広島大学大学院統合生命科学研究科の上野勝准教授のグループは、酵母を用いた研究により、ブロッコリーなどに含まれる成分由来のジインドリルメタン(DIM)が、アポトーシスやオートファジーを引き起こすことを発見しました。アポトーシスはがんと関連し、オートファジーは老化との関連が示唆されています。本研究成果は、がんや老化の防止や治療に関する新しい方法の開発に道を開きました。
本研究成果は、 アメリカ東部標準時間の12月10日午後2時(日本時間12月11日午前4時)に、米国オンライ科学誌 「PLOS ONE」オンライン版に掲載されました。
図1
(a)低い濃度のDIMを酵母に添加すると、オートファジーが誘導される。オートファジーの活発化は、長寿につながることが期待されているため、DIMによってオートファジーを誘導することで、老化を抑制するサプリメントして応用できる可能性がある。
(b)高い濃度のDIMを酵母に添加すると、核膜が損傷し、その後染色体が断片化され、アポトーシス(細胞死)を引き起こす。がん細胞だけにアポトーシスを誘導させることができれば、細胞全般にダメージを与えることがないため、副作用の少ない抗がん剤となることが期待できる。
(c)高い濃度のDIM添加によって分裂酵母の核膜が損傷した写真。上の写真は顕微鏡による酵母細胞の実体像、下の写真は核膜に存在するタンパク質に蛍光タンパク質を融合して、蛍光顕微鏡で核膜を可視化した像。DIMを添加すると本来満月のような丸い核膜が、半月のようになっていることから、核膜が損傷したことがわかる。
(※1)アポトーシス
プログラムされた細胞死で、その過程で核の中の染色体DNAが断片化される。
(※2)オートファジー
細胞が、内部の物質を分解して再利用する現象。酵母を用いたオートファジーの研究で、2016年にノーベル生理学・医学賞が与えられた。
研究発表資料
https://www.hiroshima-u.ac.jp/system/files/176065/211211_pr01.pdf
広島大学研究者総覧 大学院統合生命科学研究科 上野 勝 准教授
https://seeds.office.hiroshima-u.ac.jp/profile/ja.45c39cbf4572661c520e17560c007669.html
論文掲載ページ
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0255758