概要
神経回路の形作りに関与する小胞体分子Meigoの機能を、ショウジョウバエの遺伝学的手法を用いることで明らかにしました。ニューロンの内部構造である小胞体の分子Meigoが、どのようにしてニューロンの外部構造(突起の長さや方向)を調節し、神経回路を作り出すかは長年の謎でした。今回の研究でMeigoは、ニューロンの表面に存在するToll-6受容体の量を調節することで神経回路作りを制御していることが明らかになりました。さらに、小胞体分子Gp93も神経回路作りに関与することを見出しました。
本研究は、広島大学大学院統合生命科学研究科の博士課程後期の亀村興輔さん、千原崇裕教授らの研究グループと、東京大学大学院薬学系研究科の三浦正幸教授、森谷浩幸さん(当時大学院修士課程)との共同研究による成果で、2月5日、アメリカ発生学会誌「Developmental Biology」にオンライン掲載されました。
図1 ショウジョウバエ嗅覚系
匂い物質は嗅覚器で受容され、その情報は触角葉と呼ばれる嗅覚系一次中枢へと伝達される。
嗅覚系一次中枢:触角葉(右側の灰色の構造)は“ブドウの房”のような構造を取り、約50個の糸球体(“ブドウの実”)からなる。
それぞれの糸球体がそれぞれ異なる匂い情報を受け取る。
片側脳半球には多数の投射神経(緑色)が存在しており、それぞれの投射神経が特定の糸球体へと樹状突起を伸ばす。