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    • 環境エネルギー
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    2026.05.08
    • 環境エネルギー
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    広島大学の丸山史人教授が、米国エネルギー省JGI 2026 年度Community Science Program大型研究支援に世界でわずか14 件の採択プロジェクトの一つに日本から唯一採択 ~未解明の地下水微生物研究で国際競争を勝ち抜く快挙~

    ポイント 米国エネルギー省(Department Of Energy; DOE) Joint Genome Institute (JGI)の2026年度Community Science Program (CSP)大型研究支援公募において、世界でわずか14件の採択プロジェクトの一つに広島大学・丸山史人(まるやまふみと)教授の提案が選出されました。日本からの採択は丸山教授の1件のみです。 過去の採択実績では、プリンストン大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)、 スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校など海外トップクラスの研究機関の教授が多く、今回はプリンストン大学、シカゴ大学、デューク大学、米国やフランスの国立研究所などの研究者が参画しており、国際的にも極めて競争率が高く名誉ある成果です。 DOE-JGIのCSPプログラムでは、数十万~数百万ドル相当の大規模ゲノム解析、ハイスループットDNAシーケンス、計算資源などの支援が採択課題に無償提供されます。 CSP採択プロジェクトの多くは研究成果をNatureやScienceといった世界最高峰の学術誌に発表しており(https://jgi.doe.gov/user-science/publications)、質の高い国際共同研究が推進されています(※例:JGIによるソルガム(バイオエネルギー作物)ゲノム解析研究が2009年にNature掲載)。 丸山教授の採択課題は、未培養で未知の地下水生微生物Patescibacteria門を対象に、その共生的な生態をゲノム解析によって解明し、地下環境での物質循環の役割に迫る革新的研究です。環境中の膨大な未解明微生物の機能解明を通じ、物質循環・環境微生物学に新たな展開が期待されます。 日本からCSP大型枠に採択される例は極めて稀であり、広島大学からの採択は国際舞台における国内研究者の存在感を示す画期的な成果と言えます。   概要広島大学IDEC国際連携機構の丸山史人教授の研究プロジェクトが、米国エネルギー省(DOE)の合同ゲノム研究所(Joint Genome Institute, JGI)による2026年度コミュニティ・サイエンス・プログラム(CSP)大型研究支援公募において、世界14件の採択プロジェクトの一つに選ばれました。日本からの採択は本件のみで、他の採択者には、プリンストン大学、シカゴ大学、デューク大学、米国やフランスの国立研究所など世界的トップクラスの研究機関の教授らが名を連ねています。また、過去の採択者にも日本国内の研究者がプロジェクトの代表となっている例は確認されていません。CSP大型公募は、エネルギーの持続可能性、気候変動への対応、水・環境資源の保全といった地球規模課題の解決(DOEミッションの内容を反映)に資する大規模ゲノム科学プロジェクトを世界中から募るもので、その採択は極めて狭き門を突破したことを意味します。本採択により、丸山教授のチームはDOE-JGIから大規模なゲノム解析支援を無償提供され、最先端の環境ゲノム研究を推進します。   背景DOE-JGIはカリフォルニア州ローレンスバークレー国立研究所に拠点を置く、米国エネルギー省の合同ゲノム研究施設です。CSP(コミュニティ・サイエンス・プログラム)はDOE-JGIの主要なユーザープログラムであり、世界中の研究者が提案する斬新なゲノム科学プロジェクトに対し、シーケンス解析やデータ解析といったサービスを無償提供するものです 。特に「大型(Large-Scale)」枠の公募では、数年スケールで大量のゲノムデータを生成する野心的な提案が求められます。このCSPは、毎年公募、採択される年1回の大型公募であり、2026年度においては世界中から応募が寄せられ、その中から厳正な国際ピアレビューを経て14件のみが採択されました。また、CSP採択プロジェクトは過去に数多く画期的な成果を生み出しており、その成果論文がNature、Scienceといった著名科学誌に掲載される例も少なくありません。こうした背景から、本プログラムへの採択は研究資源の獲得だけでなく、研究の国際的な評価・発信につながる名誉ある業績と位置付けられています。 日本からDOE-JGI CSPに採択される事例はきわめて少なく、本件は数年ぶりの快挙となりました。広島大学の丸山教授の採択は、日本の環境ゲノム・微生物研究が国際舞台で高く評価された証と言えます。   研究内容今回採択された丸山教授の研究課題は、「未培養Patescibacteria門微生物の地下水における物質循環機能の解明:共生的相互作用の解析を通じて」(原題:Uncovering the roles of uncultivated Patescibacteriota in groundwater biogeochemical cycling through the analysis of symbiotic interactions)です 。Patescibacteria門(分類学上はPatescibacteriotaとも呼称)は、近年存在が明らかになった超小型細菌群で、培養が困難な「未培養微生物」の一大系統です。これらの細菌はゲノムサイズがわずか0.5~1.0百万塩基対程度(100-300nm)と極端に小さく、他の生物に普通存在する必須遺伝子の多くを欠失しており、その大半が他の微生物に寄生・共生する形で生存していると考えられています 。しかし、こうした極小細胞の微生物が地下水環境でどのような役割を果たし、他の微生物とどのように関わっているのかは未解明のままでした。 丸山教授らのプロジェクトでは、JGIの支援する大規模ゲノム解析技術を駆使し、地下水中のPatescibacteria門細菌およびその共生相手となる微生物群集のDNAを包括的に解析します。具体的には、地下水試料からメタゲノム解析を行い高品質なゲノム配列を再構築することで、Patescibacteria門に属する複数種のゲノム情報を取得し、そこに潜む代謝経路や相互作用遺伝子を明らかにします。また、得られたゲノムから推定される機能に基づき、Patescibacteriaが共生相手からどのような栄養素や代謝産物をやりとりしているのか、逆に地下水中の炭素・窒素など物質循環プロセスに与える影響を解明することを目指します。さらに、必要に応じて単一細胞ゲノム解析や分子生態学的手法も組み合わせ、Patescibacteria門細菌と他の微生物との共生関係の実態に迫ります。本研究により、地下深部の環境で長らくブラックボックスとされてきた微生物生態系の一端が解明され、新規微生物の機能や進化の謎に光を当てることが期待されます。   今後の展開丸山教授のプロジェクトは、2026年度からDOE-JGIの支援のもと本格始動します。今後数年間でテラバイト級のDNAシーケンスデータが産出され、人工知能(AI)も活用した大規模データ解析により、地下水中微生物の未知の生態が次第に明らかになっていく見込みです。得られた知見は、地下環境における炭素循環や養分循環モデルの高度化、さらには環境浄化や資源エネルギー分野への応用に貢献することが期待されます。また、本採択を契機に広島大学はDOE-JGIや海外トップ研究者との連携を一層深め、国際共同研究の展開や本課題の共同受賞者であるスマートソサイエティ実践科学研究科博士課程2年の福士宗幸氏を含めて、人材交流を促進していきます。将来的には、本プロジェクトの成果論文を国際学術誌へ発表し、広島大学発の環境ゲノム研究として世界に発信する予定です。丸山教授は「本研究により、地下に広がる未知の微生物世界の解明が進み、環境微生物学のフロンティアを切り拓きたい」と抱負を述べています。本学は引き続き最先端研究を通じて地球規模課題の解決に貢献していきます。   <Joint Genome Institute(JGI)の公式発表ページはこちら> https://jgi.doe.gov/user-science/science-stories/jgi-announces-fy26-large-scale-portfolio-our-community-science-program   報道発表資料(240.68 KB) 研究者ガイドブック(丸山 史人教授)   【お問い合わせ先】 広島大学 IDEC国際連携機構環境遺伝生態学研究分野 教授丸山史人(まるやまふみと) E-mail:fumito*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 資源
    2026.05.11
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 資源
    酸素極小層から深海まで続くマンガン酸化の実態を解明 ―セリウム同位体が明らかにする海洋中の新しい物質循環モデル―

    発表のポイント 海水およびマンガンクラスト中のセリウム(Ce)安定同位体比の鉛直分布を初めて明らかにした。 酸素極小層(OMZ)内部を含め、深海に至るまで連続的にマンガン酸化物が形成されることを実証した。 海洋中のマンガン循環と希土類元素の挙動を統合的に理解する新しいモデルを提案した。 発表内容東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻のLi Wenshuai博士研究員(研究当時、現中国地質大学(武漢)教授)、高橋嘉夫教授(兼:同大学アイソトープ総合センターセンター長)、海洋研究開発機構の中田亮一主任研究員、柏原輝彦主任研究員、高知大学海洋コア国際研究所の臼井朗特任教授、東京大学大気海洋研究所の小畑元教授、漢那直也助教(研究当時、現岡山大学准教授)、名古屋大学大学院環境学研究科の淺原良浩准教授、弘前大学被ばく医療総合研究所の田副博文教授、法政大学自然科学センターの田中雅人准教授、公益財団法人高輝度光科学研究センターの河村直己主幹研究員らの研究グループは、北西太平洋において海水およびマンガンクラスト(注1)中のセリウム(Ce)安定同位体比δ142Ce(注2)の鉛直分布(注3)を詳細に解析し、酸素極小層(OMZ; 注4)から深海に至るまでマンガン(Mn)酸化物の形成が連続的に進行していることを明らかにしました。これまで、海洋におけるMnの酸化は、OMZで溶存したMn²⁺がその下部の酸素に富む層で酸化されることで主に進行すると考えられてきました。しかし、その実態は観測的に十分検証されていませんでした。 本研究では、水深10〜6000 mにわたる海水と、約900〜5500 mで形成されたマンガンクラスト試料についてCe安定同位体比を測定し、海水中ではOMZ内部で軽い同位体に富み、その下層で重い同位体にシフトする特徴的な鉛直分布が存在することを見出しました。これは、クラスト中の同位体比は周囲の海水の値を反映しており、Mn酸化物がその場で形成・沈着したことを示しています。さらに大型放射光施設SPring-8(BL01B1、BL39XU)(注5)と高エネルギー加速器研究機構の放射光実験施設(Photon Factory; BL-9A、BL-12C)(注6)においてCeやMnのX線吸収微細構造(XAFS; 注7)を測定して得た価数や局所構造の情報に基づいて、これら元素が海洋中で受ける反応も推定しました。その結果、Ceが主にマンガン酸化物に酸化吸着される過程で同位体分別が生じることが示唆され、観測されたCe同位体の鉛直分布は、Mnの酸化・沈殿が広い水深範囲で連続的に進行していることを強く示唆します。 これらの結果は、Mn酸化物が特定の深度で生成して沈降するという従来のモデルを見直し、OMZ内部を含む広範な深度での連続的な生成を想定する新しいモデルを支持するものです。本成果は、海洋におけるMnの循環と希土類元素(注8)の挙動の理解を大きく前進させるとともに、海底鉱物資源の形成過程の解明や、過去の海洋環境復元に向けた新たな地球化学トレーサー(注9)としての応用が期待されます。   発表者・研究者等情報 東京大学 大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 Li Wenshuai 博士研究員(研究当時、現 中国地質大学(武漢)教授) 高橋 嘉夫 教授(兼 東京大学 アイソトープ総合センター センター長) 大気海洋研究所 小畑 元 教授 漢那 直也 助教(研究当時、現 岡山大学環境生命自然科学学域 准教授) 海洋研究開発機構(JAMSTEC)物質地球科学研究部門 中田 亮一 主任研究員(兼 広島大学大学院先進理工系科学研究科 客員准教授) 柏原 輝彦 主任研究員 高知大学海洋コア国際研究所 臼井 朗 特任教授 (名誉教授) 名古屋大学大学院環境学研究科 淺原 良浩 准教授 弘前大学 被ばく医療総合研究所 田副 博文 教授 法政大学 自然科学センター・文学部 地理学科 田中 雅人 准教授 高輝度光科学研究センター 河村 直己 主幹研究員 東 晃太朗 主幹研究員   論文情報雑誌名:Science Advances 題名:Cerium isotopes unveil hydrogenetic Fe-Mn encrustation occurring throughout from the oxygen minimum zone to the deep Pacific(5月1日付掲載) 著者名:Wenshuai Li,* Ryoichi Nakada, Hajime Obata, Naoya Kanna, Inhee Kim, Teruhiko Kashiwabara, Kotaro Higashi, Naomi Kawamura, Yoshihiro Asahara, Hirofumi Tazoe, Masato Tanaka, Akira Usui, Yoshio Takahashi*(*責任著者) DOI:10.1126/sciadv.aee2813 URL:https://doi.org/10.1126/sciadv.aee2813   研究助成本研究は、中国国家自然科学基金「No. 42573006、No.42550152)」、日本学術振興会「外国人特別研究員 No. P21313」、科研費「特別研究員奨励費 課題番号22F21313、22KF0083」、科研費「課題番号 24H00268、24K21564、24K22346、23H03986、22H00166、22F21313、22KK0166」、米国国立科学財団「助成金番号 OCE-2140395」、科研費「基盤研究(S) 課題番号: 26K21720」科研費「学術変革領域研究(A) 課題番号26H00438」の支援により実施されました。   謝辞本研究で行った解析は、SPring-8(課題番号:2023A1453, 2023A1455, 2024A1446, 2024A1483, 2024A1484, 2024A1486, 2024B1493, 2024B1496, 2024B1905)と、高エネルギー加速器研究機構の放射光実験施設Photon Factoryのビームラインにおいて、高エネルギー加速器研究機構の承認のもとで実施しました(課題番号:2022G126, 2024G123)。また、本研究は、東京大学大気海洋研究所の研究船共同利用プログラム(学術研究船「白鳳丸」、JURCAOSSH22-02)の支援も受けました。F. Liu氏(成都理工大学)に、Ce標準溶液(CDUT-Ce)をご提供いただいたことに感謝いたします。   用語解説(注1) マンガンクラスト:海底の岩石表面に長い時間をかけて成長する鉄・マンガン酸化物の層。 (注2) 安定同位体比(δ142Ce):同じ元素でも質量数の異なる同位体の比で、起源物質や化学反応の違いを反映する指標。 (注3)鉛直分布:水深方向に沿った変化の様子。 (注4)酸素極小層(OMZ):海水中で酸素濃度が非常に低くなる深度帯。 (注5)大型放射光施設SPring-8:理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っています。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。 (注6)高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造研究所放射光実験施設(Photon Factory):茨城県つくば市にある日本の放射光施設。 (注7)XAFS:X線吸収スペクトルに表れる元素の吸収端付近の微細な構造のことで、対象元素の価数や局所構造の情報が分かる分光法。 (注8)希土類元素:セリウムを含むランタノイド元素やイットリウムを含む元素群の名称で、環境や物質循環の指標として用いられる。レアアースとも呼ばれる。 (注9)地球化学トレーサー:物質の起源や移動過程を追跡するための化学的指標。   報道発表資料(425.42 KB) 論文掲載ページ (Science Advancesに移動します)   【お問い合わせ先】 東京大学大学院理学系研究科 教授高橋嘉夫(たかはしよしお) Tel:03-5841-4517E-mail:ytakaha*g.ecc.u-tokyo.ac.jp   東京大学大学院理学系研究科 E-mail:media.s*gs.mail.u-tokyo.ac.jp   東京大学大気海洋研究所附属共同利用・共同研究推進センター広報戦略室 E-mail:kouhou*aori.u-tokyo.ac.jp   海洋研究開発機構企画部門事業推進部報道室 Email:press@jamstec.go.jp   高知大学広報・校友課 Tel:088-844-8643E-mail:kh13@kochi-u.ac.jp   名古屋大学 総務部広報課 E-mail:nu_research*t.mail.nagoya-u.ac.jp   弘前大学被ばく医療総合研究所総務グループ E-mail:jm5401*hirosaki-u.ac.jp   法政大学 総長室広報課 E-mail:pr*adm.hosei.ac.jp   公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)利用推進部普及情報課 E-mail:kouhou*spring8.or.jp   広島大学広報グループ E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • バイオエコノミー
    2025.11.20
    • 環境エネルギー
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    • バイオエコノミー
    ウニ幼生に光で行動を調節する脳のような神経細胞群が存在することを発見

    脳を持たないとされてきたウニ幼生に、光で行動を調節する「脳のような」の神経細胞群(中枢)を見いだしました。この神経細胞群は、脊椎動物の脳と一部共通する特徴が確認され、後口動物の共通祖先までさかのぼる脳機能の起源に関する新たな示唆を提供する結果となりました。 本研究は、ウニ幼生の前端部神経外胚葉に、非視覚性光感受性ニューロン(「見る」ためではなく、光を感じて応答する神経)の細胞群を同定しました。これにより、脊椎動物の脳に相当する「中枢」が、脳を持たないとされてきた棘皮動物(ウニ)にも存在する可能性が示唆されました。これらの神経細胞群は、光を感知するタンパク質である非視覚オプシン(Opn5L)や、脊椎動物間脳の形成を担うrx、otx、six3、lhx6などの制御遺伝子を発現します。また、この細胞領域を統合的に解析したところ、Opn5Lの機能低下で光依存的な遊泳行動が損なわれることが分かりました。こういった分子特徴は脊椎動物の脳領域のそれと一部重なることから、ウニ幼生に存在する非視覚性の光受容中枢は、後口動物の共通祖先に由来する脳機能の素地を残している可能性を示します。 非視覚オプシンを発現する神経とその周辺領域の発生過程を厳密かつ系統横断的に比較することは、脊椎動物の脳を含む中枢神経の進化や多様化の過程を解く上で、新たな理論や見解を提供すると期待されます。     【研究代表者】 筑波大学生命環境系 谷口 俊介准教授 千葉大学大学院医学研究院 露崎 弘毅特任講師 京都大学大学院理学研究科 山下 高廣講師 広島大学ゲノム編集イノベーションセンター 山本 卓教授     【研究の背景】 進化の過程における中枢神経(脳)の獲得は、ヒトを含む脊索動物の多様化を支えた重要な出来事です。しかし、神経や脳が動物進化のどの段階で生まれ、どの系統でどのように複雑化したのかは、よく分かっていません。脳・中枢神経の主要な役割は外界情報を統合して適応的な運動へ変換することであり、その起源の解明は生物学の根本課題です。 一方、後口動物注1)では、前方神経外胚葉に由来する脳領域(前脳など)が光情報処理の中核を担うと考えられ、表層には、視覚オプシン、深部には非視覚オプシン(いずれも光を感知するタンパク質)が配置されるという脊椎動物との共通性が示唆されています。しかしながら、脊椎動物と最も近縁の棘皮動物門(ウニなど)注2)には集中して存在する「脳領域」が見えにくく、前後軸の明瞭な指標も乏しいため、脊椎動物型の脳がいつ、どのように現れたかをたどることは容易ではありません。 それでも近年、前後軸が明確な成長段階であるウニ幼生で、前脳様の遺伝子発現やそれを結ぶ制御ネットワーク、さらに光などの環境情報を行動へ統合する神経回路が明らかになりつつあります。非視覚オプシン様の受容体も複数同定され、光による遊泳や消化活動の調節に関与する例が報告されています。こうした知見を踏まえ、本研究では、ウニ幼生において非視覚的な光受容を担う「脳様」領域を、遺伝子発現と機能の両面から定義し、脊椎動物の脳に通じる組織化が棘皮動物との共通祖先にさかのぼる可能性を示しました。     【研究内容と成果】 本研究では、バフンウニ(Hemicentrotsu pulcherrimus)幼生の前端部神経外胚葉に存在する「非視覚的な光受容を担う脳様領域(神経細胞群)」を単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)注3)とin situ ハイブリダイゼーション注4)にて特定し、行動解析によってその機能を統合的に定義しました。幼生期の神経細胞は稀少で検出が難しいため、Delta–Notch による側方抑制注5)を阻害する薬剤を用いて神経細胞数を一時的に増やし、神経集団の解像度を高めました。その結果、これまで一様とみなされがちだったセロトニン注6)作動性ニューロンが、前方群と背側群という二つの集団に分かれており、背側群は非視覚オプシン(Opn5L)を発現していることを見いだしました(図1)。 遺伝子発現の空間解析では、背側群と前方群とでは、形態と配置のいずれもが異なること、さらに特定の転写因子セットが背側群に偏って現れることを明らかにしました。背側群の一部細胞は上皮層から脱落して移動し、前方群の近傍に合流する過程がライブイメージング注7)で観察され、移動性ニューロンとしての性質を持つことが示唆されました。これは、後口動物のうち脊索動物に特有と考えられてきた神経移動が、ウニ幼生にも備わっている可能性を示す重要な知見です。 機能面では、Opn5L の機能低下により、連続照明下で沈降(浮遊喪失)行動が有意に抑えられ、光入力が遊泳・浮沈の制御に直接関与することを実証しました。加えて、セロトニン合成関連の制御因子や領域指定因子の発現解析から、当該領域が脊椎動物の終脳/間脳と似た分子設計原理を持つことが示されました(図2)。以上より、ウニ幼生には非視覚光受容を核とする脳様中枢が存在し、環境光情報を行動へ統合する回路の一部が保存されている可能性が高いことが明らかになりました。これは、後口動物共通祖先にさかのぼる脳機能の起点を、具体的な細胞群と遺伝子プログラムとして提示する成果です。     【今後の展開】 今後は、光→行動の回路に関するより詳細な解析や、比較発生・比較ゲノミクスによる系統横断検証(棘皮・半索・脊索動物での保存/分岐の同定)を進め、非視覚オプシン中枢の普遍性と系統特異性の理解を深めます。最終的には、脳の「はじまり」の設計図を、細胞系譜、遺伝子ネットワーク、行動出力の三層で統合し、脊椎動物脳の起源と多様化に対する新しい指標の提示を目指します。   参考図 図1(左)ウニ幼生を背側から見た模式図。前端部(水色)領域は前端部神経外胚葉、つまり脊索動物でいうところの脳領域に類似する。しかし、発生初期にここに存在するセロトニン神経は単一のタイプとされ、それほど複雑さはないとみなされていた。(右)この脳領域に対してscRNA-seqを行ったところ、セロトニン神経が2集団から構成され、それぞれ異なる遺伝子発現をしていることが明らかになった。特に体の後方背側に位置する集団は非視覚オプシンとともに、脊索動物では間脳形成に関与している遺伝子群が発現していることが明らかになった。 図2前後方向に区画分けされたウニ幼生(左図)の脳様領域と、脊椎動物であるマウスの脳(右図)の比較。発現遺伝子プロファイルの比較で、前後軸に沿った類似性が見られた。   用語解説 注1) 後口動物 系統進化上、左右相称動物を大きく二つに分けた時の分類群の一つ。原腸陥入(消化管の元となる原腸が形成される過程)の際の原口(入口部分)が肛門になり、原腸の前端部が体表と接する部分に新たに口ができるグループ。脊索動物と棘皮動物、半索動物を含む。 注2) 棘皮動物門 分類学上の階級(界・門・綱・目・科・属・種)の中で、門で分類した場合のグループの一つ。ウニ、ナマコ、ヒトデ、クモヒトデ、ウミユリの仲間を含む。 注3) 単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq) 多細胞生物の体を構成する細胞それぞれに発現しているmRNAを細胞ごと網羅的に解析する手法。どの細胞にどのような遺伝子が発現しているのかを知ることができる。 注4) in situハイブリダイゼーション 細胞内において特定のmRNAの分布を検出する手法。特定の配列を持つmRNAにラベルをつけ、細胞内のターゲットとなるmRNAと結合(ハイブリダイゼーション)させてラベルを検出する。 注5) Delta-Notchによる側方抑制 隣接する細胞が相互作用することで互いに異なる運命をもたらすメカニズムで、多くの動物の神経細胞分化の過程で見られる現象。DeltaとNotchはいずれも細胞膜上の膜タンパク質で、隣接する一方の細胞のDeltaがもう一方の細胞のNotchと結合することで、この細胞でのDeltaの発現を抑制し、役割の異なる細胞を分化させる。 注6) セロトニン 神経伝達物質の一つ。ヒトの脳にも存在しており、精神安定など、さまざまな機能を果たしている。ウニでは、脳を構成する神経の中で最も早く形成される。 注7)ライブイメージング 光学顕微鏡を用いて生きたままの生き物の動きや細胞の変化を直接観察する手法。今回はウニ胚の細胞膜と核を蛍光タンパク質によって標識し、それをレーザー光で光らせたものを観察した。   研究資金 本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「多細胞システムにおける細胞間相互作用とそのダイナミクス」研究領域(JPMJPR194C, JPMJPR1945;2019-2022年度)、科学技術振興機構(JST) 研究成果展開事業が助成するA-STEP(JPMJTR204E; 2019-2024年度)、日本学術振興会が助成する科学研究費基盤研究(B)(23K23933; 2022-2025年度)、(C)(23K11312;2023-2027年度)、(若手)(19K20406: 2019-2022 年度)日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業 CREST「マルチセンシングネットワークの統合的理解と制御機構の解明による革新的医療技術開発」研究領域(22gm1510007; 2022-2027年度)、東レ科学振興会が助成する東レ科学技術研究助成(2018-2020年度)、武田科学振興財団が助成するライフサイエンス研究奨励(2015年度)による助成によって実施されました。   掲載論文 【題名】 Non-Visual Photoreceptive Brain Specification in Sea Urchin Larvae (ウニ幼生における非視覚光受容に関与する脳領域の形成) 【著者名】 #Junko Yaguchi, *#Koki Tsuyuzaki, Ikutaro Sawada, Atsushi Horiuchi, Naoaki Sakamoto, Takashi Yamamoto, Takahiro Yamashita, *Shunsuke Yaguchi (*責任著者、#equal contribution) 【掲載誌】 Nature Communications 【掲載日】 2025年11月19日 【DOI】 10.1038/s41467-025-65628-9   【プレスリリース】ウニ幼生に光で行動を調節する脳のような神経細胞群が存在することを発見.pdf(1.42 MB)掲載誌:Nature Communications 研究者ガイドブック(山本卓教授)   【問い合わせ先】 【研究に関すること】 谷口俊介(やぐちしゅんすけ) 筑波大学生命環境系/下田臨海実験センター准教授 TEL: 0558-22-1317 E-mail: yag@shimoda.tsukuba.ac.jp URL: https://sites.google.com/site/yaguchisea/home X@urchin_lab   【取材・報道に関すること】 筑波大学 広報室 TEL: 029-853-2040 E-mail: kohositu@un.tsukuba.ac.jp   千葉大学 広報室 TEL: 043-290-2018 E-mail: koho-press@chiba-u.jp   京都大学 広報室 国際広報班 TEL: 075-753-5729 E-mail: comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp   広島大学 広報室 TEL: 082-424-4518 E-mail: koho@office.hiroshima-u.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 海洋
    2025.11.11
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • 海洋
    パンダ模様のヨコエビ、2種目を新たに発見!見た目はそっくりでも系統は別 ~日本沿岸の生物多様性理解に期待~

    本研究成果のポイント 和歌山県・大阪府沿岸の潮間帯から、パンダ模様の新種のヨコエビ「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」を発見。 同じくパンダ模様を持つすでに発見されているパンダメリタヨコエビとは系統的に近縁ではなく、模様の類似は「他人の空似」であることを確認。 日本沿岸の生物多様性の高さを示す成果であり、未調査地域の分類学的研究が新種発見や種の保全に向けた重要な基礎データになる可能性を示唆。   概要 和歌山県と大阪府の沿岸の潮間帯から新種のヨコエビ「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」が発見されました。本種は体長5~10 mmで、砂地の転がる石の下に生息しています。「ヨコエビ」という名前は、体の左右どちらかの面を下にして、横になって素早く移動する姿に由来します。 この種は以前よりその存在が知られていましたが、分類が難しく、種が明らかではありませんでした。今回、詳細な形態観察と遺伝子解析を行なった結果、メリタヨコエビ属の新種であることが明らかになりました。 ヨリパンダメリタヨコエビは白黒のパンダ模様という特徴的な色彩をもちますが、これは私たちが2024年に新種として公表したパンダメリタヨコエビによく似ています。これら2種がパンダ模様をもつ理由についてはよく分かっていませんが、捕食者から逃れるためのカモフラージュの役割を果たしていると考えられます。興味深いことに、遺伝子解析の結果、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビは系統的に近縁ではないことが明らかになりました。このことは、両種にみられる特徴的なパンダ模様は、実は他人の空似であることを示します。 この新種の発見により、日本の沿岸域におけるメリタヨコエビ属の種多様性が、従来の研究で予想されていた以上に高いことが明らかになりました。 今後、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビの生態や行動を詳しく調べることで、パンダ模様をもつ理由を明らかにできることが期待されます。 ヨリパンダメリタヨコエビ Melita pandina.内山りゅう氏撮影     背景 日本沿岸は、世界でもヨコエビ類の種多様性が高いことで知られています。 メリタヨコエビ属は世界で65種が知られる大きな分類群ですが、日本近海における分類学的研究は十分には行われていませんでした。     研究成果の内容 今回、和歌山県と大阪府の沿岸の潮間帯でフィールド調査を行ったところ、白黒のパンダ模様のメリタヨコエビ属の未記載種が見つかりました。 この特徴的な色彩は、私たちの研究グループが2024年に新種として公表した同属のパンダメリタヨコエビに次ぐ2種目です。 詳細な形態比較の結果、新種のヨコエビは白黒のカラーパターンや脚の形態などの特徴により、同属の全ての既知種と区別されることが分かりました。しかし、特徴的なパンダ柄が既知種のパンダメリタヨコエビと被るため、新種の命名は難航しました。そこで、パンダ好きとして知られる文筆家でラジオパーソナリティーの藤岡みなみさんに和名の命名を依頼。パンダメリタヨコエビよりも「もっと」パンダっぽい色彩をしていることから「ヨリパンダメリタヨコエビ(学名:Melita pandina)」と名付けていただきました。 ※和名:生物の日本語での名前学名:世界共通の生物の名前 興味深いことに、遺伝子解析の結果、ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビは系統的に近縁ではないことが明らかになりました。このことは、両種にみられる特徴的なパンダ模様は、実は他人の空似である可能性が高いことを示します。パンダ柄は、それぞれの種で独立に進化した「収れん進化」(系統的に離れた生物が、似た環境や生活様式に適応する中で、似た形質や機能を持つようになる進化)の結果だと考えられます。    今後の展開 ヨリパンダメリタヨコエビとパンダメリタヨコエビの生態や行動を詳しく調べることで、パンダ模様をもつ理由を明らかにできることが期待されます。 未調査地域におけるヨコエビ類の分類学的研究を進めることで、さらなる新種の発見が予想されます。このような分類学的研究を続けることで、日本列島の沿岸環境における生物多様性の解明が期待されるとともに、種の保全に向けた重要な基礎データとなることが期待されます。   新種の命名者、藤岡みなみさんのコメント 「すでにパンダのようなヨコエビがいるのに、もっとパンダらしい新種が見つかった」と伺って、とても驚きました。大変恐れ多いことながら、親しみを込めてちょっぴり韻を踏んだ名前を提案させていただきました。ヨリパンダメリタヨコエビ。ぜひ一度、声に出してみてください。   参考資料 本研究成果は、動物学に関する幅広い研究成果を掲載している国際学術雑誌Zoological Science(ズーロジカル サイエンス)に発表されます。 タイトル:Black-and-white disruptive coloration may be convergent: a new species of Melita (Amphipoda: Melitidae) from Japan 著者:Ko Tomikawa, Shigeyuki Yamato and Hiroyuki Ariyama 巻・ページ:42巻 DOI: https://doi.org/10.2108/zs250074   掲載雑誌:Zoological Science 研究者ガイドブック(富川 光 教授)   【お問い合わせ先】 大学院人間社会科学研究科教師教育デザイン学プログラム 富川光(とみかわこう)教授 Tel:082-424-7093 E-mail:tomikawa@hiroshima-u.ac.jp

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    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2025.11.04
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    日本周辺の魚類体重変動の主原因は餌をめぐる競争 ―75%は餌をめぐる競争、50%は環境悪化―

    本研究成果のポイント 日本周辺の魚類16系群の体重減少の75%は餌をめぐる競争が原因と特定された。 魚類の体重変化に対し、餌をめぐる競争、環境要因、漁獲圧の影響を定量的に評価した。 魚種内および魚種間の競争が明示され、複数魚種管理の科学的知見となることが期待される。   餌をめぐる競争で魚類の体重変化   概要 東京大学大学院農学生命科学研究科の林珍大学院生(研究当時)と同大学大気海洋研究所の伊藤進一教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授らの共同研究グループは、日本周辺の魚類16系群(注1)の体重変化の原因を調べ、75%の系群の体重変動は餌をめぐる競争が主原因であることを明らかにしました。 本研究では長期の体重変動に状態空間モデル(注2)を応用することで、餌をめぐる競争、環境要因による影響、漁獲圧の影響を初めて定量的に評価しました。先行研究では、2010年代に日本周辺の多くの魚種・系群で共通して体重減少が生じており、地球温暖化に伴う餌料プランクトンの生産減少に伴い魚種内および魚種間での餌をめぐる競争が激しくなったことが原因であると推定しましたが、本研究では各要因を定量的に評価した点で新規性があり、この研究成果は今後複数魚種管理(注3)の科学的知見として役立つことが期待されます。   発表内容 これまでに同研究グループは、2010年代に日本周辺の多くの魚種・系群で共通して体重減少が生じていることを先行研究で示していました(関連情報①)。その中で、地球温暖化に伴う餌料プランクトンの生産減少によって魚種内および魚種間での餌をめぐる競争が激しくなったことが原因だと推定しましたが、各魚種あるいは系群の体重変化(図1)の原因を特定するには至っていませんでした。この度、本研究チームは、各年に孵化した魚類が、餌をめぐる競争、環境要因、漁獲圧の影響を受けながら年齢を増すモデルを構築し、状態空間モデルを当てはめることで、実際に起きた体重変動を説明するために必要な要因の特定を行いました(図2)。その結果、餌をめぐる競争は75%の系群で重要であり、ついで環境が50%の系群で作用し、漁獲圧の影響は25%にとどまることが示されました。 図1:各系群の体重変化 元データは水産庁および水産研究・教育機構が公表している資源評価報告書に記載されている年齢別体重(https://abchan.fra.go.jp/hyouka/)。系群については(注1)参照。Lin et al. (2025)より(CC-BY)。 図2:各系群の状態空間モデルの解析結果     左列は最小年齢の解析結果、右列はそれ以降の年齢の解析結果。それぞれの色は体重変動の要因を示し、点線の0の値から離れてかつ高いピークを示すものほど影響が明確であることを示す(灰色:過去の履歴の影響、水色:魚種内及び魚種間競争、赤:漁獲圧、橙:交互作用、緑:環境要因)。Bは種内競争、SumBはマイワシ・マサバ・カタクチイワシからの種間競争、OYは親潮面積、VTDは表層と下層の水温差の影響を示す。Nullはどの影響でも説明できなかったことを示す。右側の%はモデルの説明率を示す。系群については(注1)参照。Lin et al. (2025)より(CC-BY)。     水産庁や水産研究・教育機構などの努力によって長期に蓄積された年齢別体重データを網羅的に調べた研究の成果として、定量的に体重変動の要因が示されました。この結果は、各魚種あるいは系群ごとの管理だけでは加味されない魚種間の餌をめぐる競争の重要性を示すものであり、今後複数魚種管理が必要であることを示しています。本研究は、今後の複数魚種管理の基礎的な知見となることが期待されます。     関連情報 「プレスリリース①日本周辺の魚類の小型化 ―温暖化により顕著になった餌をめぐる競合―」(2024/02/28)     発表者・研究者等情報 東京大学 大気海洋研究所 伊藤進一教授 大学院農学生命科学研究科   林珍博士課程(研究当時) 現:東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)ポストドクトラル研究員   水産研究・教育機構水産資源研究所 藤原邦浩主幹研究員   広島大学 大学院統合生命科学研究科 冨山毅教授     論文情報 雑誌名:Progress in Oceanography 題名:A state-space approach reveals that competition drives variation in fish body weight, with influences from environmental conditions and fishing pressure 著者名:Zhen Lin *, Shin-ichi Ito, Alan Baudron, Christine Stawitz, Takeshi Tomiyama, Kunihiro Fujiwara, Paul D. Spencer, John Morrongiello DOI: 10.1016/j.pocean.2025.103582 URL: https://doi.org/10.1016/j.pocean.2025.103582     注意事項 日本時間11月01日午前02時06分(協定世界時間:10月31日午後5時06分)以前の公表は禁じられています。     研究助成 本研究は、科研費「基盤研究A(課題番号:JP21H04735)」、「学術変革領域B(課題番号:JP22H05030)」、「学術変革領域研究A公募研究(課題番号: JP25H02072)」の支援により実施されました。     用語解説 (注1)系群 資源の変動単位。遺伝的に他の生物集団と区別できる集団、あるいは遺伝的に区別できなくとも、産卵期、産卵場、分布、回遊、成長、成熟、生残など、独自の生物学的特徴を有する場合が多い。本研究で用いた16系群は、マイワシ太平洋系群、マイワシ対馬暖流系群、マアジ対馬暖流系群、マサバ太平洋系群、マサバ対馬暖流系群、ゴマサバ太平洋系群、ゴマサバ東シナ海系群、ウルメイワシ対馬暖流系群、サワラ瀬戸内海系群、カタクチイワシ太平洋系群、カタクチイワシ対馬暖流系群、マダラ本州太平洋北部系群、ブリ、スケトウダラ太平洋系群、イカナゴ瀬戸内海東部系群、キチジ太平洋北部系群。   (注2)状態空間モデル 状態を表す変数(今回の場合は真の体重)がある要因(今回の場合は餌をめぐる競争を指標する各系群の資源量あるいはマイワシなど大きく変動し他魚種にまで影響する資源量、環境要因としての栄養塩豊富な親潮域の面積あるいは表層と下層の水温差による成層強度、漁獲圧)によって変化し、その変数の観測値(今回の場合は体重の観測値)が誤差を持って観測されると仮定し、各要因の影響を調べるモデル。   (注3)複数魚種管理 単一魚種・系群ではなく、複数の魚種・系群を対象として管理する方法。   報道発表資料_20251101報道解禁.pdf(681.83 KB) 掲載雑誌:Progress in Oceanography 研究者ガイドブック(冨山 毅 教授)   【お問い合わせ先】 東京大学大気海洋研究所 教授伊藤進一(いとうしんいち) Tel:04-7136-6240 E-mail:goito@aori.u-tokyo.ac.jp   広島大学大学院統合生命科学研究科 教授冨山毅(とみやまたけし) Tel:082-424-7941 E-mail:tomiyama@hiroshima-u.ac.jp   東京大学大気海洋研究所 附属共同利用・共同研究推進センター広報戦略室 E-mail:kouhou@aori.u-tokyo.ac.jp   東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)アウトリーチ担当 Tel:022-795-5620 E-mail: aimec-comm@grp.tohoku.ac.jp   広島大学広報室 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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    • インフラ
    2023.04.04
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    野良猫用公衆トイレの設置効果の検証

    本研究の優位性 野良猫の糞尿被害を、忌避剤と公衆トイレを併用して軽減可能であることを立証 猫の糞尿被害を通して、ヒトと動物の共生についての課題点を顕在化     研究内容 背景 猫の糞尿には人獣共通感染症の寄生虫やバクテリア、ウイルスを含んでいる可能性があり、糞尿被害による自治体への苦情は多いが、糞尿汚染に関する研究報告は少ない。環境省は野良猫用トイレの設置を推奨しているが、その効果は検証されていない。そこで、約200頭の野良猫が生息している『猫の街』尾道市において、糞尿被害に悩まされている寺院に開発中の忌避剤*と猫用公衆トイレを設置して、糞を対象に猫用トイレの効果を検証した。 *忌避剤は本研究終了後に一般発売された。     研究の概要 植物プランターを利用したトイレに雨よけの屋根を付けたものを6台作成して、市販の猫砂を敷き詰め、境内及び墓地の異なる地点に6箇所設置した。同時に、トイレへの排泄を確認するための赤外線センサーカメラを4台、事前調査で判明していた5カ所の排泄地点へ忌避剤を設置した。 週に一度、カメラのバッテリー及びデータ回収の際にトイレと境内を清掃し、糞を採集して重量を計測した。   寺院に居ついている17頭の野良猫のうち、個体識別ができた3頭(猫A、B、C)について、トイレ設置前後の糞重量を比較した結果、忌避剤活用によるトイレの設置は、糞の減少に効果的であった。 野良猫はトイレトレーニングを行っていないが、トイレを設置した週から3頭ともトイレを利用していた。トイレでの排泄回数は14週間で、Aが81.3%、Bが88.6%、Cが100%と頻繁に出没する猫ほど使用頻度が高かった。また、対象区として設定した2つの公園と1つの神社の合計8地点では、糞重量は減少しなかった。   猫のトイレの利用を増やすためには、生息する頭数+1台のトイレの設置が必要であり、トイレの大きさや清掃頻度、敷材等をさらに検証する余地がある。   猫用公衆トイレを設置すると野良猫の糞尿被害の減少に効果的だが、設置後も清掃や点検といった人の手が必要となる。猫の行動圏は観光客や地域住民による餌付けに影響を受けるので、給餌だけでなくトイレ管理や糞尿の清掃を行うことで地域トラブルの減少へ繋がる。     期待される効果 野良猫の糞尿被害発生地域における猫用公衆トイレの設置促進 猫用公衆トイレ設置による地域トラブルの減少     企業・自治体への期待 猫用公衆トイレに最適な素材(猫砂・屋根・容器等)の開発に興味のある企業との共同研究 野良猫に関わる課題解決にむけて調査・検証を行いたい企業または自治体との連携 地域猫活動の推進や課題解決に取り組んでいる自治体との連携     論文 Seo,A. & Tanida, H.,The effect of communal litter box provision on the defecation behavior of free-roaming cats in old-town Onomichi, Japan,Applied Animal Behaviour Science 224 (2020) 104938. 妹尾あいら・谷田創. 酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体にシトラールを添加したネコ用忌避剤の効果,ペストロジー 32(1) (2017) 1-6. 妹尾あいら・谷田創. 自由徘徊ネコに対する酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体の忌避効果の検証, ヒトと動物の関係学会誌 44 (2016) 42-48.     研究者からのメッセージ 野良猫とヒトの福祉向上と共生社会を目指し、広島県内のさまざまな地域でフィールドワークに取り組んでいます。 地域住民の声を直接聞き、自治体等とも協力することで、成果を地域に還元できる研究を行っています。   研究者 妹尾あいら(SEO AIRA) 広島大学 酪農エコシステム技術開発センター 助教

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    2022.06.27
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    シンプル酵素触媒による効率的な有用物質変換

    背景 従来の微生物細胞による物質生産は、宿主とする微生物を生かしながら行うため、基質・原料が宿主細胞の代謝にも使われ、様々な代謝物質が副産物として生成される。 原料が副産物の生成にも使用されるため、目的の物質が低収率となる。 不要な副産物生成抑制のために、細胞代謝を改変して最適化する手法がとられるが、これには多大な時間と手間を要す。     概要 10~20℃で生育可能な低温菌を宿主として、中温菌の酵素を発現させ、化学品生成経路を構築する。この細胞を中温(40~50℃)で熱処理し、低温菌の代謝酵素を失活させる。これにより、中温菌由来の酵素のみによる物質生産が可能になる。 また、熱処理により低温菌細胞が部分的に壊れるため、膜透過性が向上し、原料・基質が細胞内に自由に入ることができ、界面活性剤等の薬品処理が不要になる。   本研究の優位性 既に実用化されているAspergillus属細菌や、大腸菌を用いた微生物変換法に比べて、不要な副産物の生成がなく、収率が高い。 副産物生成抑制のため、従来必要であった細胞代謝の改変が不要となり、多大な時間と手間を省くことができる。 基質の膜透過性向上のため、従来必要であった界面活性剤等の薬剤処理が不要となる。 中温加熱処理のみで高い生産性と収率が得られる「シンプル酵素触媒」であり、有用物質生産のコスト削減が期待される。     期待される用途 ➢応用例1:3-HPA(ヒドロキシプロピオンアルデヒド)の生成 3-HPAはグリセロールから変換されるアルデヒドであり、アクリル酸の原料として利用される有用化学品である。 廃グリセロールは有用な資源であるにも関わらず活用されていないため、グリセロールを使用して物質変換の検討を行った。 細胞を培養・回収・洗浄、熱処理後(45℃・15min)、3-HPAの収率を調査。ほぼ100%の割合で3-HPAに変換できた。 ➢応用例2:1,3-PD(プロパンジオール)の生成 1,3-PDは抗菌性を併せ持つ保湿剤として効果があり、化粧品等に利用されている有用化学品である。 応用例1の3-HPA生成系後半にDhaTを導入することにより1,3-PDを生成。 DhaTは還元力を必要とするため、補酵素NADHの添加が必要となるが、FDH(ギ酸デヒドロゲナーゼ)も発現させた細胞を構築することにより、NADH無添加で1,3-PDの生成が可能となり、収率5%で生成した。   ➢応用例3:アスパラギン酸の生成 アスパルテームの原料でC4基幹化学品であるアスパラギン酸を、フマル酸から生産した。 宿主の代謝酵素による競合反応を熱処理で抑制することにより、副産物のリンゴ酸生成が低下し、収率が向上した。 細胞をアルギン酸ナトリウムで固定化することにより、繰り返し利用が可能になり、95%以上の変換効率を9回維持できた。   ➢応用例4:イタコン酸の効率的生産 C5基幹物質のイタコン酸は、コンタクトレンズやニトリル製品などのポリマー素材として有用な化合物である。 従来のAspergillus terrusによる生成方法は、合成経路が代謝系と競合すること、合成酵素が異なるオルガネラに分かれていることが課題となっていた。 Shewanella属細菌にアコニターゼ(coli)、cis-アコニット酸脱炭素酵素(Aspergillus terrus)を発現させて培養、回収、洗浄、熱処理後(45℃、15min)、クエン酸を導入、高収率でイタコン酸を生成できた。 高収率でイタコン酸を生成し(左のグラフ)、(洗浄操作)を与えなければ、触媒を繰り返し利用して、5回の変換が可能(右のグラフ)である。 実用化に向けての課題 今後、触媒の安定的利用に関する検討を進めたい。     企業への期待 酵素機能を最大限発揮可能な本触媒による、物質変換プロセスの実用化を目指す企業との共同研究を希望する。     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :低温菌を用いたイタコン酸の製造方法 出願番号 :特願2018-124796 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :田島誉久、加藤純一、羅宮臨風     論文 田島 誉久,緋田 安希子,加藤 純一:低温菌シンプル酵素触媒による効率的な物質変換,Journal of Environmental Biotechnology, 21(1), 9-16, 2021(環境バイオテクノロジー学会誌21巻1号)doi: 10.50963/jenvbio.21.1_9 Mojarrad, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Psychrophile-based simple biocatalysts for effective coproduction of 3-hydroxypropionic acid and 1,3-propanediol, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 85(3), 728-738 (2021) doi: 10.1093/bbb/zbaa081 Mojarrad, K. Hirai, K. Fuki, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Efficient production of 1,3-propanediol by psychrophile-based simple biocatalysts in Shewanella livingstonensis Ac10 and Shewanella frigidimarina DSM 12253, Journal of Biotechnology, 323, 293-301 (2020) doi: 10.1016/j.jbiotec.2020.09.007 Luo, M. Fujino, S. Nakano, A. Hida, T. Tajima, J. Kato: Accelerating itaconic acid production by increasing membrane permeability of whole-cell biocatalyst based on a psychrophilic bacterium Shewanella livingstonensis Ac10, Journal of Biotechnology, 312, 56-62 (2020) doi:10.1016/j.jbiotec.2020.03.003 Tajima, K. Tomita, H. Miyahara, K. Watanabe, T. Aki, Y. Okamura, Y. Matsumura, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient conversion of mannitol derived from brown seaweed to fructose for fermentation with a thraustochytrid, Journal of Bioscience and Bioengineering, 125(2), 180-184 (2018) doi:10.1016/j.jbiosc.2017.09.002 Tajima, M. Hamada, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient aspartic acid production by a psychrophile-based simple biocatalyst, Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology, 42(10) 1319-1324, (2015) doi:10.1007/s10295-015-1669-7 Tajima, K. Fuki, N. Kataoka, D. Kudou, Y. Nakashimada, J. Kato: Construction of a simple biocatalyst using psychrophilic bacterial cells and its application for efficient 3-hydroxypropionaldehyde production from glycerol, AMB Express, 3(1), 69 (2013) doi: 10.1186/2191-0855-3-69     研究者からのメッセージ 本技術は多種多様な酵素の効率的変換を細胞から酵素を抽出せずに容易に実現できるものであり、バイオ変換の生産性向上に有望と考えています。本触媒にご興味がございましたら是非ご連絡ください。     研究者 田島誉久(TAJIMA TAKAHISA) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 准教授

    • 食料/農林水産業
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2022.01.05
    • 食料/農林水産業
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    環境に優しいうどん粉病の防除薬

    目標・狙い カビ菌により引き起こされるうどん粉病は、ほとんどの植物に発生する可能性があり、予防と対策が必要となる。 従来の化学農薬は農作物の病原菌への防除には有効であるが、環境中での残留性、生態系への影響、農薬耐性等が懸念されている。 そこで、光フェントン反応や光増感反応により、OHラジカル、一重項酸素、スーパーオキシドなどの活性酸素を発生させ、その高い酸化力を利用して、病害治療や防除に役立てることを目的とする。     概要 過酸化水素水に鉄を添加した光フェントン試薬は、数ppmの低濃度でも太陽光のもとで活性酸素のOHラジカルを持続的に生成する能力があることが解っている。活性酸素の強力な酸化力によりうどん粉病を防除する方法を考案した。 過酸化水素水(H2O2)が一定の濃度以上でOHラジカルが発生するサイクルが生まれる。   OHラジカルの他に、ローズベンガルなどの色素や、カテキンなどのポリフェノールといった光増感剤から、一重項酸素(¹O2)やスーパーオキシド(O2-)などの活性酸素を光化学的に発生可能なことが解っており、これらについても同等の効果が期待され、その利用について同様な検討を行っている。     研究事例 実際にイチゴおよびキュウリうどん粉病を対象に、自然太陽光下での光フェントン試薬の最適な処理条件や、効率的施用法等を見出し、うどん粉病の防除に有効であることを検証した。   イチゴうどん粉病への光フェントン反応の適用 試薬1と2の発病率に関しては統計的に有意な差は認められなかったが、試薬3と対照区との間には有意差が認められたため、OH生成速度が高い試薬では発病率低下が確認された。     きゅうりうどん粉病への光フェントン反応の適用   シュウ酸鉄錯体を用いた試薬(光フェントン試薬MIX3)は薬害がほとんど確認されず、うどん粉病の予防および治癒・抑制効果も高かった。     本研究の優位性 OHラジカル、一重項酸素(¹O2)、スーパーオキシド(O2-)などの活性酸素は病原菌防除に従来の化学農薬並みの効果が期待される。 光フェントン試薬は溶液反応のため植物表面に過酸化水素水や鉄が付着してしまうが、一定濃度以下であれば安全である。 ローズベンガルやカテキンなどの試薬は化学農薬に比べ安価であり、気層中で発生するため、発生した活性酸素のみを直接植物表面に暴露でき、より安全である。 太陽光や微生物により容易に分解されるので環境中での残留性が低く、安全性が高い。     期待される用途 イチゴやキュウリうどん粉病などの植物病害防除。 光フェントン試薬への光照射により発生する活性酸素を用い、空気中の悪臭物質の分解やウイルスなどの殺菌が可能であり、無臭化や滅菌などの空気清浄化技術への応用。 微量のスーパーオキシドは生体のSOD活性を高めるため、スーパーオキシドを付加した酸素ガス吸入装置など医療分野への応用。     企業への期待 農薬の研究開発の技術を持つ、企業との共同研究を希望。 ¹O2 、O2-によるうどん粉病防除技術については試験段階であり、企業との共同研究により実用化が達成可能。 空気清浄化技術を開発中の企業、農業や医療分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。     本技術に関する知的財産権 発明の名称:きゅうりうどん粉病の防除薬及び防除方法 特許番号:特許第5963143号 出願番号:特願2012-245366 出願人:国立大学法人広島大学 発明者:佐久川  弘、ナヒド  ハサン     論文 Protective and curative effects of foliar-spray Fenton solutions against cucumber (Cucumis sativus, L.) powdery mildew. Sakugawa, H., Hasan, N., Oguntimehin, I., Belal, E., J. Environ. Sci. Health, Part A, 47, 1909–1918 (2012)     研究者からのメッセージ OHラジカルがカビに有効なのに対して、一重項酸素はウイルスを撃退するのに有効です。そのため新型コロナウイルスの流行を受けて、広島県内の企業と共同で一重項酸素を発生させる空気清浄機の開発を進めています。将来的には農業用に転用して、活性酸素噴霧器としてウイルス性の病害の防除に利用できると期待しています。   研究者 佐久川弘(SAKUGWAWHIROSHI) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 客員教授

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    • バイオエコノミー
    • 医療/ヘルスケア
    2020.10.21
    • 環境エネルギー
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    低コストで大量繁殖・飼育ができる新規実験動物

    目標・狙い “カエル”はヒトと同じ脊椎動物に属する両生類の代表として、古くから実験に用いられてきた。現在では大量飼育が容易なツメガエルが主に用いられてきた。 実験動物にはそれぞれの特徴や性質があるので、カエル類を使った実験や研究では不十分な場合もある。 我々は、カエルと同じ両生類に属するイモリを実験動物として整備することで、両生類を用いた実験システムの充実化や利便性の向上を目指している。   想定される市場・製品・産業分野 カエルと同じ両生類の実験動物材料として、以下の分野における活用 農薬業界 医薬品開発 毒性・環境評価   概要 脊椎動物であるイモリは実験動物としての有用性は認められていたものの、従来の種は大量繁殖が不可能であり、利便性が低い動物とされていた。 本研究では、年間数千個もの卵を産卵するイベリアトゲイモリに着目。ホルモン処理による一年中の産卵や人工授精法を確立した。 イベリアトゲイモリは文献的には性成熟に1年半以上かかるとされていたが、飼育条件(給餌、水温など)を変えることにより生育速度を早め、雄は6ヶ月、雌は9ヶ月までに短縮すると同時に、大量のイモリを安定的に飼育する技術を開発した。 その結果、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となった。   本研究の優位性 有尾両生類(イモリやサンショウウオ類)において、低コストで大量繁殖・飼育ができる唯一の実験動物。 ゲノム編集技術との相性が良いため、実験目的に合わせた遺伝子の改変が可能。   論文 Matsunami et al. “A comprehensive reference transcriptome resource for the Iberian ribbed newt Pleurodeles waltl, an emerging model for developmental and regeneration biology.” DNA Res. (2019) 26:217-229. doi: 10.1093/dnares/dsz003.PMID: 31006799 Suzuki et al. “Cas9 ribonucleoprotein complex allows direct and rapid analysis of coding and noncoding regions of target genes in Pleurodeles waltl development and regeneration.” Dev Biol. (2018) 443:127-136. doi: 10.1016/j.ydbio.2018.09.008 Hayashi et al. “Molecular genetic system for regenerative studies using newts.” Dev Growth Differ. (2013) 55:229-36. doi: 10.1111/dgd.12019   外部資金の獲得状況 住友財団基礎科学研究助成 内藤記念科学奨励金・助成金 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(代表) 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(分担)他   研究者からのメッセージ イベリアトゲイモリを安定的に飼育する技術の開発により、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となりました。イベリアトゲイモリを介した研究にご興味のある企業の方は是非一度ご相談ください。   研究者 林利憲(HAYASHI TOSHINORI) 広島大学 両生類研究センター 教授

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