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    • 環境エネルギー
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    2026.02.20
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    ボノボ(大型類人猿)とテナガザル(小型類人猿)のiPS細胞と 脚腕の元になる細胞の作製に成功 —霊長類発生進化学・生物多様性保全・動物園獣医学の統合推進に貢献 —

    本研究成果のポイント ボノボ(大型類人猿)とテナガザル(小型類人猿)からiPS細胞(※1)を作製 類人猿のiPS細胞から四肢骨格の起源である細胞を作出することに成功 進化研究・生物多様性保全・動物園獣医学の3分野融合「動物園まるごとiPS細胞化プロジェクト」を大きく展開   概要 今村公紀 准教授(研究当時:京都大学ヒト行動進化研究センター助教、現:金沢大学医薬保健研究域)、博士課程4年 濱嵜裕介(京都大学ヒト行動進化研究センター)、今村拓也 教授(広島大学大学院統合生命科学研究科)、博士課程1年 飽田寛人(広島大学大学院統合生命科学研究科)らの研究グループは、京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリ(熊本県宇城市)、公益財団法人日本モンキーセンター(愛知県犬山市)、豊橋総合動植物公園(愛知県豊橋市)、東山動植物園(愛知県名古屋市)、大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)、名古屋大学 一柳健司 教授、総合研究大学院大学 田辺秀之 准教授らと共同で、大型類人猿ボノボと小型類人猿テナガザルから、ゲノムに外来遺伝子が挿入されない人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製に成功しました。 今回作製したiPS細胞について、複数種の霊長類iPS細胞の遺伝子発現パターンを比較した結果、iPS細胞の遺伝子発現は霊長類進化の系統関係を反映していること、ならびに種特異的な特徴を同定しました。また、本研究では、作製した類人猿iPS細胞から四肢骨格の起源である細胞(肢芽中胚葉細胞)を誘導することにも成功しました。本成果は、霊長類の進化発生学(エボデボ)、生物多様性の保全、動物園獣医学の発展を統合的に推進するための重要な基盤になると考えられます(図1)。   雑誌名:BMC Genomics タイトル:Generation and transcriptome profiling of bonobo induced pluripotent stem cells using stealth RNA vectors: a tripartite comparative study with humans and chimpanzees. 著者:Yusuke Hamazaki,、Hiroto Akuta、Hikaru Suzuki、Hideyuki Tanabe、Tsubasa Suzuki、Kouki Inoue、Kenji Ichiyanagi、Takuya Imamura*、Masanori Imamura*. BMC Genomics、in press DOI:https://doi.org/10.1186/s12864-025-12400-4 (open access) 雑誌名:Frontiers in Cell and Developmental Biology タイトル:Generation and characterization of induced pluripotent stem cells of small apes. 著者:Yusuke Hamazaki、Hiroto Akuta、Hikaru Suzuki、Hideyuki Tanabe、Kenji Ichiyanagi、Takuya Imamura、Masanori Imamura*. Front Cell Dev Biol, 13: 1536947 (2025) DOI:https://doi.org/10.3389/fcell.2025.1536947 (open access) 背景 ヒトとサルの境目はどこにあり、両者は何が違うのでしょうか。生物学的にヒトはヒト上科というグループに属し、ニホンザルのようなサル類と区分されます。ヒト上科にはヒトの他に大型類人猿(ボノボやチンパンジー、ゴリラ、オランウータン)と小型類人猿(テナガザル)が分類されます。なかでもボノボとチンパンジーはヒトに最も近縁な現生類人猿であり、ヒト、ボノボ、チンパンジーの3種の比較はヒト固有の特性を解明する糸口になります。一方、小型類人猿はヒトとの共通祖先から最も早く、最も古い時期に分岐しました。したがって、小型類人猿は系統進化上、ヒト・大型類人猿とサル類の中間に位置しており、サルからヒトへの進化の過程を解明する上で非常に重要な存在といえます。 研究成果の内容 ■ 1|ボノボiPS細胞とテナガザルiPS細胞の作製に成功 本研究では、京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリ(熊本県宇城市)で飼養されているボノボとチンパンジーについて、健康診断時に採血された余剰血液から末梢血単核球を分離・培養しました。また、日本モンキーセンター(愛知県犬山市)、豊橋総合動植物公園(愛知県豊橋市)、東山動植物園(愛知県名古屋市)、大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)と連携し、動物園で自然死した小型類人猿3種5個体(シロテテナガザル、アボットハイイロテナガザル、フクロテナガザル)の皮膚片から線維芽細胞を培養しました。これらの細胞にゲノムに外来遺伝子が挿入されない方法で初期化因子を導入することでiPS細胞の作製を行った結果、ボノボ2個体、チンパンジー1個体、テナガザル3個体(シロテテナガザル1個体、フクロテナガザル2個体)のiPS細胞を作製することに成功しました(図1)。   ■ 2|iPS細胞の霊長類種ごとの特徴を遺伝子発現パターンから解析 ヒト、大型類人猿(ボノボ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)、小型類人猿(シロテテナガザル、フクロテナガザル)、サル類(アカゲザル、カニクイザル)のiPS細胞について、遺伝子発現プロファイルを比較解析したところ、iPS細胞の遺伝子発現は霊長類の系統関係を反映したパターンに分類されること(サル類、小型類人猿、大型類人猿、ヒトの順に分岐)がわかりました。さらに、ヒト、ボノボとチンパンジーの間で異なる遺伝子発現や、テナガザルだけで見られる遺伝子発現など、種に特異的な特徴も検出されました。   ■ 3|類人猿iPS細胞から四肢骨格の起源(脚腕の元)である肢芽中胚葉細胞の誘導に成功 作製した類人猿(ボノボ、チンパンジー、テナガザル)のiPS細胞から四肢骨格の起源(腕脚の元)である肢芽中胚葉細胞を作出することに世界で初めて成功しました。腕と脚の長さはサル類ではほぼ同じであるのに対し、類人猿では脚に比べて腕が長く、ヒトでは反対に腕に比べて脚が長くなります。霊長類iPS細胞から肢芽中胚葉細胞を分化誘導する実験系は、脚腕の長さという類人猿やヒトの四肢の特徴がどのようなメカニズムによって進化してきたのかを解明することに役立つと考えられます。     今後の展開 本研究は「動物園まるごとiPS細胞化プロジェクト」の一環として、動物園と連携して実施しました。本プロジェクトは、動物園や飼養施設にいる動物たちの細胞バンク化とiPS細胞の作製を行うことで、以下の3つの活用に繋げることを目的としています。   ■ 1|哺乳動物の進化発生学(エボデボ研究)の進展 哺乳動物のiPS細胞を作製することで、哺乳動物が進化させた多様性や新奇性のメカニズムの解明が期待されます。今後は、動物園にいるさまざまな動物のiPS細胞から四肢を形成する肢芽中胚葉細胞を分化誘導することで、脚腕の長さや形の発生進化研究を展開する予定です。   ■ 2|生物多様性の保全 ボノボやテナガザルをはじめ、多くの希少動物は絶滅の危機に瀕しており、遺伝資源の保存は喫緊の課題です。本研究で進める細胞バンク化(動物由来の細胞を長期保存・再利用可能な形で蓄積すること)とiPS細胞の作製は、絶滅危惧種の「細胞レベルで生きた遺伝資源」を長期的に保存・活用できる基盤となります。   ■ 3|動物園獣医学の発展 希少動物では疾患研究や治療法の検討が難しい場合があります。iPS細胞を活用することで、動物種ごとの疾患モデルの構築や、薬剤反応性・毒性の種差や個体差の評価が可能となり、動物医療・健康管理の高度化に貢献すると期待されます。     参考資料 図1. 本研究の概要 動物園・研究施設からご提供いただいた組織試料から細胞を培養し、テナガザルとボノボ、チンパンジーのiPS細胞の作製に成功した。動物園のiPS細胞は今後大きく分けて3つの活用法が考えられる。 図2. ヒト・類人猿・サル類のiPS細胞の遺伝子発現パターンは霊長類進化の系統関係を反映する ヒト・類人猿・サル類のiPS細胞の遺伝子発現データに基づき、それぞれのiPS細胞株(点)間の類似性を樹形図として可視化すると、系統進化を反映したまとまりを示した(サル類、小型類人猿、大型類人猿、ヒトの順に分岐)。さらに、小型類人猿テナガザルのiPS細胞では他の霊長類に比べて”細胞死”に関連する遺伝子の発現が低い傾向が見られた。また、大型類人猿のうち、ボノボとチンパンジーのiPS細胞の間を比較すると、”代謝”機能に関連する遺伝子の一部で発現が異なっていた。 図3. 類人猿のiPS細胞から四肢骨格の起源である肢芽中胚葉細胞の分化誘導に成功 ボノボとテナガザルのiPS細胞(上段)から肢芽中胚葉細胞(下段)を分化誘導することに成功した。下図では、肢芽中胚葉を特徴づける遺伝子のPRRX1(赤)が発現していることを示している。   用語解説 (※1) iPS細胞 培養下(実験室)で半永久的に増え、身体を構成するさまざまな細胞種に分化することできる(=多能性)性質を持った細胞。   (※2) 分化誘導 iPS細胞の持つ、身体を構成するさまざまな細胞種に分化することできる(=多能性)性質を活かして、iPS細胞から目的の細胞を培養下で作出する方法のこと。   報道発表資料(741.67 KB) 掲載ジャーナル:BMC Genomics 掲載ジャーナル:Frontiers in Cell and Developmental Biology 研究者ガイドブック(今村 拓也 教授)   研究に関するお問い合わせ先 金沢大学医薬保健研究域 准教授今村 公紀 E-mail:imamura-masanori@staff.kanazawa-u.ac.jp 京都大学ヒト行動進化研究センター 博士課程4年 濱嵜 裕介 E-mail:hamazaki.yusuke.84n@st.kyoto-u.ac.jp 広島大学大学院統合生命科学研究科 教授今村 拓也 TEL:082-424-7438 E-mail:timamura@hiroshima-u.ac.jp ■報道に関するお問い合わせ先 広島大学 広報室 TEL:082-424-6762 E-mail : koho*office.hiroshima-u.ac.jp 京都大学広報室 国際広報班 TEL:075-753-5729FAX:075-753-2094 E-mail:comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp  

    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2026.02.20
    • 環境エネルギー
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    単層の氷の構造を初めて可視化 ― 渦状に並んだ水分子がつくるフェロアキシャル秩序を実証 ―

    本研究成果のポイント 鉱物中に閉じ込められた単層の水分子(単層氷)が研究の舞台 ハニカム格子上に並んだ水分子は室温で定まった方向を向かずに回転 低温で水分子が渦状に並んだ、フェロアキシャル秩序状態の新しい氷を発見   概要 静岡大学理学部の野村肇宏講師の研究グループは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鬼頭俊介助教・有馬孝尚教授、岡山大学の小松寿弐千大学院生(当時)・木村純大学院生・甲賀研一郎教授、広島大学の長谷川巧准教授・荻田典男教授、高輝度光科学研究センターの中村唯我研究員、東京理科大学の石川孟講師、名古屋大学の矢島健准教授、東京大学物性研究所の松尾晶技術専門職員・古府麻衣子教授・廣井善二教授、芝浦工業大学の富田裕介教授、大阪大学の松尾隆祐名誉教授と共同で、2次元に閉じ込められた単層の水分子が渦状の秩序構造(フェロアキシャル秩序)を示すことを発見しました。 本研究では、2次元に閉じ込められた水分子の秩序構造を、放射光X線回折と分子動力学計算によって調べました。マーティアイトという鉱物中で、水分子はハニカム格子上に並んでおり、単層氷とみなすことができます。研究グループはこの単層氷が低温で渦状のモチーフを形成し、フェロアキシャル秩序と呼ばれる特異な秩序を示すことを明らかにしました。 この2次元氷の秩序構造は過去に予言されておらず、水という身近な研究対象がいかに複雑で謎に包まれた存在かを物語っています。2次元氷に関する知見は3次元氷を研究する礎となるものであり、今後人類が水に関する研究を進める上で重要なマイルストーンとなることが期待されます。 なお、本研究成果は、2026年2月13日に、アメリカ化学会の発行する国際雑誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。 マーティアイトという鉱物中の水分子は、氷を一層だけ取り出して2次元に閉じ込めた、いわば単層氷とみなすことができます。本研究では、この単層氷が渦状の秩序構造(フェロアキシャル秩序)を示すことを発見しました。   背景 雪の結晶は六角形をモチーフとした形をとります。これは氷の結晶中で、水分子がハニカム格子上に整列した3次元構造をとるためです。それでは、極薄の氷を一層だけ取り出したときにどんな構造をとるでしょう?本研究はそんな単純な興味から始まりました。 研究グループはマーティアイト[martyite, Zn3(V2O7)(OH)2·2H2O]という層状の結晶構造を持つ鉱物に着目しました(図1)。マーティアイトのフレームワーク中で水分子はハニカム格子を形成しています。つまり、氷を一層だけ取り出して、それを2次元に閉じ込めたような状況が鉱物中で自然と実現しています。ハニカム格子上に配置された水分子は定まった方向を向くのではなく、面内をくるくる回転しています。これは幾何学的なフラストレーション*注1により、全ての水分子を同時に安定に並べることができないためです。マーティアイトを室温から冷却したときに、回転していた水分子がどのようにお互いを配慮しながら整列するかは容易には予測できません。 図1:3次元氷と2次元氷のハニカム格子(水分子の蜂の巣状配列)。マーティアイト中で回転する水分子がどう整列するかは非自明。   研究成果の内容 大型放射光施設「SPring-8」*注2のBL02B1で単結晶X線回折実験の結果、マーティアイト中の水分子の低温構造では、6個の水分子がまとまった渦状のモチーフ(六量体)を形成していることがわかりました(図2)。分子動力学計算を用いた単層氷のシミュレーションからも同様の水六量体が形成されることが明らかになり、マーティアイト中の水分子がたしかに単層氷とみなせることがわかりました。この水六量体では、水分子が電気分極を持つことから、電気双極子モーメントの渦が形成されることになります。このような多極子は電気トロイダルモーメントと呼ばれ、それらがそろった状態をフェロアキシャル秩序と呼びます。本研究から単層氷の安定構造がフェロアキシャル秩序であることが明らかになりました。 これまで20種類以上の氷の結晶構造*注3が報告されてきましたが、本研究で明らかになったフェロアキシャル秩序は理論的にも提案されたことがありませんでした。2次元に配置された水分子が作る渦状のモチーフは雪の結晶に劣らず美しく、自然の偉大さを再認識させられます。 図2:水分子のフェロアキシャル秩序と水六量体。渦状の電気双極子が電気トロイダルモーメントを作る。   今後の展望と波及効果 水分子がどのような安定構造をとるのかという問いは、氷・水・界面現象を理解する上で人類にとって不可避な問題です。それは氷が水に浮くことや、凍結した路面が滑るといった日常的な現象を理解する上でも重要な知見です。他方で、3次元氷の秩序は複雑かつ微妙な問題であり、人類が完全に理解したと言うには遠い状況です。本研究で明らかになった2次元氷の構造を足がかりに、水の理解が進展する可能性があります。   論文情報 掲載誌名: Journal of the American Chemical Society 論文タイトル: Ferroaxial order of the monolayer ice in martyite 著者: T. Nomura, S. Kitou, J. Komatsu, J. Kimura, K. Koga, T. Hasegawa, N. Ogita, Y. Nakamura,H. Ishikawa, T. Yajima, A. Matsuo, M. Kofu, O. Yamamuro, Z. Hiroi, Y. Tomita, T. Arima, T. Matsuo DOI: 10.1021/jacs.5c19407   研究助成 本研究は日本学術振興会 科学研究費助成事業(22K14010, 23H04861, 24K06944, 24H01644, 24H01650, 25K00969)による助成を受けたものです。   用語解説 注1幾何学的なフラストレーション:格子の幾何学的配置のために、すべての相互作用を同時に満たせない状態。ハニカム格子上の水分子の場合、全てのペアで水素結合を形成することができず、不安定なペアが必ず存在してしまう。    注2大型放射光施設SPring-8:理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っています。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。   注3氷の結晶構造:圧力と温度を制御することで多種多様な氷の結晶構造が出現することが知られている。これまでに20種類が確認されており、今後も増える可能性がある。   報道発表資料(512.72 KB) 掲載ジャーナル:Journal of the American Chemical Society 研究者ガイドブック(長谷川 巧 准教授)   【お問い合わせ先】 (研究に関すること) 静岡大学理学部 講師・野村肇宏 (のむら としひろ) TEL : 054-238-4961 E-mail : nomura.toshihiro*shizuoka.ac.jp   (報道に関すること) 静岡大学 総務部 広報・基金課 TEL : 054-238-5179 E-mail : koho_all*adb.shizuoka.ac.jp   東京大学 大学院新領域創成科学研究科 広報室 TEL : 04-7136-5450 E-mail : press*k.u-tokyo.ac.jp   岡山大学 総務部 広報課 TEL : 086-251-7292 E-mail : www-adm*adm.okayama-u.ac.jp   広島大学 広報室 TEL : 082-424-3749 E-mail : koho*office.hiroshima-u.ac.jp   公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課 TEL: 0791-58-2785 E-mail : kouhou*spring8.or.jp   東京理科大学 経営企画部 広報課 TEL : 03-5228-8107 E-mail : koho*admin.tus.ac.jp   名古屋大学 総務部 広報課 TEL:052-558-9735 E-mail : nu_research*t.mail.nagoya-u.ac.jp   東京大学 物性研究所 広報室 TEL : 04-7136-3207 E-mail : press*issp.u-tokyo.ac.jp   芝浦工業大学 入試・広報部 企画広報課 TEL : 03-5859-7070 E-mail : koho*ow.shibaura-it.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

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    2026.05.08
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    広島大学の丸山史人教授が、米国エネルギー省JGI 2026 年度Community Science Program大型研究支援に世界でわずか14 件の採択プロジェクトの一つに日本から唯一採択 ~未解明の地下水微生物研究で国際競争を勝ち抜く快挙~

    ポイント 米国エネルギー省(Department Of Energy; DOE) Joint Genome Institute (JGI)の2026年度Community Science Program (CSP)大型研究支援公募において、世界でわずか14件の採択プロジェクトの一つに広島大学・丸山史人(まるやまふみと)教授の提案が選出されました。日本からの採択は丸山教授の1件のみです。 過去の採択実績では、プリンストン大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)、 スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校など海外トップクラスの研究機関の教授が多く、今回はプリンストン大学、シカゴ大学、デューク大学、米国やフランスの国立研究所などの研究者が参画しており、国際的にも極めて競争率が高く名誉ある成果です。 DOE-JGIのCSPプログラムでは、数十万~数百万ドル相当の大規模ゲノム解析、ハイスループットDNAシーケンス、計算資源などの支援が採択課題に無償提供されます。 CSP採択プロジェクトの多くは研究成果をNatureやScienceといった世界最高峰の学術誌に発表しており(https://jgi.doe.gov/user-science/publications)、質の高い国際共同研究が推進されています(※例:JGIによるソルガム(バイオエネルギー作物)ゲノム解析研究が2009年にNature掲載)。 丸山教授の採択課題は、未培養で未知の地下水生微生物Patescibacteria門を対象に、その共生的な生態をゲノム解析によって解明し、地下環境での物質循環の役割に迫る革新的研究です。環境中の膨大な未解明微生物の機能解明を通じ、物質循環・環境微生物学に新たな展開が期待されます。 日本からCSP大型枠に採択される例は極めて稀であり、広島大学からの採択は国際舞台における国内研究者の存在感を示す画期的な成果と言えます。   概要広島大学IDEC国際連携機構の丸山史人教授の研究プロジェクトが、米国エネルギー省(DOE)の合同ゲノム研究所(Joint Genome Institute, JGI)による2026年度コミュニティ・サイエンス・プログラム(CSP)大型研究支援公募において、世界14件の採択プロジェクトの一つに選ばれました。日本からの採択は本件のみで、他の採択者には、プリンストン大学、シカゴ大学、デューク大学、米国やフランスの国立研究所など世界的トップクラスの研究機関の教授らが名を連ねています。また、過去の採択者にも日本国内の研究者がプロジェクトの代表となっている例は確認されていません。CSP大型公募は、エネルギーの持続可能性、気候変動への対応、水・環境資源の保全といった地球規模課題の解決(DOEミッションの内容を反映)に資する大規模ゲノム科学プロジェクトを世界中から募るもので、その採択は極めて狭き門を突破したことを意味します。本採択により、丸山教授のチームはDOE-JGIから大規模なゲノム解析支援を無償提供され、最先端の環境ゲノム研究を推進します。   背景DOE-JGIはカリフォルニア州ローレンスバークレー国立研究所に拠点を置く、米国エネルギー省の合同ゲノム研究施設です。CSP(コミュニティ・サイエンス・プログラム)はDOE-JGIの主要なユーザープログラムであり、世界中の研究者が提案する斬新なゲノム科学プロジェクトに対し、シーケンス解析やデータ解析といったサービスを無償提供するものです 。特に「大型(Large-Scale)」枠の公募では、数年スケールで大量のゲノムデータを生成する野心的な提案が求められます。このCSPは、毎年公募、採択される年1回の大型公募であり、2026年度においては世界中から応募が寄せられ、その中から厳正な国際ピアレビューを経て14件のみが採択されました。また、CSP採択プロジェクトは過去に数多く画期的な成果を生み出しており、その成果論文がNature、Scienceといった著名科学誌に掲載される例も少なくありません。こうした背景から、本プログラムへの採択は研究資源の獲得だけでなく、研究の国際的な評価・発信につながる名誉ある業績と位置付けられています。 日本からDOE-JGI CSPに採択される事例はきわめて少なく、本件は数年ぶりの快挙となりました。広島大学の丸山教授の採択は、日本の環境ゲノム・微生物研究が国際舞台で高く評価された証と言えます。   研究内容今回採択された丸山教授の研究課題は、「未培養Patescibacteria門微生物の地下水における物質循環機能の解明:共生的相互作用の解析を通じて」(原題:Uncovering the roles of uncultivated Patescibacteriota in groundwater biogeochemical cycling through the analysis of symbiotic interactions)です 。Patescibacteria門(分類学上はPatescibacteriotaとも呼称)は、近年存在が明らかになった超小型細菌群で、培養が困難な「未培養微生物」の一大系統です。これらの細菌はゲノムサイズがわずか0.5~1.0百万塩基対程度(100-300nm)と極端に小さく、他の生物に普通存在する必須遺伝子の多くを欠失しており、その大半が他の微生物に寄生・共生する形で生存していると考えられています 。しかし、こうした極小細胞の微生物が地下水環境でどのような役割を果たし、他の微生物とどのように関わっているのかは未解明のままでした。 丸山教授らのプロジェクトでは、JGIの支援する大規模ゲノム解析技術を駆使し、地下水中のPatescibacteria門細菌およびその共生相手となる微生物群集のDNAを包括的に解析します。具体的には、地下水試料からメタゲノム解析を行い高品質なゲノム配列を再構築することで、Patescibacteria門に属する複数種のゲノム情報を取得し、そこに潜む代謝経路や相互作用遺伝子を明らかにします。また、得られたゲノムから推定される機能に基づき、Patescibacteriaが共生相手からどのような栄養素や代謝産物をやりとりしているのか、逆に地下水中の炭素・窒素など物質循環プロセスに与える影響を解明することを目指します。さらに、必要に応じて単一細胞ゲノム解析や分子生態学的手法も組み合わせ、Patescibacteria門細菌と他の微生物との共生関係の実態に迫ります。本研究により、地下深部の環境で長らくブラックボックスとされてきた微生物生態系の一端が解明され、新規微生物の機能や進化の謎に光を当てることが期待されます。   今後の展開丸山教授のプロジェクトは、2026年度からDOE-JGIの支援のもと本格始動します。今後数年間でテラバイト級のDNAシーケンスデータが産出され、人工知能(AI)も活用した大規模データ解析により、地下水中微生物の未知の生態が次第に明らかになっていく見込みです。得られた知見は、地下環境における炭素循環や養分循環モデルの高度化、さらには環境浄化や資源エネルギー分野への応用に貢献することが期待されます。また、本採択を契機に広島大学はDOE-JGIや海外トップ研究者との連携を一層深め、国際共同研究の展開や本課題の共同受賞者であるスマートソサイエティ実践科学研究科博士課程2年の福士宗幸氏を含めて、人材交流を促進していきます。将来的には、本プロジェクトの成果論文を国際学術誌へ発表し、広島大学発の環境ゲノム研究として世界に発信する予定です。丸山教授は「本研究により、地下に広がる未知の微生物世界の解明が進み、環境微生物学のフロンティアを切り拓きたい」と抱負を述べています。本学は引き続き最先端研究を通じて地球規模課題の解決に貢献していきます。   <Joint Genome Institute(JGI)の公式発表ページはこちら> https://jgi.doe.gov/user-science/science-stories/jgi-announces-fy26-large-scale-portfolio-our-community-science-program   報道発表資料(240.68 KB) 研究者ガイドブック(丸山 史人教授)   【お問い合わせ先】 広島大学 IDEC国際連携機構環境遺伝生態学研究分野 教授丸山史人(まるやまふみと) E-mail:fumito*hiroshima-u.ac.jp   (*は半角@に置き換えてください)

    • 環境エネルギー
    • 食料/農林水産業
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2025.11.04
    • 環境エネルギー
    • 食料/農林水産業
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    日本周辺の魚類体重変動の主原因は餌をめぐる競争 ―75%は餌をめぐる競争、50%は環境悪化―

    本研究成果のポイント 日本周辺の魚類16系群の体重減少の75%は餌をめぐる競争が原因と特定された。 魚類の体重変化に対し、餌をめぐる競争、環境要因、漁獲圧の影響を定量的に評価した。 魚種内および魚種間の競争が明示され、複数魚種管理の科学的知見となることが期待される。   餌をめぐる競争で魚類の体重変化   概要 東京大学大学院農学生命科学研究科の林珍大学院生(研究当時)と同大学大気海洋研究所の伊藤進一教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の冨山毅教授らの共同研究グループは、日本周辺の魚類16系群(注1)の体重変化の原因を調べ、75%の系群の体重変動は餌をめぐる競争が主原因であることを明らかにしました。 本研究では長期の体重変動に状態空間モデル(注2)を応用することで、餌をめぐる競争、環境要因による影響、漁獲圧の影響を初めて定量的に評価しました。先行研究では、2010年代に日本周辺の多くの魚種・系群で共通して体重減少が生じており、地球温暖化に伴う餌料プランクトンの生産減少に伴い魚種内および魚種間での餌をめぐる競争が激しくなったことが原因であると推定しましたが、本研究では各要因を定量的に評価した点で新規性があり、この研究成果は今後複数魚種管理(注3)の科学的知見として役立つことが期待されます。   発表内容 これまでに同研究グループは、2010年代に日本周辺の多くの魚種・系群で共通して体重減少が生じていることを先行研究で示していました(関連情報①)。その中で、地球温暖化に伴う餌料プランクトンの生産減少によって魚種内および魚種間での餌をめぐる競争が激しくなったことが原因だと推定しましたが、各魚種あるいは系群の体重変化(図1)の原因を特定するには至っていませんでした。この度、本研究チームは、各年に孵化した魚類が、餌をめぐる競争、環境要因、漁獲圧の影響を受けながら年齢を増すモデルを構築し、状態空間モデルを当てはめることで、実際に起きた体重変動を説明するために必要な要因の特定を行いました(図2)。その結果、餌をめぐる競争は75%の系群で重要であり、ついで環境が50%の系群で作用し、漁獲圧の影響は25%にとどまることが示されました。 図1:各系群の体重変化 元データは水産庁および水産研究・教育機構が公表している資源評価報告書に記載されている年齢別体重(https://abchan.fra.go.jp/hyouka/)。系群については(注1)参照。Lin et al. (2025)より(CC-BY)。 図2:各系群の状態空間モデルの解析結果     左列は最小年齢の解析結果、右列はそれ以降の年齢の解析結果。それぞれの色は体重変動の要因を示し、点線の0の値から離れてかつ高いピークを示すものほど影響が明確であることを示す(灰色:過去の履歴の影響、水色:魚種内及び魚種間競争、赤:漁獲圧、橙:交互作用、緑:環境要因)。Bは種内競争、SumBはマイワシ・マサバ・カタクチイワシからの種間競争、OYは親潮面積、VTDは表層と下層の水温差の影響を示す。Nullはどの影響でも説明できなかったことを示す。右側の%はモデルの説明率を示す。系群については(注1)参照。Lin et al. (2025)より(CC-BY)。     水産庁や水産研究・教育機構などの努力によって長期に蓄積された年齢別体重データを網羅的に調べた研究の成果として、定量的に体重変動の要因が示されました。この結果は、各魚種あるいは系群ごとの管理だけでは加味されない魚種間の餌をめぐる競争の重要性を示すものであり、今後複数魚種管理が必要であることを示しています。本研究は、今後の複数魚種管理の基礎的な知見となることが期待されます。     関連情報 「プレスリリース①日本周辺の魚類の小型化 ―温暖化により顕著になった餌をめぐる競合―」(2024/02/28)     発表者・研究者等情報 東京大学 大気海洋研究所 伊藤進一教授 大学院農学生命科学研究科   林珍博士課程(研究当時) 現:東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)ポストドクトラル研究員   水産研究・教育機構水産資源研究所 藤原邦浩主幹研究員   広島大学 大学院統合生命科学研究科 冨山毅教授     論文情報 雑誌名:Progress in Oceanography 題名:A state-space approach reveals that competition drives variation in fish body weight, with influences from environmental conditions and fishing pressure 著者名:Zhen Lin *, Shin-ichi Ito, Alan Baudron, Christine Stawitz, Takeshi Tomiyama, Kunihiro Fujiwara, Paul D. Spencer, John Morrongiello DOI: 10.1016/j.pocean.2025.103582 URL: https://doi.org/10.1016/j.pocean.2025.103582     注意事項 日本時間11月01日午前02時06分(協定世界時間:10月31日午後5時06分)以前の公表は禁じられています。     研究助成 本研究は、科研費「基盤研究A(課題番号:JP21H04735)」、「学術変革領域B(課題番号:JP22H05030)」、「学術変革領域研究A公募研究(課題番号: JP25H02072)」の支援により実施されました。     用語解説 (注1)系群 資源の変動単位。遺伝的に他の生物集団と区別できる集団、あるいは遺伝的に区別できなくとも、産卵期、産卵場、分布、回遊、成長、成熟、生残など、独自の生物学的特徴を有する場合が多い。本研究で用いた16系群は、マイワシ太平洋系群、マイワシ対馬暖流系群、マアジ対馬暖流系群、マサバ太平洋系群、マサバ対馬暖流系群、ゴマサバ太平洋系群、ゴマサバ東シナ海系群、ウルメイワシ対馬暖流系群、サワラ瀬戸内海系群、カタクチイワシ太平洋系群、カタクチイワシ対馬暖流系群、マダラ本州太平洋北部系群、ブリ、スケトウダラ太平洋系群、イカナゴ瀬戸内海東部系群、キチジ太平洋北部系群。   (注2)状態空間モデル 状態を表す変数(今回の場合は真の体重)がある要因(今回の場合は餌をめぐる競争を指標する各系群の資源量あるいはマイワシなど大きく変動し他魚種にまで影響する資源量、環境要因としての栄養塩豊富な親潮域の面積あるいは表層と下層の水温差による成層強度、漁獲圧)によって変化し、その変数の観測値(今回の場合は体重の観測値)が誤差を持って観測されると仮定し、各要因の影響を調べるモデル。   (注3)複数魚種管理 単一魚種・系群ではなく、複数の魚種・系群を対象として管理する方法。   報道発表資料_20251101報道解禁.pdf(681.83 KB) 掲載雑誌:Progress in Oceanography 研究者ガイドブック(冨山 毅 教授)   【お問い合わせ先】 東京大学大気海洋研究所 教授伊藤進一(いとうしんいち) Tel:04-7136-6240 E-mail:goito@aori.u-tokyo.ac.jp   広島大学大学院統合生命科学研究科 教授冨山毅(とみやまたけし) Tel:082-424-7941 E-mail:tomiyama@hiroshima-u.ac.jp   東京大学大気海洋研究所 附属共同利用・共同研究推進センター広報戦略室 E-mail:kouhou@aori.u-tokyo.ac.jp   東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)アウトリーチ担当 Tel:022-795-5620 E-mail: aimec-comm@grp.tohoku.ac.jp   広島大学広報室 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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    2023.04.04
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    野良猫用公衆トイレの設置効果の検証

    本研究の優位性 野良猫の糞尿被害を、忌避剤と公衆トイレを併用して軽減可能であることを立証 猫の糞尿被害を通して、ヒトと動物の共生についての課題点を顕在化     研究内容 背景 猫の糞尿には人獣共通感染症の寄生虫やバクテリア、ウイルスを含んでいる可能性があり、糞尿被害による自治体への苦情は多いが、糞尿汚染に関する研究報告は少ない。環境省は野良猫用トイレの設置を推奨しているが、その効果は検証されていない。そこで、約200頭の野良猫が生息している『猫の街』尾道市において、糞尿被害に悩まされている寺院に開発中の忌避剤*と猫用公衆トイレを設置して、糞を対象に猫用トイレの効果を検証した。 *忌避剤は本研究終了後に一般発売された。     研究の概要 植物プランターを利用したトイレに雨よけの屋根を付けたものを6台作成して、市販の猫砂を敷き詰め、境内及び墓地の異なる地点に6箇所設置した。同時に、トイレへの排泄を確認するための赤外線センサーカメラを4台、事前調査で判明していた5カ所の排泄地点へ忌避剤を設置した。 週に一度、カメラのバッテリー及びデータ回収の際にトイレと境内を清掃し、糞を採集して重量を計測した。   寺院に居ついている17頭の野良猫のうち、個体識別ができた3頭(猫A、B、C)について、トイレ設置前後の糞重量を比較した結果、忌避剤活用によるトイレの設置は、糞の減少に効果的であった。 野良猫はトイレトレーニングを行っていないが、トイレを設置した週から3頭ともトイレを利用していた。トイレでの排泄回数は14週間で、Aが81.3%、Bが88.6%、Cが100%と頻繁に出没する猫ほど使用頻度が高かった。また、対象区として設定した2つの公園と1つの神社の合計8地点では、糞重量は減少しなかった。   猫のトイレの利用を増やすためには、生息する頭数+1台のトイレの設置が必要であり、トイレの大きさや清掃頻度、敷材等をさらに検証する余地がある。   猫用公衆トイレを設置すると野良猫の糞尿被害の減少に効果的だが、設置後も清掃や点検といった人の手が必要となる。猫の行動圏は観光客や地域住民による餌付けに影響を受けるので、給餌だけでなくトイレ管理や糞尿の清掃を行うことで地域トラブルの減少へ繋がる。     期待される効果 野良猫の糞尿被害発生地域における猫用公衆トイレの設置促進 猫用公衆トイレ設置による地域トラブルの減少     企業・自治体への期待 猫用公衆トイレに最適な素材(猫砂・屋根・容器等)の開発に興味のある企業との共同研究 野良猫に関わる課題解決にむけて調査・検証を行いたい企業または自治体との連携 地域猫活動の推進や課題解決に取り組んでいる自治体との連携     論文 Seo,A. & Tanida, H.,The effect of communal litter box provision on the defecation behavior of free-roaming cats in old-town Onomichi, Japan,Applied Animal Behaviour Science 224 (2020) 104938. 妹尾あいら・谷田創. 酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体にシトラールを添加したネコ用忌避剤の効果,ペストロジー 32(1) (2017) 1-6. 妹尾あいら・谷田創. 自由徘徊ネコに対する酢酸およびイソ吉草酸を含有した高分子吸液体の忌避効果の検証, ヒトと動物の関係学会誌 44 (2016) 42-48.     研究者からのメッセージ 野良猫とヒトの福祉向上と共生社会を目指し、広島県内のさまざまな地域でフィールドワークに取り組んでいます。 地域住民の声を直接聞き、自治体等とも協力することで、成果を地域に還元できる研究を行っています。   研究者 妹尾あいら(SEO AIRA) 広島大学 酪農エコシステム技術開発センター 助教

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    2022.06.27
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    シンプル酵素触媒による効率的な有用物質変換

    背景 従来の微生物細胞による物質生産は、宿主とする微生物を生かしながら行うため、基質・原料が宿主細胞の代謝にも使われ、様々な代謝物質が副産物として生成される。 原料が副産物の生成にも使用されるため、目的の物質が低収率となる。 不要な副産物生成抑制のために、細胞代謝を改変して最適化する手法がとられるが、これには多大な時間と手間を要す。     概要 10~20℃で生育可能な低温菌を宿主として、中温菌の酵素を発現させ、化学品生成経路を構築する。この細胞を中温(40~50℃)で熱処理し、低温菌の代謝酵素を失活させる。これにより、中温菌由来の酵素のみによる物質生産が可能になる。 また、熱処理により低温菌細胞が部分的に壊れるため、膜透過性が向上し、原料・基質が細胞内に自由に入ることができ、界面活性剤等の薬品処理が不要になる。   本研究の優位性 既に実用化されているAspergillus属細菌や、大腸菌を用いた微生物変換法に比べて、不要な副産物の生成がなく、収率が高い。 副産物生成抑制のため、従来必要であった細胞代謝の改変が不要となり、多大な時間と手間を省くことができる。 基質の膜透過性向上のため、従来必要であった界面活性剤等の薬剤処理が不要となる。 中温加熱処理のみで高い生産性と収率が得られる「シンプル酵素触媒」であり、有用物質生産のコスト削減が期待される。     期待される用途 ➢応用例1:3-HPA(ヒドロキシプロピオンアルデヒド)の生成 3-HPAはグリセロールから変換されるアルデヒドであり、アクリル酸の原料として利用される有用化学品である。 廃グリセロールは有用な資源であるにも関わらず活用されていないため、グリセロールを使用して物質変換の検討を行った。 細胞を培養・回収・洗浄、熱処理後(45℃・15min)、3-HPAの収率を調査。ほぼ100%の割合で3-HPAに変換できた。 ➢応用例2:1,3-PD(プロパンジオール)の生成 1,3-PDは抗菌性を併せ持つ保湿剤として効果があり、化粧品等に利用されている有用化学品である。 応用例1の3-HPA生成系後半にDhaTを導入することにより1,3-PDを生成。 DhaTは還元力を必要とするため、補酵素NADHの添加が必要となるが、FDH(ギ酸デヒドロゲナーゼ)も発現させた細胞を構築することにより、NADH無添加で1,3-PDの生成が可能となり、収率5%で生成した。   ➢応用例3:アスパラギン酸の生成 アスパルテームの原料でC4基幹化学品であるアスパラギン酸を、フマル酸から生産した。 宿主の代謝酵素による競合反応を熱処理で抑制することにより、副産物のリンゴ酸生成が低下し、収率が向上した。 細胞をアルギン酸ナトリウムで固定化することにより、繰り返し利用が可能になり、95%以上の変換効率を9回維持できた。   ➢応用例4:イタコン酸の効率的生産 C5基幹物質のイタコン酸は、コンタクトレンズやニトリル製品などのポリマー素材として有用な化合物である。 従来のAspergillus terrusによる生成方法は、合成経路が代謝系と競合すること、合成酵素が異なるオルガネラに分かれていることが課題となっていた。 Shewanella属細菌にアコニターゼ(coli)、cis-アコニット酸脱炭素酵素(Aspergillus terrus)を発現させて培養、回収、洗浄、熱処理後(45℃、15min)、クエン酸を導入、高収率でイタコン酸を生成できた。 高収率でイタコン酸を生成し(左のグラフ)、(洗浄操作)を与えなければ、触媒を繰り返し利用して、5回の変換が可能(右のグラフ)である。 実用化に向けての課題 今後、触媒の安定的利用に関する検討を進めたい。     企業への期待 酵素機能を最大限発揮可能な本触媒による、物質変換プロセスの実用化を目指す企業との共同研究を希望する。     本技術に関する知的財産権 発明の名称 :低温菌を用いたイタコン酸の製造方法 出願番号 :特願2018-124796 出願人 :国立大学法人広島大学 発明者 :田島誉久、加藤純一、羅宮臨風     論文 田島 誉久,緋田 安希子,加藤 純一:低温菌シンプル酵素触媒による効率的な物質変換,Journal of Environmental Biotechnology, 21(1), 9-16, 2021(環境バイオテクノロジー学会誌21巻1号)doi: 10.50963/jenvbio.21.1_9 Mojarrad, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Psychrophile-based simple biocatalysts for effective coproduction of 3-hydroxypropionic acid and 1,3-propanediol, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 85(3), 728-738 (2021) doi: 10.1093/bbb/zbaa081 Mojarrad, K. Hirai, K. Fuki, T. Tajima, A. Hida, J. Kato: Efficient production of 1,3-propanediol by psychrophile-based simple biocatalysts in Shewanella livingstonensis Ac10 and Shewanella frigidimarina DSM 12253, Journal of Biotechnology, 323, 293-301 (2020) doi: 10.1016/j.jbiotec.2020.09.007 Luo, M. Fujino, S. Nakano, A. Hida, T. Tajima, J. Kato: Accelerating itaconic acid production by increasing membrane permeability of whole-cell biocatalyst based on a psychrophilic bacterium Shewanella livingstonensis Ac10, Journal of Biotechnology, 312, 56-62 (2020) doi:10.1016/j.jbiotec.2020.03.003 Tajima, K. Tomita, H. Miyahara, K. Watanabe, T. Aki, Y. Okamura, Y. Matsumura, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient conversion of mannitol derived from brown seaweed to fructose for fermentation with a thraustochytrid, Journal of Bioscience and Bioengineering, 125(2), 180-184 (2018) doi:10.1016/j.jbiosc.2017.09.002 Tajima, M. Hamada, Y. Nakashimada, J. Kato: Efficient aspartic acid production by a psychrophile-based simple biocatalyst, Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology, 42(10) 1319-1324, (2015) doi:10.1007/s10295-015-1669-7 Tajima, K. Fuki, N. Kataoka, D. Kudou, Y. Nakashimada, J. Kato: Construction of a simple biocatalyst using psychrophilic bacterial cells and its application for efficient 3-hydroxypropionaldehyde production from glycerol, AMB Express, 3(1), 69 (2013) doi: 10.1186/2191-0855-3-69     研究者からのメッセージ 本技術は多種多様な酵素の効率的変換を細胞から酵素を抽出せずに容易に実現できるものであり、バイオ変換の生産性向上に有望と考えています。本触媒にご興味がございましたら是非ご連絡ください。     研究者 田島誉久(TAJIMA TAKAHISA) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 准教授

    • 食料/農林水産業
    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    2022.01.05
    • 食料/農林水産業
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    環境に優しいうどん粉病の防除薬

    目標・狙い カビ菌により引き起こされるうどん粉病は、ほとんどの植物に発生する可能性があり、予防と対策が必要となる。 従来の化学農薬は農作物の病原菌への防除には有効であるが、環境中での残留性、生態系への影響、農薬耐性等が懸念されている。 そこで、光フェントン反応や光増感反応により、OHラジカル、一重項酸素、スーパーオキシドなどの活性酸素を発生させ、その高い酸化力を利用して、病害治療や防除に役立てることを目的とする。     概要 過酸化水素水に鉄を添加した光フェントン試薬は、数ppmの低濃度でも太陽光のもとで活性酸素のOHラジカルを持続的に生成する能力があることが解っている。活性酸素の強力な酸化力によりうどん粉病を防除する方法を考案した。 過酸化水素水(H2O2)が一定の濃度以上でOHラジカルが発生するサイクルが生まれる。   OHラジカルの他に、ローズベンガルなどの色素や、カテキンなどのポリフェノールといった光増感剤から、一重項酸素(¹O2)やスーパーオキシド(O2-)などの活性酸素を光化学的に発生可能なことが解っており、これらについても同等の効果が期待され、その利用について同様な検討を行っている。     研究事例 実際にイチゴおよびキュウリうどん粉病を対象に、自然太陽光下での光フェントン試薬の最適な処理条件や、効率的施用法等を見出し、うどん粉病の防除に有効であることを検証した。   イチゴうどん粉病への光フェントン反応の適用 試薬1と2の発病率に関しては統計的に有意な差は認められなかったが、試薬3と対照区との間には有意差が認められたため、OH生成速度が高い試薬では発病率低下が確認された。     きゅうりうどん粉病への光フェントン反応の適用   シュウ酸鉄錯体を用いた試薬(光フェントン試薬MIX3)は薬害がほとんど確認されず、うどん粉病の予防および治癒・抑制効果も高かった。     本研究の優位性 OHラジカル、一重項酸素(¹O2)、スーパーオキシド(O2-)などの活性酸素は病原菌防除に従来の化学農薬並みの効果が期待される。 光フェントン試薬は溶液反応のため植物表面に過酸化水素水や鉄が付着してしまうが、一定濃度以下であれば安全である。 ローズベンガルやカテキンなどの試薬は化学農薬に比べ安価であり、気層中で発生するため、発生した活性酸素のみを直接植物表面に暴露でき、より安全である。 太陽光や微生物により容易に分解されるので環境中での残留性が低く、安全性が高い。     期待される用途 イチゴやキュウリうどん粉病などの植物病害防除。 光フェントン試薬への光照射により発生する活性酸素を用い、空気中の悪臭物質の分解やウイルスなどの殺菌が可能であり、無臭化や滅菌などの空気清浄化技術への応用。 微量のスーパーオキシドは生体のSOD活性を高めるため、スーパーオキシドを付加した酸素ガス吸入装置など医療分野への応用。     企業への期待 農薬の研究開発の技術を持つ、企業との共同研究を希望。 ¹O2 、O2-によるうどん粉病防除技術については試験段階であり、企業との共同研究により実用化が達成可能。 空気清浄化技術を開発中の企業、農業や医療分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。     本技術に関する知的財産権 発明の名称:きゅうりうどん粉病の防除薬及び防除方法 特許番号:特許第5963143号 出願番号:特願2012-245366 出願人:国立大学法人広島大学 発明者:佐久川  弘、ナヒド  ハサン     論文 Protective and curative effects of foliar-spray Fenton solutions against cucumber (Cucumis sativus, L.) powdery mildew. Sakugawa, H., Hasan, N., Oguntimehin, I., Belal, E., J. Environ. Sci. Health, Part A, 47, 1909–1918 (2012)     研究者からのメッセージ OHラジカルがカビに有効なのに対して、一重項酸素はウイルスを撃退するのに有効です。そのため新型コロナウイルスの流行を受けて、広島県内の企業と共同で一重項酸素を発生させる空気清浄機の開発を進めています。将来的には農業用に転用して、活性酸素噴霧器としてウイルス性の病害の防除に利用できると期待しています。   研究者 佐久川弘(SAKUGWAWHIROSHI) 広島大学 大学院統合生命科学研究科 客員教授

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    • 自然共生/ネイチャーポジティブ
    • バイオエコノミー
    • 医療/ヘルスケア
    2020.10.21
    • 環境エネルギー
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    低コストで大量繁殖・飼育ができる新規実験動物

    目標・狙い “カエル”はヒトと同じ脊椎動物に属する両生類の代表として、古くから実験に用いられてきた。現在では大量飼育が容易なツメガエルが主に用いられてきた。 実験動物にはそれぞれの特徴や性質があるので、カエル類を使った実験や研究では不十分な場合もある。 我々は、カエルと同じ両生類に属するイモリを実験動物として整備することで、両生類を用いた実験システムの充実化や利便性の向上を目指している。   想定される市場・製品・産業分野 カエルと同じ両生類の実験動物材料として、以下の分野における活用 農薬業界 医薬品開発 毒性・環境評価   概要 脊椎動物であるイモリは実験動物としての有用性は認められていたものの、従来の種は大量繁殖が不可能であり、利便性が低い動物とされていた。 本研究では、年間数千個もの卵を産卵するイベリアトゲイモリに着目。ホルモン処理による一年中の産卵や人工授精法を確立した。 イベリアトゲイモリは文献的には性成熟に1年半以上かかるとされていたが、飼育条件(給餌、水温など)を変えることにより生育速度を早め、雄は6ヶ月、雌は9ヶ月までに短縮すると同時に、大量のイモリを安定的に飼育する技術を開発した。 その結果、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となった。   本研究の優位性 有尾両生類(イモリやサンショウウオ類)において、低コストで大量繁殖・飼育ができる唯一の実験動物。 ゲノム編集技術との相性が良いため、実験目的に合わせた遺伝子の改変が可能。   論文 Matsunami et al. “A comprehensive reference transcriptome resource for the Iberian ribbed newt Pleurodeles waltl, an emerging model for developmental and regeneration biology.” DNA Res. (2019) 26:217-229. doi: 10.1093/dnares/dsz003.PMID: 31006799 Suzuki et al. “Cas9 ribonucleoprotein complex allows direct and rapid analysis of coding and noncoding regions of target genes in Pleurodeles waltl development and regeneration.” Dev Biol. (2018) 443:127-136. doi: 10.1016/j.ydbio.2018.09.008 Hayashi et al. “Molecular genetic system for regenerative studies using newts.” Dev Growth Differ. (2013) 55:229-36. doi: 10.1111/dgd.12019   外部資金の獲得状況 住友財団基礎科学研究助成 内藤記念科学奨励金・助成金 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(代表) 科研費2019〜2021年度基盤研究(C)(分担)他   研究者からのメッセージ イベリアトゲイモリを安定的に飼育する技術の開発により、カエル類を補完あるいは代替する実験動物としての利用が可能となりました。イベリアトゲイモリを介した研究にご興味のある企業の方は是非一度ご相談ください。   研究者 林利憲(HAYASHI TOSHINORI) 広島大学 両生類研究センター 教授

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