噴霧法を用いたMOF分離膜の高速製膜手法

この研究成果は、2025年8月21、22日に国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)主催の大学見本市2025~イノベーション・ジャパンに出展しました。
 
技術概要 金属有機構造体(MOF)の前駆体溶液を加熱基板上に噴霧することでMOF分離膜を短時間で製膜する手法を開発しました。従来複数ステップが必要で製膜まで24時間以上かかるMOF分離膜製造を、本手法ではワンステップかつ1時間程度の短時間で行うことを可能としました。さらに大面積で多様な基板上に表面修飾などせずに製膜可能です。本手法で作製したMOF分離膜によるナノろ過はMOF固有の細孔径に応じた分子量カットオフを示し、溶媒透過係数も従来のMOF分離膜と比べ10倍以上優れたナノろ過特性を示しました。
 
Metal-organic framework (MOF)

  • 金属イオンと有機配位子の配位結合で構成される結晶性多孔質材料
  • 無数の組み合わせで十万を超える結晶構造
  • 従来の多孔質材料と比べて
      高い比表面積(最大7,000 m2/g)
      細孔径の精密制御
      柔軟な骨格
  • 様々な応用
      吸着・分離(特にCO2貯蔵・分離)
      触媒
      センサーなど
代表的なMOF構造例

従来の膜作製方法との比較

  • MOF薄膜は特に気相および液相での分離膜としての応用が期待される。
  • しかしMOF薄膜作製には複数ステップが必要で製膜時間も長い、大面積の膜を作ることが困難である。
  • 本手法はこれらの問題を解決する手法である
従来の膜作製方法との比較
MOF分離膜を短時間(数分)で作製可能な噴射法
ナノろ過分離膜としての応用

nmスケールの分子を分離するナノろ過応用にて、優れた分子ふるい特性を示した。さらに従来MOF膜よりも10~100倍以上高い溶媒透過係数を示した。

様々な基板上に薄膜作製可能
大面積薄膜の作製
作製したHKUST-1膜の分析

【作製条件: Si基板、加熱温度130℃、60秒噴霧(液量0.15mL)】
 

  • HKUST-1薄膜は直径約1μmの粒子で構成されていた。
  • 各粒子の境界は明確ではなく、粒子間外空隙が少ない。
  • 低倍率SEM画像では、薄膜に亀裂が少ないことがわかる。
  • 断面SEM画像から、薄膜の厚さは32±0.8μmで均一であった。
噴霧時間(液量)の影響

【作製条件: Si基板、加熱温度130℃】

噴霧時間が長く(噴霧液量が多く)なると

  • 結晶量が増えピーク増大
  • 粒子径も大きく成長
  • 膜厚は噴霧時間に比例

 
噴霧時間(液量)で膜厚制御可能

多層カーボンナノチューブとの複合、自立膜形成
  • 多層カーボンナノチューブを添加しMWCNT/HKUST-1複合膜を作製
  • MWCNTによって粒子間が架橋されている様子を確認
  • 剥離することで自立したMWCNT/HKUST-1薄膜の作製に成功

 
M. Kubo et al., icroporous Mesoporous Mater. 312, 110771 (2021).
 
研究者
久保 優
広島大学
大学院先進理工系科学研究科
准教授