背景
- ●FIT制度導入により、木質バイオマスの発電量は増加する一方、発電の際に生じる燃焼灰の処分費は発電売上に対して約8%課せられており、採算性が非常に悪い。
- ●木質燃料(建築廃材は含まない)を使用しているボイラー発電施設から排出された燃焼灰の中で、有効利用可能なものは産業廃棄物とみなされないため、燃焼灰の有効利用は循環型社会の構築のために必要不可欠である。
研究内容
1. 燃焼灰の結晶構造を分析
- ●ボイラー灰、サイクロン灰、バグフィルター灰のマスバランスとカリウム割合を分析。その結果、粒子径の小さいバグフィルター灰のカリウム濃度が高く、燃焼灰のカリウム濃度は粒子径に依存していた。
- ●燃焼灰の結晶構造を解析した結果、燃焼灰は肥料として有効なKCl、CaCO3、K2CO3を含んでいた。
2.燃焼灰の肥料としての有効性検討
- ●カリウム濃度の高い燃焼灰を採取するため、非常に粒子径の小さい燃焼灰が得られる分級システムを設計。実証試験において、カリウム濃度35~40%の燃焼灰を回収することに成功した。
- ➢ 分級技術により、選択的に微細な燃焼灰を得ることで、燃焼灰のカリウム成分を濃縮可能とした。
- ●燃焼灰は重金属(Pb、Cr、Hg)を含んでおり、Pb、Hgは分級することで一緒に濃縮されてしまう可能性があるが、化成肥料の公定規格に対して十分低いため、肥料として使用可能である。
- ●採取した燃焼灰の成分を溶出試験したところ、燃焼灰のカリウムは水溶性とク溶性の両方を示しており、肥料として有効である。
3.アドオン型プラントによるカリウム濃縮実証
- ●従来の設備を活用したアドオン型プラントを作成して実証実験を行った。
- ●その結果、燃焼灰のカリウム成分の濃縮を連続的に実現することに成功した。
本研究の優位性
- ●従来のプラントに分級プロセスを追設することにより、カリウム成分を濃縮した燃焼灰を採取することが可能である。
- ●燃料となる木質バイオマスや、採集した燃焼灰に、特別な処置を施す必要がない。
- ●1/4を輸入に頼っているKCl肥料の国内供給化へ繋がる。
想定される市場・産業分野
- ●バイオマスを燃焼、ガス化して発電や化学製品を生産している企業
- ●バイオマスを利用したボイラーや設備を扱っている企業
- ●肥料業界
企業への期待
- 工場規模での実効性が確認できており、様々なバイオマス発電設備に適用できる可能性があります。
- 燃焼灰処分費用の削減とSDGsへの貢献を同時に達成できる本技術を検討頂けると光栄です。
論文
- – Utilization of woody biomass combustion fly ash as a filler in the glue used for (2018)
- – plywood production, ADVANCED POWDER TECHNOLOGY, 31巻, 11号, pp. 4482-4490 (2020)
- – Existence Form of Potassium Components in Woody Biomass Combustion Ashes and Estimation Method of Its Enrichment Degree, ENERGY & FUELS, 32巻, 1号, pp. 517-524 (2018)
- – Utilization of incineration fly ash from biomass power plants for zeolite synthesis from coal fly ash by microwave hydrothermal treatment, ADVANCED POWDER TECHNOLOGY, 29巻, 3号, pp. 450-456 (2018)
- – Morphology of woody biomass combustion ash and enrichment of potassium components by particle size classification, FUEL PROCESSING TECHNOLOGY, 156巻, pp. 1-8 (2017)
研究者からのメッセージ
紹介した肥料への再資源化以外にも、合板製造用充填材、土壌改良用ゼオライトへの再資源化法についても研究しています。
上述の内容に関心のある方は、以下の窓口にお問い合わせください。