概要
シリコンは、太陽電池またスマートフォンの電子部品にも使われ、多くの優れた性能を持つ半導体です。しかし、そのシリコンは発光効率が0.01%程と大変低く、発光材料には向いておりませんでした。理学研究科の大学院生 小野大成氏(博士課程前期修了)と自然科学研究支援開発センター(研究開発部門)の齋藤健一教授らの研究グループは、世界トップレベルの発光効率(最大80%)を与える、赤色発光ナノシリコン(シリコン量子ドット)の合成に成功しました。また、それを用いたシリコン量子ドットLEDも開発しました。更に、シリコン量子ドットとシリコン量子ドットLEDの高効率化に必要とされる、化学的デザイン(表面化学種の種類と被覆率)と物理的デザイン(結晶性と応力値)の、数値化に成功しました。高効率発光をデザイン化した例はこれまでになかったため、今後の高効率シリコン量子ドットとLED製造の有力モデルになることが期待されます。
量子ドットはタブレットや大画面テレビなどの発光体として市場に出回り始め、有機EL後の次世代発光体と期待されています。しかし、市場に出回り始めた量子ドットディスプレイは、重金属の量子ドットを用いているため、毒性がなく、重金属フリーの発光体が、世界中で模索されています。シリコンは重金属ではなく、その原料は砂・石であるため無尽蔵です。更にLEDの製造法は簡便で、シリコン量子ドット溶液、高分子溶液を基板に塗布する手法です。使用後の廃棄も見据え、SDGsの視点からも安全・安心・安価で、高性能かつ折り曲げ可能なディスプレイ、また生医学イメージング等での利用が期待されます。
(a)出発材料となる水素シルセスキオキサン、(b)上記aの粉体、(c)上記bを焼成した生成物、(d)赤色発光するシリコン量子ドット。溶液中に分散している。(e)上記dの電子顕微鏡像。
シリコン量子ドットLED。 (a)作製手順の概略図、(b)LEDの写真、2cm角で発光面は4mm2の大面積、(c)シリコン量子ドットLEDの発光している写真。(d)LEDの発光(EL)スペクトル。