目標・狙い
ゼオライトの物性を合成段階から意図的に設計できる手法の開発
想定される市場・製品・産業分野
- ●ゼオライト製造、化学プロセス分野(触媒・分離)、自動車を代表とする排気ガス処理、無機オリゴマーの分析による品質評価
概要
- ●分子サイズの細孔を持つゼオライトはイオン交換特性、吸着特性、触媒特性を示すことから様々な産業で使用されている工業材料である。ゼオライトの必要な吸着特性や触媒性能を発揮させるためには、人工的に合成されたゼオライトは必須であるが、ゼオライトの合成は高温、高圧、高アルカリ条件下での水熱処理によって行われ、その構築には多段階または複数の化学プロセスが関わっているため、そのメカニズムの解明は現在でも困難である。この問題は、人工合成的にゼオライトの性質を直接的に設計するためにボトルネックとなっている。
- ●本技術ではゼオライト水熱合成過程に存在する中間体(アルミノシリケートオリゴマー)を質量分析法および核磁気共鳴法によって直接観察することで、その構築に関わる化学種を明らかにできる。
- ●既存の手法では、液中のオリゴマーの平均化された情報しか得られないが、本測定法では個々のオリゴマーの相対量や構造を解析可能であり、分子レベルでのメカニズム推定が可能である。
- ●このようにして得られた形成メカニズムに関する基礎知見をフィードバックすることで、合成中間体の構造を意識したより合理的な合成手法の選定が可能となる。また、形成メカニズムに基づいたゼオライトの物性制御によって、既存物性を凌駕したより高性能なゼオライト材料の合成もより効果的に進めることができる。
- ●本技術で用いる液相の無機オリゴマーの分析手法はゼオライトの中間体に限らず、他の金属酸化物元素にも適用可能である。
本研究の優位性
- ●既存の手法では平均化された情報しか得られないのに対し、本技術では水熱合成過程で生じる無機中間体一つ一つの存在量と構造を知ることができる。
- ●既存のゼオライト合成は、経験則的な知見に基づいて合成の最適化が進められてきたが、本技術の適用によって、分子レベルの現象に基づいた合理的な合成戦略を立てることが可能になる。
- ●ゼオライトの構成元素(シリカ、アルミナ)に限らず、液中に存在する様々な無機酸化物成分の分析が可能である。
本技術の応用例
- ●高耐久性ゼオライト合成技術の開発
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- 【概要】
- ・既存のゼオライト材料が適用できなかった過酷な条件下でも能力が維持できる高耐熱・耐水熱安定性を持つ触媒・吸着材を開発した。この高耐久性ゼオライトは、排ガス浄化やアルコール転換反応における高耐久な触媒材料として有望であることを見出した。
- 【特許】
- ・2016-169004, 佐野庸治,定金正洋,津野地直,高光泰之,リンを含有するCHA型ゼオライトおよびその製造方法,国立大学法人広島大学,東ソー株式会社,2016年08月31日(出願)
- 【論文】
- ・“Formation pathway of AEI zeolites as a basis for a streamlined synthesis” Chem. Mater., 32 60-74, 2020
- ・Phosphorus modified small-pore zeolites and their catalytic performances in ethanol conversion and NH3- SCR reactions” Appl. Catal. A, 575 204-213, 2019.
- ・“Stepwise Gel Preparation for High-Quality CHA Zeolite Synthesis: A Common Tool for Synthesis Diversification” Cryst. Growth Des., 18 5652-5662, 2018.
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- 【外部資金獲得状況】
- ・若手研究20K15090「水熱合成法および二次元材料を駆使したゼオライトの構造設計と触媒特性制御」
- 【受賞状況】
- ・第34回ゼオライト研究発表会 若手優秀講演賞
研究者からのメッセージ
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