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研究成果紹介

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    • 医療/ヘルスケア
    2026.01.29
    • 医療/ヘルスケア
    ~ウイルスの増殖を予測する~ B型肝炎の治療効果を評価する新たな手法の可能性を見出しました。

    本研究成果のポイント B型肝炎の治療前および治療中において、「肝臓内でのウイルスの増えやすさ」を予測できうる新しい指標を発見しました。 治療の効き具合をよりリアルに把握し、薬の選び方や治療を続けるかどうかの判断に役立つ可能性があります。   概要 広島大学病院肝疾患センターの研究チームは、B型肝炎の治療継続や再発予測に関し、従来とは異なるアプローチでの測定を行う方法を発見しました。既存の方法では「肝臓内にどれくらいウイルスが作られているか」という量を測定していましたが、「肝臓内でウイルスがどれくらい増えやすいか」を評価する方法を見出し、その効果を検証しました。 本研究は、学術誌「International Journal of Molecular Science(Q1)」に掲載されました。   <発表論文> 掲載誌:International Journal of Molecular Science (MDPI(Multidisciplinary Digital Publishing Institute)、Q1) 論文タイトル:Utility of Serum HBV RNA Measurement During Nucleoside/Nucleotide Analog Therapy in Chronic Hepatitis B Patients 著者名:Keiichi Hiraoka, Masataka Tsuge, Michihiko Kawahara, Hatsue Fujino, Yasutoshi Fujii, Atsushi Ono, Eisuke Murakami, Tomokazu Kawaoka, Daiki Miki, C. Nelson Hayes, Seiya Kashiyama, Sho Mokuda, Shinichi Yamazaki, Shiro Oka DOI: https://doi.org/10.3390/ijms262010141 掲載日時:2025年10月17日   背景 B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって肝臓に炎症が起こる病気で、放置すると肝硬変や肝がんに進行する可能性がある病気です。 B型肝炎ウイルスは、肝臓の細胞にあるcovalently closed circular DNA (以下、cccDNA)というB形肝炎ウイルスの設計図からHBV RNAというB型肝炎ウイルスの部品の材料となるものを作ります。現在使用されている薬はウイルスそのものの量を大きく減らすことは可能ですが、cccDNAからのウイルス性タンパク質の産生は続く場合があり、長期的な病状の進行リスクを完全には抑えられません。そのため、B型肝炎ウイルスの治療薬の効果を評価する上で、単にウイルスの数を減らせるだけでは足りず、別の指標が求められてきました。   上記の新しい指標として、「HBV RNAを血清で測定する方法」が、治療の継続判断や病気の再発予測に役立つ可能性を指摘されていました。これは、血液の成分のひとつである血清の中に、どれくらいHBV RNAが含まれているかを調べる方法です。つまり「肝臓内にどれくらいウイルスがいるか」ではなく「肝臓内でウイルスがどれくらい増えやすいか」を測るものです。 本研究ではETVとTAFという代表的な薬剤を用い、上記方法の効果を検討しました。   研究成果の内容 本研究では、B型肝炎の患者さん86人を対象に、治療の「前」と「12週間後」「48週間後」に血液検査を行い、HBV RNAの量を調べました。結果として、HBV RNAが多い人ほど、他の検査の目印(HBs抗原=ウイルスが体にいる目印、HBV DNA=完成したウイルスの数、HBコア関連抗原=活動の強さの目印)も多い傾向があり、HBV RNAは「今後肝臓内でウイルスがどれくらい増えそうか」を示す指標になり得ると分かりました。 また、肝臓が硬くなっている人では、HBV RNAやウイルスそのもの量は低めでしたが、この二つの関係が大きく崩れているわけではないことも示されました。さらに、治療開始から48週の時点では、ウイルスが活発な人で、HBV RNAが相対的に多い傾向が見られました。一方、肝臓の炎症の数値(ALT)が高い人では、治療によってHBV RNAがより下がる傾向も確認できました。 使った薬による違いもありました。ETVとTAFのどちらでも、ウイルスの量は同じくらいよく減りましたが、HBV RNAは治療12週でTAFのほうが早く下がる傾向があり、薬によって違いが出る可能性が示されました。 以上から、HBV RNAを血清で測ることは、治療の効き具合をよりリアルに把握し、薬の選び方や治療を続けるかどうかの判断に役立つ可能性があります。   以下、具体的な研究成果です。 本研究は慢性B型肝炎患者86人について、治療前、治療開始後12週、48週の血清HBV RNAを測定しました。治療前のRNAはHBs抗原、HBV DNA、HBコア関連抗原と有意に相関していました。肝線維化が進むほどDNAとRNAは低値となりましたが、RNA/DNA比は変化がありませんでした。治療48週時にはRNA/DNA比がHBe抗原陽性例で有意に高くなり、ALTが100 U/L以上の患者ではRNAが12週・48週で低下する傾向がありました。薬剤別にみると、DNAの減少は両薬剤で大きな差はありませんでしたが、RNAの減少は12週時にTAFで顕著であり、薬剤ごとにRNAの動きが異なる可能性が示されました。これらの結果は、血清HBV RNAが肝臓内ウイルス複製を反映する有用な指標となり得ることを示唆しており、薬剤によるRNAの動的変化が治療戦略に影響を与える可能性を示しています。   今後の展開 本研究ではTAF使用症例が6例と限られており、症例を蓄積させ再検討する必要性があり、また大規模・他施設での検証や、他のNA薬剤の比較、肝機能指標や他のウイルス学的マーカーとの統合的評価が求められます。HBV RNAの減少が臨床的な長期治療成果とどの程度関連しているか、さらなる検証が必要だと考えています。   報道発表資料(448.91 KB) 掲載ジャーナル:International Journal of Molecular Science 研究者ガイドブック(柘植 雅貴 教授)   広島大学大学院医系科学研究科肝臓学柘植 雅貴 Tel:082-257-2023FAX:082-257-2023 E-mail:tsuge@hiroshima-u.ac.jp

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 資源
    2025.07.15
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 資源
    ナトリウムを利用したアンモニア合成法を開発 -プラチナなどの貴金属触媒を使用せず、安価なナトリウムのみで実現-

    本研究成果のポイント ナトリウムを利用した触媒およびケミカルルーピングプロセス(*1)によるアンモニア(*2)合成法を創出 常圧-1.0MPa(10気圧)程度の水素、窒素からアンモニアを合成可能 圧倒的な資源的優位性を有するナトリウムのみで構成される貴金属触媒(*3)フリーの技術を確立   概要 広島大学自然科学研究支援開発センター:宮岡裕樹教授、同大学スマートソサイエティ実践科学研究院:恒松紘喜(D2)、同大学大学院先進理工系科学研究科:市川貴之教授らの研究グループは、ナトリウムを触媒、あるいはケミカルルーピングプロセスの反応体として利用したアンモニア合成技術を開発した。この手法は、常圧-1.0 MPa(10気圧)程度の圧力下で水素と窒素からアンモニアを合成可能であり、かつ貴金属等の触媒を必要としないため、再生可能エネルギーの利用を目的とした元素戦略(*4)的に優位な小規模分散型のアンモニア合成手法(*5)としての展開が期待される。本研究成果は、Q1ジャーナルである国際科学誌「International Journal of Hydrogen Energy」に掲載されました。   背景 現在、脱炭素化、カーボンニュートラルに向けたさまざまな取り組みが世界的に進められている。太陽光や風力等の自然エネルギーをはじめとした再生可能エネルギーの利用拡大は重要な課題の一つである。これら変動的かつ偏在的なエネルギーを効率的に利用するための媒体(二次エネルギー)として水素が注目されているが、貯蔵や輸送時のコストが課題となっている。近年、化成品や肥料の原料として知られるアンモニア(NH3)は、上述した再生可能エネルギーを効率的かつ低コストに貯蔵・輸送するためのキャリア、或いはCO2フリーの燃料として注目を集めている。現在、NH3の合成には、約500 ℃、250気圧以上という高温高圧条件で行われるハーバー・ボッシュ法(*6)が用いられているが、連続運転により大量合成を行うことでメリットが得られる技術として確立されている。従って、偏在する自然エネルギーの利用を考えた場合、より低温低圧条件で制御可能な小規模分散型のNH3合成技術が望ましく、このような技術が確立されれば、再生可能エネルギーの変動吸収や需要に対する供給の調整といったことが可能となる(図1)。   NH3合成においては、安定な三重結合(*7)を有する窒素分子(N2)を原子状(N)に分離する窒素解離プロセスが重要であり、この窒素解離のために、1000 °C近い高温条件やプラズマ、遷移元素や希土類元素等の金属触媒を利用するのが一般的である。一方、我々の研究グループでは、リチウム(Li)やナトリウム(Na)に代表されるアルカリ金属の窒素解離能に注目し、それらの触媒能の評価や既存の触媒プロセスとは異なる多段階の化学反応でNH3合成を行うケミカルルーピングプロセスの研究開発を進めてきた。   研究成果の内容 本研究グループでは、LiH、Li合金、Na合金を用いたアンモニア合成技術を提案し、それらの研究開発を進めてきた。本研究では、水素化ナトリウム(NaH)(*8)を用いたNH3合成技術の検討を行った。 まず、水素(H2)と窒素(N2)の混合ガス気流中でNaHを400 ℃まで加熱しNH3合成特性を評価した。図2(右)に結果を示す。 375 ℃で最も高い反応率:約550 mmol/g hが得られ、この値は、先行研究におけるLiあるいはNa合金触媒のNH3合成速度:

    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 海洋
    2021.07.21
    • 環境エネルギー
    • 気候変動/エネルギー/GX
    • 海洋
    メタンハイドレート(*1)資源開発支援を目的とした新コンセプト技術を開発~深海底の生物資源を活用した固化技術~

    本研究成果のポイント 国産資源としての期待が高まるメタンハイドレート商業化において技術的課題とされている出砂トラブルに対処する新しい技術開発を進めている。 天然にすでに存在する微生物の機能を活用し、抗井周辺の地層を固めることで出砂を抑制し、長期生産を可能とする効果が期待できる。   概要 日本周辺海域を対象としてJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が主体となり、2013年に世界初のメタンハイドレート海洋産出試験を、2017年には第2回の同試験を実施するなど商業化に向けた取り組みが進められている。過去2回の海洋産出試験では、一部の生産井 (注2) においてメタンハイドレート層から砂が流入し坑井を詰まらせる出砂という現象により試験が中断されるなどの課題が指摘されている。   この課題を解決する手法として天然に存在する微生物の作用に着目し、広島大学大学院先進理工系科学研究科社会基盤環境工学プログラムの畠俊郎教授(2021年3月まで富山県立大学教授)は、JOGMECと共同で抗井周辺の地層を広範囲に固化させることで坑井への出砂を抑制する技術の開発を進め、日本と米国で特許を取得した。 図1 地層固化のイメージ(左側イラスト)と高圧環境下で微生物が作り出す結晶鉱物(右側画像) 日本近海のメタンハイドレート胚胎層を再現した圧力条件(13MPa)で温度条件を変えて結晶析出試験を行った結果、30℃ではほぼカルサイト、13℃ではカルサイト80%、アラゴナイト20%と異なる炭酸カルシウム種が析出することを確認した。   用語解説 (注1)メタンハイドレート 天然ガス資源の一種であるメタンハイドレートは、水分子が水素結合により形成する籠(かご)状の格子の中にメタン分子を取り込んだ固体結晶で燃える氷とも呼ばれる。 メタンハイドレート1m3から約165m3生成されるメタンは都市ガスの主成分として使われる無色・無臭のガスである。このメタンを主成分とする「天然ガス」は燃焼時の二酸化炭素の排出量が石油や石炭を燃焼させた時より少ないため環境に優しいクリーンなエネルギーと言われており、メタンハイドレートは次世代エネルギーとして期待されている。 https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termlist/1001711/1001759.html(外部リンクに移動します) (注2)生産井 坑井の使用目的に基づいた分類の一つで、資源を汲み上げて採取する役割を持ったものを意味する語。本件では、メタンハイドレートの生産を目的に掘る坑井のことを示す。   論文情報 掲載誌: Journal of Natural Gas Science and Engineering 論文タイトル: Microbial-induced carbonate precipitation applicability with the methane hydrate-bearing layer microbe 著者名: Toshiro Hata、Alexandra Clarà Saracho、Stuart K. Haigh、Jun Yoneda、Koji Yamamoto DOI: https://doi.org/10.1016/j.jngse.2020.103490   特許情報 特許(日本):特許第6842765号(2021年3月取得) 特許(米国):Patent No.10914151(2021年2月取得) 報道発表資料(462.47 KB) 論文掲載ページ (Journal of Natural Gas Science and Engineeringに移動します) 広島大学研究者総覧 (畠 俊郎 教授)   【お問い合わせ先】 大学院先進理工系科学研究科 教授 畠 俊郎 Tel、Fax:082-424-7784 E-mail:thata*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

    • 健康/スポーツ
    • 経営/組織運営/デザイン
    2018.08.16
    • 健康/スポーツ
    • 経営/組織運営/デザイン
    “幸福感”は年収の高さに依存するのか? ~心理的傾向「マインドフルネス」の影響を初めて解明~

    本研究成果のポイント 一般に収入の高い人の方が、幸福感が高い傾向にあります。しかし「マインドフルネス」という心理的な傾向の高い人は、収入の多い少ないに関わらず、高い幸福感を感じていることを大規模な調査によって解明しました。 「マインドフルネス」傾向はトレーニングで向上させることもできます。今回の結果は幸福にいたる多様な道筋があることを示唆しており、ワークライフバランスや過労の問題など、働く人の多くが直面する問題へのよりよい解決の糸口につながることが期待されます。   概要 広島大学大学院総合科学研究科の杉浦義典准教授と杉浦知子特別研究員との研究グループは、「マインドフルネス」傾向と呼ばれる、自分の経験を言葉にあらわすのが得意であったり、自分の経験に批判的にならないような人は、年収の多い少ないに関わらず幸福感が高いことを明らかにしました。   収入が多い人の方が、幸福感が高い傾向があることは、すでに多くの大規模な研究データで示されています。本研究では、収入が幸福感に影響する人と影響しない人がいるのではないか、さらにその違いは、マインドフルネスと呼ばれる心理的な傾向の違いによるのではないかと考えました。   20歳から60歳までの、社会人734名のデータから、マインドフルネスの傾向の高い人は収入の多少に関係なく常に幸福感が高く、低い人では収入が多い人の方が幸福感が高いという結果が得られました。本研究ではじめて解明されたことは、収入に関係なく高い幸福感をえられる人がいて、その人たちはマインドフルネスの傾向が高いということです。   今回の研究では、マインドフルネスの高い人と低い人を比べています。しかし、マインドフルネスは自分の呼吸にゆっくりと注意を向ける、といったトレーニングによって高めることも可能です。働き過ぎや経済格差が問題となっている現代社会で、幸福になるための新しい道筋が示唆されたといえます。   本研究成果は、スイス科学誌「Frontiers in Psychology」のオンライン版に掲載されました。 図自分の体験を批判的に見ない人は収入と関係なく幸福感が高い(赤い点線)。横軸が年収、縦軸が幸福感です。年収は右にいくほど多いことを示しています(対数変換しているので横軸の数字は金額そのものではありません)。縦軸は上にいくほど幸福感が高いことを示しています。   論文情報 掲載誌: Frontiers in Psychology 論文タイトル: Mindfulness as a Moderator in The Relation Between Income and Psychological Well-Being 著者: 杉浦義典1、杉浦知子1, 2 1. 広島大学大学院総合科学研究科 2. 日本学術振興会 DOI番号: 10.3389/fpsyg.2018.01477   報道発表資料(259.12 KB) 論文掲載ページ(Frontiers in Psychologyに移動します) 広島大学研究者総覧 (杉浦 義典 准教授)   【お問い合わせ先】 広島大学大学院総合科学研究科 ​准教授 杉浦 義典 TEL: 082-424-6573 FAX: 082-424-0759 E-mail: ysugiura*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

    • 医療/ヘルスケア
    • 健康/スポーツ
    2023.10.23
    • 医療/ヘルスケア
    • 健康/スポーツ
    夜勤時の覚醒水準の維持と疲労感の低減を可能とする仮眠のとり方 ~90分間と30分間の分割仮眠と120分間の単相性仮眠の効果~

    研究成果のポイント 夜勤中にとる仮眠は眠気を軽減し、パフォーマンスの維持にも有効であることが明らかになっています。眠りには、急速眼球運動を伴うレム睡眠と伴わないノンレム睡眠の2種類があり、ノンレム睡眠の睡眠段階3は徐波睡眠(深睡眠)と呼ばれ、脳の休息と回復、成長に関与し、入眠後90分程度で最初のレム睡眠が出現し、情報制御に関する点検と更新が行われていると考えられています。その為、入眠に要する時間も加味して疲労の回復には120分間の仮眠が推奨されていますが夜勤中にとる仮眠取得時間は限られています。今回、16時間夜勤(16:00-09:00)を想定し、120分間の仮眠を1回にまとめてとる単相性仮眠と120分間を90分間と30分間に分けてとる分割仮眠と比較した結果、仮眠を分割することで早朝の眠気を抑え、特に疲労感の低減効果に優れていることを明らかにしました。 この研究成果は、長時間夜勤に従事する看護師や、夜間に危険を伴う作業に従事する労働者など、長時間集中力の維持を可能とし、労働者の健康にも有効な仮眠のとり方の確立に繋がることが期待されます。   概要 広島大学大学院医系科学研究科基礎看護開発学 折山早苗教授は、これまでに看護師の労働環境、特に夜勤時の仮眠について研究し効果を検証してきました。今回、これまでに収集した実験データを再分析し、16時間夜勤を伴う2交代制勤務の看護師の一般的な夜勤の時間帯を想定し120分間の仮眠(22:00-00:00)をまとめてとる単相性仮眠条件1)、90分間(22:30-00:00)と30分間(02:30-03:00)に分けた分割仮眠条件2)、仮眠をとらない仮眠条件3)の3条件を睡眠状態、心拍変動、眠気や疲労感、クレペリン検査による計算数を比較検討しました。   結果、仮眠時の平均の睡眠時間は、120分間仮眠が93.1分間、90分間仮眠が68.4分間、30分間仮眠が20.1分間で、睡眠効率*1の平均はいずれも90%以上、睡眠潜時*2の平均は10分以下でした。仮眠間で統計的な違いを認めませんでした。仮眠時の睡眠状態と仮眠直後の体温、眠気、疲労感、計算数の相関関係から、総睡眠時間が長いと120分仮眠は疲労感が増加し、30分仮眠は眠気が増加することが明らかになりました。また、90分仮眠は睡眠潜時が短いと、体温が上昇し、眠気や疲労感も増加することが示されました。 仮眠をとらない条件は早朝に眠気や疲労感が増加しましたが、仮眠を2回に分けてとった分割仮眠条件が、仮眠を1回にまとめてとった単相性仮眠条件よりも早朝の眠気を抑え、疲労感の低減効果に優れていることを確認しました。本研究成果は、夜間睡眠が限られる長時間の夜勤状況下においては、1回の仮眠をとるよりも2回に分けて仮眠をとる方が、眠気や疲労感の低減に繋がることが示されました。また、仮眠をとる時刻や時間で覚醒時の体温や眠気や疲労感に影響することが明らかになりました。  本研究成果は、夜勤に従事する労働者の疲労感の改善、覚醒水準維持のための有効な仮眠のとり方を開発する基礎資料として役立てられることが期待されます。 本研究成果は、2023年6月18日に国際科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。   論文情報 掲載誌:Scientific Reports 論文タイトル:Effects of 90- and 30-min naps or a 120-min nap on alertness and performance: reanalysis of an existing pilot study 著者名:Sanae Oriyama 広島大学大学院医系科学研究科基礎看護開発学 DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-023-37061-9   背景 夜勤時にとる仮眠には、記憶力や学習能力の向上、覚醒水準の維持や疲労の改善に効果があります。さらに仮眠は、ヒューマンエラーのリスクを低減することで安全性を高める可能性もあります。 看護師は、患者サービスを24時間提供する職務の性質上、交代制勤務が不可欠です。看護師の交代制勤務で最も長時間の夜勤は16時間とされ、看護師の疲労や眠気の増加による医療安全に対するリスクの増大が危惧されています。こうした状況の中、夜勤時にとる仮眠の効果が注目され、16時間夜勤に従事する看護師の多くは仮眠をとっていますが、眠気や疲労、作業能力を維持するため有効な仮眠のとり方は十分に明らかになっていません。   これまでの仮眠研究は、昼間にとる15分間の仮眠など短時間仮眠の有効性が明らかにされていますが、夜間の仮眠については、120分間以上の仮眠が推奨されています。しかしながら、看護師の勤務は、交代で休憩に入るため、仮眠の取得時刻や時間は一様ではありません。そのため、120分間の仮眠の取得時刻によっては、長時間の夜勤終了時まで効果を持続することは難しい場合もあります。そこで、今回、120分間の仮眠をまとめてとる場合と90分間と30分間に分割して仮眠をとる場合を比較し、仮眠による眠気や疲労感の変化を明らかにしました。   研究成果の内容 本研究は、これまでに実施した実験結果を再分析しました。睡眠に影響する因子として、年齢や女性ホルモンが影響し、夜勤従事者は夜勤慣れが生じると言われています。中高年齢期の睡眠は加齢とともに質が悪くなり、女性では性周期も影響し黄体期に比較的倦怠感が強く、眠気も増加傾向となります。また、看護師の多くが女性であることを考慮し、対象者は、夜勤経験のない大学4年次の女子学生とし、黄体期を避けてデータを収集しました。単相性仮眠条件(仮眠時刻:22:00-00:00)1)を14人、分割仮眠条件(仮眠時刻:22:30-00:00、02:30-03:00)2)12人、仮眠なし条件3)を15人の計41人を対象として仮眠の効果を検証しました。夜勤時間帯を16:00-09:00とし、実験開始から終了まで心拍変動より自律神経活動を確認するためアクティブトレーサー(GMS Inc., Tokyo, Japan)を装着しました。1時間毎に口腔温を測定し、眠気や疲労感の自覚的評価としてVisual analog scaleを使用しました。また、クレペリン検査による1桁の計算を10分間実施しました。毎時間、測定時間を20分間、自由時間20分間、安静時間を20分間としました。なお、前日から実験後までアクチグラフ(Ambulatory Monitoring Inc., Ardsley, NY, USA)を非利き手に装着し、睡眠状況も確認しました。   結果、仮眠時の平均の睡眠時間は、120分仮眠が93.1分間、90分間仮眠が68.4分間、30分間仮眠が20.1分間で、睡眠効率はそれぞれ90.5%、96.2%、99.1%、睡眠潜時は8.6分間、9.3分間、5.8分間で、睡眠効率、睡眠潜時は仮眠間で統計的に違いを認めませんでした。睡眠状態と仮眠直後の体温、眠気、疲労感、計算数の相関関係の結果から、総睡眠時間が長ければ120分仮眠は覚醒時に疲労感が増加し、30分仮眠は眠気が増加することが明らかになりました。また、90分仮眠は睡眠潜時が短いと、覚醒時に体温が上昇し、眠気や疲労感も増加することが示されました(表)。この結果から、22:00に120分間の仮眠をとる場合は120分間よりやや短い時間とする方が覚醒時の疲労感を抑える可能性が示されました。また、22:30に90分間の仮眠をとる場合には、昼間に短時間の仮眠をとり睡眠欲求を低減することが必要かもしれません。さらに、02:30に30分間の仮眠をとる場合も30分間より短時間にすることで、覚醒時の眠気を抑えることができるかもしれません。   仮眠をとらない条件は早朝の04:00-09:00に眠気や疲労感が増加し、計算数も低下しました。計算数については、仮眠をとった条件と仮眠をとらなかった条件で同様に低下しました(図A)が、疲労感は、仮眠を2回に分けてとった分割仮眠条件が、仮眠をまとめてとった単相性仮眠条件よりも04:00-09:00の期間、有意な疲労感の低減効果を認めました(図B)。また、眠気についても、仮眠直後に一時的に増加しましたが、分割仮眠条件は06:00までは眠気が少なく覚醒水準の維持効果を確認しました(図C)。   今後の展開 本研究では、120分間仮眠を90分間と30分間に分割しその効果を確認しましたが、今後は仮眠直後の一時的な眠気や疲労感の増加を防ぐ方法を組み合わせたり、仮眠環境の整備をしたりすることで夜勤時の疲労や眠気を理由に離職する看護師の離職防止にもつなげることが期待されます。 さらに将来的には、看護師だけでなく夜行バスのドライバーや交代制勤務に従事する工場で働く労働者などを対象として、夜勤中に覚醒水準の維持が必要とされる時間帯に合わせた仮眠のとり方を開発することで、労働者の心身の負担軽減と安全安心な職場環境の醸成にも期待されます。   参考資料   用語説明 *1睡眠効率:入眠から起床までの時間帯に占める全睡眠時間の割合(%) *2睡眠潜時:静止期時間帯の始まりから入眠までの時間(分)   報道発表資料(722.01 KB) 掲載誌:Scientific Reports 研究者ガイドブック(折山 早苗 教授)   【お問い合わせ先】 大学院医系科学研究科基礎看護開発学折山早苗 Tel:082-257-5355 E-mail:oriyama*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

    • 食料/農林水産業
    • 健康/スポーツ
    2025.05.26
    • 食料/農林水産業
    • 健康/スポーツ
    〜デーツの健康効果に新たな知見〜 線虫を用いた実験で、寿命延長の可能性を確認

    広島工業大学 環境学部 食健康科学科の角川幸治教授、広島大学大学院 統合生命科学研究科水沼正樹教授および荒川賢治教授、お多福醸造株式会社による共同研究により、ドライフルーツの一種である「デーツ」に、線虫の最大寿命に大きな影響を与えることなく、平均寿命(Mean Lifespan:MLS)のみを延ばす効果があることが明らかになりました。 本研究成果は、公益社団法人日本生物工学会が発行する英文誌『Journal of Bioscience and Bioengineering』において、2025年5月10日にオンライン公開されました。 (DOI:10.1016/j.jbiosc.2025.04.006)   研究の背景と目的 近年、健康寿命の延伸が社会的課題となる中で、食品の持つ抗老化作用に注目が集まっています。本研究では、日常的に摂取されることの多いドライフルーツの寿命延長効果に着目し、線虫(Caenorhabditis elegans)を用いた検証を行いました。   研究概要 市販のドライフルーツ5種類(デーツ、パイナップル、イチジク、マンゴー、プルーン)を線虫に摂取させ、寿命測定を行った結果、すべてのドライフルーツにおいて平均寿命(MLS)が有意に延長されました(図1)。特にデーツにおいては、最大寿命にはほとんど変化がないにもかかわらず、平均寿命が著しく延びる(延長率:37.1%)という特異な結果が得られました。 次に、最大寿命と平均寿命を標準化してZ値を算出し、ΔZ比(平均寿命と最大寿命の差)として各種ドライフルーツと比較したところ、デーツは他の果実と比べて平均寿命の延長効果が際立っていることが明らかになりました(図2)。 この特異な効果が特定の品種によるものかを検証するため、市販されている8種類のデーツを用いて同様の実験を行ったところ、いずれの品種でも平均寿命の延長が認められ、デーツ全般に共通した現象であることが確認されました(図3)。   成分分析と今後の展望 成分分析の結果、これまで寿命延長作用が報告されている既知の成分は、調査対象となったデーツには含まれていない、または影響していないことが判明しました。すなわち、デーツにはこれまで知られていなかった、新たな「平均寿命延長成分」が含まれている可能性が示されました。 今後はこの成分の特定を進め、抗老化に資する健康食品の開発に向けて研究を継続してまいります。   線虫(せんちゅう)とは 線虫:Caenorhabditis elegans(図4、以下 C. elegans)は、体長約1 mmの非寄生性線虫であり、大腸菌を餌として寒天培地または液体培地上で容易に飼育することができます。C. elegansの最大の特徴は、神経や筋肉を含む約1,000個の全細胞について、その細胞の発生の過程(系譜)がこれまでの研究により明らかにされている点です。線虫は、約3日で成虫となり、数日間にわたって産卵を行った後、加齢により徐々に活動が低下し、約3週間で寿命を迎えます。 1998年には、多細胞生物として世界で初めて全ゲノムが解読されました。C. elegansは、哺乳類を用いた動物実験に比べて設備や飼育のコストが低く、取り扱いが簡便であるという利点があるほか、動物愛護の観点から規制対象外とされていることから、研究用途に非常に適しています。 特筆すべきは、哺乳類を含む高等動物と共通する老化関連のシグナル伝達経路を数多く有している点です。これにより、C. elegansは抗老化研究のモデル生物として、現在も世界中の研究機関で広く活用されています。   デーツとは デーツ(図5)はナツメヤシ属の果実で、アラブ文化圏では主食の1つとして親しまれています。日本では嗜好品として市販されており、古くから「神が与えた果実」や「生命の樹」として崇められてきました。旧約聖書にも登場するなど、歴史的にも重要な果実です。 これまでに多くの栄養成分・機能性成分が明らかにされてきましたが、デーツ摂取による生体への具体的な影響についての研究は限られており、本研究はその新たな知見を提供するものとなります。 図1. ドライフルーツを摂食させた線虫の寿命測定結果 図2. ドライフルーツを摂食させた線虫のΔZ比 図3. さまざまなデーツを摂食させた線虫のΔZ比 図4. 線虫 (Caenorhabditis elegans) 図5. デーツ   論文情報 掲載誌: Journal of Bioscience and Bioengineering タイトル: Date, a major dried fruit, extends the lifespan of Caenorhabditis elegans DOI: https://doi.org/10.1016/j.jbiosc.2025.04.006   【研究成果】〜デーツの健康効果に新たな知見〜線虫を用いた実験で、寿命延長の可能性を確認_0.pdf(1.07 MB) 科学雑誌:Journal of Bioscience and Bioengineering 研究者ガイドブック(水沼 正樹 教授) 研究者ガイドブック(荒川 賢治 教授)   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 広島工業大学 環境学部 食健康科学科 教授角川 幸治 Tel:082-921-6472 E-mail:k.kakugawa.db@it-hiroshima.ac.jp   広島大学大学院 統合生命科学研究科 教授水沼 正樹 Tel:082-424-7765 E-mail:mmizu49120@hiroshima-u.ac.jp   広島大学大学院 統合生命科学研究科 教授荒川 賢治 Tel:082-424-7767 E-mail:karakawa@hiroshima-u.ac.jp     <報道(広報)に関すること> 広島工業大学 広報部石田 知世 Tel:082-921-3128 E-mail:kouhou@tsuru-gakuen.ac.jp   広島大学 広報部 Tel:082-424-6762 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

    • 経営/組織運営/デザイン
    2020.02.27
    • 経営/組織運営/デザイン
    幸福感が労働生産性を高めることを解明

    本研究成果のポイント 従業員の勤務中の幸福感が従業員の労働生産性を高めることを解明しました。 就業環境の改善が組織の利益にもつながる可能性が示されたことにより、「働き方改革」の効果的な推進が期待されます。   概要 広島大学大学院社会科学研究科 角谷快彦(かどや よしひこ)教授らの研究グループは、ラオス人民民主共和国の単純作業を行う工場での実験により、従業員の勤務中の幸福感が従業員の労働生産性を高めることを明らかにしました。   発表論文: Emotional Status and Productivity: Evidence from the Special Economic Zone in Laos 著者: 角谷 快彦、カン ムスタファ、ワタナポンヴァニッチ ソンティップ、ビンナガン パンチャポン 掲載雑誌: Sustainability DOI番号 https://doi.org/10.3390/su12041544 (登録申請中) https://www.mdpi.com/2071-1050/12/4/1544 (現在左記にて閲覧可)   背景 現在、日本の「働き方改革」等、各国で従業員のための職場環境(労働環境)の改善が社会の大きなテーマになっています。そのなかで、労働環境のどのような改善が企業にとってメリットとなるかわかっておらず、改善がなかなか進まない要因とも言われています。なかでも従業員の就業時の感情(幸福、怒り、リラックス、悲しみ)が労働生産性にどのように結びついているかはほとんどわかっていませんでした。   研究成果の内容 今回、研究グループは従業員の感情の推移を記録しながら、彼らの労働生産性の変化を分析しました。具体的には、TDK株式会社の生体計「SilmeeW20」(図1)を用いて労働者の心拍のゆらぎを計測し、その数値から日本電気株式会社が開発した「NEC感情分析ソリューション」を用いて幸福・怒り・リラックス・悲しみの感情ステータスを算出しました(図2)。そしてその間の労働者の労働生産性を測り、労働者の感情が労働生産性にどのように結びついているかを変量効果モデルを用いて分析しました。労働者は労働生産性の計測を可能にするため、ラオスのサワンナケート経済特区で日本向けのプラスチック玩具の色付けをする工場のライン作業員から無作為で15人を抽出し、各自が何個の人形に色付けができたかを労働のアウトプットとして用いました。実験は3日間行い、労働者の年齢、性別、学歴、職歴、通勤時間等をコントロールして分析を行いましたが、結果として労働者の幸福感が労働生産性を高めていることがわかりました。その他の感情は生産性に有意な影響はありませんでした。   このことから、雇用主は従業員が幸福と感じる職場環境(労働環境)を提供することが従業員の労働生産性の向上、ひいては組織の利益につながることが示唆され、職場マネジメントの研究に勤務中の従業員の感情というフィールドを拓くことができました。   今後の展開 今回の結果はあくまで単純作業を行う労働者を対象とした結果であり、すべての職種に同様に当てはまるとは限りません。また、被験者が意図せず、かなり女性に偏ってしまった(15人中14人)ため、結果が女性の特性に影響された可能性も残ります。今後は、男性の被験者を増やし、また感情、特にストレスが高いとされる別の職種で同じような実験を行うことで、結果の適用性をさらに検証することが求められます。   参考資料 図1. 実験で用いた生体計。腕時計のように装着して使用する。   実験で用いた生体計 図2. 被験者の感情ステータスの時系列。緑色は幸福、赤は怒り、黄色はリラックスの感情を示す。下の青い棒は被験者の時系列の会話の量を示す。横軸が時系列で縦軸がその時間帯での感情および会話量を示す。なお、灰色の箇所は中立の感情もしくは体動による機器の接触不良等で計測できなかった時間帯を示す。   用語説明 Silmee W20:TDK株式会社のウェアラブル式生体センサ https://product.tdk.com/info/ja/products/biosensor/biosensor/silmee_w20/index.html NEC感情分析ソリューション:日本電気株式会社の感情分析 https://jpn.nec.com/embedded/products/emotion/index.html   報道発表資料(184.77 KB) 論文掲載ページ (MDPIページに移動します) 広島大学研究者総覧 (角谷 快彦 教授) 広島大学大学院社会科学研究科社会経済システム専攻ホームページ   【お問い合わせ先】 広島大学大学院社会科学研究科 教授 角谷 快彦 TEL: 082-424-7274 E-mail: ykadoya*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

    • 医療/ヘルスケア
    • 教育/人材育成
    2022.07.12
    • 医療/ヘルスケア
    • 教育/人材育成
    医療系学生のための「感染症教育VR」教材を制作!~広島大学における実証授業でVR教材の効果を検証~

    本研究成果のポイント 「感染症対策」を共通テーマとして、部門横断型の医療教育VRを制作しました。 本VRによる学習を行った学生は、従来の講義形式の学習を行った学生に比べ、より正しく感染対策を実践できていることを検証しました。 本学では感染症に強い人材を早期段階から育成していきます。   概要 広島大学病院(広島県広島市、感染症科教授:大毛宏喜 他)は株式会社ジョリーグッド(東京都中央区、代表取締役:上路健介、以下 ジョリーグッド)に撮影と編集を委託し、新型コロナウイルスを含む「感染症対策」を共通テーマとして、「医学」「看護」「歯学」「薬学」「リハビリ」の5部門横断型の医療教育VRを制作しました。360°カメラによって撮影された現場の映像を元に、CGによりウイルス・細菌の飛沫や付着を表現しています。医療スタッフの目線のみならず患者視点でも、感染症のリスクをリアルに体験できる教育コンテンツを目指して各部門職員が脚本、出演、演出および監修をしました。   また、広島大学において、医学生を対象に今回開発した医療教育VRを用いた実証授業と医学部共用試験OSCE(オスキー)形式の実技試験を組み合わせた実証実験を行ない、VRによる学習を行った学生は、従来の講義形式の学習を行った学生に比べ、より正しく感染対策を実践できていることを検証しました。   今後、広島大学では、疑似体験によって高い教育効果が得られるVR教材を積極的に活用して医学生の実技レベルを飛躍的に向上させ、臨床実習にて自信を持って患者診療が行える学生医「スチューデント・ドクター」を輩出するなど、感染症に強い人材を早期段階から育成していきます。   本研究成果は、2022年7月12日付けで「American Journal of Infection Control」誌のオンライン版に掲載されました。   論文情報 掲載誌: American Journal of Infection Control 論文タイトル: Virtual reality as a Learning Tool for Improving Infection Control Procedures ​​​著者: Keitaro Omori*, Norifumi Shigemoto, Hiroki Kitagawa, Toshihito Nomura, Yuki Kaiki, Kentaro Miyaji, Tomoyuki Akita, Tomoki Kobayashi, Minoru Hattori, Naoko Hasunuma, Junko Tanaka, Hiroki Ohge*責任著者 DOI: 10.1016/j.ajic.2022.05.023 (7月12日に本学霞キャンパスで記者説明会を開催。左から広島大学の繁本准教授・蓮沼教授・大森診療講師、ジョリーグッドの細木部長)   報道発表資料(661.27 KB) 広島大学研究者ガイドブック ( 大毛 宏喜 教授) 論文掲載ページ (American Journal of Infection Control)に移動します   【お問い合わせ先】 <研究に関すること> 広島大学病院 感染症科 教授 大毛宏喜 Tel:082-257-1613 E-mail:ohge*hiroshima-u.ac.jp   <製品・技術等に関すること> 株式会社ジョリーグッド広報担当 Tel:050-5477-7697 E-mail: press*jollygood.co.jp   <報道に関すること> 広島大学広報室 Tel:082-424-3701 E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp   株式会社ジョリーグッド広報担当 Tel:050-5477-7697 E-mail: press*jollygood.co.jp   (注: *は半角@に置き換えてください)

    • 教育/人材育成
    2026.01.06
    • 教育/人材育成
    詩歌の五七調が「美しさ」の評価を高める ~詩作やキャッチコピーへの応用に期待~

    本研究成果のポイント 日本語の詩歌にみられる5音と7音のリズムは、詩歌の「好ましさ」、「穏やかさ」、「美しさ」の評価を高めることがわかりました。 同じ音が一定の間隔で繰り返し現れる詩歌は、「激しさ」の印象を増す可能性も示唆されました。 詩歌のリズムを活用し、人の心に響く詩作技法や、広告・キャッチコピーなどへの応用の進展が期待されます。   概要 広島大学大学院人間社会科学研究科の博士課程前期1年 吉尾 瑞希、神原 利宗 准教授は、日本語詩歌の音に注目し、どのような音の特徴を持つ詩歌が、好ましさ、穏やかさ、美しさの評価を高めるかを検証しました。実験1では実際に存在する詩歌(新古今和歌集収録の和歌)を、実験2では実験者が作成した擬似的な詩歌を用いました。本研究で検討した音の具体的な特徴は、5音と7音の繰り返しからなるリズム(韻律)と同じ音が句の最初に繰り返し現れること(頭韻)です。実験では、韻律と頭韻の有無を操作した詩歌の音声を提示した後に、日本語を母語とする参加者に主観的な評価を求めました。その結果、韻律のある詩歌では、好ましさ、穏やかさ、美しさの評価が高いことがわかりました。また、韻律と頭韻の両方がある詩歌は、韻律があって頭韻がない詩歌より激しい印象を与える可能性が示唆されました。   本研究成果は以下の査読付き国際誌に掲載されました。 掲載雑誌名:Psychology of Aesthetics Creativity and the Arts 掲載日:2025年11月10日(オンライン先行公開) DOI:https://dx.doi.org/10.1037/aca0000804 タイトル:“Alliteration and Meter in Japanese Real- and Pseudopoems: Emotional and Aesthetic Impacts” 著者:吉尾瑞希、神原利宗 所属:広島大学人間社会科学研究科心理学プログラム   背景 日本語話者は、なぜ日本語の詩歌に心惹かれるのでしょうか。日本語の定型詩は、5音と7音の繰り返しを特徴としています。たとえば、日本最古の詩歌集である万葉集は、5音と7音を決まった周期で繰り返す詩歌を4500首以上集めたものです。万葉集の成立は奈良時代で、それ以降、和歌(短歌)、長歌、川柳、俳句、都々逸など、同じリズムを持つ詩歌は、長い間日本語話者に愛されてきました。現代でも、短歌や俳句を読んだり作ったりする人は少なくありません。最近ではSNSで「#tanka」のハッシュタグで短歌を投稿する若者も増えています。こうした事実から、詩歌の形式には、時代を超えて愛される魅力があると考えられます。 しかし、日本語詩歌の音の特徴に注目した心理学的研究は少ない状況です。英語やドイツ語など、日本語とは異なるリズムや文法を持つ言語での詩歌研究は進みつつありますが、日本語の特徴を踏まえた体系的な研究はほとんど未開拓と言えます。そこで、本研究では、日本語のリズムや音の重なりに注目し、実験的な検討を行ないました。   研究成果の内容 実験1では、同じ音が繰り返される詩歌(頭韻あり)と繰り返しのない詩歌(頭韻なし)を実在の詩歌から選び、日本語を母語とする参加者に、音声で提示しました。参加者は、好ましさ、穏やかさ、美しさ、理解しやすさを評価しました。分析の結果、頭韻ありの詩歌と頭韻なしの詩歌の間に、統計的に有意な差はみられませんでした。実験に使った詩歌は古語でしたが、語彙の意味(たとえば、「桜」や「ふね」など)が評価に影響を与えた可能性があります。   実験2では、リズム(韻律)を検討に加えました。実験1で使った頭韻ありの詩歌と頭韻なしの詩歌を基に、57577のリズムを保った詩歌(韻律あり)と、68359などそのリズムを崩した詩歌(韻律なし)を作成し、材料として使用しました。この材料は、単語が持つ辞書的な意味の影響を除いて音の特徴に注目するために、日本語として意味を持たない擬似詩歌としました。評価の項目は、好ましさ、穏やかさ、美しさと、有意味度(どれくらい意味があるか/ないか)でした。分析によると、韻律のありの詩歌は、頭韻の有無にかかわらず、韻律なしの詩歌よりも好ましさ、穏やかさ、美しさ、有意味度の評価が高くなることがわかりました。韻律ありの詩歌は、日本語母語話者にとってなじみ深いリズムであるため予測しやすく、心の中の処理が容易になると考えられます。逆に、韻律なしの詩歌は、どのような音が次に続くか、予測ができません。筆者らは、韻律ありの詩歌の方が好ましさや穏やかさ、美しさの評価が高まった理由は、以上のような詩歌の心の中の処理を想定することで説明できると考えています。 また、頭韻については、韻律と頭韻の両方がある条件で、頭韻だけがない条件よりも穏やかさの評定が低い、つまり、より激しいと評価されることがわかりました。   本研究は、今まで検証されてこなかった日本語詩歌の音の特徴が人の心にもたらす影響について明らかにしました。本研究の強みは、日本語の特徴を考慮して実験材料を作ったところにあります。韻律や頭韻の効果は外国語の研究で示されてきましたが、本研究によって、日本語でも同様にポジティブな影響があることがわかりました。また、リズムが決まった詩歌は心地よく鑑賞できる、という直観がデータによって支持されたともいえるでしょう。本研究は、「日本語詩歌がなぜ千年以上も詠み継がれてきたのか」という問いに、「リズムが心地よいからである」と答えられるような、ひとつの証拠を示しました。   今後の展開 本研究から、詩歌のリズムや音の繰り返しといった特徴は、詩歌を耳で聴いたときの評価を高めるということが明らかになりました。しかし、詩歌は耳で聴いて楽しむだけでなく、文字で読んで楽しむこともできます。今後は、音声での提示だけでなく、視覚的に提示した場合の評価についても検討していく予定です。 本研究の知見から、詩作において日本語のリズムを取り入れることで、詩歌の美しさの評価を高められる可能性が示唆されます。また、広告やキャッチコピーにも詩歌のリズムを活用することができると思います。受け手に好ましさや美しさを感じさせたいような広告などのメッセージでは、韻律を利用するのがよいかもしれません。具体的には、商品名や広告文に5音と7音のリズムを取り入れると、より印象的になる可能性があります。   参考資料 主観的な評価:反対の意味を持つ形容詞のペア(「好き⇔嫌い」、「激しい⇔穏やか」など)を両端に配置した7段階の尺度(1~7)を用いました。参加者は各詩歌を聴いたあと、自分の感覚に最も当てはまると思う数字を、素早く直感的に選ぶように求められました。このような尺度を用いることで、詩歌への印象を数量的なデータとして収集することができます。この手法は意味、感情、印象を測る際に、心理学で広く用いられています。   報道発表資料.pdf(235.88 KB) 掲載雑誌:Psychology of Aesthetics Creativity and the Arts 研究者ガイドブック(神原 利宗 准教授)   【お問い合わせ先】 広島大学大学院人間社会科学研究科人文社会科学専攻心理学プログラム 博士課程前期1年吉尾 瑞希 准教授神原利宗 Tel:082-424-6280FAX:082-424-3481 E-mail:m252758@hiroshima-u.ac.jp tkambara@hiroshima-u.ac.jp

    • 量子
    • 半導体
    • 素材
    • 融合領域
    2026.01.21
    • 量子
    • 半導体
    • 素材
    • 融合領域
    強相関電子系物質の相図におけるパラダイムシフト -半世紀使われてきたドニアック相図を超えて-

    概要 理化学研究所(理研)放射光科学研究センター物理・化学系ビームライン基盤グループの山岡人志客員研究員、富山県立大学工学部教養教育センターの谷田博司准教授、広島大学放射光科学研究所(HiSOR)のアイケ・シュヴィア助教(研究当時)、シブ・クマール助教(研究当時)、有田将司技術専門職員、島田賢也教授(同大学放射光科学研究所所長)、関西学院大学の山本義哉大学院生(研究当時)、水木純一郎教授、高知大学の田島史郎大学院生(研究当時)、小野寺健太大学院生(研究当時)、西岡孝教授らの国際共同研究グループは、奇妙な異方性(磁気秩序が磁化の起こりやすい方向に起きない)を備えた反強磁性秩序[1]を示す近藤半導体[2]Ce(Ru1-xRhx)2Al10において、伝導電子とセリウム(Ce)が持つ4f電子[3]との結合(c-f混成[4])の異方性を考慮した新しい相図[5]を提案しました。 本研究成果は、高温超伝導体、次世代メモリ、高効率エネルギー変換デバイス、次世代コンピュータなどへの応用が期待される強相関電子系化合物[6]の物性発現の理解と新物質開拓に貢献すると期待されます。 今回、国際共同研究グループは、近藤半導体であるCeRu2Al10とそのルテニウム(Ru)の一部をロジウム(Rh)で置換した物質について、広島大学放射光科学研究所(HiSOR)のビームラインおよび理研放射光科学研究センターの大型放射光施設「SPring-8」[7]の放射光を用いた実験を駆使し、電子構造を調べ、少量のRh置換により引き起こされた電子構造の質的な変化、すなわちリフシッツ転移[8]が生じることを見いだしました。また、公表から約半世紀が経過した今でもなお強相関電子系の基底状態を記述する最も基本的な概念である相図(ドニアック相図(Doniach phase diagram)[9])を発展させ、方位依存性を持った「羅針盤」としての新しい相図を提案しました。 本研究は、科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版(2025年12月24日付)に掲載されました。   新たに提案した異方的c-f混成を扱う高次元の相図   背景 物質の中には無数の電子が存在します。それらは相互に影響し合い、超伝導や磁気/電荷秩序といった相転移[10]を示します。物の性質を扱う物性物理において、相転移の研究は花形の一つです。元素の組合せや原子のナノ配列構造(結晶構造)の特徴を反映した種々の相転移が知られていますが、こうした基礎研究は、現代社会を支える基盤技術(例えば磁気メモリなど)につながっています。 近藤半導体CeM2Al10(M:遷移金属のRu、オスミウム(Os)、鉄(Fe)など、Al:アルミニウム)は直方晶[11]の化合物です(図1(a))。近藤半導体では、磁気秩序が生じることは通常期待されませんが、CeRu2Al10とCeOs2Al10では常識に反し、約30ケルビン(K:絶対温度の単位)で反強磁性(AFM:antiferromagnetic)秩序が生じます。この転移温度は、大抵のCe化合物と比べて数倍高いものです。また、反強磁性秩序でのCeの磁気モーメントの向き(磁気異方性)も異常で、通常の磁性体では期待されない方向を向いてしまいます。このように奇妙な反強磁性秩序のカギとして、特に伝導電子とCe 4f電子との結合(c-f混成)の異方性が指摘されてきました。しかし、肝心の電子構造は未解明のままでした。 そこで山岡客員研究員らは、角度分解光電子分光(ARPES)[12]実験(図1(b))を行い、CeRu2Al10では確かにc-f混成が異方的であることを明らかにしました注1)。この結果は、CeRu2Al10で生じる奇妙な反強磁性秩序が遍歴性[13]を有すことを浮き彫りにし、当時提唱されていた理論モデルを支持する内容でした注2)。 図1 CeRu2Al10の結晶構造、ARPES実験のセットアップ (a)CeRu2Al10の結晶構造。結晶系は直方晶(黄色四角枠)。Ru-Al10から成るクラスタ(灰色)がac2次元面を成し、b方向に積層している。クラスタの中心にRu(白っぽい灰色)が、クラスタの隙間にCe(黒色)がいる。小さい球はAlを表す。 (b)ARPES実験の例。光速に近い速度で運動する電子が向きを変えるときに放出する放射光を単結晶試料に入射させて、光電効果で飛び出した光電子を検出器で捉える。図中左下に示すように、物質中では電子の占める軌道によって結合エネルギーが異なる。単結晶の方位を変えながら光電子のエネルギーと運動量を調べることで、3次元的な電子構造の情報を得ることができる。本研究では図中の角度θを±10度程度の範囲でデータを積分し、c-f混成の異方性に関する情報を得た。なお実験では、Ceの4d-4fの共鳴条件に相当するエネルギーである122電子ボルト(eV)の放射光を入射させて行った。   注1) H. Yamaoka et al., J. Phys. Soc. Jpn. 93, 124704 (2024). 注2) S. Hoshino and Y. Kuramoto, Phys. Rev. Lett. 111, 026401 (2013).   研究手法と成果 今回、国際共同研究グループは、CeRu2Al10のRuサイトを周期表でRuの一つ右隣にある元素Rhに一部置き換えたCe(Ru1-xRhx)2Al10について、ARPES実験を行いました。Ce(Ru1-xRhx)2Al10の最大の特徴は、CeRu2Al10の異常な磁気異方性を解消し、磁気モーメントが期待される通りの向きを向くようになることです。この劇的な変化は、わずか5%程度のRh置換で起こります。このとき同時に転移温度も若干下がりますが、依然として同程度に高い温度を維持します。ここでも、c-f混成の強度と異方性がカギとなることが指摘されてきましたが、肝心の電子構造は未解明のままでした。 そこで国際共同研究グループは、CeRu2Al10およびCe(Ru1-xRhx)2Al10について、広島大学放射光科学研究所(HiSOR)のビームラインBL-1でARPES実験を行い、c-f混成に異方性があることを見いだしました。さらに、理研放射光科学研究センターSPring-8のビームラインBL12XUとBL12B2において実施した分光実験とX線回折実験の結果を合わせて、電子構造の変化、いわゆるリフシッツ転移がRh置換によって起きていることを明らかにしました。 図2(a)と(b)は、ARPES実験のデータを各結晶軸について積分して得たスペクトルです。これによりc-f混成の強度の異方性を調べることができます。図を見ると、フェルミエネルギー[14]近傍のスペクトル強度が明らかに違います。また、強度の強い方向がRh置換で変化しています。これは、Rh置換によってc-f混成の強い方向が切り替わったことを、実験的に明瞭かつ端的に示す結果です。 図2 CeRu2Al10とCe(Ru0.9Rh0.1)2Al10の実験結果 ARPES測定のデータを、結晶のa、b、c軸方向に積分した図。「f1」と示した信号が強い場合にc-f混成が強い。CeRu2Al10ではc方向のc-f混成が強いが(a)、Ce(Ru0.9Rh0.1)2Al10ではb軸方向に強いことが明瞭に分かる(b)。これは、リフシッツ転移がRh置換で生じたことを示している。こうしてわずかなRh置換により、c-f混成の強い方向が切り替わることを実験的に初めて明らかにした。 図3(a)は、強相関電子系化合物の特徴を説明するために約50年来用いられてきたドニアック相図の概念を、模式的に示したものです。c-f混成が弱い領域では電子は局在的(特定の原子などに強く束縛されている状態)で、局在的反強磁性秩序が生じます。一方c-f混成が強い領域では遍歴的(電子が特定の場所にとどまらず自由に動く状態)で、非磁性の重い電子状態[15]が実現します。両者の中間ではさまざまな異常が発現します。これは、電子の粒子性と波動性[16]の問題に直結します。図中の円はフェルミ面[14]の大きさを表し、円の大きい方がc-f混成の強い状態を示します。 図3(b)は、ドニアック相図の概念を拡張した理論モデルです注2)。局在的反強磁性秩序と重い電子状態の間に、遍歴的反強磁性秩序の領域が割り込み、局在的反強磁性秩序の領域とはリフシッツ転移で隔てられています。これにより、CeRu2Al10の示す反強磁性秩序の遍歴性や、Rh置換で生じるリフシッツ転移を理解できます。 図3 ドニアック描像におけるc-f混成強度と物質の性質の移り変わり (a)ドニアック相図の概念。c-f混成が弱い領域は局在的な反強磁性、強い領域は非磁性の重い電子状態。両者は量子臨界点で隔てられる。量子臨界点とは相転移が起こり物質の状態が大きく変わる場所。(b)拡張されたドニアック相図。中間に遍歴的な反強磁性の領域が割り込む。局在的な反強磁性の領域とは、リフシッツ転移で隔てられている。図中の円により、c-f混成が等方的であることを象徴的に示す。   CeRu2Al10のc-f混成が異方的であるにもかかわらず、ドニアック相図ではc-f混成が等方的に扱われているため(図3)、CeRu2Al10の性質をうまく捉えることができませんでした。そこで国際共同研究グループは、c-f混成の異方性を考慮したより高次元の新しい相図を作成しました(図4)。 図4 新たに提案した異方的c-f混成を扱うドニアック描像の模式図   c-f混成が強くなるにつれ、局在的な反強磁性からリフシッツ転移を経て遍歴的な反強磁性に相転移し、量子臨界点を経て非磁性の重い電子状態へ移行する点は、図3(b)で示した概念と共通する。しかし、c-f混成の異方性を含めることで、従来のc-f混成を等方的に扱う相図よりも、的確に物質の特徴を示すことができる。CeRu2Al10とCe(Ru0.9Rh0.1)2Al10ではc-f混成は異方的で、それぞれc方向、b方向にc-f混成が強いことが楕円で表現されている。45度に傾いた破線はc-f混成が等方的な状況で、従来のドニアック描像はこの線上に対応する。CeRu2Al10ではb方向とc方向での顕著なc-f混成の異方性のため、2次元に拡張した相図で示したが、一般により高次元に拡張することが可能である。   CeRu2Al10とCe(Ru0.9Rh0.1)2Al10では、いずれもc-f混成の強さが異方的で、かつ、その強い方向は、それぞれc軸方向、b軸方向と異なりました。そこで、横軸と縦軸にそれぞれc軸方向とb軸方向のc-f混成の強さを取ることで、c-f混成が異方的な場合でも、その状況をうまく扱うことができるよう、旧来の概念を高次元に拡張した新たな相図を提案しました(図4)。従来のドニアック相図の概念は、c-f混成の強さの観点では1次元的です。新しい相図上では45°斜めの破線の軸上に対応します。 CeRu2Al10はc軸方向のc-f混成が強いため、相図の右側の領域、すなわちc軸方向のc-f混成が強い領域に位置付けられます。このとき、c軸方向にc-f混成の強いことが、c軸方向(横方向)に長い楕円で象徴的に示されています。同様に、Ce(Rh0.9Rh0.1)2Al10では、b軸方向のc-f混成が強いので、相図の左上に、b軸方向(縦方向)に長い楕円で示されています。両者は青い破線で示すようにリフシッツ転移で隔てられていて、今回の実験のようにRhで置換することで、遍歴的反強磁性状態から局在的反強磁性状態へと移行します。その際、c-f混成の強い方向がc軸方向からb軸方向へと大胆に入れ替わる様子が、黄色い矢印で示されています。 c-f混成の強さが弱い場合(図4左下)、あるいは強い場合(図4右上)には、c-f混成の異方性が実質的に消失し、等方的と見なすことができます。その様子は、図3(a)と図3(b)でも示した円により、象徴的に示されています。いわば、CeRu2Al10およびその関連物質は、c-f混成の強い/弱い領域の狭間にあり、種々の異常な性質の起源は、まさにその狭間の世界が生み出したc-f混成の異方性に端を発すると考えることができるようになります。このように提案した新しい相図は、c-f混成の示す異方性を針に据えた、まさに「羅針盤」として機能します。   今後の期待 本研究で得られた知見は、強相関電子系化合物の特徴を記述する最も基本的かつ象徴的な概念を、実験結果に基づき質的に拡張したものです。強相関電子系化合物が示す多様な性質の理解を深化させ、現象の統一的な理解、新たな物質開拓と理論研究の指針を与えます。元をたどれば電子の粒子性・波動性といった量子力学の基本原理に深く関わる概念であることから、本知見のインパクトは物性物理にとどまらず、広く波及し、基礎・応用を含む幅広い分野で活用されることが期待されます。   論文情報 <タイトル> Itinerant to localized heavy electron magnetism in Ce(Ru1-xRhx)2Al10: a direction-dependent phase diagram beyond the Doniach phase diagram   <著者名> Hitoshi Yamaoka, Hiroshi Tanida, Eike F. Schwier, Yoshiya Yamamoto, Shiv Kumar, Masashi Arita, Kenya Shimada, Fumisato Tajima, Renta Onodera, Takashi Nishioka, Hirofumi Ishii, Nozomu Hiraoka, and Jun’ichiro Mizuki   <雑誌> Physical Review Letters   <DOI> 10.1103/hdcf-dycj   補足説明 [1] 反強磁性秩序 隣り合う電子のスピンが互いに反対向きに整列し、全体では磁化の出ない状態(スピンは、量子力学的性質で上向きか下向きの状態しか取れない。スピンの向きがそろうと磁石になる)。   [2] 近藤半導体 強い電子相関により低温でエネルギーギャップを生じ、半導体的振る舞いを示す物質群。ギャップの大きい場合は近藤絶縁体と呼ばれる。「近藤」という名称は、この性質の起源と密接に関係する「金属の電気抵抗極小現象」の謎を世界で初めて解明した日本人物理学者、近藤淳(こんどうじゅん)博士の名前に由来する。物理学の世界で、日本人の個人名が冠された物理現象として有名なものの一つ。   [3] 4f電子 電子の取り得る軌道のうち、軌道角運動量がL=3の状態の軌道を占める電子。セリウム(Ce)などの希土類元素では、空間的に非常に原子核に近い軌道にある4f電子が不対電子となり、磁性を担う。   [4] c-f混成 伝導電子(conduction electron)とf電子(f-electron)とが混ざり合う効果や、混ざり合った状態、あるいは単に伝導電子とf電子との相互作用などを指す。磁気秩序、近藤効果、重い電子状態などのさまざまな現象は、これに端を発する。   [5] 相図 温度、圧力、組成などの関数として物質がどのような相・状態にいるのかを示す状態図。   [6] 強相関電子系化合物 電子間の相互作用が強い物質のこと。この性質が顕著に現れたものに、高温超伝導体、重い電子状態などがあり、物性研究の大きな一分野を成す。   [7] 大型放射光施設「SPring-8」 理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す施設。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来する。放射光(シンクロトロン放射)とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する細くて強力な電磁波のこと。SPring-8では、遠赤外線から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光が得られるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。   [8] リフシッツ転移 結晶構造が変わらず、電子構造が変化する特殊な転移。熱力学的な相転移([10]参照)とは趣を異にする。   [9] ドニアック相図(Doniach phase diagram) 磁性や重い電子状態を示す化合物において、c-f混成の強さを横軸に、温度を縦軸に取った相図で、c-f混成は等方的に扱われる。1977年にS.ドニアック博士が提案して以来、約50年にわたり用いられてきた。一般に、c-f混成を強くすると、磁性が消え、量子臨界点を超えて非磁性の重い電子状態に移行する。量子臨界点付近では、非自明な超伝導などの風変りな現象が数多く報告されている。   [10] 相転移 磁場や温度、圧力などの外場(外的要因)によって、別の状態へ移行すること。エネルギーの変化の仕方により、1次相転移と2次相転移がある。水の状態変化は1次相転移、反強磁性秩序などは2次相転移に分類される。   [11] 直方晶 七つの結晶系の一つ。直方体で、縦、横、高さの各辺の長さが異なる。それぞれの軸方向は、a軸、b軸、c軸方向としている。   [12] 角度分解光電子分光(ARPES) 単結晶に光を照射し、光電効果で生じた電子の強度とエネルギーを、結晶との方位を変えながら調べる手法。これにより、固体中の電子が持つエネルギーと運動量ベクトルの関係、すなわちバンド構造を直接知ることができる。ARPESはAngle-Resolved Photoemission Spectroscopyの略。   [13] 遍歴性 外殻電子は、その占有軌道の波動関数の空間分布から、所属していた原子近傍に局在するか、結晶中を遍歴する伝導電子と成るかで、大きく二つに分類される。Ceの4f電子は典型的に局在的であるが、わずかに遍歴性も備える。   [14] フェルミエネルギー、フェルミ面 電子を、波数空間上でエネルギーの低い状態から順に詰めたときに、占有する状態と占有しない状態とを分ける境界面(フェルミ面)およびそのエネルギー(フェルミエネルギー)。電子は、統計性の違いからフェルミ粒子に分類される。   [15] 重い電子状態 電子の見かけの質量(有効質量)が100~1,000倍にも増強したように振る舞う異常な金属状態。Ceやイッテルビウム(Yb)、ウラン(U)化合物などで見られる。   [16] 粒子性と波動性 電子のような量子力学的な粒子は、粒子としての性質とともに、波としての性質を持つ。物質の示す性質に深く関わり、量子力学の基本原理の一つである不確定性原理に端を発する。   研究支援 本研究は、広島大学放射光科学研究所のビームラインBL-1、BL-7、BL9A(課題番号:13-A-2、13-B-38、14-A-3、14-A-5、15-A-2、16AG-002、17AG-007、19BG002、21AG003)、SPring-8にある台湾ビームラインBL12XU、BL12B2(課題番号:2013A4251、2013A4255(NSRRC課題番号:2012-3-011))を用いて行われました。   【理化学研究所】強相関電子系物質の相図におけるパラダイムシフト_HP.pdf(650.3 KB) 掲載ジャーナル:Physical Review Letters 研究者ガイドブック(島田 賢也 教授)   発表者・機関窓口 <発表者>※研究内容については発表者にお問い合わせください。 理化学研究所放射光科学研究センター物理・化学系ビームライン基盤グループ 客員研究員 山岡人志(ヤマオカ・ヒトシ)   富山県立大学工学部教養教育センター 准教授 谷田博司(タニダ・ヒロシ)   広島大学放射光科学研究所 助教(研究当時) アイケ・シュヴィア(Eike F. Schwier) 助教(研究当時) シブ・クマール(Shiv Kumar) 技術専門職員 有田将司(アリタ・マサシ) 教授 島田賢也(シマダ・ケンヤ) (同大学放射光科学研究所所長)   関西学院大学 大学院生(研究当時) 山本義哉(ヤマモト・ヨシヤ) 教授 水木純一郎(ミズキ・ジュンイチロウ)   高知大学 大学院生(研究当時) 田島史郎(タジマ・フミサト) 大学院生(研究当時) 小野寺健太(オノデラ・ケンタ) 教授 西岡孝(ニシオカ・タカシ)   <機関窓口> 理化学研究所広報部報道担当 Tel: 050-3495-0247 Email: ex-press@ml.riken.jp   富山県立大学事務局教務課情報研究係 Tel: 0766-56-7500 Email: johokenkyu@pu-toyama.ac.jp   広島大学財務・総務室広報部広報グループ Tel: 082-424-4518 Email: koho@office.hiroshima-u.ac.jp   学校法人関西学院広報部企画広報課 Tel: 0798−54−6873 Email: kg-koho@kwansei.ac.jp   高知大学広報・校友課 Tel: 088-844-8643 Email: kh13@kochi-u.ac.jp

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    能登半島地震の発生源となった沿岸海底活断層 世界最長級の地震隆起を引き起こしたことを解明

    本研究成果のポイント 2024年1月1日発生の能登半島地震による海岸隆起(※1)の分析 地震で海岸の地面が持ち上がる現象を解析し、世界最長級であることを示しました。 能登半島沖の海底活断層(※2)の連続分布の確認 海底にある活断層が連続的に分布することを明らかにし、隆起量の差異は海底活断層と海岸線の距離が主な要因であることを示しました。 海底活断層の長期活動履歴解明と防災への応用 活動周期や変位速度など長期的な活動履歴を明らかにするとともに、他沿岸域での活断層調査・地図化により、防災計画への応用を目指します。   概要 2024年1月1日に発生した能登半島地震(マグニチュード7.5)により、能登半島北部では顕著な地盤の隆起が観察されました。本研究は、この隆起が能登半島北岸に沿って並走する海底活断層の活動によって生じたことを、隆起海岸の地図化、隆起量の計測、および海底地形の分析を通じて明らかにしたものです。従来の津波・地震ハザード評価では十分に考慮されてこなかった沿岸域の海底活断層について、変動地形学的手法により具体的に示した点で、新たな視座を提供するものです。 また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けております。   著者:Hideaki Goto、 Tomoru Yamanaka、 Tomohiro Makita、 Yoshiya Iwasa、 Takuro Ogura、 Kyoko Kagohara、 Yasuhiro Kumahara、 Yasuhiro Suzuki、 Nobuhisa Matta、 Tatsuto Aoki、 Wataru Mori、 Kenta Haranishi、 Takashi Nakata タイトル:Coast uplifted by nearby shore-parallel active submarine faults during the 2024 Mw 7.5 Noto Peninsula earthquake 掲載雑誌:Geomorphology、493巻、 110069 DOI: https://doi.org/10.1016/j.geomorph.2025.110069 掲載日:15 January 2026(オンライン掲載日:30 October 2025)   背景 日本の沿岸部は、これまで繰り返し地震や津波の被害を受けてきました。強い揺れや津波に加え、地震に伴う海岸の隆起や沈降などの地形変化は、漁港・道路・護岸といった沿岸インフラや地域の生業に長期的な影響を及ぼします。そのため、こうした変化の発生メカニズムを解明することが重要です。 2024年1月1日に発生した能登半島地震(マグニチュード7.5)は、約120年間の観測史上、沿岸域で発生した最も大きな直下型地震でした。強い震動に加えて津波の発生や海岸環境の急激な変化など、多岐にわたる被害が報告されています。本地震は、沿岸活断層がもたらす地形変化や被害の多様性、そして半島地域が有する特有の災害脆弱性を示す代表的な事例といえます。 日本列島は長い海岸線をもち、沿岸域に人口や社会基盤が集中しています。能登半島と同様の環境をもつ地域は全国に多数存在します。したがって、今回の地震から得られた地形学的・測地学的・地理学的な新知見は、今後の沿岸域における災害想定や防災・減災政策の検討に直接的に役立つことが期待されます。   研究成果の内容 〈研究方法〉 広島大学大学院人間社会科学研究科の後藤秀昭教授を中心に、博士課程前期の牧田智大氏、千葉県立中央博物館の山中蛍研究員、福岡教育大学教育学部の岩佐佳哉講師、兵庫教育大学大学院学校教育研究科の小倉拓郎准教授、山口大学教育学部社会科教育講座の楮原京子准教授、岡山大学学術研究院教育学域(社会科教育)の松多信尚教授、金沢大学人間社会研究域地域創造学系の青木賢人准教授らで構成される研究チームは、2024年1月1日の能登半島地震の発生直後から、空中写真を用いて隆起海岸の詳細な地図化を行いました。あわせて、現地での観察や記録、隆起量の精密な計測を実施しました。さらに、海底地形データや地層探査記録を解析し、沿岸近傍に分布する海底活断層の位置と形状を明らかにしました。   〈主な成果〉 地震に伴い、能登半島の北岸では明瞭な地盤の隆起が確認されました。一方で、七尾湾や富山湾では隆起は認められませんでした。隆起によって新たに陸化した面積は約4.4平方キロメートル、隆起域の延長は約100キロメートルに及びます。陸化面積は、1804年に日本海で発生した象潟(きさかた)地震(図1)と同程度ですが、その延長は世界最長級であることが明らかになりました。 海岸線に沿って510地点で隆起量を計測した結果、隆起量は0.1〜5.2メートルで場所により異なりました(図2)。大きな隆起は北西端の猿山岬付近および北岸の鞍崎周辺で観測され、両側に向かって隆起量が減少する「山形」の分布を示しました。 さらに、海底地形データおよび地層探査データの解析から、隆起をもたらした活断層が海岸線にほぼ平行して連続的に延びていることが明らかとなりました(図2)。隆起量が特に大きかった場所は、断層線に近接する陸域に集中しており(図2,3)、南に傾斜した逆断層の活動によって隆起量分布が説明できることが確認されました。これらの特徴から、今回の地震は能登半島で過去数十万年間に繰り返し発生してきた地震の再来であることが示唆されます。   〈成果の優位性・社会/暮らしへの影響〉 2024年1月1日の能登半島地震は、沿岸域で発生した観測史上最大規模の内陸地震です。本研究では、海岸線のすぐ沖に位置する海底活断層の活動によって生じた海岸地形の変化を精密に捉えました。これは、地震・津波ハザード研究に新たな視点をもたらす重要な成果といえます。 従来、海岸線に極めて近い海底活断層は調査が難しく、十分に注目されていませんでした。本研究では、海底地形データの解析と陸上での地形調査を組み合わせることで、これらの断層の動きを初めて明瞭に捉えることに成功しました。この点で、手法的にも大きな優位性を有しています。 さらに、本研究成果は、地形変化による被害の拡大を抑えるための早期警戒体制の整備や、地域防災計画の見直しに直接貢献するものです。海岸部の隆起・沈降は、沿岸住民の津波避難行動、道路・防波堤・港湾施設などのインフラ設計、さらには耐震・耐津波性能評価に直結します。今後、沿岸自治体や関係機関が「海岸線近傍での断層活動の可能性」を防災計画に反映させる必要性を示す重要なメッセージとなります。   今後の展開 今後の研究では、本論文で示された海底活断層が2024年の地震時に実際に活動したことを示す直接的な証拠を、海底面のずれや変形の観測によって検証する必要があります。また、この活断層の活動周期や変位速度など、長期的な活動履歴を明らかにすることも重要な課題です。 さらに、他の沿岸域においても、海岸線近傍に存在する海底活断層の有無を調査し、地図化を進めることが求められます。従来の海底活断層調査は、主に海底下の地層構造に基づいて実施されてきましたが、陸上の活断層研究と同様に、海底地形の詳細な判読を組み合わせることで、これまで知られていなかった活断層の発見や、歴史地震の震源特定につながる可能性があります。   参考資料 図1海岸隆起を起こした地震(A)と2024年1月1日能登半島地震と余震(B) 図22024年地震の隆起量と海底活断層の分布 図3能登半島を北から3Dで見た様子(2024年隆起量と海底活断層)   用語解説 ※1)海岸隆起: 地震によって地盤が持ち上がる現象。海岸では、地震前に海水面の影響でできた痕跡(波の跡や海藻の付着跡など)が、地震後に海面より高い位置に現れることで、隆起の様子を確認できる。不動とみなせる海水面を基準に、これらの痕跡との高さの差を比べることで、地震による隆起量を知ることができる。   (※2)海底活断層: 海底にあり、過去に何度も動き、将来も活動すると考えられる断層。沿岸の近くに分布する場合、断層面が陸地の下まで延びていることもあり、地震のときには津波だけでなく強い揺れをもたらすことがある。   報道発表資料(772.46 KB) 掲載ジャーナル:Geomorphology 研究者ガイドブック(後藤 秀昭 教授)   【お問い合わせ先】 〈研究に関すること〉 広島大学大学院人間社会科学研究科教授後藤 秀昭 Tel:082-424-6658Fax:082-424-0320 E-mail:hgoto@hiroshima-u.ac.jp   千葉県立中央博物館展示課研究員山中 蛍 Tel:043-265-3111 E-mail: t_yamanaka@chiba-muse.or.jp   福岡教育大学教育学部講師岩佐 佳哉 Tel:0940-35-1299 E-mail:iwasa-y@fukuoka-edu.ac.jp   兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授小倉 拓郎 Tel:0795-44-2143 E-mail:togura@hyogo-u.ac.jp   山口大学教育学部社会科教育講座准教授楮原 京子 Tel:083-933-5325 Fax:083-933-5325 E-mail:k-kago@yamaguchi-u.ac.jp   岡山大学学術研究院教育学域(社会科教育)教授松多 信尚 Tel:086-251-7618 E-mail:matta@okayama-u.ac.jp   金沢大学人間社会研究域地域創造学系准教授青木 賢人 Tel:076-264-5330Fax:264-5362 E-mail:kentaoki@staff.kanazawa-u.ac.jp   〈報道に関すること〉 広島大学広報室 Tel:082-424-6762 Fax:082-424-6040 E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp   千葉県立中央博物館 管理部企画調整課 Tel:043-265-3111 E-mail:kouhou_cbm@mz.pref.chiba.lg.jp   福岡教育大学経営政策課広報担当 Tel:0940-35-1205 E-mail:kouhou@fukuoka-edu.ac.jp   兵庫教育大学広報室 Tel:0795-44-2431 E-mail:office-koho@ml.hyogo-u.ac.jp   山口大学 広報室 Tel:083-933-5007Fax:083-933-5013 E-mail:sh011@yamaguchi-u.ac.jp   岡山大学 総務部広報課 Tel:086-251-7292 E-mail:www-adm@adm.okayama-u.ac.jp   金沢大学人間社会系事務部総務課 Tel:076-264-5466 E-mail:n-somu@adm.kanazawa-u.ac.jp

    • 医療/ヘルスケア
    2026.01.19
    • 医療/ヘルスケア
    血圧上昇に関わる分子が膀胱がんを進行させる可能性があることが明らかに -高血圧治療薬が膀胱がん治療に役立つ可能性-

    本研究成果のポイント 血圧調整を行う「AGTR1」という受容体が多いほど、膀胱がんが進行しやすく再発しやすいことを発見しました。 高血圧の治療に広く使われているアンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)が、「AGTR1」の発現が高い膀胱がんの進行を抑制し得る可能性を示しました。   概要 広島大学の研究チーム(広島大学 原爆放射線医科学研究所 疾患モデル解析研究分野 神沼 修教授、大学院生の山中 亮憲さんら)は、血圧調整に関わる遺伝子と膀胱がんの進行の関係を調べました。その結果、血圧調整の役割をもつ受容体「AGTR1」の発現が高い膀胱がんの患者さんは、治療成績が良くないことを見出しました。また「AGTR1」の発現が高い膀胱がん細胞は、血圧の上昇に作用するホルモンである「アンジオテンシンII(AngII)」の影響下で進行が早まる一方、高血圧の薬であるARBにより抑えられる可能性を示しました。この研究成果は、広島大学から論文掲載料の助成を受け、日本高血圧学会が出版する国際学術誌『Hypertension Research (Q1)』に掲載されました。   論文タイトル Angiotensin II Type 1 Receptor Signaling Promotes Bladder Cancer Progression and Its Inhibition by Losartan   著者 Ryoken Yamanaka, Kento Miura, Norimasa Yamasaki, Sawako Ogata, Megmi Nakamura, Toshiya Inaba, Anarkhuu Bold-Erdene, Uyanga Enkhbaatar, Fatemeh Beygom Mirkatouli, Shuka Miura, Naohisa Hosomi, Kohei Kobatake, Kenshiro Takemoto, Yuki Kohada, Ryo Tasaka, Tomoya Hatayama, Kazuma Yukihiro, Hiroyuki Shikuma, Kyosuke Iwane, Nobuyuki Hinata and Osamu Kaminuma* *:責任著者 DOI :10.1038/s41440-025-02535-y   背景 私たちの体の中では、さまざまなホルモンシステムが複雑かつ多様な働きをしています。その中のひとつ、「レニン-アンジオテンシン系」は、血圧や体液の調整に関わるホルモンシステムです。血圧が下がると、「レニン-アンジオテンシン系」により「アンジオテンシンII(AngII)」というホルモンがつくられ、これが細胞の表面にある「AGTR1」という受容体と合わさることで、血管を締めたり、水分や塩分をためる働きをして血圧を上昇させます。 この「AGTR1」の働きが、乳がんや肝臓がんなどを進行させる可能性が近年報告され始めています。実際に、膀胱がんの治療において、レニン-アンジオテンシン系に作用して高血圧を治療する薬剤を内服している患者さんでは、治療成績が良いことを示唆する臨床データが報告されていました。 しかし、「AGTR1」が本当に膀胱がんの進行に関わるのかは、その分子メカニズムも含め明らかにされていませんでした。   研究成果の内容 今回の研究では、さまざまながん患者さんの遺伝子情報を網羅した大規模データベースを用いて解析しました。「AGTR1」の発現が高い膀胱がんの患者さんは、発現が低い患者さんに比べて全生存期間が短いことが明らかとなりました。また、広島大学病院の患者さんの手術検体を用いた解析を行った結果、「AGTR1」の発現が高い膀胱がんの患者さんは、手術後の再発率が高いことがわかりました(図1)。 「AGTR1」の発現が高い膀胱がん細胞を人工的に作ったところ、それだけではがん細胞の挙動に変化はありませんでした。しかし、「AGTR1」に結合する血圧上昇ホルモンの「アンジオテンシンII(AngII)」を作用させると、「AGTR1」発現が低い膀胱がん細胞には影響がなかったのに対し、「AGTR1」発現が高い細胞は進行性が高まることがわかりました(図2)。   この「アンジオテンシンII(AngII)」と「AGTR1」の結合をブロックするアンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)という薬があり、既に高血圧治療に広く用いられています。そこで、ARBの一種である「ロサルタン」を作用させて同様の実験を行ったところ、「アンジオテンシンII(AngII)」による膀胱がん細胞の進行性が高まるのを抑えることができました。また、「AGTR1」に「アンジオテンシンII(AngII)」が結合することによって、細胞内の蛋白質リン酸化酵素ERKを介するシグナル伝達経路や、上皮間葉転換、エネルギー代謝に関わる経路が活性化され、それらが膀胱がん細胞の進行性に大きく関わっていることが明らかになりました。 次に、この膀胱がん細胞を皮下移植したマウスモデルを作って調べたところ、「AGTR1」発現の高いがん細胞では、それが低い細胞に比べて腫瘍が増大することがわかりました。また、これらのマウスに「ロサルタン」を内服させることによって、「AGTR1」を高発現する膀胱がん細胞の腫瘍増大が抑制される傾向がみられました(図3)。   今後の展開 「ロサルタン」をはじめとするARBは、既に高血圧治療に広く用いられている安全安価な薬剤です。膀胱がん細胞における「AGTR1」の発現量を早期に調べることで、患者さんの治療成績を向上できる可能性や、「AGTR1」の発現が高い患者さんに対する新たな治療薬として、ARBが役立つ可能性についての検証が期待されます。今後は、前向き研究に基づいた患者さんのデータ集積を行うことが重要となります。   参考資料 レニン-アンジオテンシン系:血圧や体液量の調節に関わるホルモンシステム。 AGTR1:血圧上昇ホルモンであるAngIIの受容体。 ARB:AngIIとAGTR1の結合をブロックすることで血圧上昇を抑制し、高血圧治療に使用される薬剤。ロサルタン、テルミサルタンなど。 ERK:細胞が生存、増殖するための細胞内シグナルを伝える蛋白質リン酸化酵素。 上皮間葉転換:上皮細胞が形質転換して間葉系細胞(結合組織など)の特徴を獲得するプロセス。細胞の接着性が低下し、運動性が高まることで、がん細胞の周辺組織への拡がり(浸潤)や、血液・リンパ流を介した他臓器への転移(遊走)に関わる。   図1:広島大学病院で膀胱がん摘出手術を受けた55人の患者さんのがん組織を調べたところ、34人(61.8%)のがんがAGTR1を高発現していました(A)。また、AGTR1の発現が高い患者さんのグループは、術後の再発、転移までの期間が有意に短い結果となりました(B)。 図2:AGTR1を高発現する膀胱がん細胞を人工的に作り、浸潤能(周囲組織へ広がっていく能力)を調べました。AGTR1の発現が高い細胞(◆)では、AngIIを投与すると浸潤能が高まることが明らかになりました。 図3:AGTR1を高発現する膀胱がん細胞をマウスの皮下に移植し、ロサルタンの効果を調べました。ロサルタンを投与したマウス(●)では、投与していないマウス(◆)に比べ、腫瘍の増大が抑制される傾向がみられました。   報道発表資料(333.07 KB) 掲載ジャーナル:Hypertension Research 研究者ガイドブック(神沼 修 教授)   【お問い合わせ先】 広島大学原爆放射線医科学研究所疾患モデル解析研究分野 教授神沼修 Tel:082-257-1556FAX:082-255-8339 E-mail:okami@hiroshima-u.ac.jp

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