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動いて治す~痛みや障害と基本的動作能力の関係を科学的に解明する~

研究テーマ

  • 膝痛に対する効果的なエクササイズプログラムの開発
  • マーカーレスモーションキャプチャを使った高齢者の健康的な歩き方

研究内容

目標・狙い

  • ●身体運動が体の痛みや障害の緩和に及ぼす効果とその限界を探る
  • ●医療、介護、健康に関する科学と社会の橋渡しとなる学際的研究を推進する
  • ●科学的根拠に基づく健康増進や障害予防の方法論を確立し、社会実装を目指す

 

概要

 

 

①膝痛に対する効果的なエクササイズプログラムの開発

  • ●膝痛は中高齢者の歩行やADLを悩ませる症状の一つであり、体重増加や運動不足により発生することも多い。
  • ●この研究では、自分自身で膝痛を治すエクササイズの効果検証に取り組んでいる。
  • ●筋力トレーニングや有酸素運動などのエクササイズは、膝痛の緩和が期待できる方法の一つである。そのため、膝痛が悪化する前から実施されることが望ましい。しかしながら、全ての膝痛者にエクササイズが有効であるとは限らない。また、有効だとしてもエクササイズの継続は容易でない。
  • ●このような背景を踏まえ、病院及び地域をフィールドに保存療法や運動教室(座学及びエクササイズ)を実施し、そこで計測したデータをもとに、エクササイズの効果や、効果のある人・ない人の違いを科学的な側面から分析してきた。
  • ●また、ストレスや不満も膝痛の要因の一つであることから、身体的なアプローチに加え、心理的な側面に対するアプローチについても取り組んでいる。現在は、痛みに対する認識や考え方を修正する「痛み教育」を実施し、膝痛が緩和した人と緩和しなかった人の特徴の違いを調べている。
  • ●将来的には、アプリを使った痛み教育コンテンツの開発、最適なエクササイズの選択を可能にするアルゴリズムの作成、人工筋を使ったウォーキングエクササイズ、無痛感覚を錯覚させるVRトレーニングを扱う予定である。

 

②マーカーレスモーションキャプチャを使った高齢者の健康的な歩き方

  • ●人間にとって歩行は移動するための重要な手段であり、歩行の障害はADL(日常生活活動)の悪化やQOL(生活の質)の低下を招く。しかし、加齢による筋機能や関節機能の低下により、歩行の際に痛みが発生したり、転倒する高齢者は多い。
  • ●この研究では、これまでに様々な年齢の人の歩行計測を行い、年齢ごとの歩き方の違い、痛みが発生しやすい歩き方とそうでない歩き方、転びやすい歩き方とそうでない歩き方の違いについて調べている。
  • ●従来、歩行評価は肉眼観察やパフォーマンステスト(例:5m歩行)を参考にして行っていたが、本研究では、赤外線カメラ(※)を使った3Dマーカレスモーションキャプチャシステムを用いたデータに基づいた科学的な歩行評価を行う。
  • ●また、集めたデータをもとに、歩行の速度、歩幅、左右差、変動性から歩行年齢を算出し、地域の歩行教室などで活用している。
  • ●今後さらに歩行計測のデータベースを充実させ、将来的に痛みが出やすい歩き方や、転倒しやすい歩き方について導き出す。併せて、現在の歩き方から将来の膝痛発生リスク、転倒発生リスクを予測するシステムの開発を目指す。

(※)株式会社システムフレンドとの共同研究で精度を検証している。歩行中の関節角度等を手軽に計測できる。

 

連携したい企業

  • ●シューズメーカー
  • ●トレーニング器具メーカー
  • ●美容・健康器具メーカー
  • ➡アイデア出し、商品の効果検証・育成のサポート等

 

  • ●地方自治体
  • ●フィットネスクラブ
  • ●高齢者を対象とした福祉施設
  • ➡科学的根拠に基づいた、オフライン・オンラインエクササイズプログラムの提供等

 

  • ●福祉向けのシステム開発企業
  • ➡人工知能(AI)をつかった歩行解析、身体運動の改善を「見える化」するための動画解析、高齢者の運動継続を支援するアプリの共同開発

 

本研究の優位性

  • ●データに基づき健康によい体の動かし方を科学的に解明できる
  • ●病院や地域とのつながりがあるため、実証フィールドを有している
  • ●エクササイズに関する商品の信頼性、妥当性、有効性が検証できる

 

論文

膝痛や変形性膝関節症とエクササイズに関する論文

  • ●Tanaka R, Hirohama K, Kurashige Y, Mito K, Miyamoto S, Masuda R, Morita T, Yokota S, Sato S. Prediction models considering psychological factors to identify pain relief in conservative treatment of people with knee osteoarthritis: A multicenter, prospective cohort study. Journal of Orthopaedic Science 25:618-626 2020
  • ●Tanaka R, Hayashizaki T, Taniguchi R, Kobayashi J, Umehara T. Effect of an intensive functional rehabilitation program on the recovery of activities of daily living after total knee arthroplasty: A multicenter, randomized, controlled trial. Journal of Orthopaedic Science 25:285-290 2020
  • ●Tanaka R, Hirohama K, Ozawa J. Can Muscle Weakness and Disability Influence the Relationship between Pain Catastrophizing and Pain Worsening in Patients with Knee Osteoarthritis? A Cross-sectional Study. Brazilian Journal of Physical Therapy 23:266-272 2019
  • ●Tanaka R, Umehara T, Kawabata Y, Sakuda T. Effect of Continuous Compression Stimulation on Pressure-Pain Threshold and Muscle Spasms in Older Adults with Knee Osteoarthritis: A Randomized Trial. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics 41:315-322 2018
  • ●Tanaka R, Ozawa J, Kito N, Moriyama H. Effects of exercise therapy on walking ability in individuals with knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Clinical Rehabilitation 30(1) 36-52 2016
  • ●Tanaka R, Ozawa J, Kito N, Moriyama H. Does exercise therapy improve the health-related quality of life of people with knee osteoarthritis? A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Journal of Physical Therapy Science 27(10) 3309-3314 2015
  • ●Tanaka R, Ozawa J, Kito N, Moriyama H. Effect of the Frequency and Duration of Land-based Therapeutic Exercise on Pain Relief for People with Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Journal of Physical Therapy Science 26(7) 969-975 2014
  • ●Tanaka R, Ozawa J, Kito N, Moriyama H. Efficacy of strengthening or aerobic exercise on pain relief in people with knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clinical Rehabilitation 27(12) 1059-1071 2013

 

マーカーレスモーションキャプチャの精度検証に関する論文

  • ●Tamura H, Tanaka R, Kawanishi H. Reliability of a markerless motion capture system to measure the trunk, hip and knee angle during walking on a flatland and a treadmill. Journal of Biomechanics 109:109929 2020
  • ●Tanaka R, Ishikawa Y, Yamasaki T, Diez, A. Accuracy of classifying the movement strategy in the functional reach test using a markerless motion capture system. Journal of Medical Engineering and Technology 43:133-138 2019
  • ●Tanaka R, Ishii Y, Yamasaki T, Kawanishi H. Measurement of the total body center of gravity during sit-to-stand motion using a markerless motion capture system. Medical Engineering & Physics 66:91-95 2019
  • ●Tanaka R, Takimoto H, Yamasaki T, Higashi A. Validity of time series kinematical data as measured by a markerless motion capture system on a flatland for gait assessment. Journal of Biomechanics. 11:71:281-285 2018
  • ●Tanaka R, Kubota T, Yamasaki T, Higashi A. Validity of the total body center of gravity during gait using a markerless motion capture system. Journal of Medical Engineering and Technology 30:1-7 2018

 

 

外部資金の獲得状況

2020年

  • ●科学研究費助成事業 基盤C (研究代表)
  • ●共同研究(研究代表)、2件
  • ●受託研究(研究代表)、1件

2019年

  • ●共同研究(研究代表)、1件
  • ●受託研究(研究代表)、1件

2018年

  • ●中冨健康科学振興財団 研究助成(研究代表)
  • ●三井住友海上福祉財団 研究助成(研究代表)
  • ●共同研究(研究代表)、1件

2017年

  • ●共同研究(研究代表)、1件

2016年

  • ●共同研究(研究代表)、1件

2015年

  • ●国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 研究助成(研究代表)
  • ●共同研究(研究代表)、1件

2014年

  • ●科学研究費助成事業 若手B(研究代表)

 

研究者からのメッセージ

  • ●理学療法士として20年以上の臨床経験があり、臨床研究、共同研究、受託研究の実績も豊富です。エクササイズの効果を最大限に引き出すツールの共同開発や、既存製品の応用やアレンジに関心があります。また、ウェアラブルデバイスやAIなどを使った身体運動の「見える化」にも興味があります。自治体、セラピスト、トレーナー、運動指導者が抱える現場の問題の解決につながる産官学連携を期待しています。

 

 

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田中 亮

RYO TANAKA

広島大学
大学院人間社会科学研究科 准教授
スポーツセンター 研究員

1998年 広島大学医学部保健学科卒業、理学療法士免許取得。
2010年 同大学院社会科学研究科博士課程後期修了。博士(マネジメント)。
1998年 広島赤十字・原爆病院、理学療法士。
2006年 広島国際大学助手。
2007年 同大学助教。
2012年 同大学講師。
2018年 広島大学大学院 准教授。
2020年 同大学スポーツセンター 研究員。
専門はリハビリテーション科学。