- トポロジカル物質※1などを理解するための基本的指針を与える
広島大学大学院先進理工系科学研究科量子物質科学プログラムの多田靖啓准教授は、物質中の電子たちのもつエネルギーがどのように振る舞うのかが一目で分かる定理を理論的に証明しました。このような定理は、物質の近似的なモデルに対しては成り立つことが知られていましたが、より現実的なモデルで成立するかは分かっていませんでした。今回証明された定理は、これまでより広範で現実的なモデルに対して成り立ち、さまざまな物質の極低温での振る舞いについての理解を深める上で基礎となるものです。さらにこの定理は、トポロジカル物質※1などの興味深い物質を探索するために役立つことが期待されます。
本研究の成果は、米国の物理学誌Physical Review Lettersのオンライン版に12月3日に掲載されました。
図1 エネルギー・スペクトル{E0, E1, E2,…}。1本1本の線がエネルギーの値を示しており、連続して分布する場合はべったりと色塗りしてあります。低エネルギー領域のスペクトルの構造は3つに大別され、(1) E0とE1の間にギャップがあるもの、(2) E0とE1などの値が等しいがそれらの上にギャップがあるもの、(3) E0の上にギャップがなく連続的にE1, E2,…が分布しているものがあります。これら3つは、それぞれ全く異なる物質の様子を表しています。
※1 トポロジカル物質、トポロジカル秩序
物質の中には、トポロジーという数学的性質と深く関係しているものがあり、総称としてトポロジカル物質と呼ばれています。このような物質は秩序だった性質を示すので、その様子をトポロジカル秩序と呼びます。