トポロジー理論を用い、 編物の強靭性を高める

この研究成果は2025年10月23日に、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)主催で開催されました新技術説明会に出展しました。
 
新技術の概要 編物の強靭性はその編物を構成する糸の素材に強く依存するが、利用可能な素材は編物の用途に応じて限定される。編物を構成する糸の素材ではなく、編物を構成する編み目等の構造の選択によって、編地の機械的強度を高めることができれば、素材が限定された場合でも編物の強靭性を高めることができる。
 
 本技術はトポロジー理論に基づいて編み目の構造を選択し、強靭性の高い編地を提供するものである。
 
 
従来技術とその問題点

  • 編物の強靭性はその編物を構成する糸の素材に強く依存する
  • 従来、編物の強靭性等の機械的性質について、編み目構造レベルでの研究が行われている
  • 編物の機械的性質に係るメカニズムについては解明されていない
     → 素材依存による強度の限界
     → 利用可能な素材は編物の用途に応じて限定される
     → 素材選択でコスト増・用途制限・耐久性不足が発生

 
新技術の特徴・従来技術との比較 素材ではなく構造設計で編物の強靭性を付与
 

  • トポロジー(位相幾何学)理論で構造設計
  • 素材依存によらず強靭性付与
  • 素材選択の自由度の拡大
  • 素材選択に制約が有っても強靭性向上可能
  •   →軽量・高強度・コスト削減の実現
     
    新技術について 編物の機械的性質に係るメカニズムの解明

    • トポロジー(位相幾何学)的に同一である糸同士の絡み構造の編物は、高い強靭性を有し、局所的な破断や劣化を抑制することが可能
    • 編地の素材となる糸の性質に依存することなく、編地の機械的特性を高めることができる
    • 素材のコストを低減しつつ、編地およびこれを用いる編物の機械的強度を向上させることができる

     
    トポロジー的に同一とは

    • 図形や空間の連続的な性質に着目する位相幾何学の観点から同じ形であることを表し、切ったり貼り合わせたりすることなく、物体の形を自由に伸ばしたり縮めたりねじったりして同じ形にできる
      ことをいう
    • 編地を構成する糸同士の絡み構造についてトポロジー的な同一性を考える
    • それぞれの絡み構造について、空間的なつながり方が同じであることを、トポロジー的に同一であるという

     

    編み物や織物は結び目が二次元に広がった構造をしている

     

    結び目は右手、左手のキラリティを持つ場合がある

     

    複数の結び目はキラリティが同じ場合と異なる場合がある

     

    加わる力、エネルギーとキラリティの関係



     
    引張試験の結果

    同じ素材で作られた編物でも絡み構造の違いによって機械的強度が異なる

     
    想定される用途

    • 安全・安心社会への貢献
      (防弾チョッキ、防刃ベスト、消防服、作業着等)
    • 輸送・モビリティ分野
      (材料の軽量化、タイヤ、シートベルト等)
    • 環境・持続可能性
      (リサイクル材料の高強度化、長寿命の布地等)
    • その他の展開可能性
      (スポーツ用品、医療用素材 等)

    企業様への貢献

    • 用途別最適設計、規格適合化、量産プロセス等の共同研究による貢献
    • 共同研究、ライセンス、委託研究、技術者・研究者受入、技術指導等に柔軟に対応可能
    • 軽量・高強度・コスト削減への貢献
    • 新素材研究との相互補完
    • 新市場開拓、環境対応などへの貢献

     
    本技術に関する知的財産権

    • 2025年9月16日 特許出願済み
    • 出願人:広島大学、早稲田大学
    • 発明者:井上克也 他2名

     
    研究者井上克也
    広島大学
    大学院先進理工系科学研究科
    教授