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環境に優しい新規無機系色材の開発

研究テーマ

  • アンモニアを用いない金属酸窒化物合成とその色彩制御
  • 電気泳動堆積法による構造色コーティング

研究内容

 

目標・狙い

  • ●我々の暮らしを豊かにする様々なモノには多彩な着色がなされている。一般的にその着色に使われている塗料は有機色素を中心とした染料、あるいは無機顔料が用いられている。
  • ●しかし、有機染料は、熱や光エネルギーなどによって分解してしまうため、時間がたつと色褪せが起こり長期使用には耐えられない。また、無機顔料は、有機染料に比べて優れた耐候性を有している一方で、環境や人体に対し有害な元素を含むものが多いため毒性への懸念が高まっており、万能ではない。
  • ●また、今後、従来型の染料や顔料に含まれる物質への規制がますます強化されると考えられ、安全かつ退色しない色材の開発が急務となっている。
  • ●このような背景から、安全・サスティナブルな材料とプロセスで創る新規無機系色材の開発を目指す。

 

想定される市場・製品・産業分野

  • ●塗装が必要な製品を扱う企業

 

概要

アプローチ① アンモニアを用いない金属酸窒化物合成とその色材制御

金属産窒化物顔料は、毒性が懸念される重金属ではなく、チタンやタンタルなどの金属を用いることができるため、安心・安全な材料の一つとして注目されている。
しかし、その合成には毒性が非常に高いアンモニアガスを使うことが一般的であり、合成のスケールアップは容易ではなく、工業化の障壁となっている。
本アプローチでは、この従来のアンモニアガスを用いる手法に代わる安全な方法として、窒素源に尿素を用いる合成法を開発。尿素は毒性の懸念が低く、安価であることに加え、固体であるため、取り扱いが容易であり、汎用の電気炉での酸窒化物合成が可能となる。また、尿素の量を変えて酸窒化物中の酸素/窒素比を変化させることなどで、色度を調整することが可能である。
本研究の優位性

  • ●アンモニアの代わりに安全・安価な尿素を使用することで、汎用の電気炉での酸窒化物合成が可能
  • ●用いる尿素の量で酸窒化物の色調の制御が可能

 

アプローチ② 電気泳動堆積法による構造色コーティング

構造発色性材料は染料や顔料とは全く異なるメカニズムで呈色するため、構造が壊れない限り、色褪せせず、汎用の安価かつ安全性の高い物質を用いて発色させることができる。
用いる材料は、主にガラスの主成分であるSiO2の球状粒子と炭素や四酸化三鉄などの黒色物質。粒子の集積構造で構造色が発現し、用いる粒子のサイズを変えることで容易に様々な色を生み出すことができる。

一方で、構造発色性材料のコーティング膜を形成する際、1)大面積や曲線の表面に均一なコーティングが困難であること、また2)耐久性が低い(すぐコーティングが落ちる)、といった問題があった。
これらの問題に対し、

  • 1)自動車の塗装などに使われる電気泳動堆積法(図2)を用いる。この手法を用いることで、迅速に様々な基材にコーティング膜を形成することができる。また、フォークのような複雑な形状の表面にも均一にかつ簡単にコーティングすることができる(図3)。
  • 2)電着法に工夫をし、粒子を泳動させて基材表面に堆積させるだけでなく、同時に接着剤の役割を果たす物質を電気化学的に析出させ、これで粒子同士や粒子と基材表面を接着させる方法を用いることで(図4)、その耐久性は飛躍的に改善。フォークにコーティングしたものを消しゴムに突き刺す試験でも、従来のものは膜が剥離し金属表面が露出してしまうのに対し、今回のものは剥離せず色を保つことができる。(図5)また、pHなどの電着条件を適切に調整することで、粒子の並び方を規則的な状態のものと、乱れた状態のものに作り分けることができます。つまり、オパールのように見る角度で色が変化するタイプのものと、見る角度で色が変わらないマットな印象のものに作り分けることができる(図6)。

本研究の優位性

  • ●粒子のサイズを変えるだけで様々な色を生み出せ、また、電着条件を適切に調整することで、構造色の角度依存性のありなしの作り分けが可能であるため、多様なカラーリングが実現できる。
  • ●複雑な形状の表面にも均一にかつ簡単にコーティングすることができる
  • ●耐久性の高い構造発色性材料のコーティングが可能である

 

論文

  • ●Inorg. Chem., DOI: 10.1021/acs.inorgchem.0c03758 (2021).
  • ●ACS Appl. Mater. Interfaces, 12, 40768 (2020).
  • ●Eur. J. Inorg. Chem., 2019, 1257 (2019).
  • ●RSC Adv., 18, 10776 (2018).
  • ●Inorg. Chem., 57, 13953 (2018).
  • ●NPG Asia Mater., 9, e355 (2017).
  • ほか

 

外部資金の獲得状況

  • ●科学研究費助成事業 基盤研究(B) (2020-2022).
  • ●科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) (2019-2020)
  • ●科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) (2018-2021)
  • ほか

 

研究者からのメッセージ

  • ●構造発色性材料、複合アニオン化合物、有機-無機ハイブリッド材料などにご興味があれば、ぜひご連絡ください。

 

 

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片桐 清文

KIYOFUMI KATAGIRI

広島大学
大学院先進理工系科学研究科
教授 

1998年大阪府立大学工学部機能物質科学科卒業、2002年奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科博士後期課程修了、2003年メルボルン大学Research Fellow、2005年豊橋技術科学大学博士研究員、2006年名古屋大学大学院工学研究科助手、2007年同助教、2012年広島大学大学院工学研究科助教、2014年同准教授、2019年同教授を経て2020年より現職。2007年Donald R. Ulrich Award 受賞。2013年および2015年に広島大学のDistinguished Researcherに認定。専門は無機材料化学・有機-無機ハイブリッド材料化学、ナノ材料化学。最近の主な研究テーマは、バイオインスパイアード材料・有機-無機ナノハイブリッド材料・複合アニオン材料の合成と機能開拓。