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シリカ系多孔質膜の開発と各種膜分離プロセスへの応用

研究テーマ

  • 水素、二酸化炭素、有機ガスの分離や有機混合溶液の分離に利用可能
  • 触媒と一体化して水素製造プロセスの反応促進に利用可能

研究内容

背景・狙い

  • ●高純度製品の生産、環境有害物質の除去といった分離操作は、化学工業において重要なプロセスである。
  • ●シリカ、チタニアなどの無機材料、および有機・無機ハイブリッド材料に着目し、評価技術の確立、透過・分離特性の検討を通じて、あらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行う。

 

 

研究の詳細

●膜分離法の種類 

分離する物質に対して、膜を制御する必要がある。

 

 

●シリカ系多孔質膜とは

  •  – 膜材料
  •  シリカ、チタニア、ジルコニアなど無機材料
  •  有機材料と無機材料のハイブリッド

 

  • – 分離対象
  •  ガス分離    :水素、アンモニア、二酸化炭素、有機ガス(プロパン・プロピレン)など
  •  浸透気化分離 :有機水溶液の脱水
  •  ナノ濾過   :有機溶媒系濾過、高温での濾過

 

  • – 特徴
  •  優れた耐熱性、耐溶媒性
  •  細孔径のナノチューニングが可能
  •  100 nm程度の薄膜製膜が可能
  •  反応触媒と複合化した触媒膜が可能
  •  シロキサン結合(Si-O-Si)から形成されるアモルファス構造のため、水素分子が優先的に透過可能なネットワーク構造

 

分子径は0.2nm~0.6nmに集約しており、非常に精密な成膜のサイズ制御が必要である。

 

 

  • ●シリカ系多孔質膜の作製法 ゾル‐ゲル法
  •  アルコキシシランを加水分解及び架橋反応させて作成したゾルをナノレベルで制御し、多孔質の器材のうえにコーティングして薄膜を形成する製膜法である。
  •  薄膜によって、透過性と分離性をコントロールする。

 

 

  • ●細孔径(シリカネットワーク)制御技術
  •  – シリカ膜の構造と機能を分子レベルで設計及び構築し、分離プロセスに応じたテイラーメイドな製膜を実現する。
  •  – 前駆体の構造や化学架橋を制御して分子スケールで細孔径をチューニングする。

 

●各種有機無機ハイブリッド膜の200℃における透過率の分子径依存性

  •  - オルガノシリカ膜のカーボン差による細孔径及び分離性の違いは、細孔径の小さい純シリカ膜(TEOS)は高い選択性を示し、
  •     細孔径の大きいオルガノシリカ膜(BTESE)は透過性が向上した。
  •  - 細孔径が大きくなると選択性は小さくなるが、分離性は失われず、分子径サイズの差が大きい分子間において十分に選択性を
  •   発現する。

 

 

応用例

1.次世代クリーンエネルギー 水素の分離精製

  •  ● シリカ/ニッケル膜(SiO2-NiO膜)で高透過性と高選択性が実現できる。
  •    - 水素透過率:1×10-5 m3m-2s-1kPa-1
  •    - 透過率比:(水素/窒素)は500倍以上
  •  ● 高温・水蒸気雰囲気で高い安定性(500℃,400kPa)である。

 

 

2.メタン水蒸気改質への水素分離膜の応用

  •  ● 水蒸気改質の反応場に型反応器を組み込み、生成ガスから水素のみを分離して系外に抽出した。
  •  ● 反応場の非平衡が維持され改質反応が促進して、平衡反応率を超える反応率となった。

 

 

3.プロピレン/プロパン分離へのFドープシリカ(F-SiO2)膜の応用

  • ●Fドープによりプロピレンが透過可能なルースな構造に変化し,細孔構造が均一化することで,近接混合物のプロピレンとプロパン分離で選択性が大きく向上した。

 

 

4.燃焼排気ガスからの地球温暖化ガス(二酸化炭素)分離回収

  • ● シリカ構造制御によるCO2(33nm)とN2(0.36nm)の高選択分離膜を開発した。

 

 

5.有機溶媒逆浸透による超省エネ分離

  • ●従来型蒸留法は最小仕事の1000倍以上のエネルギーが必要である。逆浸透法を用いることにより従来型と比較して1/10~1/100のエネルギーで分離が可能となるが、高圧に耐えられる膜が必要となる。
  • ●オルガノシリカによる逆浸透膜を開発し、無機膜のため超高圧操作で省エネルギーな有機溶媒分離を達成した。
  • ●蒸留代替による省エネルギーの実現により、持続可能な化学プロセスに貢献可能である。

 

 

本研究の優位性

  • ● 金属性の水素分離膜と比べて
  •  - 酸性ガスによる劣化やコーキングがない
  •  - 高い透過流束が得られる
  •  - 細孔径のチューニングが可能である
  • ● 高分子膜と比べて
  •  - 耐熱性や耐有機溶剤性に優れる

 

 

期待される用途

  • ● 水素、二酸化炭素、有機ガスの分離
  • ● 有機混合溶液の分離(アルコール脱水、濾過)
  • ● 触媒と分離膜の一体化による水素製造プロセスへの応用

 

 

実用化に向けての課題

  • ● 現在、水素分離について実用レベルの透過性と耐水蒸気性を達成済
  • ● 実用化に向けて、水素モジュール化の技術も既に確立(1mの長尺モジュールも製造可能)

 

 

企業への期待

  • ● セラミック製造技術を持つ企業との共同研究
  • ● 燃料電池メーカーやガス製造等各種化学プロセス関連企業との分離膜応用に向けた共同研究

 

 

本技術に関する知的財産権

  • 発明の名称: 逆浸透膜フィルタ
  • 出願番号: 特願2012-112239
  • 公開番号: 特開2012-254449
  • 特許番号: 特許第5900959号
  • 出願人 : 広島大学
  • 発明者 :都留稔了,吉岡朋久,金指正言
  • 発明の名称: 分離フィルタの製造方法
  • 出願番号: 特願2014-220030
  • 公開番号: 特開2015-110218
  • 特許番号: 特許第6474583号
  • 出願人 : 広島大学
  • 発明者 : 都留稔了,王金輝,金指正言,吉岡朋久
  • 発明の名称: 分離膜及びその製造方法
  • 出願番号: 特願2015-090801
  • 公開番号: 特開2016-203125
  • 特許番号: 特許第6548215号
  • 出願人 : 広島大学
  • 発明者 : 金指正言,都留稔了

 

 

論文

  • 1.Kanezashi, Y. Yoneda, H. Nagasawa, K. Yamamoto, J. Ohshita, T. Tsuru: Gas permeation properties for organosilica membranes with different Si/C ratios and evaluation of microporous structures. AIChE J. 63: 4491-4498, 2017.
  • 2.Kanezashi, T. Matsutani, H. Nagasawa, T. Tsuru: Fluorine-induced microporous silica membranes: Dramatic improvement in hydrothermal stability and pore size controllability for highly permeable propylene/propane separation. J. Membr. Sci., 549: 111-119, 2018.
  • 3.Guo, M. Kanezashi, H. Nagasawa, L. Yu, J. Ohshita, T. Tsuru: Amino-decorated organosilica membranes for highly permeable CO2 capture. J. Membr. Sci., 611: 118328 (p.1-10), 2020.
  • 4.Kanezashi, N. Hataoka, R. Ikram, H. Nagasawa, T. Tsuru: Hydrothermal stability of fluorine-induced microporous silica membranes: effect of steam treatment conditions. AIChE J., 67: e17292 (p.1-11), 2021.
  • 5.Takenaka, H. Nagasawa, T. Tsuru, M. Kanezashi: Hydrocarbon permeation properties through microporous fluorine-doped organosilica membranes with controlled pore sizes. J. Membr. Sci., 619: 118787 (p.1-10), 2021.

 

 

研究者からのメッセージ

膜分離工学は,化学や医薬などすべての工業プロセスで重要な役割を果たし,水処理や水素・CO2分離のような環境問題の解決においてもキーテクノロジーとなります。

当研究室では,シリカ,チタニアなどの無機材料,および有機・無機ハイブリッド材料に着目し,製膜・評価技術の確立,透過・分離特性の検討を通じてあらゆる膜分離プロセスについて基礎から実用レベルの研究を行っています。

 

 

 

 

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金指 正言

MASAKOTO KANEZASHI

広島大学
大学院先進理工系科学研究科
教授

広島大学 工学部卒業後、同大学院 工学研究科で博士課程修了。2005年10月からアリゾナ州立大学 工学部化学工学科 博士研究員、2007年10月から広島大学 大学院工学研究科 物質化学システム専攻 助教、准教授を経て、2022年10月01日から同大学院先進理工系科学研究科 教授に就任。研究対象は多孔性材料をベースにガス分離から液体分離まで分離対象に応じた膜開発と分離特性の評価。特にアモルファスシリカを用いたサブナノレベルでの細孔径制御、吸着性制御などマイクロポーラス構造の制御技術。