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コウモリから学ぶ空中超音波センシングの未来

研究テーマ

  • 包括的な視点によるコウモリの超音波センシング運用法の理解
  • 生体のシンプルかつロバストな超音波ナビゲーションの模倣応用を目指して

研究内容

研究内容

概要

現状の工学ナビゲーションシステムは、実用性に比例して設計が煩雑化し、柔軟性に欠けるナビゲーションを実践している。

一方で、生物ソナーを駆使するコウモリは、自ら超音波パルスを放射し、周囲環境からの反響音を聴取するエコーロケーションにより空間把握を実現させている。これにより、1送信器・2受信器の超音波センサと豆粒サイズの脳しか持たないにも関わらず、狭く複雑な地形環境の洞窟内を、事前打ち合わせのない好き勝手な飛行のもとで、安全な飛行を実現させている。無限定環境下をリアルタイムに飛び回るコウモリのエコーロケーションの柔軟性から、工学ナビゲーションシステムが学ぶべき点は多い。

そのような背景から、不要な空間情報をあえて徹底的にそぎ落とすコウモリ由来の“適応的注意分散型”のアクティブ超音波ナビゲーションシステムを確立させるため、数理学・動物行動学・工学にわたる包括的な視点から研究を行っている(論文1参照)。

 

 

 

 

研究実績例その1 : コウモリの3次元空間定位メカニズムについて分析

概要

  • ・一部のコウモリは、エコー聴取時に高速で左右両耳を動かすことがよく知られているが、その実態は明らかにされていなかった。
  • ・そこでAIを活用した数値シミュレーションにより、耳介運動について分析を行った。
  • ・その結果、3次元定位に有効な耳介運動の動態条件を理論的に特定し、コウモリが実際に採用する耳介動態の妥当性についても一部検証できた(上図左下パネル、論文2参照)。

 

 

研究実績例その2 : コウモリが実践する空間学習飛行のナビゲーション最適化メカニズムの分析

概要

  • ・観測室内に構築した障害物環境下でのコウモリの繰り返し飛行実験から、コウモリが空間記憶の蓄積とともに、飛行経路とセンシング回数の無駄をカットする高度な空間学習ナビゲーションを実践していることを定量的に明らかにした。
  • ・本研究成果により、未知と既知の環境に対峙する生物のナビゲーション運用法を解明する上で重要な行動データの収集に成功した(上図右上パネル、論文3参照)。

 

 

本研究の優位性

  • ● コウモリの行動計測から実機検証に至る分野横断型のバイオミメティクス研究を一研究者が主導
  • ● 生物由来のシンプルなナビゲーションシステムの普及に貢献

 

期待される用途

  • ● 不整地環境下での被災者探索ドローン
  • ● 既存の自律飛行・走行ロボットへの応用
  • ● 他バイオミメティクスとの融合
  • ● 先進的な”生物知SLAM”創造の足掛かり
  • ※ SLAM(Simultaneous Localization And Mapping:自己位置推定と環境地図作成の同時実行)

 

実用化に向けての課題

  •  これまでに蓄積してきたコウモリの超音波センシング術の有用性を評価するためには、実環境下での運用テストが必要不可欠である。そこで現在では、1送信2受信器の超音波センシングシステムを搭載したドローンによる自律飛行テストを開始している(上図左下パネル参照)。
  •  本機体を通じて、生物由来の超音波センシングノウハウと工学ナビゲーションシステムの調和を図り、有機生命体が普遍的に有する“しなやかさ”を取り入れたナビゲーションシステムへの発展を目指す。

 

論文

  • 1.Yamada, Yasufumi, et al. “Ultrasound navigation based on minimally designed vehicle inspired by the bio-sonar strategy of bats.” Advanced Robotics3-4 (2019): 169-182.
  • 2.Hiraga, Takahiro, Yasufumi Yamada (corresponding), and Ryo Kobayashi. “Theoretical investigation of active listening behavior based on the echolocation of CF-FM bats.” PLOS Computational Biology 18.10 (2022): e1009784.
  • 3.Yamada, Yasufumi, et al. “Modulation of acoustic navigation behaviour by spatial learning in the echolocating bat Rhinolophus ferrumequinum nippon.” Scientific reports1 (2020): 1-15.

 

研究者からのメッセージ

私たちの研究はまだまだ萌芽的研究段階と言えるかもしれません。ですが、世界初の“コウモリ模倣超音波センシングデザインによる自律飛行”をドローンで達成させようとしています。クールジャパン発の酔狂かつ実用的な技術として発展していくために、お力を貸していただけると幸いです。

 

 

 

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山田 恭史

YASUFUMI YAMADA

広島大学
大学院統合生命科学研究科
助教

2017年に同志社大学で学位取得後、2018年に広島大学理学研究科 研究員、2019年に総合生命科学研究科の研究員を経て、2021年から大学院統合生命科学研究科の助教に就任。研究対象は音響工学、数理生物学、生物模倣工学、動物行動学。