背景
- ● 不揮発性メモリには微細化・高密度化の物理的限界値(約1Tbit/inchi2)が存在するとされている。
- ● 各国の国家プロジェクトが、熱アシスト法など新たな技術によりその限界突破を図り、目標記録密度約5~10Tbit/inchi2を目指している。
本研究の優位性
- ● 単一分子で分極ヒステリシス(メモリ効果)を示す究極の微小誘電材料の開発に世界で初めて成功。
- ● メモリ材料として用いればHDDの記録密度を1000倍向上させる新たな強誘電メモリ素子の開発に成功。
概要
- ● 籠型形状分子のプレイスラー型ポリオキソメタレートに着目した。分子内部の中心から外れた上下2箇所にイオン安定サイトを有しており、そのどちらか1箇所に1つの陽イオンが包接されている(占有率は上下ともに50%)。
- ●イオン(Mn+)がどちらかの安定サイトに停止すると、分子分極が生じる。エネルギー障壁”U”に対して十分に低い温度域では
- イオンが移動できず、電場を印加することでイオンの移動を強制的に誘起できる。
- ● 籠型分子は一分子であり、室温下で分極ヒステリシスや自発分極を示す。この分子を「単分子誘電体」と名付けた。
- ● 上記性質により、イオン(Mn+)の位置によって1と0の情報を表現する仕組みである。
- ● 室温以上(<350K)で分極ヒステリシスを示すことから、早い段階での実用化が期待できる。
- ● 本系は単一分子で分極の履歴現象を示すことから, 新たな形態でのメモリ材料開発が可能となる。
- (例・ポリマーに分散させた状態など)
期待される用途
- 超高密度不揮発性メモリ(記録密度理論値:1Pbit/inchi2)
- 焦電性を利用した熱センサーや単分子アクチュエータなど
企業への期待
- 半導体・電子部品メーカー
- 電気機器メーカー
- 材料メーカー
本技術に関する知的財産権
- ● 発明の名称 :分子性金属酸化物クラスター、分子性金属酸化物クラスター結晶、分子性金属酸化物クラスター結晶凝集体、分子メモリ、結晶メモリ及び分子性金属酸化物クラスターへの分子分極形成方法
- – 特許番号 : 第6650138号
- – 出願人 : 広島大学
- – 発明者 : 西原禎文、加藤智佐都、井上克也
- ● 発明の名称 :マルチフェロイック材料及びそれを用いたメモリ
- – 特許番号 : 第6723602号
- – 出願人 : 広島大学
- – 発明者 : 西原禎文、丸山莉央、加藤智佐都、井上克也
- ● 発明の名称 : 電界効果トランジスタ及びメモリ装置
- – 出願番号 : 2019-118917
- – 出願人 : 広島大学
- – 発明者 : 西原禎文、早瀬友葉、藤林将、井上克也
論文
“Giant Hysteretic Single-Molecule Electric Polarisation Switching Above Room Temperature”, C. Kato, R. Machida, R. Maruyama, R. Tsunashima, X. –M. Ren, M. Kurmoo, K. Inoue, S. Nishihara, Angew. Chem. Int. Ed., 57(41), 13429-13432 (2018). Angew. Chem., 57(41), 13429-13432 (2018)
“Welcome to the single-molecule electret device”, S. Nishihara, Nature Nanotechnol., 15, 966-967 (2020).
外部資金の獲得状況
- ・科研費(基盤研究(B))
- ・科研費(挑戦的研究(開拓))
- ・JST, さきがけ
- ・JST,START
- ・JST,A-STEP
研究者からのメッセージ
「単分子誘電体」は、基礎研究から生まれた真に新しい物性材料であり、現在、社会実装に向けて取り組んでいます。この次世代単分子誘電体メモリにご興味があれば、ぜひご連絡ください。
上述の内容に関心のある方は、以下の窓口にお問い合わせください。