マツダ株式会社様
産学連携のポイント
1.地元の大企業であるマツダ株式会社とは研究を中心とした関係が続いていたが、包括的連携協定を契機に人材教育等それ以外の分野でも交流を拡大。研究面でも継続的な大型化と領域拡大が進行している。
2. さらに、一企業の研究開発の枠を超えて、将来にわたる地域の自動車産業の競争力を発展させることを目的に、地元自治体等も巻き込んだ産官学連携の推進組織(「ひろしま自動車産学官連携会議」詳細後述)を設立した。
3.このような取組が評価され、2018年度「地方大学・地域産業創成交付金」の対象に採択され、広島大学に「デジタルものづくり教育研究センター」が設置された。当該センターでは、マツダ株式会社を含む多数の企業が広島大学と協業しながら、ものづくりのバリューチェーン全体をデジタル化する研究を行っている。
連携の背景
●広島県に本社を置くグローバル企業であるマツダ株式会社とは、卒業後に同社に入社する学生も多く、かねてより親密な関係にあった。一方、外部環境の変化が著しい自動車業界において、マツダ株式会社としても研究開発の範囲の拡大と効率化のために大学の研究力を活用したいとのニーズがあった。
●広島県は「イノベーション立県」を掲げており、地域でイノベーションを連続的に創出するために、大学の研究能力や人材育成機能を積極的に活用しようという機運が地域で共有されていた。
連携の経緯と内容
●広島大学とマツダ株式会社の「組織」対「組織」の連携は2005年に工学部とマツダ株式会社の技術研究所が包括的研究協力に関する覚書を取り交わしたことから始まる。
●その後、毎年数件の共同研究を続けながら連携を強化するための検討を続けていたが、2011年に研究・技術開発に留まらない経営・ビジネス、人材教育などの広域な包括的連携協定書を取り交わしたことを契機に急速に関係を拡大し、2012年には産学連携の専門職員の出向、2014年には広島大学とマツダ株式会社の連携推進専任者の設定を経て、2015年に次世代自動車技術共同研究講座「内燃機関研究室」を開設、インターンシップも数十人規模に拡充していった。
●2015年には、地方創生とイノベーション創出、人材育成を目指す産学官連携活動を推進するひろしま自動車産学官連携会議が発足した。同組織は、広島大学とマツダ株式会社、中国経済産業局、広島県、ひろしま産業振興機構、広島市で構成されており、6者が策定した広島地域の自動車産業を活性化するための「2030年産学官連携ビジョン」の実現を図るための組織である。
●並行して、マツダ株式会社が広島大学に設置する共同研究講座も5研究室に増加した。(内燃機関研究[2015]、空気力学研究室[2016]、先端材料研究室[2016]、藻類エネルギー創生研究室[2017]、モデルベース開発研究室[2019])2013年に活動を開始した感性イノベーション拠点(COI)を加えて、次世代自動車技術に関する、「エネルギー創出」、「効率的利用」、「走る歓び」を広島大学において一気通貫で研究する体制が整っている。
成果と今後の方針
●産官学の連携体制が評価され、内閣府の2018年度「地方大学・地域産業創成交付金」の対象事業として、「ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム」が採択された。この事業は、地域における大学振興と若者の雇用創出を目的とするものである。
●このプログラムの資金を活用し、広島大学は「デジタルものづくり教育研究センター」を設置した。マツダ株式会社をはじめとする多数の企業が「ものづくり」のバリューチェーン全体のデジタル化を図るための研究を行っている。
●マツダ株式会社と広島大学は、今後も地域自治体と連携しながらイノベーションを創出することで、地域の経済発展のための協力を継続し、広島ならではの産学官連携モデルが日本における地方創生のリードモデルとなることを目指している。