広島大学大学院先進理工系科学研究科のトグトフブヤン=ムンフウヌル大学院生、田川浩教授、陳星辰助教は、座屈拘束丸鋼ダンパーで構成される方杖ブレースを剛接合柱梁接合部に設置することで、梁端部の塑性変形領域を2倍以上に拡大するという新しい構造を提案しました。これにより梁端部の塑性変形能力を高めて地震エネルギー吸収性能を向上させることが可能となります。
提案構造を有する接合部の繰返し載荷実験により想定通りの挙動を呈することを確認し、さらに多数の有限要素解析(コンピュータシミュレーション)を通じて最適なダンパー形状を検討しています。近年国内外を問わず数多くの地震被害が報告されており、本研究成果は建築物の耐震性を高め地震に強い都市を実現していく上で有意義なものとなります。
本研究成果をまとめた論文が、Elsevier社の学術誌「Engineering Structures」に採用され、2022年1月1日号に掲載されます(オンライン版は2021年11月2日に掲載済)。
※1 座屈拘束丸鋼ダンパー:軸変形する丸鋼を鋼管に挿入し座屈することなく繰返し塑性変形させ振動エネルギーを吸収する部材。
※2 方杖(方杖ブレース):柱梁接合部の近傍に斜めに配置し接合部を補強する部材。
※3 剛接合:梁端部を柱に溶接し接合部に変形が生じないようにする接合形式。
※4 塑性変形:鋼材に大きな力を与えたときに生じる変形。力を除くと元に戻る弾性変形に対し、力を除いても元の形に戻らない変形のこと。提案ダンパーは鋼材が塑性変形するときのエネルギー消散特性を利用している。
※5 有限要素解析:構造物等を小領域に分割し、各小領域における変形を補間関数等により近似して算定し全体の挙動を予測する。