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脳波で感性や認知力をリアルタイム評価

研究テーマ

  • 脳波計を用いて「期待」「発見」した時の感性を可視化する指標の開発
  • 注意力や記憶力などの認知能力の指標の開発
  • 性格傾向や認知機能などの個人差の解明と類型化による人材評価システムの開発

研究内容

目標・狙い

  •  ヒトの感性や注意力や記憶力などの高次認知能力(総じてワーキングメモリ機能)の“個人差”を脳科学的に解明し、それらの脳機能・脳構造・脳神経化学的指標の確立やそれらの能力向上につながるブレイン=コンピューター=インターフェースの開発と社会実装を目指します。

 

研究概要

1.「感性メーター」による感性のリアルタイム評価

概要

    •  脳波計を用いて「驚き」「期待」「発見」などのワクワクした気持ちを定量測定できる世界初の技術「感性メーター」(商標登録第6436224号)を開発しました。ヒトはことばを選ぶことで嘘をつくことができますが、脳は嘘をつけません。この感性メーターは主観の奥にある人の脳の本音に迫ることができます。

 

  • 【感性メーター紹介動画】

 

本技術の特徴

    • 特徴①:最新の脳科学的知見に基づいたアルゴリズム
      • – 脳科学・心理学の分野では、これまで「ワクワク感」を、Valence(快・不快)、Arousal(活性・不活性)の2軸で評価していましたが、本研究では、ワクワク感を理論的にも高精度に分解するため、時間の概念を含むExpectation(期待感)という3軸目を加えました。3軸それぞれに対応する脳活動を同一の実験系でfMRIおよび脳波で測定することにより、脳領域とも紐づいて3軸を定量評価可能な脳波指標を特定しました。
      • – これによって、fMRIと比較して簡便かつウェアラブルな装置で実用性の高い脳波を用いて、脳科学に裏付けられたワクワク感の数値化だけではなく、そのリアルタイム可視化を可能としました。

      • – また、感性は性格や文化的背景そして各個人の経験などによる個人差が大きいとされています。そこで我々は個人差を反映する性格傾向に着目し、Big Fiveと呼ばれる情緒安定性・外向性・開放性・勤勉性・協調性の5つの因子の度合いに基づいて3つの性格タイプに分類したワクワクの方程式や脳波指標の開発を進めました。最新の感性メーターでは、各々の性格傾向に応じたワクワクの方程式や脳波指標を織り込んでいるため、個別最適化を実現し、高精度な評価を行うことが可能になります。

  •   特徴②:求める精度、求める簡便性、実験環境に応じた評価が可能
      • – 研究グレードの高精度のものから、ある程度精度を担保しつつもウェアラブル(ワイヤレス)で初めての人でも使いやすいツール・キットまで様々な脳波・生理計測デバイスが揃っています。
      • – また、これまで実験室実験・屋外・大人から子どもまであらゆるシーンや被験者で実験を行ってきた実績があることから、目的に応じた実験デザイン・計測が可能です。

 

2.高次認知能力のリアルタイム評価

概要

    •  高次認知能力テストや質問紙評価セットに加えて、ワーキングメモリの個人差を定量評価する世界初の脳波指標(Contralateral Delay Activity)や、MRI構造画像の指標を用いて、個人の注意力・記憶力といったワーキングメモリと呼ばれる私たちの生活に欠かせない高次認知機能を評価できます。

 

本技術の特徴

  •   特徴①:流動的知性と強く相関している注意力・記憶力を定量評価します。
      • – 世界で初めて発見した脳波の記憶力の指標(Vogel & Machizawa, 2004 Nature)を用いて、注意力(注意の制御能力)も脳活動レベルで評価可能です(Vogel, McCollough & Machizawa, 2005 Nature)。これまで多くの世界中の研究者によって再現性を確認されたロバストな記憶力と注意力制御力の指標です(論文引用数:それぞれ1830、1348、2021年11月19日現在)。
  •   特徴②:注意力・記憶力を格段に向上する脳活動を用いた脳トレを提供します。
      • – 上記指標をリアルタイムにフィードバックしながらメンタルトレーニングをすることで、これまでの行動やゲームだけを用いたトレーニングよりも格段に早く且つ高い効果で注意力と記憶力を向上するトレーニングを提供します(特許US63/220,646)。
  •   特徴③:映像視聴中のイメージの脳へのインパクトを評価します。
      • – 上記脳波指標を用いて、所望の映像情報がどの程度意識に入っているかを定量評価可能です。

 

 企業との連携イメージ

(ア)コンサルティング

・ 学術的な見地をもとに、質問紙調査、心理実験、脳科学実験などにおいて、被験者の特性や実験環境など目的に応じた実験デザインの考察・アドバイスを行います。

 

(イ)商品・サービスの評価(自動車、食品、飲料、広告、住宅等)

  • ・ モニター調査で主観を聞く従来の調査では捉えることができなかった対象者の本音や、無意識のうちに感じている好き嫌いなどの評価を定量的に可視化します

・ また、従来のアンケート調査では、実際に商品サービスに触れているタイミングと、評価するタイミングがずれているため、正しい評価や、詳細な評価を行うことが困難でしたが、 感性メーターを使うと、リアルタイム計測が可能であるため、刻々と変化する映像コンテンツや機械や車両の操作性の良しあし、商品の第一印象・目に入った瞬間・説明を聞いた後といった経済的な変化を評価することができます。

 

・ 現在は視覚情報に基づいたワクワク感を測定していますが、そのほかの聴覚・触覚・嗅覚・味覚などへの応用も進めています。これらが測定できるようになれば、例えば五感をフルに使う料理の評価などが実現できます。

(ウ)熟練者の技能のデータ化(飲食業・製造業・自動車等)

・ 機械の操作・操縦やあらゆるものづくりの分野において熟練者と初心者の感性や認知能力を測定、比較することで、技能の言語化、データ化に活用することができると考えています。

(エ)意思疎通が困難な方とのコミュニケーションツール開発(特別支援教育・医療現場・介護等)

・ 現在の感性メーターの技術を応用し、高齢者や自閉症などの発達障がい子者など、感情表出が困難な方々の感情・感性を脳情報から可視化することで、家族や介護者とのコミュニケーションを促進させるためのツール開発にも応用可能です。

 

(オ)認知能力評価(スポーツ選手・介護施設・発達障害支援施設・学習塾 等)

・ 認知能力を緻密に測定することで、例えば発達障害支援施設や学習塾における教育プログラムの効果や、スポーツ選手の能力を定量的にかつ細分化(*)して評価することができます。
(*)注意力や記憶力の質と量、一点集中(orienting attention)と全体注意(alerting attention)、注意統制力など。

 

(カ)ニューロフィードバックによる認知能力向上サポート(プロスポーツ・eスポーツ)

・ ニューロフィードバックとは、脳波やMRIなどを用いて脳活動をリアルタイムに本人にフィードバックする、脳情報を可視化する技術で、言葉やそのヒトの反応を待たなくても脳情報からそのヒトの感情や認知状態を可視化することができます。

・ この技術を用いて、普段は感じることのできない自分の脳活動を感じながらイメージトレーニングすることで、アスリートの集中力や注意力を向上するトレーニングが可能です。

(キ)性格診断(HR 等)

・ 研究用基礎データとして、八千人強の価値観データを活用して開発した価値観感性モデルと、実労働者の生体情報・就労に関わる属性などを統合分析することで、特定の業界・職種に紐づいた感性価値観タイプ(例:家族や友達のふれあいを大切にする、仕事第一優先、等)を評価します。

・ 将来的には、感性価値観タイプや認知能力のデータをもとに、個人の業界・職種の適正を判断できるモデルの開発を目指します。

(ク)脳生理計測機器のデバイス評価

・新規脳生理計測デバイスの精度検証を行います。

 

 

特許

  • 1.特許6590411 感性評価方法
  • 2.特許6916527 感性評価装置、感性評価方法および感性多軸モデル構築方法
  • 3.特願2017-139585 脳波信号評価方法(リアルタイムに脳情報を学習し、使うごとに高精度化していく仕組み)
  • 4.US63/220,646 Mental Image-based Neurofeedback to Improve Cognitive Function (認知機能を改善するメンタルイメージニューロフィードバック法)
  • 5.特許6742628号 脳の島皮質活動抽出方法
  • 6.特許第6731718号 乗員の感性向上システム
  • 7.特願2020-170682 人の表出情報からの脳活動状態推定

 

 

代表的な論文

  • ● “Quantification of anticipation of excitement with a three-axial model of emotion with EEG”(脳波を用いた感情3軸モデルによるワクワク感の定量評価)、著者:Maro G. Machizawa, Giuseppe Lisi, Noriaki Kanayama,Ryohei Mizuochi, Kai Makita, Takafumi Sasaoka, and Shigeto Yamawaki
  • ● Vogel, E. K. & Machizawa, M. G. Neural activity predicts individual differences in visual working memory capacity. Nature 428, 748–751 (2004).
  • ● Vogel, E. K., McCollough, A. W. & Machizawa, M. G. Neural measures reveal individual differences in controlling access to working memory. Nature 438, 500–503 (2005).
  • ● Machizawa, M. G. & Driver, J. Principal component analysis of behavioural individual differences suggests that particular aspects of visual working memory may relate to specific aspects of attention. Neuropsychologia 49, 1518–1526 (2011).
  • ● Machizawa, M. G., Driver, J. & Watanabe, T. Gray Matter Volume in Different Cortical Structures Dissociably Relates to Individual Differences in Capacity and Precision of Visual Working Memory. Cereb Cortex 30, 4759–4770 (2020).

 

 

研究者からのメッセージ

私たちの日々の生活に欠かせない感性や認知能力を定量評価し、リアルタイムで可視化する技術などを活用して、最新の脳科学的エビデンスに基づいた脳の状態を誰でも簡便かつ高精度に評価するブレインテックツールを開発しています。皆さんの社会ニーズに応用可能な脳科学を目指しています。

 

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町澤 まろ

MARO MACHIZAWA

広島大学
脳・こころ・感性科学研究センター 特任准教授

広島大学脳・こころ・感性科学研究センター特任准教授。博士(神経学)。
大阪市立大学生活科学部(発達臨床)卒業(BA)後、米国オレゴン大学心理学部を1年で卒業(BS)。米国オレゴン大学大学院心理学部を修了(MS)。米国ヴァージニア大学、理化学研究所、英国ユニバーシティ=カレッジ=ロンドン(UCL)認知神経学研究所を経て、日本人で初めてUCL神経学研究所において博士号(PhD)を取得。 その後、米国ブラウン大学でのポスドク、広島大学精神神経医科学、量子科学技術研究開発機構を経て、2020年より現職。 ATR脳情報通信総合研究所 連携研究員。
社会に還元できる応用脳科学的アプローチを主軸に、視覚から味覚、基礎理論から応用まで多岐に渡る分野で活躍中。