを用いた量子ドットの研究を進めており、これまでに、発光量子収率が70%超えるSi量子ドット(SiQD)を報告している。この値は、単結晶シリコンの発光量子収率0.1%と比較すると飛躍的に高い。これまでに、三原色発光するSiQD(2009年)、白色発光するSiQD(2012年)、青色SiQD LED(2015年)、1/380のコストでのSiQDの製造法(2020年)、最大80%を超える発光量子収率を持つ赤色SiQD(2022年1月)、もみ殻を原料とした赤・オレンジ発光のSiQD LED(2022年2月)なども報告してきた。 この度、三原色発光する溶液分散型のSiQDを合成し、それらの量子ドットフィルムの作製、加速劣化試験を行い、更に、発光と劣化の機構を解明した。     研究の詳細 光の三原色で発光するSi量子ドット(SiQD)フィルムを作成し、太陽光照射、熱水への浸漬(80℃、湿度100%)の加速劣化試験で評価した。 成果の概要は次の通りである。     概要1三原色発光する溶液分散型SiQDを合成 三原色(赤・青・緑)発光する溶液分散型SiQDを、それぞれ異なる手法で化学合成した。(図1) それぞれの発光ピークの波長は、赤(660 nm)、緑(530 nm)、青(400 nm)であった。 発光効率(発光量子収率)は、赤(34%)、緑(20%)、青(12%)であった。 SiQDの表面は異なる官能基で化学修飾され、赤(炭化水素基)、緑(アミノ基)、青(シロキサン基:Si-O-Si結合)である。     概要2三原色発光するSiQDフィルムを作成 得られたSiQD溶液を、それぞれ高分子フィルムに分散し、赤・青・緑発光するSiQDフィルムを得た。 このSiQDフィルムは、フレキシブルで伸縮性を有する。(図2)     概要3SiQDフィルムの耐久性評価【太陽光への暴露試験】 赤・緑色発光のSiQDフィルムは、太陽光に照射後6hで、発光強度が急減し、安定した発光になった。青色シリコン量子ドットは8日間の太陽光照射に対し、発光強度(発光量子収率)の劣化は少なく、80%の発光強度が保たれた。(図3) 太陽光照射への耐久性は、量子ドットと高分子フィルム、それぞれの光吸収特性に依存しており、劣化のメカニズムは、化学修飾基の結合切断と考えられる。     概要4SiQDフィルムの耐久性評価【熱水への浸漬試験】 青色SiQDフィルムを、80℃の熱水に12日間浸漬する加速劣化試験を行った。(図4) 12日間の発光強度の劣化は15%程度で、驚異的な耐久性を示した。 青色SiQDの高い耐久性は、表面の強固なシロキサン結合によると考えられる。 青色SiQDフィルムを80℃の熱水へ浸漬すると、発光量子収率が上昇した。これは、未反応の表面官能基の後続反応によるシロキサン結合の増加によると考えられる。 熱水耐久性試験において、シリコーンエラストマー系よりフッ素樹脂系ポリマーの母材で、高い耐久性が観測された。     概要5発光メカニズム SiQDの発光と粒子サイズの関係について、本研究の結果と過去の文献データを比較した。(図5) 図中においてデータは、発光メカニズムの違いにより、上下二つのデータ群に分かれている。 上部は表面効果(量子ドットの表面に結合した官能基が新しい発光準位を作る)による発光、下部は量子閉じ込め効果(粒子がナノサイズになると同じ物資でも発光色が変わる)による発光である。曲線(赤色)は、量子閉じ込め効果に対応する理論計算(有効質量近似)の結果を示す。 この結果から、本研究で得られた赤色SiQDの発光は量子閉じ込め効果、緑色SiQDと青色SiQDの発光は表面効果によるものと考えられる。       本研究の優位性 現在の商品または研究で主力の量子ドットは、インジウム系(レアメタル)、カドミウム系、鉛系などの重金属を使用しており、材料入手難や毒性等の課題があるのに対し、本研究では、入手容易で安全な材料であるシリコンを用いている。 これまでに、発光量子収率が70%超えるSi量子ドット(SiQD)を報告している。この値は、単結晶シリコンの発光量子収率01%と比較すると飛躍的に高い。また、三原色発光するSiQD(2009年)、白色発光するSiQD(2012年)、青色SiQD LED(2015年)、1/380のコストでのSiQDの製造法(2020年)、最大80%を超える発光量子収率を持つ赤色SiQD(2022年1月)、もみ殻を原料とした赤・オレンジ発光のSiQD LED(2022年2月)など、一連の研究成果を出している。 本研究は、三原色発光する溶液分散型のSiQDを合成し、それらの量子ドットフィルムを実際に作製して、その発光特性を明らかにしたうえで、加速劣化試験を行い、耐久性の評価まで行っている。     期待される用途 安全・安心・安価な発光体ならびにフレキシブル発光フィルムとして、マイクロLED、VR、AR、折り曲げディスプレイ、照明、生医学イメージングの他、超高効率太陽電池(量子ドット太陽電池)での利用が期待される。     実用化に向けての課題 より広範な波長・色の実現、発光効率の上昇、耐久性の向上 三原色SiQDのLEDへの搭載     企業への期待 実用化に向けた課題解決のための共同研究 実用化に向けたシステムの概念設計とフィージビリティスタディ     本技術に関する知的財産権 発明の名称:シリコン量子ドット前駆体、シリコン量子ドット、及びそれらの製造方法 出願番号:特願2020-154517 公開番号:特開2022-048615 出願人:国立大学法人広島大学 発明者:齋藤健一     論文 Stability of Silicon Quantum Dots Against Solar Light/Hot Water: RGB Foldable Films and Ligand Engineering Keisuke Fujimoto1, Toma Hayakawa2, Yuping Xu1, Nana Jingu3, and Ken-ichi Saitow*1-4 1.広島大学 大学院理学研究科(化学専攻) 2.広島大学 理学部(化学科) 3.広島大学 大学院先進理工系科学研究科(化学プログラム) 4.広島大学 自然科学研究支援開発センター(研究開発部門物質科学部) * 責任著者   掲載誌:2022年11月6日発刊のアメリカ化学会のサステナブル化学の学術誌ACS Sustainable Chemistry & Engineering (IF=9.224)で公開。以下は論文のリンク先。(https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.2c03791)     研究者からのメッセージ 量子ドットは,2023年のノーベル化学賞の受賞テーマです。私のところにも多くのメディアから問い合わせを頂きました。量子ドットの利用は,蛍光体,LEDはもちろんのこと,バイオマーカー,医薬品,太陽電池,光触媒など非常に多岐にわたります。これはノーベル財団の公式プレスリリースでも発表されています。これまでの量子ドットは,レアメタルまた重金属系の量子ドットでしたが,環境問題が益々重要となる現在,また生体適合性の視点からも,シリコン製量子ドットの重要性は大変高くなることでしょう。企業の皆様と共同研究を行い,その成果をもとに実用化へつなげ,世界へ量子ドットとそのデバイスを供給できる日が一日でも早く来ることを,願ってやみません。     研究者 齊藤一彦(SAITO KAZUHIKO) 広島大学 大学院人間社会科学研究科 教授

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    2023.05.12
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    貴金属触媒を使用しない常圧のアンモニア合成法を開発

    背景 太陽光や風力等の再生可能エネルギーの変動的かつ偏在的なエネルギーの利用媒体として水素が有効であるが、水素はガス密度が低いため効率的な貯蔵や輸送のためには超高圧縮あるいは極低温による液化が必要となる。 化成品や肥料の原料として知られるアンモニア(NH3)は、水素原子を多く含み、燃焼してもCO2を排出しないうえに、簡単に液化*するため貯蔵や輸送が容易であり、水素キャリアとして有効である。(*常温で約8気圧、常圧で約-33℃で液化) 現在、アンモニア合成には、約 500℃、250 気圧以上の高温高圧プロセスであるハーバー・ボッシュ法が用いられているが、偏在する自然エネルギーの利用を考えた場合、より低温・低圧条件で制御可能な小規模分散型のアンモニア合成技術が求められる。 このため、遷移元素や希土類元素等の金属触媒を用いた新しいアンモニア合成の研究が進んでいるが、貴金属触媒が必要になる等課題も多い。 再生可能エネルギー変換技術としての小規模分散型NH3合成プロセス 研究の詳細:水素化リチウムを用いた新しいアンモニア合成プロセス 水素化リチウム(LiH)を用いたケミカルルーピングによるアンモニア( NH3) 合成プロセスは、①LiH の窒化反応、②NH3 合成及び LiH の再生反応の二段階で構成される。 1.LiHの窒化反応: 4LiH + N2 → 2Li2NH + H2 2.NH3 合成及び LiH の再生反応: 2Li2NH + 4H2 → 2NH3 + 4LiH このような NH3 合成法は、一般的な触媒プロセス(N2+3H2→2NH3)とは異なる熱力学平衡で NH3 合成を制御できるため、例えば、高温においても高収率な NH3 合成が可能になる。   ① LiHの窒化反応 (試験その1) 数mg のLiH の固体サンプルと窒素(N2)ガスを、大気圧下で室温から500℃まで加熱しながら反応させ、サンプルの重量変化から求めた反応率と発生水素のスペクトル強度を測定した。(グラフB) 加熱開始約80分、400℃から水素の放出を伴いリチウムイミド(Li2NH)を生成している。 但し、反応率は500 ℃まで加熱した時点で約30%、その後500℃で保持しても約60%程度に留まった。 反応後の試料の電子顕微鏡写真(緑色)によると、生成物が融解凝集し粗大粒子を形成してように見え、固体のLiH 表面で生成するLi2 NH が凝集し、連続的な反応の進行を妨げていると考えられる。   (試験その2) 反応過程での生成物の凝集を抑制するため、化学的に安定なLi2OをLiH に混合して反応の安定化を図った。(グラフA) LiH+Li2O 混合体は、LiH 単相の場合よりやや早く反応を開始し、反応速度低下なく反応開始後約100 分でほぼ100%の反応率に達した。 反応後試料の電子顕微鏡写真(赤色)では、生成物の明確な凝集は見られず、期待した反応制御の効果が見える。   ②NH3 合成及び LiH の再生反応 ①のLiHの窒化反応で得られた生成物を大気圧下の水素(H2)気流中で加熱した。 LiHのみ(グラフB)及びLiH+Li2O (グラフA)のいずれの生成物からも約260℃からアンモニア(NH3) の生成が観測され、LiH の再生も確認された。 この反応においても反応①と同様にLi2O混合による効果が見られ、反応率100%までの時間が短くなった。   以上の結果より、500℃以下の常圧条件下でLiHの窒化、NH3合成/再生反応によるアンモニア合成が可能で、さらに、 安定物質Li2Oの混合により、粒子の凝集による反応への阻害を抑制することが可能であると示された。   反応モデル LiHのみあるいはLiHに安定化物質Li2Oを混合した場合の、窒化反応後の走査型電子顕微鏡(SEM)画像と反応の推定模式図を下図に示す。 LiHのみの場合:生成物(Li2NH)が溶けて隣の粒子と繋がり粗大化していることから、模式図の様にLiHとN2の反応はLiHの表面で進行し、生成物のLi2NHが凝集してLiHを覆うことにより反応の進行を阻害していることが推察される。 LiH+Li2Oの場合:粒子の粗大化がなく、別途行ったEDS元素マッピングによると、Li2NHがLi2Oの周囲に分散して、小さく結晶化しているようにみえる。   本研究の優位性 LiHのみ、あるいはLiHに安定化物質Li2Oを混合した場合の、窒化反応後の走査型電子顕微鏡(SEM)画像と、反応の推定模式図を下図に示す。 LiHのみの場合:生成物(Li2NH)が溶けて、隣の粒子と繋がり粗大化していることから、模式図の様にLiHとN2の反応は、LiHの表面で進行し、生成物のLi2NHが凝集してLiHを覆うことにより反応の進行を阻害していることが推察される。 LiH+Li2Oの場合:粒子の粗大化がなく、別途行ったEDS元素マッピングによるとLi2NHがLi2Oの周囲に分散して小さく結晶化しているようにみえる。   期待される用途 再生可能エネルギーを貯蔵・輸送するためのアンモニアの合成   実用化に向けての課題 窒化反応及び合成/再生反応のための適正温度を反応熱を用いて自立的に維持し、効率的に反応を持続させるための熱マネージメントを含めた反応制御システムに関する研究に取り組む予定である。 本研究では、反応制御のための混合物質として酸化リチウム(Li2O)を用いたが、同様な安定物質であればこれに代替可能であるため、実用化に向けて、酸化アルミニウム、酸化シリコン、結晶性グラファイトなど、より安価な物質の利用を検討したい。   企業への期待 実用化に向けた課題解決のための共同研究 実用化に向けたシステムの概念設計とフィージビリティスタディ   本技術に関する知的財産権 発明の名称:アンモニアの合成方法 出願番号:特願2021-137414 公開番号:特開2023-31740 出願人:国立大学法人広島大学 発明者:宮岡裕樹、市川貴之、斉間等   論文 論文:Improvement of Kinetics on Ammonia Synthesis under Ambient Pressure by Chemical Looping process of Lithium Hydride 著者:Kentaro Tagawa, Hiroyuki Gi, Keita Shinzato, Hiroki Miyaoka*, Takayuki Ichikawa 雑誌:The Journal of Physical Chemistry C, 2022, in press. ※本研究は、科学研究費助成事業基盤研究(B):20H02465 の助成の下,広島大学窒素循環エネルギーキャリア研究拠点における共同研究として実施された。   研究者からのメッセージ 2050年カーボンニュートラルの実現に向けた基盤技術の創出を目指しています。 再生可能エネルギーの有効利用を目的とした,小型分散型,低圧,高効率アンモニア合成技術の確立に挑戦します。     研究者 宮岡裕樹(MIYAOKA HIROKI) 広島大学 自然科学研究支援開発センター 教授

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • インフラ
    2023.04.04
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
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    野良猫用公衆トイレの設置効果の検証

    本研究の優位性 野良猫の糞尿被害を、忌避剤と公衆トイレを併用して軽減可能であることを立証 猫の糞尿被害を通して、ヒトと動物の共生についての課題点を顕在化     研究内容 背景 猫の糞尿には人獣共通感染症の寄生虫やバクテリア、ウイルスを含んでいる可能性があり、糞尿被害による自治体への苦情は多いが、糞尿汚染に関する研究報告は少ない。環境省は野良猫用トイレの設置を推奨しているが、その効果は検証されていない。そこで、約200頭の野良猫が生息している『猫の街』尾道市において、糞尿被害に悩まされている寺院に開発中の忌避剤*と猫用公衆トイレを設置して、糞を対象に猫用トイレの効果を検証した。 *忌避剤は本研究終了後に一般発売された。     研究の概要 植物プランターを利用したトイレに雨よけの屋根を付けたものを6台作成して、市販の猫砂を敷き詰め、境内及び墓地の異なる地点に6箇所設置した。同時に、トイレへの排泄を確認するための赤外線センサーカメラを4台、事前調査で判明していた5カ所の排泄地点へ忌避剤を設置した。 週に一度、カメラのバッテリー及びデータ回収の際にトイレと境内を清掃し、糞を採集して重量を計測した。   寺院に居ついている17頭の野良猫のうち、個体識別ができた3頭(猫A、B、C)について、トイレ設置前後の糞重量を比較した結果、忌避剤活用によるトイレの設置は、糞の減少に効果的であった。 野良猫はトイレトレーニングを行っていないが、トイレを設置した週から3頭ともトイレを利用していた。トイレでの排泄回数は14週間で、Aが81.3%、Bが88.6%、Cが100%と頻繁に出没する猫ほど使用頻度が高かった。また、対象区として設定した2つの公園と1つの神社の合計8地点では、糞重量は減少しなかった。   猫のトイレの利用を増やすためには、生息する頭数+1台のトイレの設置が必要であり、トイレの大きさや清掃頻度、敷材等をさらに検証する余地がある。   猫用公衆トイレを設置すると野良猫の糞尿被害の減少に効果的だが、設置後も清掃や点検といった人の手が必要となる。猫の行動圏は観光客や地域住民による餌付けに影響を受けるので、給餌だけでなくトイレ管理や糞尿の清掃を行うことで地域トラブルの減少へ繋がる。     期待される効果 野良猫の糞尿被害発生地域における猫用公衆トイレの設置促進 猫用公衆トイレ設置による地域トラブルの減少     企業・自治体への期待 猫用公衆トイレに最適な素材(猫砂・屋根・容器等)の開発に興味のある企業との共同研究 野良猫に関わる課題解決にむけて調査・検証を行いたい企業または自治体との連携 地域猫活動の推進や課題解決に取り組んでいる自治体との連携     論文 Seo,A. & Tanida, H.,The effect of communal litter box provision on the defecation behavior of free-roaming cats in old-town Onomichi, Japan,Applied Animal Behaviour Science 224 (2020) 104938. 妹尾あいら・谷田創. 酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体にシトラールを添加したネコ用忌避剤の効果,ペストロジー 32(1) (2017) 1-6. 妹尾あいら・谷田創. 自由徘徊ネコに対する酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体の忌避効果の検証, ヒトと動物の関係学会誌 44 (2016) 42-48.     研究者からのメッセージ 野良猫とヒトの福祉向上と共生社会を目指し、広島県内のさまざまな地域でフィールドワークに取り組んでいます。 地域住民の声を直接聞き、自治体等とも協力することで、成果を地域に還元できる研究を行っています。   研究者 妹尾あいら(SEO AIRA) 広島大学 酪農エコシステム技術開発センター 助教

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    2022.12.27
    • 環境エネルギー
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    大気圧プラズマCVD法による分子ふるいシリカ膜の常温常圧製膜法

    背景・狙い 膜分離法は省エネルギーな分離技術であり、化学プロセスにおける高純度製品の生産や水処理、CO2分離などの環境分野におけるキーテクノロジーである。 シリカ膜は耐熱性や耐薬品性に優れ、従来の高分子膜が適用困難なプロセスにも適用可能な革新的な分離技術である。 従来のシリカ膜製膜プロセスは高温を必要とするため、材料が限定されて高コストであることやスループットが低いことが課題である。 製膜プロセスの常温常圧化は、製膜プロセスの連続化や大面積化に有利であるとともに、多様な材料とのハイブリッドによる分離機能の強化が期待できる。     研究の詳細 多孔性シリカ膜について 多孔性シリカ膜とは -シリカネットワークが造る微細孔構造によって分子をサイズの違いで分離する機能(分子ふるい)を有する。 -微細孔構造(細孔径や親和性)を制御することで多様な分離系に好適な分離性能を有する膜を作製することができる。 -耐熱性、耐酸化性、耐薬品性に優れる。   多孔性シリカ分離膜の一般的な構造 機械的強度を与える多孔質の支持体上に形成した中間層の上に分離膜を形成した非対称構造を有する。   多孔性シリカ分離膜の製造法 【従来法】化学気相蒸着(CVD)法 ・ ゾル-ゲル法 ➢ 機械的強度と高透過分離性を両立するために、一般的にシリカ膜は、多孔質の支持体の上に中間層を形成し、その上に分離機能を有するシリカ薄膜層を重ねた非対称構造となっている。 ➢ このシリカ薄膜層を形成する主要な方法として、CVD法やゾル-ゲル法が用いられてきたが、これらの製造プロセスは500~600℃程度の高温処理を伴うため、長時間の反応を必要とし、耐熱性の観点から使用できる支持体が高価なセラミック材料に限定されていた。 ➢ 低圧プラズマを用いるプラズマCVD法による製膜も提案されているが、真空排気系が必要で、連続化や大面積化に限界があった。   【新技術】大気圧プラズマCVD法(Atmospheric-Pressure Plasma-Enhanced CVD) ➢新たに非平衡大気圧プラズマを利用したCVD法を開発し、大気圧プラズマがつくる反応場を利用することで、バルク温度を室温近傍の低温に抑えたうえで、高い分離性を有するシリカ膜の製膜が可能となった。 ➢大気圧プラズマを用いることで、一般的な低圧プラズマとは異なり真空排気系を必要としない常温常圧での製膜が可能となり、連続処理や複雑形状への製膜が容易になった。 ➢大気圧プラズマ中の豊富な反応活性種を利用することで、従来法では長時間(数時間)を要したシリカ膜の製膜を数分レベルの超高速で行うことが可能となった。 大気圧プラズマCVDによるシリカ膜の製膜 (a) 製膜の様子,(b) 膜形成メカニズム,(c) 気体透過特性のCVD時間依存性     応用例  CO2分離膜 二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)あるいはメタン(CH4)との膜透過性(permeance)の違いを利用したガス分離が可能である。 300℃程度の熱処理により、ガス選択性のさらなる向上が可能になる。   本研究の優位性 シリカ膜の製膜に高温工程(500~600℃)を伴う従来のゾル-ゲル法や熱CVD法と比較して – 非平衡大気圧プラズマを用いることにより製膜温度の低温化が達成された。 – 低温化により有機材料とのハイブリッド膜など、更なる高機能膜の製造が可能になる。 – 大気圧プラズマCVD法では、常温常圧かつワンステップのドライプロセスでの製膜が可能になった結果、製膜工程が大幅に簡素化され、分子ふるいシリカ膜の製膜コストの大幅低減が可能になる。     期待される用途 水素分離や二酸化炭素分離をはじめとする各種ガス分離 チタニア等の各種セラミック膜の製膜への応用     実用化に向けての課題 現在、水素分離や二酸化炭素分離について実用レベルの透過選択性を達成可能な段階まで開発済であるが、実験室レベルの製膜のため、大面積化やモジュール化の点で検討が必要である。 今後、気体分離のみならず、浸透気化・蒸気透過や水系・非水系ろ過など、様々な分離系への応用に向けた試験を行う必要がある。 様々な分離系への応用に向けては、分離系に応じた細孔径の制御技術の確立も必要と思われる。     企業への期待 膜の大面積化やモジュール化に共同で取り組んでいただける企業、分離膜に限らずセラミック薄膜の常温常圧ドライ製膜に関心のある企業との共同研究を希望。 気体分離をはじめとする分子分離への展開を考えている企業には本技術の導入が有効と思われる。     本技術に関する知的財産権 発明の名称: 気体分離フィルタの製造方法 出願番号: 特願2016-14990 公開番号: 特開2017-131849 特許番号:特許6683365 出願人: 広島大学 発明者: 都留稔了,長澤寛規,金指正言     論文 Nagasawa, Y. Yamamoto, N. Tsuda, M. Kanezashi, T. Yoshioka, T. Tsuru, Atmospheric-pressure plasma-enhanced chemical vapor deposition of microporous silica membranes for gas separation, J. Membr. Sci., 524 (2017) 644-651. Nagasawa, T. Kagawa, T. Noborio, M. Kanezashi, A. Ogata, T. Tsuru, Ultrafast synthesis of silica-based molecular sieve membranes in dielectric barrier discharge at low temperature and atmospheric pressure, J. Am. Chem. Soc., 143 (2021) 35-40. Nagasawa, R. Yasunari, M. Kawasaki, M. Kanezashi, T. Tsuru, Facile low-temperature route toward the development of polymer-supported silica-based membranes for gas separation via atmospheric-pressure plasma-enhanced chemical vapor deposition, J. Membr. Sci., 638 (2021) 119709.   研究者からのメッセージ 大気圧プラズマCVD法は、種々の機能性薄膜を低温・高速かつ大面積に作製可能な技術であり、今後は、シリカ系分離膜に限らず、様々な分野の薄膜への応用を進めていきたいと考えています。   研究者 長澤寛規(NAGASAWA HIROKI) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    • 気候変動/エネルギー/GX
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    2022.12.26
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    シリカ系多孔質膜の開発と各種膜分離プロセスへの応用

    背景・狙い 高純度製品の生産、環境有害物質の除去といった分離操作は、化学工業において重要なプロセスである。 シリカ、ジルコニアなどの無機材料、および有機・無機ハイブリッド材料に着目し、製膜・評価技術の確立、透過・分離特性の検討を通じてあらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行っている。 研究の詳細 膜分離法の種類 膜分離法の種類   シリカ系多孔質膜とは – 膜材料 シリカ、シリカ-ジルコニアなどの複合酸化物無機材料 有機材料と無機材料のハイブリッド – 特徴 100 nm程度の薄膜製膜が可能 製膜が容易、優れた耐熱性、耐溶媒性 細孔径のナノチューニングが可能 シリカ系多孔膜の特徴、想定される分離対象   シリカ系多孔膜の作製法ゾル-ゲル法 アルコキシシランを加水分解および架橋反応させて調製したゾルをナノレベルで制御し、多孔質の基材にコーティングして薄膜を形成する製膜法である。 薄膜製膜により高透過を図り、分離系に応じて精密に制御した細孔径により分離性をコントロールする。 ゾルゲル法による多孔質シリカ膜の作製法   ゾル-ゲル法によるネットワーク構造制御技術(分子ふるい制御) Si前駆体の選定、製膜条件(焼成温度、雰囲気) カチオン、アニオンドープ セラミック複合酸化物(Y-SiO2-ZrO2、carbon-SiO2-ZrO2) ゾル-ゲル法によるネットワーク構造制御技術(分子ふるい制御)   ゾル-ゲル法によるネットワーク構造制御技術(吸着性制御) ゾルーゲル法によるネットワーク構造制御技術(吸着性制御)   応用例 1.メタン水蒸気改質への水素分離膜の応用 ● 水蒸気改質の反応場に型反応器を組み込み、生成ガスから水素のみを分離して系外に抽出した。 ● 系外への水素の選択的分離により平衡反応率を超える反応率となった。 メタン水蒸気改質への水素分離膜の応用   2. オルガノシリカ膜による水素/有機ハイドライド分離 ● Si-R-Siを有する前駆体を用いることで、従来のシリカ膜よりもルースな細孔構造を有する分離膜を開発。有機ハイドライド脱水素反応における水素分離への応用が可能。 オルガノシリカ膜のH2の透過特性 3.プロピレン/プロパン分離へのFドープシリカ(F-SiO2)膜の応用 ●Fドープによりプロピレンが透過可能なルースな構造に変化し,細孔構造が均一化することで,近接混合物のプロピレンとプロパン分離で選択性が大きく向上した。   4.地球温暖化ガス(二酸化炭素)分離回収 ●CO2と親和性を有する有機官能基をハイブリッドすることで、CO2分離(燃焼排ガス、バイオガス)に応用可能な分離膜を開発した。 アミン系Si前駆体とのハイブリッドによるCO2透過性制御 6.Carbon-SiO2-ZrO2膜によるアルコール脱水(浸透気化法) ●セラミック複合酸化物であるSiO2-ZrO2を形成する際の有機キレートを所定の条件で炭化されることで,耐水性に優れた高い分離性能を有するアルコール脱水膜を開発した。 Carbon-SiO2-ZO2膜によるアルコール脱水(浸透気化) 6.Carbon-SiO2-ZrO2膜によるメタノール分離(浸透気化法) ●セラミック複合酸化物であるSiO2-ZrO2を形成する際の有機キレートの種類を制御することで、細孔径を脱水膜よりもルースに制御可能で、様々なメタノール分離系への応用が可能であることを明らかにした。 Carcon-SiO2-ZrO2膜によるメタノール分離(浸透気化)   7.有機溶媒逆浸透による超省エネ分離 ●従来型蒸留法は最小仕事の1000倍以上のエネルギーが必要である。逆浸透法を用いることにより従来型と比較して1/10~1/100のエネルギーで分離が可能となるが、高圧に耐えられる膜が必要となる。 ●オルガノシリカによる逆浸透膜を開発し、無機膜のため超高圧操作で省エネルギーな有機溶媒分離を達成した。 ●蒸留代替による省エネルギーの実現により、持続可能な化学プロセスに貢献可能である。 有機溶媒逆浸透による超省エネ分離   本研究の優位性 金属性の水素分離膜と比べて - 酸性ガスによる劣化やコーキングがない - 高い透過流束が得られる - 細孔径のチューニングが可能である   高分子膜と比べて - 耐熱性や耐有機溶剤性に優れる   期待される用途 ガス分離:希ガス、水素、アンモニア、酸素、二酸化炭素、炭化水素(エチレン/エタン、プロパン/プロピレン、ブタン/ブテン)など 浸透気化分離:各種アルコール水溶液の脱水、有機酸(酢酸など)の脱水、有機物/有機混合物(アルカン/芳香族) 逆浸透・ナノ濾過:有機溶媒系濾過、高温・高圧での濾過、非水溶液有機溶媒RO(メタノール/トルエンなど)   実用化に向けての課題 実ガスや実液を用いた分離性評価、長期安定性評価など 実用化に向けて、水素モジュール化の技術も既に確立(1mの長尺モジュールも製造可能)   企業への期待 セラミック製造技術を持つ企業との共同研究 燃料電池メーカーやガス製造等各種化学プロセス・環境プロセス関連企業との分離膜応用に向けた共同研究     本技術に関する知的財産権 発明の名称: 逆浸透膜フィルタ 出願番号: 特願2012-112239 公開番号: 特開2012-254449 特許番号: 特許第5900959号 出願人: 広島大学 発明者:都留稔了,吉岡朋久,金指正言     発明の名称: 分離フィルタの製造方法 出願番号: 特願2014-220030 公開番号: 特開2015-110218 特許番号: 特許第6474583号 出願人: 広島大学 発明者: 都留稔了,王金輝,金指正言,吉岡朋久     発明の名称: 分離膜及びその製造方法 出願番号: 特願2015-090801 公開番号: 特開2016-203125 特許番号: 特許第6548215号 出願人: 広島大学 発明者: 金指正言,都留稔了     発明の名称: 水蒸気を含有する混合ガス用気体分離フィルタ及びその製造方法 出願番号: 特願2015-109949 公開番号: 特開2016-221453 特許番号: 特許第671169号 出願人: 広島大学 発明者: 任秀秀,金指正言,都留稔了     発明の名称: 物質量測定方法、細孔径分布導出方法、物質量測定装置及び細孔径分布導出装置 出願番号: 特願2016-014990 公開番号: 特開2017-191073 特許番号: 特許第6842686号 出願人: 広島大学 発明者: 都留稔了,長澤寛規,金指正言     論文 1.M. Kanezashi, Y. Yoneda, H. Nagasawa, K. Yamamoto, J. Ohshita, T. Tsuru: Gas permeation properties for organosilica membranes with different Si/C ratios and evaluation of microporous structures. AIChE J. 63: 4491-4498, 2017.   2.M. Kanezashi, T. Matsutani, H. Nagasawa, T. Tsuru: Fluorine-induced microporous silica membranes: Dramatic improvement in hydrothermal stability and pore size controllability for highly permeable propylene/propane separation. J. Membr. Sci., 549: 111-119, 2018.   3.M. Guo, M. Kanezashi, H. Nagasawa, L. Yu, J. Ohshita, T. Tsuru: Amino-decorated organosilica membranes for highly permeable CO2 capture. J. Membr. Sci., 611: 118328 (p.1-10), 2020.   4.M. Kanezashi, N. Hataoka, R. Ikram, H. Nagasawa, T. Tsuru: Hydrothermal stability of fluorine-induced microporous silica membranes: effect of steam treatment conditions. AIChE J., 67: e17292 (p.1-11), 2021.   5.M. Takenaka, H. Nagasawa, T. Tsuru, M. Kanezashi: Hydrocarbon permeation properties through microporous fluorine-doped organosilica membranes with controlled pore sizes. J. Membr. Sci., 619: 118787 (p.1-10), 2021.   6.S. Lawal, M. Kanezashi: A brief overview of the microstructural engineering of inorganic–organic composite membranes derived from organic chelating ligands. Membranes, 13: 390 (p.1-34), 2023.   7. X. Niu, N. Moriyama, H. Nagasawa, T. Tsuru, M. Kanezashi: Hydrothermally robust carbon-silica-zirconia ceramic membranes for efficient pervaporation dehydration. J. Membr. Sci., 730: 124197 (p.1-13), 2025.   8. X. Niu, M. Kanezashi: Microstructure engineering of silica-derived membranes and their applications in molecular separation. Bull. Chem. Soc. Jpn, 98: uoaf030 (p.1-24), 2025.   研究者からのメッセージ 地球レベルでの環境負荷が問題となる現在では、持続可能な社会を構築するためにどのような貢献ができるかが重要です。膜分離工学は、化学や医薬などすべての工業プロセスで重要な役割を果たし、水処理、H2、CO2分離のような環境問題の解決においてもキーテクノロジーとなるため、Sustainable Development Goals(SDGs)への貢献が大きい技術です。当研究室では、シリカ、ジルコニアなどの無機材料、および有機・無機ハイブリッド材料に着目し、製膜・評価技術の確立、透過・分離特性の検討を通じてあらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行っています。

    • 環境エネルギー
    2022.10.13
    • 環境エネルギー
    バイオマス燃焼灰有効活用のための分級プロセスの開発

    背景 FIT制度導入により、木質バイオマスの発電量は増加する一方、発電の際に生じる燃焼灰の処分費は発電売上に対して約8%課せられており、採算性が非常に悪い。 木質燃料(建築廃材は含まない)を使用しているボイラー発電施設から排出された燃焼灰の中で、有効利用可能なものは産業廃棄物とみなされないため、燃焼灰の有効利用は循環型社会の構築のために必要不可欠である。   研究内容 1.  燃焼灰の結晶構造を分析 ボイラー灰、サイクロン灰、バグフィルター灰のマスバランスとカリウム割合を分析。その結果、粒子径の小さいバグフィルター灰のカリウム濃度が高く、燃焼灰のカリウム濃度は粒子径に依存していた。 燃焼灰の結晶構造を解析した結果、燃焼灰は肥料として有効なKCl、CaCO3、K2CO3を含んでいた。   2.燃焼灰の肥料としての有効性検討 カリウム濃度の高い燃焼灰を採取するため、非常に粒子径の小さい燃焼灰が得られる分級システムを設計。実証試験において、カリウム濃度35~40%の燃焼灰を回収することに成功した。 分級技術により、選択的に微細な燃焼灰を得ることで、燃焼灰のカリウム成分を濃縮可能とした。   燃焼灰は重金属(Pb、Cr、Hg)を含んでおり、Pb、Hgは分級することで一緒に濃縮されてしまう可能性があるが、化成肥料の公定規格に対して十分低いため、肥料として使用可能である。 採取した燃焼灰の成分を溶出試験したところ、燃焼灰のカリウムは水溶性とク溶性の両方を示しており、肥料として有効である。   3.アドオン型プラントによるカリウム濃縮実証 従来の設備を活用したアドオン型プラントを作成して実証実験を行った。   その結果、燃焼灰のカリウム成分の濃縮を連続的に実現することに成功した。   本研究の優位性 従来のプラントに分級プロセスを追設することにより、カリウム成分を濃縮した燃焼灰を採取することが可能である。 燃料となる木質バイオマスや、採集した燃焼灰に、特別な処置を施す必要がない。 1/4を輸入に頼っているKCl肥料の国内供給化へ繋がる。   想定される市場・産業分野 バイオマスを燃焼、ガス化して発電や化学製品を生産している企業 バイオマスを利用したボイラーや設備を扱っている企業 肥料業界   企業への期待 工場規模での実効性が確認できており、様々なバイオマス発電設備に適用できる可能性があります。 燃焼灰処分費用の削減とSDGsへの貢献を同時に達成できる本技術を検討頂けると光栄です。   論文 – Utilization of woody biomass combustion fly ash as a filler in the glue used for  (2018) – plywood production, ADVANCED POWDER TECHNOLOGY, 31巻, 11号, pp. 4482-4490 (2020) – Existence Form of Potassium Components in Woody Biomass Combustion Ashes and Estimation Method of Its Enrichment Degree, ENERGY & FUELS, 32巻, 1号, pp. 517-524 (2018) – Utilization of incineration fly ash from biomass power plants for zeolite synthesis from coal fly ash by microwave hydrothermal treatment, ADVANCED POWDER TECHNOLOGY, 29巻, 3号, pp. 450-456 (2018) – Morphology of woody biomass combustion ash and enrichment of potassium components by particle size classification, FUEL PROCESSING TECHNOLOGY, 156巻, pp. 1-8 (2017)     研究者からのメッセージ 紹介した肥料への再資源化以外にも、合板製造用充填材、土壌改良用ゼオライトへの再資源化法についても研究しています。   研究者 福井国博(Fukui Kunihiro) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • バイオエコノミー
    2022.06.27
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • バイオエコノミー
    シンプル酵素触媒による効率的な有用物質変換

    背景 従来の微生物細胞による物質生産は、宿主とする微生物を生かしながら行うため、基質・原料が宿主細胞の代謝にも使われ、様々な代謝物質が副産物として生成される。 原料が副産物の生成にも使用されるため、目的の物質が低収率となる。 不要な副産物生成抑制のために、細胞代謝を改変して最適化する手法がとられるが、これには多大な時間と手間を要す。     概要 10~20℃で生育可能な低温菌を宿主として、中温菌の酵素を発現させ、化学品生成経路を構築する。この細胞を中温(40~50℃)で熱処理し、低温菌の代謝酵素を失活させる。これにより、中温菌由来の酵素のみによる物質生産が可能になる。 また、熱処理により低温菌細胞が部分的に壊れるため、膜透過性が向上し、原料・基質が細胞内に自由に入ることができ、界面活性剤等の薬品処理が不要になる。   本研究の優位性 既に実用化されているAspergillus属細菌や、大腸菌を用いた微生物変換法に比べて、不要な副産物の生成がなく、収率が高い。 副産物生成抑制のため、従来必要であった細胞代謝の改変が不要となり、多大な時間と手間を省くことができる。 基質の膜透過性向上のため、従来必要であった界面活性剤等の薬剤処理が不要となる。 中温加熱処理のみで高い生産性と収率が得られる「シンプル酵素触媒」であり、有用物質生産のコスト削減が期待される。     期待される用途 ➢応用例1:3-HPA(ヒドロキシプロピオンアルデヒド)の生成 3-HPAはグリセロールから変換されるアルデヒドであり、アクリル酸の原料として利用される有用化学品である。 廃グリセロールは有用な資源であるにも関わらず活用されていないため、グリセロールを使用して物質変換の検討を行った。 細胞を培養・回収・洗浄、熱処理後(45℃・15min)、3-HPAの収率を調査。ほぼ100%の割合で3-HPAに変換できた。 ➢応用例2:1,3-PD(プロパンジオール)の生成 1,3-PDは抗菌性を併せ持つ保湿剤として効果があり、化粧品等に利用されている有用化学品である。 応用例1の3-HPA生成系後半にDhaTを導入することにより1,3-PDを生成。 DhaTは還元力を必要とするため、補酵素NADHの添加が必要となるが、FDH(ギ酸デヒドロゲナーゼ)も発現させた細胞を構築することにより、NADH無添加で1,3-PDの生成が可能となり、収率5%で生成した。   ➢応用例3:アスパラギン酸の生成 アスパルテームの原料でC4基幹化学品であるアスパラギン酸を、フマル酸から生産した。 宿主の代謝酵素による競合反応を熱処理で抑制することにより、副産物のリンゴ酸生成が低下し、収率が向上した。 細胞をアルギン酸ナトリウムで固定化することにより、繰り返し利用が可能になり、95%以上の変換効率を9回維持できた。   ➢応用例4:イタコン酸の効率的生産 C5基幹物質のイタコン酸は、コンタクトレンズやニトリル製品などのポリマー素材として有用な化合物である。 従来のAspergillus terrusによる生成方法は、合成経路が代謝系と競合すること、合成酵素が異なるオルガネラに分かれていることが課題となっていた。 Shewanella属細菌にアコニターゼ(coli)、cis-アコニット酸脱炭素酵素(Aspergillus terrus)を発現させて培養、回収、洗浄、熱処理後(45℃、15min)、クエン酸を導入、高収率でイタコン酸を生成できた。 高収率でイタコン酸を生成し(左のグラフ)、(洗浄操作)を与えなければ、触媒を繰り返し利用して、5回の変換が可能(右のグラフ)である。 実用化に向けての課題 今後、触媒の安定的利用に関する検討を進めたい。     企業への期待 酵素機能を最大限発揮可能な本触媒による、物質変換プロセスの実用化を目指す企業との共同研究を希望する。     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :低温菌を用いたイタコン酸の製造方法 出願番号 :特願2018-124796 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :田島誉久、加藤純一、羅宮臨風     論文 田島 誉久,緋田 安希子,加藤 純一:低温菌シンプル酵素触媒による効率的な物質変換,Journal of Environmental Biotechnology, 21(1), 9-16, 2021(環境バイオテクノロジー学会誌21巻1号)doi: 10.50963/jenvbio.21.1_9 Mojarrad, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Psychrophile-based simple biocatalysts for effective coproduction of 3-hydroxypropionic acid and 1,3-propanediol, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 85(3), 728-738 (2021) doi: 10.1093/bbb/zbaa081 Mojarrad, K. Hirai, K. Fuki, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Efficient production of 1,3-propanediol by psychrophile-based simple biocatalysts in Shewanella livingstonensis Ac10 and Shewanella frigidimarina DSM 12253, Journal of Biotechnology, 323, 293-301 (2020) doi: 10.1016/j.jbiotec.2020.09.007 Luo, M. Fujino, S. Nakano, A. Hida, T. Tajima, J. Kato: Accelerating itaconic acid production by increasing membrane permeability of whole-cell biocatalyst based on a psychrophilic bacterium Shewanella livingstonensis Ac10, Journal of Biotechnology, 312, 56-62 (2020) doi:10.1016/j.jbiotec.2020.03.003 Tajima, K. Tomita, H. Miyahara, K. Watanabe, T. Aki, Y. Okamura, Y. Matsumura, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient conversion of mannitol derived from brown seaweed to fructose for fermentation with a thraustochytrid, Journal of Bioscience and Bioengineering, 125(2), 180-184 (2018) doi:10.1016/j.jbiosc.2017.09.002 Tajima, M. Hamada, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient aspartic acid production by a psychrophile-based simple biocatalyst, Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology, 42(10) 1319-1324, (2015) doi:10.1007/s10295-015-1669-7 Tajima, K. Fuki, N. Kataoka, D. Kudou, Y. Nakashimada, J. Kato: Construction of a simple biocatalyst using psychrophilic bacterial cells and its application for efficient 3-hydroxypropionaldehyde production from glycerol, AMB Express, 3(1), 69 (2013) doi: 10.1186/2191-0855-3-69     研究者からのメッセージ 本技術は多種多様な酵素の効率的変換を細胞から酵素を抽出せずに容易に実現できるものであり、バイオ変換の生産性向上に有望と考えています。本触媒にご興味がございましたら是非ご連絡ください。     研究者 田島誉久(TAJIMA TAKAHISA) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 准教授

    • 食料/農林水産業
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2022.01.05
    • 食料/農林水産業
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    環境に優しいうどん粉病の防除薬

    目標・狙い カビ菌により引き起こされるうどん粉病は、ほとんどの植物に発生する可能性があり、予防と対策が必要となる。 従来の化学農薬は農作物の病原菌への防除には有効であるが、環境中での残留性、生態系への影響、農薬耐性等が懸念されている。 そこで、光フェントン反応や光増感反応により、OHラジカル、一重項酸素、スーパーオキシドなどの活性酸素を発生させ、その高い酸化力を利用して、病害治療や防除に役立てることを目的とする。     概要 過酸化水素水に鉄を添加した光フェントン試薬は、数ppmの低濃度でも太陽光のもとで活性酸素のOHラジカルを持続的に生成する能力があることが解っている。活性酸素の強力な酸化力によりうどん粉病を防除する方法を考案した。 過酸化水素水(H2O2)が一定の濃度以上でOHラジカルが発生するサイクルが生まれる。   OHラジカルの他に、ローズベンガルなどの色素や、カテキンなどのポリフェノールといった光増感剤から、一重項酸素(¹O2)やスーパーオキシド(O2-)などの活性酸素を光化学的に発生可能なことが解っており、これらについても同等の効果が期待され、その利用について同様な検討を行っている。     研究事例 実際にイチゴおよびキュウリうどん粉病を対象に、自然太陽光下での光フェントン試薬の最適な処理条件や、効率的施用法等を見出し、うどん粉病の防除に有効であることを検証した。   イチゴうどん粉病への光フェントン反応の適用 試薬1と2の発病率に関しては統計的に有意な差は認められなかったが、試薬3と対照区との間には有意差が認められたため、OH生成速度が高い試薬では発病率低下が確認された。     きゅうりうどん粉病への光フェントン反応の適用   シュウ酸鉄錯体を用いた試薬(光フェントン試薬MIX3)は薬害がほとんど確認されず、うどん粉病の予防および治癒・抑制効果も高かった。     本研究の優位性 OHラジカル、一重項酸素(¹O2)、スーパーオキシド(O2-)などの活性酸素は病原菌防除に従来の化学農薬並みの効果が期待される。 光フェントン試薬は溶液反応のため植物表面に過酸化水素水や鉄が付着してしまうが、一定濃度以下であれば安全である。 ローズベンガルやカテキンなどの試薬は化学農薬に比べ安価であり、気層中で発生するため、発生した活性酸素のみを直接植物表面に暴露でき、より安全である。 太陽光や微生物により容易に分解されるので環境中での残留性が低く、安全性が高い。     期待される用途 イチゴやキュウリうどん粉病などの植物病害防除。 光フェントン試薬への光照射により発生する活性酸素を用い、空気中の悪臭物質の分解やウイルスなどの殺菌が可能であり、無臭化や滅菌などの空気清浄化技術への応用。 微量のスーパーオキシドは生体のSOD活性を高めるため、スーパーオキシドを付加した酸素ガス吸入装置など医療分野への応用。     企業への期待 農薬の研究開発の技術を持つ、企業との共同研究を希望。 ¹O2 、O2-によるうどん粉病防除技術については試験段階であり、企業との共同研究により実用化が達成可能。 空気清浄化技術を開発中の企業、農業や医療分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。     本技術に関する知的財産権 発明の名称:きゅうりうどん粉病の防除薬及び防除方法 特許番号:特許第5963143号 出願番号:特願2012-245366 出願人:国立大学法人広島大学 発明者:佐久川  弘、ナヒド  ハサン     論文 Protective and curative effects of foliar-spray Fenton solutions against cucumber (Cucumis sativus, L.) powdery mildew. Sakugawa, H., Hasan, N., Oguntimehin, I., Belal, E., J. Environ. Sci. Health, Part A, 47, 1909–1918 (2012)     研究者からのメッセージ OHラジカルがカビに有効なのに対して、一重項酸素はウイルスを撃退するのに有効です。そのため新型コロナウイルスの流行を受けて、広島県内の企業と共同で一重項酸素を発生させる空気清浄機の開発を進めています。将来的には農業用に転用して、活性酸素噴霧器としてウイルス性の病害の防除に利用できると期待しています。   研究者 佐久川弘(SAKUGWAWHIROSHI) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 客員教授

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 素材
    2021.01.12
    • 環境エネルギー
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    • 素材
    色調制御可能なスマートウィンドウ開発

    目標・狙い π共役系高分子は電気化学的な酸化・還元反応によって、可逆的に色彩変化できる特徴(エレクトロクロミズム)を有している。さらに、π共役系高分子は分子構造により様々な色調(RGB(赤・緑・青)色)に制御できる。分子構造によっては可視光領域での光吸収を抑制し(透明になる)、近赤外光領域の光を吸収できる(熱線を遮断できる)。 以上の特徴を応用し、π共役系高分子の色調を自在にチューニングできる分子設計指針を確立し、様々なニーズに適合した色彩を呈することができるスマートウィンドウ開発を目指す。   想定される市場・製品・産業分野 車載用防眩ミラー 遮熱窓(自動車、建物) ディスプレイデバイス   概要 π共役系高分子の共役構造を有機合成化学的な手法で制御する 得られた高分子の光学的性質を分子構造と関連付けて解析する サイクリックボルタンメトリーにより高分子の電気化学的性質およびエレクトロクロミック特性を調査する 本研究の優位性 π共役系高分子のエレクトロクロミズムの特性を生かすことにより、液晶や有機ELと比べ省電力。また、液晶の場合は電源を切ると暗くなるが、エレクトロクロミック材料の場合は電源を切ってもその時の状態を保持させることが可能。その際必要な電圧は乾電池一個分。 共役鎖長や導入する置換基によって色調を自在に制御できる 耐久性の向上:シロキサン系ネットワークポリマーによるクロミック分子の電極への固定化によりポリマー膜の剥離を抑制し                                 長寿命化を実現     防眩ミラーの特許は、アメリカのGENTEX社およびMAGNA DONNELLY社にほとんどをおさえられているため、本研究シーズで開発する新規材料を用いれば新たな防眩ミラー材料の開発が可能になる。 今回のシーズ内容と異なるが、本材料はエネルギー変換材料への応用も可能である。   特許 播磨 裕; 大下 浄治; 今榮 一郎; 杉岡 尚; 金平 浩一, “導電性積層体およびその製造方法”, 公開特許公報 2010-266727号, 出願年月日: 2009/5/15.   (以下は「エネルギー変換材料」に関する特許) 播磨 裕; 今榮 一郎; 渡辺 淳; 櫻井 康成; 星野 幸久, “熱電変換材料及びその製造方法”, 特許公報 第6329828号, 出願年月日: 2014/7/4. 播磨 裕; 今榮 一郎; 櫻井 康成; 渡辺 淳; 後藤 慶次, “熱電変換材料の製造方法、熱電変換素子の製造方法及び熱電変換材料の改質方法”, 公開特許公報 2019-36599号, 出願年月日: 2017/8/10. 今榮 一郎; 播磨 裕; 片岡 裕貴, “熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料”, 公開特許公報 2019-195006号, 出願年月日: 2018/5/1.   論文 Nawa, Kazunari; Miyawaki, Kenji; Imae, Ichiro; Noma, Naoki; Shirota, Yasuhiko, “Polymers containing pendant oligothiophenes as a novel class of electrochromic materials”, Journal of Materials Chemistry (1993) 3(1), 113-114. Imae, Ichiro; Nawa, Kazunari; Ohsedo, Yutaka; Noma, Naoki; Shirota, Yasuhiko, “Synthesis of a novel family of electrochemically-doped vinyl polymers containing pendant oligothiophenes and their electrical and electrochromic properties”, Macromolecules (1997) 30(3), 380-386. IOhsedo, Yutaka; Imae, Ichiro; Shirota, Yasuhiko, “Electrochromic properties of new methacrylate copolymers containing pendant oligothiophene and oligo(ethyleneoxide) moieties in the presence of a polymer-gel electrolyte”, Electrochimica Acta (2000) 45(8-9), 1543-1547. Imae, Ichiro; Takenaka, Youichi; Tokita, Daisuke; Ooyama, Yousuke; Komaguchi, Kenji; Harima, Yutaka, “Drastic enhancement of cycle lifetime of electrochromic devices using polysilsesquioxane as an anchoring agent”, Chemistry Letters (2008) 37(9), 964-965. Imae, Ichiro; Tokita, Daisuke; Ooyama, Yousuke; Komaguchi, Kenji; Ohshita, Joji; Harima, Yutaka, “Oligothiophenes incorporated in a polysilsesquioxane network: application to tunable transparent conductive films”, Journal of Materials Chemistry (2012) 22(32), 16407-16415. Imae, Ichiro; Imabayashi, Saki; Komaguchi, Kenji; Tan, Zhifang; Ooyama, Yousuke; Harima, Yutaka, “Synthesis and electrical properties of novel oligothiophenes partially containing 3,4-ethylenedioxythiophenes”, RSC Advances (2014) 4(5), 2501-2508. Imae, Ichiro; Ogino, Ryo; Tsuboi, Yoshiaki; Goto, Tatsunari; Komaguchi, Kenji; Harima, Yutaka, “Synthesis of EDOT-containing polythiophenes and their properties in relation to the composition ratio of EDOT”, RSC Advances (2015) 5(103), 84694-84702. Imae, Ichiro; Sagawa, Hitoshi; Harima, Yutaka, “Fine-tuning of electronic properties in donor-acceptor conjugated polymers based on oligothiophenes”, Japanese Journal of Applied Physics (2018) 57(3S2), 03EJ01 (5pp). Imae, Ichiro; Kumano, Masataka; Harima, Yutaka, “Molecular properties of thiophene-based donor-acceptor-donor small molecules with well-defined structures”, Science of Advanced Materials (2019) 11(6), 792-799. Imae, Ichiro; Akiyama, Yuki; Harima, Yutaka, “Synthesis and properties of alkoxy-substituted oligothiophene derivatives”, Journal of Photopolymer Science and Technology (2020) 33(4), 373-380.   研究者からのメッセージ 分子構造制御した導電性高分子の合成を得意としています。スマートウィンドウだけでなく、リチウムイオン二次電池の電極材料や、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電変換材料にも応用できます。 上に示した用途以外への応用にも興味があります。新たな研究テーマを一緒にご研究できることを楽しみにしています。   研究者 今榮一郎(Imae Ichiro) 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授

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    • バイオエコノミー
    • 医療/ヘルスケア
    2020.10.21
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    低コストで大量繁殖・飼育ができる新規実験動物

    目標・狙い “カエル”はヒトと同じ脊椎動物に属する両生類の代表として、古くから実験に用いられてきた。現在では大量飼育が容易なツメガエルが主に用いられてきた。 実験動物にはそれぞれの特徴や性質があるので、カエル類を使った実験や研究では不十分な場合もある。 我々は、カエルと同じ両生類に属するイモリを実験動物として整備することで、両生類を用いた実験システムの充実化や利便性の向上を目指している。   想定される市場・製品・産業分野 カエルと同じ両生類の実験動物材料として、以下の分野における活用 農薬業界 医薬品開発 毒性・環境評価   概要 脊椎動物であるイモリは実験動物としての有用性は認められていたものの、従来の種は大量繁殖が不可能であり、利便性が低い動物とされていた。 本研究では、年間数千個もの卵を産卵するイベリアトゲイモリに着目。ホルモン処理による一年中の産卵や人工授精法を確立した。 イベリアトゲイモリは文献的には性成熟に1年半以上かかるとされていたが、飼育条件(給餌、水温など)を変えることにより生育速度を早め、雄は6ヶ月、雌は9ヶ月までに短縮すると同時に、大量のイモリを安定的に飼育する技術を開発した。 その結果、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となった。   本研究の優位性 有尾両生類(イモリやサンショウウオ類)において、低コストで大量繁殖・飼育ができる唯一の実験動物。 ゲノム編集技術との相性が良いため、実験目的に合わせた遺伝子の改変が可能。   論文 Matsunami et al. “A comprehensive reference transcriptome resource for the Iberian ribbed newt Pleurodeles waltl, an emerging model for developmental and regeneration biology.” DNA Res. (2019) 26:217-229. doi: 10.1093/dnares/dsz003.PMID: 31006799 Suzuki et al. “Cas9 ribonucleoprotein complex allows direct and rapid analysis of coding and noncoding regions of target genes in Pleurodeles waltl development and regeneration.” Dev Biol. (2018) 443:127-136. doi: 10.1016/j.ydbio.2018.09.008 Hayashi et al. “Molecular genetic system for regenerative studies using newts.” Dev Growth Differ. (2013) 55:229-36. doi: 10.1111/dgd.12019   外部資金の獲得状況 住友財団基礎科学研究助成 内藤記念科学奨励金・助成金 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(代表) 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(分担)他   研究者からのメッセージ イベリアトゲイモリを安定的に飼育する技術の開発により、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となりました。イベリアトゲイモリを介した研究にご興味のある企業の方は是非一度ご相談ください。   研究者 林利憲(HAYASHI TOSHINORI) 広島大学 両生類研究センター 教授

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